Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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ウルトラマン超闘士激伝と呼ばれる作品が再始動され、テンションあがりっぱなしでございます!!
ご存知ない方はウルトラマンでドラゴンボールをやっていると思えばイメージしやすいですかな?
特にメフィラスが大好きでしなぁ

それとは関係のない、間桐兄妹が魔改造気味な41話でございます!


第41話『再戦への渇望』

変身を終えた間桐光太郎…仮面ライダーBLACKを睨むキャスター。彼女の視線はやがて外壁際で横たわる男の姿へと移った。

 

「総一郎様…」

 

ロードセクターと共に倉から姿を消していた総一郎は、ロードクターのフロントカウルに乗った状態からも反撃を試みるが突然急ブレーキをかけられ、前方へと吹き飛んでしまう。その先にあった外壁に後頭部を強く打った総一郎は、そのまま意識をとだえてしまったのだった。

 

光太郎がライダーと再開している間、キャスターは負傷した腕を押さえながら気絶しているマスターを介抱していた。命に別状はないと分かるとありったけの竜牙兵を召喚し、飛行魔術で光太郎達へと相対した。

 

もう許さない。

 

言わずともキャスターからは怒気に塗れた魔力が溢れていた。

 

 

 

「コウタロウ」

 

短くマスターの名を告げたライダーは光太郎に顔を向けることなく、キャスターを警戒したまま尋ねた。

 

「彼女は…キャスターは私に任せてくれませんか?」

「………………」

 

レイラインが再び強く繋がり、再び全力で戦えるようになったライダーではあるが、光太郎の救出までの間に竜牙兵やビルゲニアの攻撃でボロボロの状態であった。回復してもらいたいところではあるが、眼帯の向こうにある瞳が強く訴えていることを光太郎は感じた。

 

「…わかった。ライダーに任せる」

「ありがとうございます」

「なら俺は…」

 

光太郎は浮遊するキャスターの下、竜牙兵を背後に控えながら血走った目でこちらを睨む因縁の敵の姿を見た。光太郎の背中を切りつけた毒を宿した剣を持つ手は震えている。今にでも斬りかかりたいのを必死に耐えているような状態だ。

 

「…決着をつける」

 

そして戦闘の準備を整えた慎二と桜へ光太郎は目を向ける。

 

肩が外れながらも、敵の魔力を受けてボロボロになりながらも、自分を助けてくれた家族。本当なら、このような戦いの場にはいて欲しくなかった。だが、2人はもう守られるだけではない。戦うことができるのだと、光太郎は思い知ってしまったのだ。

 

「慎二君、桜ちゃん」

「危なくなったら逃げろなんてのは、却下だぞ」

「最後まで、戦えます!」

 

義兄から言われるであろう事に頑として反対の姿勢を取った慎二と桜だったが、帰ってきたのは意外な言葉だった。

 

「ああ。だからその後のことだよ。いつも俺が通ってる診療所へ行こう。夜中でも、文句を言いながら診てくれるいい先生なんだ」

 

黒い手を2人の頭に乗せ、ポンポンと優しく叩く光太郎の発言に、目を合わせる慎二と桜。そして、止めとなる鼓舞が2人に送られた。

 

 

 

 

「存分に暴れて、しっかり治療しよう」

 

 

 

「…頼りにしてるよ。2人とも」

 

 

 

 

待ち望んだ言葉に、慎二と桜は説明のできようのない気持ちが高揚していった。まるで、今の自分達には不可能なんてない、と思えてしまう程に。

 

 

 

 

「いくぞ!!みんなッ!!」

 

 

光太郎の言葉に、全員が駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「カメンらいだー…!!殺ス!!」

「ビルゲニア…!!」

 

ビルゲニアが撃ち出す斬撃を光太郎は躱し、弾いていく。不意打ちとはいえ、光太郎を苦しめた毒を警戒し、直撃を受けないように回避しく。だが、その攻撃には過去に何度も見ていた動きの切れや斬撃の重さが全く見られなかった。

 

 

セイバーとの戦いの後、どのような経緯でキャスターに与したのかは光太郎には分からない。いや、彼の様子、言動からして自意識を奪われ、光太郎の恨みだけが原動力となっているようだ。なら、これは本来のビルゲニアではない。

 

幾度となく戦ったゴルゴムの剣聖。自分の体内に宿るキングストーンを狙い、様々な謀略で光太郎を追い詰め、その中には戦いに関係のない人々を巻き込んだこともあり、怒りを抱いたことは多くある。

だが、今自分へ剣を向けているのは、そのビルゲニアなのだろうか?キャスターに踊らされ、走狗となった彼を倒して、決着が着けられるといえるのか?

 

答えは否。

 

ビルゲニアは、光太郎に取って敵にしか過ぎない。それでも、光太郎は『自分の知る』ビルゲニアとの決着を望んだ。

 

答えを決めた光太郎の頭上に、ビルゲニアの振り下ろした剣が迫っていた。

 

だが、剣の刃を光太郎は両の掌で挟み込こんで受け止めた。白刃取りの状態となっても、ビルゲニアは毒の刃で光太郎を切り裂こうと柄に力を込める。光太郎も負けじと刃を押し返そうとするが、手から煙が立っていることに気付く。どうやら剣の毒は触れるだけでも効果を発揮するうようだ。

 

「聞けッ!ビルゲニアッ!!」

「殺ス!!コロす!!」

 

光太郎の言葉はビルゲニアにはまるで聞こえていない。それでも、光太郎は呼び続けた。

 

「お前は、俺からキングストーンを奪うためなら手段を選ばない卑劣な奴だった…だが、それでも自分こそが創世王となるという気持ちは、誰にも負けなかったはずだッ!!」

「ッ…!?」

 

わずかなが、『創世王』という言葉に反応したビルゲニアに、光太郎の言葉が続く。

 

「このままお前はキャスターの命令通りに俺と戦い、倒してもそれはお前の意思ではない!!お前はそれでいいのか!?」

「おッ…オオオオッ…」

 

剣から力が抜け、後ずさるビルゲニアは額を押さえて苦しんでいる。毒の浸食が終わっても煙を上げている手を強く握りながら、光太郎はビルゲニアに叫んだ。

 

「ビルゲニアッ!!目を覚ませ!お前は…その程度の男だったのかッ!?」

「ぐっ…オオオオオオオオオオッ!!!」

 

ビルゲニアは雄叫びを上げ、握り拳を作ると自身の額に叩き込んだ。

 

メキッ…と金属が砕ける音が響いた後、拳がゆっくりと引かれていく。ビルゲニアの兜に段々と亀裂が広がっていき、やがて真っ二つに割れてしまう。その下には兜に収まっていた長く黒い髪が解放され、額から血を流したビルゲニアは光太郎の知る、野心を秘めた鋭い目つきとなっていた。

 

「ククク…ハァーハッハッハッハッハッハ!!愚かなり仮面ライダーブラック…あのまま俺が俺でない時ならば楽に死ねたものを…自ら生き地獄を選択するとはな」

 

盾『ビルテクター』を出現させたビルゲニアは毒の剣を持って改めて構える。そこには光太郎の知るゴルゴムの剣聖の姿があった。

 

「その地獄に向かうのは…ビルゲニア!お前の方だ!!」

「面白い!!今日こそ決着を付けてくれるわッ!!」

 

 

その状況をキャスターの攻撃を回避しながら覗っていたライダーは、同じく空から見下ろしていたキャスターへと尋ねた。

 

「どうやら貴方の術は破られたようですね」

「そのようね。生きる屍かと思ったら、随分と我が強かったみたい」

 

キャスターが特に驚いたり、悔しがっている様子が見えないことにライダーは意外に思えた。

 

「…まぁ、好きにすればいいわ。どの道…」

 

その後の言葉がライダーの耳に届く前に、空に浮かんだ無数の魔法陣から放たれる攻撃魔法の雨が襲った。ライダーが数秒前にいた玉砂利の地面が次々と焼き焦がれていく。

 

「くっ…!」

「卑怯とは言わせないわよ。私は出せる力を使って、貴方を消して見せるわ」

「ならば、私も全力を出しましょう」

 

ライダーは桜から受け取った布の束…刃に彼女の血が塗られたナイフのケースを取り出す。ケースを展開し、収納されたナイフ全てを取り出した。指と指の間に数本のナイフを挟み、20本を超えるナイフをライダーは無造作に上空へと放り投げたのだ。

 

ナイフは次々と地面へと突き刺さり、キャスターに届いたナイフは1本もなかった。

 

ライダーの行動が理解出来ず、手を止めてしまったが、落下したナイフの刃が次第に赤く発光している事に気付く。次第に赤い光は地面を走って行き、ナイフとナイフを線のように結んでいく。次第に、ライダーを囲うように円の形となっていた。

 

「御礼を言いましょう、キャスター」

 

円の中に文字が刻まれていき、組まれた術式が眩い光を放っていく。

 

「貴方の放った魔力の残滓を利用したおかげで、私が血を流して魔法陣を組む手間が省けました」

 

本来ならば自らの首を切り裂き、飛び散った血液で完成させるものであったが、予め用意された血液の塗られたナイフを起点にし、刃に刻まれた文字に周囲に散らばったキャスターの放った魔力の残滓を取り込む。その結果、ライダーは行程を短縮して魔法陣を創ることができたのだ。

 

「何をするつもりかわからないけど、させないわよッ!!」

 

完成された魔法陣ごとライダーを消し去ろうと魔力弾を放つキャスター。近付いただけで蒸発してしまう熱量を秘めた魔力の束がライダー目掛けて落下していくが、それよりも早く、一筋の光が魔法陣から飛び出した。

落下した魔力弾により、魔法陣は消し飛んだが、キャスターの不安は消えない。魔法陣と一緒に消えたと思ったライダーの魔力が、まだ残っているのだ。どこに行ったかと目下を見渡すが、姿は見えない。その直後、羽根の羽ばたく音が頭上より聞こえたキャスターは急ぎ見上げる。

 

月を背に、翼を持つ白馬…ペガサスに乗り、その名の如く騎乗の兵となったライダーの姿があった。

 

 

「随分派手な登場だな…っと!」

 

器用に片手で矢をボウガンにセットしながら竜牙兵が振り下ろす斧を回避した。その直後の行動は…

 

「さぁて骸骨如きが僕を捕まえられるかなぁ!!」

 

 

全力で逃げていた。

 

 

竜牙兵も獲物を逃がさんとばかりに慎二を追いかけ、当然足の速い個体が先頭を走る形となっている。骨格からして、ゴルゴムの怪人が素体となっているようだ。どの怪人かと気になる所だがそんな余裕はない。

慎二は走りながら背後を向き、先頭を走る竜牙兵のある一点に狙いを定め、ボウガンを発射した。

 

矢は竜牙兵の膝部分の骨と骨の間へ滑り込むように挟まれた。結果、関節に遺物が入り込み上手く曲げることの出来なかった先頭の竜牙兵は蹴躓いてしまう。後続の竜牙兵達も突然倒れた個体を避けたり飛び越えることなど出来ず次々と前の個体に躓いて倒れていく。

 

「じゃあ、止めよろしく」

 

慎二の言葉に反応し、バトルホッパーが彼の頭上を飛び越えて登場する。立ち上がろうとした先頭の竜牙兵を後輪で叩き潰し、そのまま急加速で前進。倒れたままである竜牙兵達を砕いていった。

 

「さて、次はどんな手を使うか…」

 

慎二はボウガンに再び矢を装填した。

 

 

 

「なるほど。あんな方法もあったんですね…」

 

義兄の戦法に関心しながら桜は次々を矢を番え、竜牙兵へと放っていた。

 

桜が今打ち出している矢は、学校の戦いで使われた物と原理こそ同じだが、より細かく術式を書き込まれたことにより、威力は増大している。そして事前に頭部や手を失っても動き続けると光太郎とライダーから聞いていた桜は狙いを胴体に定める事によって、行動不能へと追い込んでいた。

 

しかし、一度矢を放ち、再び狙いを定めるまでタイムラグが発生してしまう。動かない桜と接近する竜牙兵の距離は段々と短くなっていく。

やがて矢を弓の弦へかけようとした時、背後から接近していた怪人型の竜牙兵に弓を持った左腕を掴まれてしまう。

 

「っ!?」

 

振り切ろうと左腕を必死に動かすが、がっちりと掴まれピクリとも動かない。竜牙兵は残る手に持った剣を桜の切り裂くため振り上げたが、それよりも早く桜が動いた。

 

右手に持った矢を手放し、腰まで引いた直後、竜牙兵の頭部目掛け掌底を放ったのだ。桜の手が竜牙兵の頭部に触れた直後、竜牙兵の頭部は燃え上がった。その光景に接近していた竜牙兵も動きを止めてしまう。自分の腕を掴む力が緩んだと踏んだ桜は強引に左手を引き、再度右手を引き、とどめを差すべく頭部を失った竜牙兵の胴体部分へと握り拳を突き出した。桜の拳に押され、後ずさると同時に竜牙兵は燃え上がり、灰となって消滅した。

 

桜は自分の放った炎により焦げてしまったライダースジャケットを脱ぎ捨てる。Tシャツ姿となった桜の両腕に装着されていたのは、肘まで覆われている赤い手甲だった。下生地には火蜥蜴の皮を用い、魔力を火種に炎を発生させ、さらに高温、指向性の炎として放出する術式が掘られた特殊な鉄板を被せることによって造られた桜専用の武具である。

 

これは、魔術師としての力が弱まった間桐家の者が発案した技術であり、設計のみされていたものを慎二が発見。桜が使用できるようにアレンジを加えて、ある日家を訪ねてきた建築設計士と名乗る通りすがりの魔術師から購入した素材を元に作り上げた者だった(曰く、設計士は蔵硯の顔を見に立ち寄ったらしかった)

 

結んだ黒髪を揺らして、桜は再び矢を番えた。

 

「その位置で爆発するか、近づいて消し炭になるか、選んでください…!」

 

 

 

 

キャスターの攻撃を回避しながら桜達の様子を見ていたライダーは無事でいることに安心しつつ、早く決着をつける為に切り札を手に握った。

 

(怪我をしている慎二に何時痛みがぶり帰して集中力が乱れるか分からない。桜も気を張っていますがあのまま魔力を酷使すればいずれ倒れてしまう)

 

ならば竜牙兵の元締めであるキャスターを一刻も倒さなければならない。ライダーは一度ペガサスの頭を優しく撫でると、詫びるように愛馬へ呼びかけた。

 

「ごめんなさい。優しく、大人しい貴方に辛い目に合わせてしまうことに…でも、お願いします。私達に、力を貸してください」

 

ライダーの言ったことを理解したかのように、翼を持った白馬は高い鳴き声を発した。

 

「…ありがとう」

 

自らの子とへと謝礼したライダーは手に出現させた手綱をペガサスへ装着させる。これにより、ペガサスは限界以上の力を発揮できるようになった。

 

「なるほど。それが貴女の切り札ということね」

「はい。次の攻撃で勝負を付けさせてもらいます」

 

手綱を強く握ったライダーはキャスターへと宣言する。これで決着が着くと…

 

「…貴方とは、こんな形で出会っていたなら一度話して見たかったけど」

 

動く右腕で掴んだ杖を横に振るう。キャスターの前で幾層もの防御壁が重なっていく。完全防御の姿勢であった。ライダーの攻撃方法を見抜いているようだ。

 

「同感です。私の共通点は、女性のサーヴァントだけではなかったようですかならね…」

 

キャスターの言葉に同意したライダーは、目下で気を失っている敵のマスターと、敵の盾を手刀で弾き飛ばしている自分のマスターを見た。

 

「…行きますッ!!」

 

手綱を強く振るい、ペガサスを急上昇させたライダーは愛馬をさらに加速させる。やがてその姿は天馬から一つの流星へと変わっていく。

 

 

「騎英の――――」

 

旋回した流星は、幾層の防御壁を張ったキャスター目掛け駆けていく。

 

「――――手綱ッ!!!」

 

 

解放されたライダーの宝具『騎英の手綱』。流星から閃光と化したライダーの突撃は、キャスターの張った防御壁を次々と破壊していく。ガラスが砕けるような音と共に消滅していくが、防御壁を一枚、また一枚と破っていく度にその突撃のスピードは弱まっていった。キャスターまでの距離が近づく度に、さらに防御壁が強くなっているようだ。

すぐに突破できるとはいえ、強引にキャスターによって張られた防御壁を破るのは本来なら容易ではない。そしてその防御壁を破る事に集中していたライダーは、自分達の背後に魔法陣が新たに出現したことに、一瞬とはいえ気が付くのが遅れてしまった。

 

「あの坊やの言う事を真似るのは癪だけど…私も手段を選んでいられないのよ!!」

 

数十を超える魔法陣から放たれた無数の魔力弾。集中砲火を受けた流星は一瞬にして燃え尽きてしまった。

 

 

 

 

「お、終わった…」

 

 

魔法陣を解き,着地したキャスターは出血を続ける肩を押さえながら、眠っているマスターへと目を向ける。まだ魔力には余力が残っているが、戦える力は残っていない。先程の防御壁とライダーへの攻撃でほぼ使い切ってしまった。

 

(まだよ。総一郎様を安全な場所へ運ぶまでは…)

 

総一郎の元へ向かおうとするキャスターは、自分の方へと近づくエンジン音の方へと目を向け、驚愕する。

 

 

ペガサスと共に消滅したと思っていたライダーのサーヴァントが、赤と白のオンロードバイク『ロードセクター』を駆り、キャスターを目指して疾走していたのだ。

 

キャスターの攻撃が当たるあの一瞬、ペガサスがライダーを振るい落とし、主の命を救っていた。そしてペガサスが消滅していく光景を目にしながらも、ライダーは落下地点へ駆け付けたロードセクターに搭乗し、着地したキャスターへと迫っていたのだった。

 

 

「…本来の主ではなく、申し訳ありませんが、貴方にも無茶をお願いします」

 

グリップを握るライダーに応じるように、正面の液晶画面に文字が表示された。

 

 

『No Problem』

 

 

ロードセクターからのメッセージを見て頷いたライダーは、グリップに先程ペガサスに装着させた同じものを巻き付ける。

 

その効果により、ロードセクターはスペック以上の力を発揮。しかし、限界が決まっているマシンであるロードセクターがそれを突破できるのは精々数秒程度。それ以上の時間を超えればエンジンは勿論、ロードセクター自身も

大破してしまう。

 

それでもロードセクターはライダーに答えを出した。

 

主と自分の家族を、守るために。

 

「くっ…」

 

急ぎ防御壁を展開し、接近するロードセクタ―へ魔力を集中砲火するキャスター。所詮はなんの魔術礼装もされていない機械の馬。一発でも当たればその場で破壊できる。キャスターの予想は正しい。だが、それは当たればの

話である。

 

ランクA+の宝具によって最高時速をさらに突破したロードセクターのスピードは、最早誰にも止められなかった。

 

「アタックシールド、展開」

 

時速800kmを超え、ライダーの言葉と共にマシン上部に展開されるアタックシールド。マシン前部にイオンシールドが張られ、その色は搭乗者と宝具による効果なのか、紫色に輝き始めた。

 

やがて最高速度の時速960kmを超え、時速1,000㎞。そして時速1,200㎞へと加速する。

 

地上を走る巨大な弾丸を超え、地上を走る流星となったロードセクターとライダーはキャスターへと突撃する。

 

 

「スパークリング…メテオッ!!」

 

 

キャスターの魔力弾を全て薙ぎ払い、幾層もの魔法陣を破っていく体当たりにキャスターを意を決して杖を前方へと向ける。こうなれば最後の防御壁へたどり着いたと同時にゼロ距離での魔力弾。余波にどれ程の被害が自分に及ぶが分からないが、これしか手段はない。

 

「ありったけの魔力…受け取りなさい!」

 

そして最後の防御壁が破られた瞬間、流星と魔力がぶつかり合った――――

 

 

 

「ライダーさん…」

「おい…洒落になんないぞあの威力」

 

大半の竜牙兵を沈黙させた慎二と桜は合流し、ライダーとキャスターによって起こされた大爆発によって起きた多量の煙を見上げる。あれでは最悪、両者とも消滅している可能性があるが、煙から一つの大きな影がエンジンを唸らせ、慎二達へと近づいて行った。

 

カウルやフロントガラスに亀裂が走っている状態だが、搭乗者のライダー含めて無事に帰還を果たした。かけよる慎二と桜の姿を見て、安堵するライダーは背後を振り返った。

 

煙が晴れ、大きなクレーターの中心ではキャスターが横たわっている。最後に魔力弾を放つだけでなく、余波を受けない為に身体周辺に防御壁を張っていた恩恵なのだろう。顔を覆っていたローブが吹き飛んだだけで済んでおり、長い髪と共に露わになった美しい顔を見ると定期的に呼吸をしている。どうやら、あちらも無事だったらしい。

 

「お互いしぶとく生き残るなんて、本当に共通点が多いですね…」

 

 

 

 

「トァッ!!」

「ヌゥッ!?」

 

光太郎の手刀が毒の剣を真っ二つにへし折った。ビルテクターは手元になく、唯一の武器も破壊されてしまったビルゲニアは忌々しそうに声を上げる。しかし、光太郎も身体の所々に毒の刃を受け、思うように動かない状態だ。毒による耐性があっても、ビルゲニアによる斬撃が深く身体へと刻まれてすぐには回復が出来ない状態であった。

 

「…どうやら、次が互いに最後の一撃となりそうだなぁ…」

「その、ようだな」

 

元より毒を受け続けた状態から戦い始めた光太郎は、身体のあちこちに負担がかかっての戦いだ。仮面ライダーへ変身出来たことさえ自分を称えたくなる程であり、可能ならば回復に専念したいところである。

しかし、目の前にいる敵を倒さねば、それは叶わない。光太郎は勝負に出た。

 

両腕を広げ、ベルト『エナジーリアクター』の上で両拳を重ねる。その行動に呼応して、ベルトの中心から赤い光が放たれる。

 

「行くぞ、仮面ライダーブラックよッ!!」

 

残った毒刃を抜き取り、柄のみとなった剣に力を注ぎこむビルゲニア。ビルゲニアの魔力が宿り、漆黒の刃が形成されていく。これが、ビルゲニアの最後の技。自らの命を刃とする

 

『ダークネスセイバー』だ

 

「ビルゲニアッ!最後の勝負だッ!!」

 

光太郎は空高く跳躍する。

 

「ライダーッ―――」

 

エネルギーを纏った右足を――

 

「―――キィックッ!!」

 

ビルゲニアに向けて突き出した。

 

 

「ヌオオォォオォォッォォォッォォッ!!」

 

ビルゲニアもダークネスセイバーを向かってくる光太郎に向けて、その切っ先から黒い雷を放射する。

 

均衡する赤と黒。

 

力は中間で燻り、一進一退の膠着状態となるが、次第に黒い雷が光太郎を押しのけていく。

 

「俺は、俺はッ!!創世王となる男だあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁッ!!」

 

より威力が上がった黒い雷が、光太郎を上空へと突き飛ばした。

 

「か、勝ったッ!?俺は仮面ライダーに…」

 

光太郎に押し勝った事にビルゲニアは、次に光太郎が起こした動きに、対応が遅れてしまった。それが、ビルゲニアの命運を決める結果となってしまった。

 

浮遊する光太郎は落下しながらも両腕を左右に展開。再びベルトの上で両拳を重ねて、眼下にいるビルゲニアへと、大いなる石の光を放った。

 

 

「キングストーンフラッシュッ!!!」

 

「オアアアアアアァァァァァァァァッ!?」

 

今までキングストーンの力を防御や攻撃補助に使用していた光太郎。この時、ビルゲニアに向けてその力を完全な『攻撃型』として放ったのだ。

 

放たれた閃光を浴びたビルゲニアに衝撃が降りかかり、元よりひび割れていた鎧にさらなる亀裂が入り、手に持ったダークネスセイバーも黒い刀身を失ってしまった。

 

光太郎はこの好機を逃さず、再びビルゲニアへ必殺の蹴りを繰り出した。

 

 

 

「ライダーァッ!!キィック!!!」

 

エネルギーを纏った光太郎の右足がビルゲニアの胸板へと叩き付けられた。

 

 

「ぐ、オオォォォォォォォォォォォォォッ!?」

 

ライダーキックを受けたビルゲニアは吹き飛び、2転、3転と地面を回っていった。やがてその動きが止まるが、再び起き上がる気配はない。ゆっくりと、油断なく仰向けとなったビルゲニアへ近付く光太郎だが、ビルゲニアの様子がおかしい事に気付く。

ビルゲニアの体が段々と薄れて、今にも消えそうとなっていたのだ。

 

「ビルゲニアッ!?これは一体…」

「フッ…元より消えているはずだった命が今消えようとしているだけだ。不思議なことではあるまい」

「消えるはずだった…?どういうことなんだ?」

「…俺はセイバーの剣を受け、あのまま死ぬはずだった。そこにあの女が現れ、俺の命を繋ぎとめた」

「キャスターが…?」

 

ビルゲニアの放った言葉に衝撃を受けたのは、光太郎の後に続いて近づいてきたライダー達だった。傀儡として利用していたのならまだ納得していたが、まさか助けいたとは思えなかったからだ。

 

「…俺は精神が壊れながらも貴様を打倒し、創世王となる野望を捨てきれなかった。身体がどのようになってもな…その消えゆく俺に女は竜牙兵と同じく仮初の命を与えた。だが竜牙兵の因子が混じり、精神には異常がきたしていたようだがな。

それは俺を同情したのか、命尽きる前に利用したのかは知らん。だが、結果としては…」

 

血を流す口を歪めながら、ビルゲニアはゆっくりと首を光太郎へと向けた。

 

「貴様との決着は、着いた」

「ビルゲニア…」

「だが、忘れるな。決着が着いたのは、今回の戦いだ。俺は生まれ変わり、必ず創生王となって見せる!それまで…」

 

「それまで…貴様が負ける事など許さんぞ…」

 

 

ゴルゴムの剣聖ビルゲニア。

 

創世王となるべく野望を抱いた男は、光太郎へ遥か未来での再戦を望み、消滅した。

 

 

「…悪いが、お前と戦うことはない。ゴルゴムは、この時代で倒して見せるからな…」

 

 

消え去ったビルゲニアに謝罪しながらも、光太郎は打倒ゴルゴムを新たにする。そう、こうしてゴルゴムに踊らされる戦いは、自分達で最後であると…

 

 

 

「おい…キャスターはどこいったんだ?」

 

慎二の言葉にハッとした一同は急ぎ先程のクレーターを見る。慎二の言う通り、キャスターの姿が消えていた。

 

油断した。

 

クレーターに近づき、周辺を見渡すとそれ程距離が離れていたい場所に、キャスターはいた。動かない身体を無理矢理に動かし、地面を這い、泥だらけとなりながらもある場所を目指していた。

 

「そう…いちろう、さま…総一郎、様…」

 

自分達に見せていた挑発的な態度も、怒りもない。ただ自分のマスターの元へ向かおうと、必死に這いずって移動していた。

 

 

「コウタロウ…」

「ああ。後は、任せてくれ」

 

ライダーが頷いた事を確認し、光太郎はキャスターへとゆっくり近づく。

 

 

「ああ…御無事…でしたか」

 

マスターへの元へと辿りついたキャスターは、血だらけとなった手で、総一郎の頬に触れる。彼は生きている。それだけで、キャスターには十分だった。これで、自分は消えても思い残すことは、ないと。

 

そして自分の覆う影の主を見上げる。月明かりを背に見せた姿は、無慈悲の死神にも見えた。視線を合わせるためか、膝を付いた光太郎はキャスターへと手を伸ばす。

 

観念したキャスターは、未だ眠っているマスターの手を握り、目を瞑った。

 

 

 

「キャスター…」

 

 

 

「俺達と手を組まないか?」

 

 




はい、色々と詰め込み過ぎてやり過ぎた41話でした!

ライダーはバトルホッパー乗ったのだから次はロードセクターだろうという単純な思考から乗ってもらいました。
桜に関しては前々から武術の手ほどきを光太郎から習っていたということで…
そして最後は、こうする伏線(のつもり)が何か所かあったりします。ライダーに正気かと言われたり、慎二と話し合ったりと色々と…

言い訳が長くなってしまいましたが、ご意見、ご感想お待ちしております!

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