Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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今更ながら、仮面ライダーBLACKのBlu-RayBoxが発売とは…ぐぬぬ

原作ブラックだとあの衝撃的展開でありました47話でございます!


第47話『終わりの始まり』

間桐家を飛び出したセイバーは、無我夢中で移動しているうちに深山商店街の近くにある公園へたどり着き、ベンチへと腰かけていた。

 

空を見上げ、今にも雪を降らそうとする雲を見つめながら桜に言われたことを思い出すセイバーは、白くなった息をゆっくりと吐き出した。

 

(確かに、この時代から見れば私のいた時代は過去だ…しかし…)

 

桜の言ったことは充分にセイバーへ伝わっていた。彼女が救おうとしていたのは、遥か昔の自分の治めていた国。今ある歴史を捻じ曲げるということにしかならないことも、セイバーはわかっていた。

 

(しかしサクラ…私の国が滅びたのは…この時代へと召喚される直前だったんです)

 

それはセイバーが他のサーヴァントと大きく異なる点だった。

 

 

聖杯戦争のサーヴァントとして2度も召喚されたセイバーだが、まだ死んでいないのだ。セイバーが自分の国が焼き堕ちていく光景を目にしていた時、『世界』と契約を結んだのだ。聖杯戦争を勝ち抜き、願いが成就された後に、死を向かえて正真正銘の英霊となると…

 

(私の願いは…叶わない。ビルゲニアの言った通りだ)

 

 

 

 

『この地に現れる聖杯には貴様の願いは叶えられん…絶対にな』

 

 

 

 

セイバーの持つ剣を狙っていたビルゲニアが彼女と決闘をする直前に聞かせた言葉。あの時点でビルゲニアは聖杯の正体に気付いていたかもしれない。だが、それをどうやって…?

思い出したと同時に疑問を抱いた時、彼女から擦り切れるような、どこか情けない音が腹部より響いた。

 

「ッ…………!」

 

急ぎ両手で腹部を覆い、周囲に誰か聞かれていないかと目を左右に向ける。幸いにも彼女の視界には他の人間は映っていない。安心して息をつくセイバーの背後に気配を一切絶った存在が現れる。

 

しかしセイバーが優れているのは直感だけではない。

 

数多くの戦いの中で直感に当たる第六感以外の五感も研ぎ澄まされいる。

 

その目で僅かな動作で敵の動きを見切り、

 

肌を撫でる微かな空気の動きで状況を判断する。

 

そして整った彼女の鼻孔は微かな匂いを嗅ぎ分けることが出来る。それが、最近マスターが購入して以降、お気に入りとなったものであれば目にせずとも、見た目では分からない中身も断定出来るほどに。

 

自分の背後に現れた匂い…もはや香りとも言ってもよいその正体を、セイバーは目を輝かせて振り返りながら叫んだ。

 

「これは…江戸前屋の大判焼きッ!!しかも期間限定の白あんですね!!!」

「正解です。驚き以上に、呆れたものですね。私の気配を察知せず、食物だけを嗅ぎつけるとは」

「………………………………」

 

出来立てで湯気の上がる大判焼きを手にしたライダーがセイバーに向ける視線はどこまでも冷たかった。

 

 

 

 

「状況が状況です。1人で考えたいところを申し訳ありませんが、隣に座らせて貰います」

「…………………………はい」

 

隣に座るライダーに小さく返事をしたセイバーは、彼女から受け取った大判焼きに噛り付いていた。本来ならば笑顔で頬張りたいところだが、先ほどの自分を見たライダーの目を思い出し、余所余所しく

少しずつ、大判焼きの面積を減らしていった。

 

(…落ち込んでいても、食欲には影響はないようですね)

 

ライダーは離れた場所から様子を見ていたかったが、気配を絶って接近しても気付く様子もなかった。もし、自分や真のアサシンと同じように気配を消せるゴルゴムの怪人が現れていたのならば…それを考えたら隣にいた方がまだ安心できる。そう判断したライダーは店頭販売していた大判焼きを購入し、セイバーへと近づいたのだった。

 

(…気付けないほど、響いたということでしょうか?)

 

光太郎が説明した聖杯の正体、そして桜が伝えた言葉…セイバーには悪い意味での衝撃が立て続けに起きてしまった。そして彼女が他のサーヴァントと違いもライダーは理解している。だからこそ聖杯を得る為に、彼女は死後の全てを英霊という座に捧げてしまう。そうまでして手にしたかった力が、滅びしか与えないと知った彼女の絶望は、計り知れない。

 

「…ライダーは」

 

逆に声をかけられたライダーは俯いているセイバーに急いで視線を戻す。既に大判焼きは姿を消していたが、そんなことは些細な事だろう。

 

「ライダーは、既に聖杯の正体を知っていたのですか?」

「…ええ。使ってはならないものという説明は召喚されてから直ぐに。しかし、正体を知ったのは最近です」

 

それも、マスターの記憶の中で聖杯戦争の発端となった人物から直々に聞いていた。淡々と述べるライダーにセイバーは続けて尋ねる。ライダーには予想のついていた質問だった。

 

「…ライダーは、何を望むつもりだったのですか?」

「私には、元より聖杯に託す願いはありません。この聖杯戦争に召喚されたのも、呼び出しに応じた。それだけでしたから」

「ではなぜ、戦えるのですか?聖杯という目的がなく、願望機が存在しないと知った上でも、なぜ…」

「………………」

 

セイバーにしては珍しい、食いつくような問いかけであった。

最初は、ただ聖杯戦争のルールに従うだけだった。マスターの命令通り、他のマスターとサーヴァントを倒して、聖杯を手に入れる。それだけでよかったはずなのに、今ではまるで違う理由で戦っている自分がいた。

 

「…最初はただ、見ているだけでした」

「見ている、だけ?」

 

要領を得ない言葉にセイバーは首を傾げる。

 

「サーヴァント扱いなどせず、家族に紹介された時には流石に動揺しました。それに聖杯戦争があるというのに、他の戦いを優先し、無事を祈っている家族に配慮しない、最低な人とすら思ったことも

あります」

 

それに嫉妬もあった。人でない力と容姿を持っても、家族として迎えてくれている義弟と義妹に懐かれている姿に。そんな恵まれた環境にいながら、2人を心配させるような戦いをすることに。

 

「ですが、共に過ごして、並んで戦っているうちに、自分でも分からないうちに充実している事に気が付きました。先程セイバーには、先程聖杯に託す願いはない、と言いましたが、訂正しましょう」

「訂正…?」

「私は、召喚され、最初こそ願いはありませんでしが、逆に召喚された事によって、願いが生まれてしまいました。決して、聖杯に願ってはいけない、望んではいけない願いを」

「そ、それは…」

「もう、勘付いているかもしれませんね。私は――――」

 

セイバーは自分と同じように空を見上げるライダーの横顔を見た。優しく、どこか儚げな目をしながらも、女性であるセイバーですら思わ見惚れてしまいそうな、美しい微笑みをライダーは浮かべた。

 

 

「―――私は、サーヴァントとして、マスターに抱いてはいけない感情を、持ってしまった」

 

 

もう、これ以上聞くまでもない。ライダーが光太郎と共に戦うのは、そういうことなのだろう。

 

「…ライダー、私は…」

「無理に回答を出すことはありません。今をどうするかは貴女自身が考えて、決める事ですからね」

「しかし―――」

 

 

 

 

2人の会話は、遠方から聞こえた爆発と振動により中断する。思わず震源と思える方へと目を向けると、絶えることなく煙が上がっていた。その直後、ライダーの所持していた携帯電話に間桐慎二から連絡が入った。彼との通話でその原因を知ったライダーとセイバーは急ぎ、新都へ向けて飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ胸騒ぎを、10年前に起こしたことがあった。

 

あの時は気のせいだと思い込み、自分のベットに潜り込んで朝を迎えていた。

 

その翌日。悪い予感は、悪い現実を引き起こすように、最悪なニュースが彼の目に届いていた。

 

冬木の新都を襲った大火災。

 

多くの建造物と人々が火に包まれ、報道される死者、行方不明者の数は延々と増加していった。

 

冬木に今なお深い爪痕を残す事件は、数多くの人々の心に深い傷を負わせている。

 

 

その時と全く同じ胸騒ぎを、間桐光太郎は感じていた。

 

そして理解する。

 

これは、自分の中にある『キングストーン』が起こした『警鐘』であると。

 

10年前は聖杯が破壊されたことによって溢れてしまったモノに対し、持ち主に危害が及ばないように知らせたのだろう。

 

 

そして今。

 

 

同じ感覚を受けた光太郎は迷うことなく、家を飛び出した。バイクを駆り、法定速度など無視して目的の場所へと疾走する。もう、場所は分かっている。

 

 

 

 

 

 

「これは…」

 

バイクを降り、ヘルメットをハンドルに掛けた光太郎が目にしたのは、廃墟と化している新都の中心街だった。

 

その光景は、10年前の災害を彷彿させている。唯一の違いは、周囲を火で包んでいないだけだ。立ち尽くす光太郎の目に、突然の事態に悲鳴を上げ、逃げまとう人々の姿が映っていた。

 

「くっ…!!」

 

拳を握りしめる光太郎は、駆け付けたレスキュー隊が必死に瓦礫の撤去を試みている姿に気付く。女性が大きなビルの柱に身体が挟まれ、身動きが取れない状態となっているようだ。

レスキュー隊員に抱かれている小さい子供は、瓦礫の下敷きになっている女性の子供のようで、母親に駆け寄ろうと必死に手足を動かしている。

 

ジャッキによって瓦礫が少しずつ持ち上がり、女性を移動させいようとしたそんな時、

 

「あ、危ないッ!?」

 

避難中の男性が大声でレスキュー隊員と女性の頭上を指さした。倒壊したビルの柱が崩れ、レスキュー隊員達に向かって落下している。レスキュー隊員が気が付いた時には既に遅く、柱は目の前に迫っていた。

 

もう駄目ならばこの人達だけでもと、女性と子供を庇うように覆いかぶさるが、何時までたっても柱が落下する様子はない。

 

隊員が恐る恐る目を開くと、1人の青年が落下した柱を両腕で受け止めていたのだ。

 

「き、君は…」

「そんなことより、はや、く…その人たちをッ!!」

 

青年の言葉にハッとした隊員は、他の隊員達と目を合わせる。お互いに頷くと急ぎ女性を救出作業を再開した。瓦礫を除去し、女性を移動させたことを確認した青年は柱を誰もいない路面へと放り投げた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 

柱を受け止めていた青年…光太郎は無事である母親に抱き着いている子供を見て安吐するが、次々と突き刺さる視線を感じた。先程声を上げた避難中の人々が奇異な目で光太郎を見つめている。

 

中には『化け物…』と、思わず呟いている人もいる。

 

(当然…だよな)

 

 

落下する柱を受け止めるだけでなく、放り投げるなんて人間業ではない。これ以上注目されないうちに、去ろうとする光太郎の耳に、親子の声が響いた。

 

 

 

 

 

「ありがとう、お兄ちゃん!!」

「本当に、助かりました!」

 

 

思わず目を見開いた光太郎はゆっくりと振り向く。レスキュー隊員に支えられながら立ち上がった母親としがみ付いている子供が満面の笑みで光太郎に感謝を述べている。

 

 

「お、俺は…」

 

直ぐに言葉が浮かばない光太郎に、続いて初老のレスキュー隊員が声をかけてきた。

 

「君、俺達も御礼を言いたいところだが、まだ救助を待っている人たちがまだまだいる。手伝ってくれないか?」

「た、隊長ッ!?いいんですかッ!?」

 

若手の隊員が思わず意見するが、救急用の装備をまとめ、移動する準備を進めている別の隊員が割って入る。

 

「この状況だ。『ちょっと力持ち』の一般人に協力を仰いだって文句ないだろう?」

 

『ちょっと力持ち』を強調した隊員は周囲で足を止めている人々の反応を見るかのように見渡しながら立ち上がり、光太郎の肩を叩いた。

 

「…正直、さっきのは驚いたけど、君は自分を顧みずあの親子だけでなく俺達も助けてくれた。…図々しいかもしれないけど、力を貸してくれると助かる」

 

真っ直ぐ光太郎を見る隊員の目は、何の疑いも、恐怖もない、信頼しての眼差しだった。

 

光太郎は迷うことなく、頷いた。

 

 

 

 

光太郎はレスキュー隊員と協力し、崩れた建物に閉じ込められ、身動きのとれなくなった人々の救助に当たっていた。最初こそ光太郎の怪力に恐れの目を向けていたが、一心不乱に人々を助ける為に動き続ける姿を見て、周囲に変化が起き始めた。

 

ビルの扉を塞いでいる瓦礫の除去を、避難していた人々が協力し始めたのだ。

 

先頭を切って瓦礫をどかしているのは、光太郎を見て化け物と口にしてしまった男性だ。さっきはすまないと言いながら必死に瓦礫を運ぶ姿に茫然とする光太郎だったが、隊員に叱咤され、急いで作業を再開した。

 

 

その作業の中で、光太郎はレスキュー隊員の無線に耳を向ける。どうやら、光太郎が手伝っている別現場でも、一般人数名が救助を手伝っているらしい。その特徴を聞くと、どうやら慎二達が駆け付けて、進んで行っているようだった。

 

 

光太郎の顔に、自然と笑みが浮かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救助がある程度の目処が付き、光太郎はレスキュー隊員たちと別れると、廃墟と化した新都の中央へと進んでいく。救助中に周囲に目を配っていた光太郎は、この災害は明らかに自然に起きたことではないと確信していた。

 

不自然に溶けている壁。

 

路面に残っていた妙な液体や爪痕。

 

 

そしてこれが、誰の手によって起こされたことも。

 

 

 

 

 

光太郎は半壊したビルの前で、ピタリと足を止める。もう周囲に人間は誰一人いない。そう…人間は。

 

 

 

 

 

 

 

「フッフッフ…現れたな間桐光太郎!」

 

 

 

 

自分の名を呼ぶ異形へとゆっくり身体を向ける。そこに立っていたのは、かつてゴルゴムの大神官と呼ばれた者たちだった。

 

「お前達は…ッ!まさか、ゴルゴムの大神官ッ!?」

「聞くがいい間桐光太郎ッ!我らは大怪人として生まれ変わったのだッ!」

「何ッ!?」

 

白い三葉虫のような大怪人ダロムの言葉に光太郎は思わず身構える。大怪人という名に相応しいように、その身体から他の怪人とは比べものにならない力をヒシヒシと感じられた。

ダロムに続き、サーベルタイガーの大怪人バラオム、翼竜の大怪人ビシュムが光太郎にゴルゴムの目的を宣言した。

 

「そして我らゴルゴムは、世界への侵略を開始するッ!!」

「手始めとして、この冬木に現れる聖杯を使って人類を皆殺しにするの。もはやお前や僕である英霊にもどうするこも出来ないわ!!」

「……ッ!?」

 

 

 

 

ビシュムの言葉で光太郎は確信する。ゴルゴムはライダー達サーヴァントを狙わずとも聖杯を起動させる手段を見つけている。それは、合流して遠目から光太郎と3大怪人の様子を見ていた慎二達やセイバー、ライダーにも同様の衝撃を受けるのだった。

 

「そんな…だって、聖杯には英霊の魂が必要なんだろ!?」

「ええ。最低でも5人分のね。でも、今はアーチャー1人分しかないはずよ。なら…」

 

狼狽える士郎に凛は答えた。もう、間違いない。ゴルゴムは知っているのだ。聖杯を起動させるための『裏技』を。

 

既に勝利を確信しているダロムは光太郎に慈悲を与えてるように告げ始めた。

 

「だが、貴様が持つキングストーンを捧げるというのならば命だけは――――」

 

 

 

 

 

「黙れッ!!!」

 

 

 

 

光太郎の叫びに、大気が震えた。

 

 

光太郎の発する気迫に3大怪人も、状況を見守っていた凛達も思わず一瞬震えあがってしまった。

 

 

 

「…そんなことは絶対にさせない!!例えこの身が砕け散っても、貴様たちの野望は阻止して見せるッ!!」

 

 

「コウタロウ…」

 

 

その言葉は、ライダーに取っては辛い言葉であった。

 

光太郎の決意は、常に誰かの為だった。それはつまり、自分自身の幸福は望まないことに等しい。この先、聖杯戦争が終わり、自分が光太郎の前から消えたとしても、その信念は揺らがない。

 

「ライダー…」

 

隣に立つセイバーがライダーを心配そうに見つめる。公園でライダーが光太郎に抱いている感情を聞いたセイバーの心情を察したのか、ライダーは首を横に振った。

 

「大丈夫ですセイバー」

 

そして、自分のマスターを真っ直ぐ見つめる。

 

 

 

 

「小癪なッ!!」

 

ビシュムは光太郎に向け、目から怪光線を発射。光太郎は真横に転がりこれを回避するが、態勢を整える隙を与えないようにダロムが廃棄されたトラックを押し、突進してきた。

 

「クッ!?」

 

背後にはビルの外壁があり、このままでは押し潰されると判断した光太郎は咄嗟に飛び上がる。トラックの車上に転がり、なんとか圧死は免れたが、続いてバラオムが光太郎へ飛びかかってきた。

 

「ヌオォォォォッ!」

「グハァッ!!」

 

バラオムは光太郎に飛びかかり、首を締め付け始める。抵抗して腕を振り払おうとする光太郎だが、バラオムは首を絞めたまま光太郎を持ち上げると巨大な広告看板に向け、勢いをつけて光太郎を思い切り

投げつけた。

 

「ウワァッ!?」

 

敵の怪力により投げられた光太郎は看板を突き抜け、受け身の取れないまま瓦礫の中へと叩き付けられてしまった。

 

 

 

 

『例え傷だらけになり、先ほど言った通り命を賭して戦ったとしても』

 

 

 

 

瓦礫を吹き飛ばし、自力で立ち上がった光太郎は右腕を前方に突出し、左手を腰に添えた構えから右半身に重心をおき、両腕を大きく右側へ振るうと右頬の前で力強く握りしめる。

 

 

 

 

 

『間桐光太郎は、決して死のうとはしません』

 

 

 

 

ギリギリと軋む音が響くほど込めた力を解放するように右腕を左下に向けて空を切り素早く右腰に添え、入替えるように伸ばした左腕を右上へと突き出した。

 

 

 

 

『コウタロウが目指すものにたどり着く、その日まで』

 

 

 

 

「変ッ―――」

 

 

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように右から左へと旋回し―――

 

 

 

 

 

『険しいと解っていながらも、自分の決めた道を突き進む。そんなコウタロウを私は―――』

 

 

 

 

「―――身ッ!!!」

 

 

両腕を右上へと突き出した。

 

 

 

光太郎の腹部にキングストーンを宿した銀色のベルト『エナジーリアクター』が出現し、光太郎を眩い光で包んでいく。

 

その閃光は光太郎の遺伝子を組み換え、バッタ怪人へと姿を変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

エナジーリアクターから流れ続ける光はバッタ怪人を強化皮膚『リプラスフォース』で包み込み、黒い戦士へと姿を変えた。

 

 

左胸に走るエンブレム。触覚を思わせる一対のアンテナ。真紅の複眼。そして黒いボディ――

 

 

 

変身を終えた光太郎は腕を交差し、大きく両腕を広げると勢いを付けて跳躍する。

 

 

「トァッ!!」

 

 

空中で前転し、着地した場所は崩れたビルの屋上。

 

光太郎の身体の関節からは変身時に使用されたキングストーンの余剰エネルギーが蒸気として身体の関節からユラユラと立ち昇っていた。

 

 

「おのれぃッ…!!」

 

ダロムは怨嗟の声と共に光太郎を睨んだ。自分達の支配者の候補である世紀王となりながらその力でゴルゴムに反旗を翻した裏切者は、世紀王ブラックサンではない、敵対した際の

忌々しい名を轟かせた。

 

 

 

「仮面ライダーッ!!ブラァックッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんなコウタロウを、私は愛してしまった』

 




半端にされていたライダーから光太郎への思いをはっきりさせました。ライダー姐さんって、ほんといい女だと思うんですよ。


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