ハーメルンで執筆を始めて早1年がたちました。ここまでお付き合いしていただき、本当にありがとうございます!
これからもお付き合い頂ければ幸いでございます。
では、52話をどうぞ!
「…俺は負けない!約束を守る為に、そして信彦!!お前を助ける為にッ!!」
仮面ライダーブラック…間桐光太郎とシャドームーン。
ついに2人の世紀王による戦いの火蓋が切って落とされた。
「戯言をッ!!貴様を倒し、私は創世王となるッ!!!」
「信彦…ッ!!勝負だッ!!」
同時に駆け出し、飛び上がった両者の拳が空中でぶつかり合う。その衝撃は、2人が戦う寸前までいた秋月家が眠る丘から戦いを見守っている2人のサーヴァントまで届くほどであった。
「コウタロウ…」
「念のため、防御壁は張らせて貰うわよ。もし全力でぶつかり合ったなんてことがあったら、こちらが危ないわ」
「…ええ」
今ならまだ微風がライダーとキャスターの髪を微かに靡かせる程度にしか影響はない。だが、光太郎とシャドームーンの力はまだ力の半分も出し切っていない。この場に居続けるためには、自分達の身は自分達で守る他ないのだ。
一方、間桐家では間桐慎二と間桐桜がリビングに設置された水晶玉を食い入るように見つめている。それはキャスターがライダーと共に光太郎の後を追う前に置いて行った遠視に利用するアイテムであり、持ち主のキャスターが操作しなくても望む場所を映し出せる代物であった。
「兄さん…」
「………」
義兄と宿敵の決闘を見つめる桜に対し、慎二は水晶玉に映し出される戦いが気になりながらも、背後に立つアサシンのサーヴァントを忌まわしく睨んでいた。そんな彼の視線を受けながらも、アサシンは栁洞寺の門番として立っていた時と同じように陣羽織を纏い、2人の背後ですまし顔で立っている。
絶対に光太郎の後を追うと決めていた慎二と桜の行動を読んでいた光太郎はキャスターとアサシンに頼み、せめて自分の状況だけは分かる環境を用意。もし飛び出して光太郎の元へ向かいかねない事になれば、アサシンが強引に止める…
光太郎の立てた案に憤慨しながらも大人しくさぜる負えない事に慎二に出来る事は、不満を視線でアサシンへとぶつける事と、映像で義兄の死闘を見ていることしかなかった。
「トァッ!!」
「ハァッ!!」
空中で拳が衝突後、地面へ落下を続けながらも光太郎とシャドームーンの応酬は続いていた。
肘打ちと肘打ち。
回し蹴りと回し蹴り。
掌底と掌底。
互いの繰り出す攻撃がぶつかり合うたびに赤と緑の火花が散らばっていた。
光太郎は手足に走る赤と黄のラインから蓄積されたキングストーンの力を解放する『パワーストライプス』を使用しての攻撃だったが、シャドームーンの放った技と威力は全くの互角。さらにシャドームーンは光太郎の狙った場所を読んでいるのか、へ全く同じ攻撃を同じ軌道で放ち、これまで一度も互いに攻撃が当たっていない。
(このままじゃ、無駄に体力を消耗する…なら、あちらが読めない攻撃でッ!!)
埒が明かないと判断した光太郎は、地面までの距離が後5メートルを切った時、身体をのけぞらせ、シャドームーンの頭部目がけ、自分の額を叩きつける……頭突きを放とうとしていた。
そのような手段に出るとは思うまいと考えた光太郎だったが…
「!?ッ」
シャドームーンも同じく既に上体を後に逸らしており、光太郎の額目掛けて頭突きを放っていた。
地面の着地と同時に衝突する2人の頭部。轟音が周辺へと響く中い、頭突きによって頭の中身が揺さぶられ、一瞬光太郎の視界は揺らいでしまう。シャドームーンはその隙を逃さず、光太郎の頭部を鷲掴み、一本背負いをする要領で地面へと叩き付けた。
「ガぁッ!?」
光太郎の背中に激痛が走る。岩場にめり込み、抜けようにも見動きが取れなくなってしまった。あまりの痛みに声を上げる光太郎の目に映ったのは、再び飛び上がり、自分に向けて落下するシャドームーン。落下するのと合わせたエレボードロップを喰らわそうとするが、シャドームーンの場合はそんなものではすまされない。
彼の肘に装備されている鋭く黒い棘『エルボートリガー』によって串刺しにされてしまうからだ。
「こン…のぉッ!!」
強引に抜け出した拳を振り上げ、地面に勢いを付けて叩き込む。すると光太郎の真下で燻った衝撃のエネルギーが爆発。捲りあがり、吹き飛んだ石礫がシャドームーンに向けて飛散。シャドームーンの狙いを逸らすと同時に貼り付けの状態から解放された光太郎は横に転がり、身体に大穴を作ることを免れた。
「くっ…」
「機転が利くではないか。それでこそだ」
土煙が晴れ、シャドームーンの足元にある穴を見てゾッとする。あの場にもう数秒いたのならば…光太郎は頭を振り、今目の前にいる相手との戦いを考える事を優先させる。
(身体に蓄積していたキングストーンの力を振るっても互角…なら!)
光太郎は両手を左右に広げ、両拳をベルトの上で重ねる。エナジーリアクターから眩い光を放ち、光太郎の右手に宿っていく。
(キングストーンから直接取り込んだ力で…!)
バイタルチャージによって強化された拳を強く握りしめた光太郎をシャドームーンは怪しげに目を光らせた。
「ようやく出したか…」
「トァッ!!」
光太郎はその場から高く跳躍。佇むシャドームーンに向けて、エネルギーを纏った拳を放った。
「ライダーッ――――」
「―――パァンチッ!!」
叫びと共に放たれた光太郎必殺の技。これまで多くの敵をなぎ倒してきた姿を目にしてきた慎二と桜は、水晶玉の奥でシャドームーンの起こした起こした行動が信じられなかった。
「そ、そんな…」
「光太郎の、技を…」
ライダーパンチが当たる寸前にシャドームーンは光太郎の手首を掴み、当たることなく完全に防いでいた。段々と光を失っていく拳を動かそうにも、シャドームーンに掴まれた手首を振り払うことが出来ない。
「…ッ!?」
「お前のバイタルチャージによって全身をキングストーンの力で強化されるが、攻撃の際はその箇所は一点に絞られる。今回の場合は拳がそれだ」
「グッ…」
手首を掴まれたままの光太郎に、シャドームーンは冷たい声のまま言い放った。
これまで多くの戦いを重ねたブラックサン…コウタロウの戦闘記録を目にしたシャドームーンは、光太郎が放った技を全て研究。最小限の動きで封じることが可能となっていた。
「本気を出せブラックサン」
刹那、光太郎は上へと放り投げられる。
相手の怪力に驚きながらも再びバイタルチャージし、拳を手刀に変えて落下しながら眼下のシャドームーンへ向けて振り下ろそうとするが、光太郎の身体を緑色の放電に捕縛されてしまった。
先に動いていたシャドームーンが手から発射したシャドービームを鞭のように放ち、光太郎を縛り上げると崖の壁面へと向けて腕を振るう。
「ぐ…おぉぉぉぉぉぉッ!!」
壁面にぶつかる前にシャドービームを引き千切った光太郎は壁面を足場にしてつま先がめり込むほど強く踏み込み、再びシャドームーンに向けて弾丸のようなスピードで飛び込んでいく。
今度こそ技をぶつけようと相手に向かいながら両腕を広げる光太郎を見て、シャドームーンは構える。
(飽きずに再び技を使うか)
そして光太郎がエネルギーを纏った拳をシャドームーン目がけて放ち、先程と同じように防ごうと手を挙げた途端、光太郎の動きが変わった。
「むッ!?」
シャドームーンが手首を掴もうとした一瞬、光太郎はその場で突然落下中に身体を前転させる。パンチを防ごうとしたシャドームーンの手は空をきり、彼に迫ったのは前転をしたことでより威力を増した光太郎の踵落とし。
シャドームーンは直ぐに両腕を交差させ防御を取るが、落下する重力を乗せての攻撃に耐えられず、光太郎の踵は左肩へと圧し掛かった。
「ぬぉッ!?」
初めて決定的なダメージを与えることに成功した光太郎はこの隙を逃さない。
「トアァッ!!」
がら空きとなったシャドームーンの腹部へ光太郎は全体重を乗せた拳を放つ。渾身の一撃によりシャドームーンは踏み止まることができず吹き飛び、壁面へと激突した。
「はぁ、はぁ、はぁ…どうだ?」
ガラガラと壁面が崩れる音が聞こえ、土埃が舞う中、シャドームーンは何事もなかったかのように姿を現した。
「フフフ…今までの攻撃が通用しないとわかり、直前に別の技に切り替えるか…やはり、見守られているだけでも違うということか」
「……………」
光太郎は答えない。この戦いをライダーが見守っていることは既にシャドームーンは勘付いている。彼はライダーを人質にすることはありえないが、ゴルゴムという組織は別だ。何時、あの大怪人達が姿を現し、ライダーに手を出すかわからない。
その為に、光太郎自身から彼女が近くにいることを思わせることは口にできないでいた。
「…それと何の関係がある」
ゆっくりと自分に向かい歩んでくるシャドームーンを警戒し構える光太郎に、シャドームーンは同じ言葉を放った。
「もう一度言うぞブラックサン。本気を出せ」
「俺は全力で――」
「いつまで誤魔化しているつもりだ。自分と、その周りを」
シャドームーンの発言にコウタロウの動きが止まる。これには彼だけでなく戦況を見ていたライダーや慎二、桜までもが聞き耳を立てる。
「何を言っているんだ…俺は…」
「ならば言わせてもらおう。ブラックサン、お前は既にキングストーンの力を全力で振るうことが可能となっているはずだ。それを怪人一匹程度をやっとの思いで倒している『振り』をして、力を抑えている。大方、力を放出した結果、お前の周りに被害が及ぶと考えているのだろう」
「…………」
「要はお前の『思い込み』なのだ、ブラックサン。怪人共をようやく倒せる。『それが自分の精一杯だ』と貴様は自分を偽り、真の力を振るわないでいるに過ぎない」
それは映像記録を見て理解した事だった。光太郎はその性格と力を忌まわしく思っていることから、本来世紀王として持つ力を全力で出し切っていない。創世王の候補として改造され、さらにキングストーンという神秘なる石を体内に宿す者がたとえ人知を超えた存在である怪人やサーヴァントに、苦戦することすらありえないことなのだ。
そして、指摘された思い込み…これにより、光太郎は自分の力を自分で縛ることで、今以上の力を発揮できないようにしていた。
シャドームーンに告げられた真実に光太郎は反論する様子を見せない。ならば、それは事実と認めているということだろう。
「そんな…今までの戦いが本気ですらなかったというの…?」
「………………」
「ライダー…?貴女、知って…?」
ライダーはキャスターの質問に黙って頷いた。
「そうであろう?そうでなければお前と以前戦った時に、私に圧倒されたあの時が『全力』であったのなら、私に一矢報えるなど不可能のはずだ」
「……………」
光太郎はシャドームーンの推測した事に、ただ黙っていることしか出来ない。だが、次に出されたもう一つの推測に、沈黙を破りざるえなかった。
「そして、これは全力を出してしまった場合だ…キングストーンを通して繋がっているあのサーヴァント…」
「…やめろ」
「もし、ブラックサンが全力を出した時、キングストーンの力を変換された魔力が過剰供給され…」
「やめろ!!」
光太郎の制止に構わず、シャドームーンは結論を告げる。
「サーヴァントは自身を現界させる以上の魔力に耐えきれず、自己崩壊を起こす」
「つまりは…消滅だ」
サーヴァントはマスターから供給される魔力以外にも魂喰いによって魔力を高め、蓄えることが可能であるが、それも無限ではない。キングストーンによって高まった膨大な魔力はライダーに数倍の力を授けるに留まらず、限界を超えた魔力を与えてしまう。
コップに容量以上の水を注げば溢れしまうように、光太郎が力を発揮した場合は、ライダーという存在を零れ落としてしまう事他ならない。
その衝撃にいつも冷静を装っている慎二は開いた口がふさがらず、桜は震えだしている。
「光太郎…お前…」
「そんな…兄さんは…そんな、そんな…」
2人は、光太郎とライダーがお互いは気付いていないだけでマスターとサーヴァントという関係以上の感情を抱いていることは理解していた。だが、下手をすれば光太郎自身でライダーを消滅しかねないという事実が2人を混乱させてしまった。
ただ1人冷静に状況を見ていたアサシンは、残酷過ぎる言葉を放ってしまう。
「なるほど。あの者を倒すとなれば、ライダーを見捨てねばならぬ、か」
「アサシンさん!貴方は…」
「事実そうであろうよ。そして、それを考えた末にあの男は戦いに挑んでいる。それは、今更覆せるものではない」
「そうだけどさ!もしそうだとしてもあの光太郎がライダーを…」
桜同様にアサシンに噛みついた慎二だったが、今ライダーがキャスターと共にいることにある可能性が浮かんだ。
「まさか、光太郎…キャスターをライダーに一緒にいさせてるのは…そういうことなのか…?」
「そう、そういうこと」
「ご理解頂けて、助かります」
「全く、最初から言ってくれないとこちらの心臓が持たないわ」
「すみません。私も光太郎も、最後の手段としたかったんです」
「そうでしょうね…彼のあの反応は、指摘されたというよりも、家にいるあの2人に聞かせてたくなかったという感じだし」
丘の上でため息を付いたキャスターは、ライダーの周囲に魔法陣を展開。さらにその頭上にもう一つ魔法陣を出現させた。
(コウタロウ…私に構わず、全力を出してください)
(ライダー…すまない)
(安心して下さい。貴方が約束を守ってくれるまで、私は消えるつもりはありません)
(…ああ。君を、絶対に消させはしない!!)
レイラインでの会話を終えた光太郎は、拳を強く握り、宿敵の前で相対した。その姿にシャドームーンは理解する。もう迷いなく、自分に向けて全力をぶつけてくる宿敵の覚悟を。
「…いくぞ、信彦!!」
両腕を大きく広げ、両拳をベルトの前で重なると、エナジーリアクターが強く発光する。
普段のバイタルチャージならば次に攻撃の態勢となるが、今回は違った。
エナジーリアクターから放たれる閃光は止めないまま、光太郎は両腕を眼前で交差させ、ゆっくりと腕を広げていく。
「ハアァァアアアアアアアアッ……!!」
光太郎のうねると共に周りの大地が震え、足元がひび割れていく。
そして、光太郎の強化皮膚『リプラスフォース』の茶色である関節部分が段々と赤く輝き始め、2つの赤い複眼もより強く輝きを放ち始めた。
「ハァッ!!!」
叫びと共に両腕を左右へ広げた光太郎の赤く輝く関節部から常に蒸気が発し、複眼とエナジーリアクターは真っ赤に光っている。
バイタルチャージのように攻撃を仕かける一瞬ではなく、キングストーンの力を常に全身に漲らせた世紀王本来の戦闘スタイル。
ここに、真の世紀王が降臨した。
一方、ライダーは魔法陣の中で膝を付き、胸を押さえながらもその存在を保っており、魔法陣に向けて手を翳しているキャスターは集中するあまり額から汗が流れている。
「く…これは、思った以上に…!」
「耐えなさいよ…彼とまだ一緒にいたいならね」
ライダーの身を滅ぼす程の魔力をキャスターの魔法陣が吸い上げ、過剰魔力を外部へと放出。これによりライダーは魔力を過剰供給されることなく、現界することが出来ていた。
光太郎がライダーにキャスターを同行させたもう一つの理由。
もし、シャドームーンとの戦いで本来の力を解放しなければならない状況となったとき、キャスターの魔術でライダーへ注がれる魔力を一定量以上を排出することであった。
(時間はあまりかけられない。早急に決着をつけなければ…)
キングストーンの力を出し切った状態となった光太郎は、丘の上にいる自身のサーヴァントが、まだこの世界に存在していることを確認すると、直ぐにシャドームーンへと向き直り、構えた。
「く…クク…ハアーハッハッハッハ!!そうだ、それでこそだブラックサン!!」
高笑いをするシャドームーンの身体にも、光太郎と同様の変化が始まった。シャドームーンの黒い関節部が緑色に輝きだし、シャドーチャージャーと複眼も光太郎と同じように光を放っている。
「さぁ、これで対等だ!!」
「…いくぞ!!」
そらが開始の合図だったかのように、2人の姿が消えた。
その代わりに、何かがぶつかり合う轟音が絶えず響き渡っている。水晶玉からしか様子が見えない慎二達にとっては、わけの分からない状況となってしまった。
「なんだ…?2人はどこに消えたんだよ?」
水晶玉を揺する慎二の疑問は、いつの間にか2人と並んで戦いの観賞を始めていたアサシンによって解消される。
「2人は移動したわけではなく、見えないのだろう」
「見えない、んですか?」
「左様。力を解放した2人の世紀王は、最早人の視認できぬ世界で戦っているのだろう。目に止まらぬどころか、目に映らぬ世界で、な」
アサシンの言う通り、2人のスピードは既に解放前の数十倍へと変わっている。無論、それ以上にパワーも上がっており、攻撃がぶつかり合うたびに大地が抉れ、一瞬だが海が真っ二つに割れてしまう現象が起こっていた。
そして、2人の身体にも同様にダメージが蓄積されている。
光太郎の肩を守る円形のプロテクターは吹き飛び、シャドームーンのエルボートリガーは片方が砕けている。
距離をとり、ようやく視認できる姿となった2人は傷だらけとなりながらも、必殺技の態勢へと入った。
光太郎は右腕を前方に突出し、左手を腰に添えた構えから両腕を大きく右側へ振るう。そして右頬前までで両手を移動させると握り拳を作り、右拳をさらに強く握る。
シャドームーンは両手を広げ、パワーを両足へと集中。
両者の跳躍は同時だった。
「ライダーッ!!」
「シャドーッ!!」
『キィックッ!!!』
赤と緑の閃光となった両者の足が激突する。空中でぶつかり合い、押し合う力が中間で燻っている。
「ハアァァァアアアアアアアアッ!!」
「オオォォォォォオオオオオオッ!!」
雄叫びを上げる両者の力はより増していき、輝きを強くしていく。その衝撃で次々と地割れが置き、発生した力場により戦いで出来上がった多量の岩石が浮かび上がっていた。
だが、その均衡する力はあっさりと終了する。
キングストーン同士の力での誘爆で起きた大爆発という形で。
「こ、コウタロウッ!?」
(魔力供給が止まった…ということは…)
空に広がっている煙幕に叫ぶライダーへの魔力の過剰供給が止まったことを確認したキャスターは魔法陣を解除。ライダーと同じく空に広がってる煙から落下する2人を確認した。
地面へと落下した光太郎とシャドームーンの姿は既にキングストーンの解放状態ではなくなっている。あの爆発で無事いられたのも寸前まで解放状態でいた恩恵なのだろう。しかし、生きていたというだけで、2人の身体は傷だらけを通り越し、重傷となっていた。
光太郎の右側の複眼はひび割れ、体中の傷から血液が流れている。
シャドームーンは額のアンテナの片方が折れ、機械仕掛けの装甲のあちこちに亀裂が走っている。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…!!」
「ぬぅ…ぐぅ…!」
そんな状態となりながらも2人の世紀王は立ち上がり、ふら付きながら距離を詰めていく。もやはキングストーンの力を使っても、本人が耐えることすらできないだろう。
「…アァァァッ!!」
「グぉッ!?」
光太郎は力任せに拳をシャドームーンの頬へと叩き込む。仰け反るシャドームーンだが倒れずに、光太郎と同様に握った拳を光太郎の額へと放った。
「オォォォッ!!」
「グハァッ!?」
そして光太郎も倒れようとせず、再度シャドームーンを殴る…互いに一撃を与え、決して倒れようとしない。
既に特殊な能力も使えず、必殺の技を繰り出す体力も残っていない。だというのに2人は相手に屈することなく立ち続けている。
絶対に負けられない。
その意地だけが光太郎とシャドームーンの原動力となっていた。
丘から効果し、不安定な足場となった場所で10メートルほど先で戦い続ける光太郎とシャドームーンの姿をキャスターは呆れ顔で見ていた。
「まったく…最後の最後で醜い争いになっているわね」
「…全くです。ですから…勝たないと…許しません」
自分を消す可能性すらあった方法を取っての戦いの決着が、今ではだたの殴り合いなのだ。だが、これで自分を消すという恐れを抱かずマスターは戦く事が出来る。優しすぎるマスターの血なまぐさい姿を見ながらも、ライダーは微笑みながら見守っていた。
肩を揺らし、呼吸を荒くする2人の世紀王。だがその視線は逸らすことなく相手だけを捉えていた。
その動きも、どちらからともなく、同時に始まった。
右腕をゆっくりと掲げ、強く握りしめると僅かにだが輝きを宿し始めた。
光太郎の拳には赤い光。
シャドームーンの拳には緑の光。
2人は最後の一撃を放つべく、身体に残る最後のエネルギーを収束したのだ。
「ブラック…サンッ…!!」
「信…彦ォッ!!」
互いの名を呼び合い、十分な間合いとなった直後。決着を着けるべく2人の拳は同時にそれぞれを目掛けて打ち出されようとした。
―――――――茶番はそこまでだ。
光太郎の頭にそんな声が響いた。
そう考えていた光太郎の左胸に、赤い刀剣が深々と突き刺さっていた。
シャドームーンは理解が追いつかなかった。
同時に攻撃をしかけたはずだったのに、当てられたのは自分だけであり、相手の動きは拳を引いた状態で止まっていた。
さらに、投げ捨てたはずのサタンサーベルが相手の左胸を貫いていたのだから。
シャドームーンには全てがスローモーションに見えた。
自分の拳が宿敵の腹部へとめり込み、サタンサーベルを胸に生やしたまま両手をだらりとさげ、ゆっくり、ゆっくりと倒れていく姿を。
完全に地へと沈んだ直後、宿敵のサーヴァントの悲鳴が響いていた。
やっぱり我慢できず横やりをいれずにいられない創世王様でした。
2人の世紀王のバースト状態は某宇宙世紀の獣がモデルだったり…
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