Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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hollowをちょっとずつプレイ中。OPなんか毎日見てしまってますねぇ。日常を楽しく生きているサーヴァントの方々を見るのはとても嬉しい。
ライダーさんとかライダー姐さんとか、あとライダー様とか…

…ゴホン、では58話です


第58話『相棒の帰還』

「最悪だわ…」

 

工房で冬木市の地下を通る地脈の状態を分析していた遠坂凜は作業を中断し、急ぎ外で待たせている協力者達の元へ駆け出していく。

 

(冬木の地脈に流れるマナがほぼ消えかかってる…ああもうっ!まさか、本当にやるだなんて…ッ!!)

 

自分の認識が甘かったかもしれないと、凜は後悔を後回しにして今は行動することを優先させる。

 

 

聖杯戦争が60年という周期が必要なのは、冬木市の地脈に流れる魔力を時間をかけて大聖杯が収集、溜め込むでサーヴァントを現界させるという奇跡を起こすまでに至たる。それも地脈に影響がないように少量の魔力を吸い上げていくことが大前提だ。

 

しかし、凛が見たのは影響なしどころか、地脈のマナそのものが消失しかねないという状態にあった。

 

もしこのまま地脈のマナが枯渇してしまえば、冬木市は魔術師にとって何の価値もない荒地に等しい扱いとなる。だが、凜にとってはそんなものは二の次だ。

 

地脈は、その土地そのものの生命力でもある。それが無くなると自然と荒れ果て、人が生きていく土地として『死ぬ』ことと同意義であり、何の力も持たない人間土地に立った際、本能的に『ああ、ここでは駄目だ』と思ってしまう。

 

人間の住む町としての『死』

 

 

そんなもの、管理者として、『遠坂の人間』として凜は認めない。

 

(ゴルゴム…例え、敵わくたって…!)

 

自分の使い魔で間桐光太郎が敵の首領格と戦い、どのような目にあったかは知っている。あの光景を見た彼の義妹であり、自分の実妹である桜がどれ程悲しんでいるかも計り知れない…

 

 

待ちわびていた自分の聖杯戦争を穢し、妹の幸せを砕いたゴルゴムには、大きな貸しが出来たのだ。凛は自分の持つ全てを持ってしてゴルゴムに立ち向かう覚悟を決めた。申し訳ないが、あの二人には巻き込まれて貰おう。

謝るのなら、死んだ後でもできるだろうし…と後ろ向きな考えをまとめた所で凜は扉を乱暴に開けて…

 

 

 

「2人ともッ!!状況は――――」

 

 

 

 

 

「あ、遠坂さん、久しぶり!」

 

 

 

 

 

満面の笑顔で挨拶する光太郎の姿を見て盛大にコケたのであった。

 

 

 

 

「…おい、顔面からいったぞあれ」

「と、遠坂先輩!大丈夫ですか!?」

 

 

学園のアイドルである凜の顔面ダイブという2つの意味で痛い場面に声を上げる慎二と、純粋に心配してかけよる桜。

 

 

遠坂たるもの常に余裕を持って優雅たれ。

 

 

もはや遠坂の姓を持つ者にしか伝えられていない伝承である。

 

 

 

 

「しかし驚きです。あの状況から生還できるとは…」

「ええ…同じ事は、二度と出来ないでしょうし、したくもありません」

 

ゆっくりと泥だらけの顔を上げた凜の目に映ったのは同じサーヴァント故か、ライダーの無事を喜んでいるセイバーと…

 

 

「そうですか…世界中で、仮面ライダーが」

「ああ。だから、俺も負けられないんだ」

 

なにやら聞き覚えのない名前で盛り上がっている士郎と死んだと思っていた間桐家の長男。

 

状況が全く理解できない凜は目元をヒクヒクと動かしながら、自分の顔の泥をせっせと拭き落してくれている妹に身をゆだねていた。

 

 

 

 

 

「…あの男が、そんなことを」

「あからさまに嫌な顔をしないのセイバー。けど、そんな大物の英雄だったなんてね…ん?」

 

九死に一生を得た光太郎の説明に一応の納得した凛達は、門の前で一台のワゴン車が停車し、その中から迷彩服を纏った人間が飛び出して光太郎達を囲っていく。おまけに重火器を向けて、だ。

 

「…おい光太郎。いつから指名手配扱いになったんだよ」

「身に覚えがないけどなぁ。って、俺限定なの?」

「何を悠長なこと言ってるんだよ!?慎二も光太郎さんも!!」

 

突然の展開に追いつかず、マイペースな2人に大声を出すにいられない士郎は自分達に武器を向ける乱入者を見る。ゴルゴムが闊歩する冬木市で自衛隊が駆けつけているなんてニュースは聞いていない。

いや、逃げ遅れた人を救助するために隠密に行動しているという可能性もあるが…怪しすぎる。暗視ゴールグルに防護マスク。顔を完全に覆い隠している上に動きが機械的だ。

 

 

 

「彼等からは殺気どころか生気すら感じられません」

 

ライダーの一言で全員が手段は別だが、同じ行動に打って出た。

 

 

光太郎は拳で顔面を捉え

 

 

ライダーは鎖を放ち

 

 

慎二は改造したスタンガンを顎に当て

 

 

桜は炎を灯した手甲で胸板へ掌底を叩き込み

 

 

凛は数十発のガンドを発射し

 

 

セイバーは不可視の剣で薙ぎ払い

 

 

そして士郎は手に『二振りの刀剣』を出現させて切りつけた。

 

 

 

 

「…怪人になる前の素体、だね」

「素体…ってことは、元は人間ってこと?」

 

慎二の疑問に光太郎は無言で頷いた。

 

「怪人に比べたら大した力はない。けど、自ら考えることは出来ないから、命令はしやすいんだろう」

 

過去にゴルゴムに自身を改造され、養父である総一郎に連れられて脱走した際に多くのカプセルが陳列している倉庫を通りかかったことを思い出す。身体を動かくことに必要最低限な部分だけを残し、後は処分されてしまった人のなれの果て。

 

それが数百、数千という数がならんでいたのだ。その時に光太郎は、ああ、自分だけじゃなかったんだ…と考えるしかできなかった。

 

ヘルメットをはぎ取った男達の顔は頭蓋骨と筋肉を除き機械で補われており、ゴルゴムの言われるままに動くように改造されていたのだろう。顔から下は…桜のいる手前、確認したくもなかった。

 

 

「…士郎」

「何だ、遠坂?」

「………………………」

 

セイバー、ライダーの2人と動かなくなった素体を運んでいた士郎に凜は目を鋭くしながら尋ねた。その目は敵意というより、何かが気に食わないといった類だが、士郎には検討が付かない。

自分の顔を睨み続ける凜の出方を待つしかない士郎は背中に嫌な汗を流しながら大人しくしていると、凜の口が開いた。

 

「…さっきの剣、あれは?」

「え?あ、あれは―――」

 

イメージした武器を投影魔術で生み出す術を身に着けた士郎だったが、この土壇場で生み出したものは夫婦剣。それも凜が契約していたサーヴァントが愛用していたものだった。

士郎自身も、なぜあの武器を投影したのかはっきりと分からない。ただ、他の刀剣を投影するよりも手に馴染み、生み出しやすかった。なぜ、この武器なのだろうと疑問を抱くことすら、凜に言われるまで気付かなかった程だ。

 

「…正直、俺にもわからない。分からないけど…俺が今一番イメージしやすい得物が、あの剣だったんだ」

「…そう」

 

短く答えた凜は振り返って桜の元へ向かった。一体なんだったんだと一人悩む士郎の後頭部を慎二は軽く叩く。

 

「…慎二?」

「さっきの、遠坂の前じゃ使うなよ?」

「なんでさ?いざ戦いの時には」

「そう言う意味じゃないよ。じゃあ言い方を変える。遠坂の前じゃ『見せるな』」

「…あ」

 

慎二の言い方に合点がいった士郎は思わず言いどもる。

 

今回の聖杯戦争で召喚されたサーヴァントで唯一、脱落してしまったのは凜が契約したアーチャーだった。イリヤとバーサーカーから自分達を守る為に自ら足止めをし、士郎に的確な指示を送ったサーヴァント。

なぜか気に食わなかったが、彼の言葉がなければあの場を切り抜けることは出来なかっただろう。

 

そして凜との関係もマスターとサーヴァントという関係以上に、深い絆があったことを士郎にも見て取れた。だというのに最後に言葉を交わしたのはマスターである凜ではなく、協力関係にあったとはいえ、敵である士郎だったのだ。

その士郎が、弓兵でありながら接近戦を得意とする彼が愛用していた剣を士郎が生み出してしまうのは、凛の目にはどのように映っていたのか…

 

「わかった。すまない慎二」

「ふんっ…」

 

友人の屈託のない感謝に鼻を鳴らして慎二は空を見た。光太郎とシャドームーンの戦いから一度も日の光が差し込もうとしない淀んだ雲で覆われた空を。

 

 

 

 

 

 

「それでは、総一郎様」

「ああ」

 

体調を戻したキャスターはローブを纏い、総一郎と共に間桐家の玄関を出る。総一郎の姿は学校で見せる背広ではなく、身体を動かしやすい恰好となっており手には鉄板仕込みの皮手袋を着用。彼本来の力が発揮できる姿となっている。

同行を反対したいキャスターだったが、『キャスターが戦うのならば、自分も』という言葉に折れ、こうして共に目的の場所へと向かうこととなったのだ。

 

 

「これはこれは。水入らずで外出するところか?」

「ふざけていないで、貴方も付いてきなさいアサシン」

 

門に背を預けて肩を並べて歩くキャスターと総一郎を茶化すアサシンであったが、2人が門を抜けた後にキャスターに言われるがまま2人の後を追うように歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、行くとするか」

「……………………」

「動けるようになったんなら方向性だけは決めてくれや。ま、ここでイジけてるってんなら止めはしねぇけどよ」

 

冬木市に程なく離れた土地にある無人の洋館。ランサーはその一室でソファーに腰を掛けて俯いている人物へと声をかけたが返事はない。

 

「今のアンタとアイツを会わせるっつーのは確かに酷かもしんねぇ。だが、受けた借りは返さないようなアンタじゃ―――」

「―――心の整理は付きました」

 

ランサーの言葉を待たずに立ち上がったその人物は、身体が一部欠けていた。だというのにそのようなハンデを微塵も思わせない強い意思を瞳に宿し、その目を見たランサーはニヤリと笑う。

 

「ようやくらしくなったじゃねぇか」

「行きますよランサー。私の令呪を取り戻し、この異常事態を終わらせます」

 

 

 

 

 

「…………………………………」

 

修理を終えた巨大な斧剣を持った巨人は、無言のまま歩き始める。主の異変に気づきながらも得物の修理に時間をかけたことで彼のフラストレーションは溜まる一方であった。そして、ようやくその縛りから解放された英雄は自分達を見送る使用人2人の声を耳にしながら敵地へと赴く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柳洞寺の麓にある石段を登り、境内へと到着した光太郎達は周囲を見渡す。キャスターの張った結界はとっくに解除され、容易く侵入できるようにはなっているが雰囲気はそれ以上に禍々しくなっている。

 

「来れるのなら、来てみろと言いたげだな」

 

光太郎は拳を強く握って、柳洞寺を抜けたさらにその奥にあると言われている大空洞の方へと目を向けた。

 

「…行こう、みんな」

 

光太郎の言葉に、全員が頷く。

 

誘拐されたイリヤスフィール、大聖杯、ゴルゴム…そして光太郎には分かる。この先に、自分達の運命を歪めた敵の王がいるということも…

 

全ての決着は、ここでつける。

 

 

光太郎に続いて全員が歩き始める中、ただ一人凜が足を止める。

 

「遠坂先輩?」

 

気付いた桜の声を聞いて、全員が同じく立ち止まり、凜の姿を見た。風で前髪が揺らされているためか表情が見えない。桜がもう一度声をかけようと口を開くより早く、凜は苦笑しながらも顔を上げた。

 

「悪いけど、先に行って貰える?ちょっと調べておきたい事があるのよ」

「調べるって、何を」

「ここってキャスターが根城にしていた場所なんでしょ?だから、何かこの後に役立つようなものが残されていそうじゃない?」

「……………………」

 

説明する凜の笑顔がどこか引っかかる士郎は彼女としばし見つめ合う。そして一度目を閉じると振り返り、大空洞に向けて歩き始めた。

 

「行こう、みんな。遠坂なら大丈夫だ」

「シロウ…よろしいのでしょうか?」

「…ああ」

 

彼女がここに残る理由を見抜いているセイバーに士郎は背を向けたまま短く答える。先行して進む士郎に続き、セイバー、光太郎達も続いていく中、桜は一度振えった。不安そうに実姉を見つめる妹に心配する必要はないと手を振る姿を見て、

桜は小さく呟く。

 

 

「無理はしないで下さい」

 

 

光太郎達に追いつこうと小走りする桜の姿を見送った凜は一度大きく息を吸うと魔力を消そうともとも放たれているを気配を隠しきれていない存在に大声を上げた。

 

 

 

「さっさと出てきなさいよこのエセ神父ッ!!文句が山ほどあるんだからッ!!」

 

凛の絶叫にも似た呼び出しに応じ、言峰綺礼は植え込みの陰から姿を現した。

 

「気付いていたとはな。中々勘が鋭くなっているではないか凜?」

「やめて貰える?アンタに褒められたってこれっぽっちも嬉しかないわよ」

「私としても褒められたと思われるのは困るな。こうして敵対しているからには、皮肉として受け取ってもらわねば」

 

お互い顔を合わせた途端に繰り広げられる舌戦。普段の挨拶代りでもある言葉の応酬だが、凜は聞き逃してはならない言葉を、確かに聞いてしまった。

 

「…貴方は、言峰綺礼は私達の敵なのね」

「残念だが、そう言わざる得ない」

「そう、だったら、全てに合点が行くわ。ゴルゴムがイリヤを連れ去ったことも、地脈のマナを消費して、サーヴァントを追加で召喚したことも…」

 

左手に魔力を集中しながらも右手に幾つもの宝石を手に、凜は綺礼を見て構える。接近戦では絶対に勝ち目はない。ならば、どうにか距離を保ちながら戦う他ない。凜は綺礼の強さを嫌と言う程理解している。自分の繰り出す拳法など足元に及ばないし、戦闘経験だって数十倍だ。

 

それでも、凜には引けなかった。

 

もっと早く気づき、疑うべきだったのだ。彼の入れ知恵がなければ、本来の聖杯戦争にゴルゴムが今以上に干渉することも無かったはずなのだ。

 

 

それ以上に、いくら毛嫌いしている相手とはいえ、人類の敵に与する姿を見たくなかったのかもしれない。だから、彼を誰にも手を出させない。弟弟子として、冬木の管理者として、凜は人類に敵対した道を選んだ神父と打ち合う覚悟を決める。

 

 

 

「覚悟しなさいよ…言峰綺礼ッ!!」

 

 

 

 

 

 

「…やっぱり、か」

 

洞窟近辺の森林を切り開き、強引に戦いの場を作り出していたゴルゴムの自然への配慮の無さに呆れながらも怪人の群れを見る。先ほど自分達を襲った怪人の素体も含め、数は…数えたくもない。見たことも無い怪人もいれば、一度命を落とした再生怪人。だが、今までと違い、どこかがおかしい。

 

身体の所々に黒い泥のようなものが付着し、見たことのある怪人は依然よりも肉体がどこか膨張し、凶暴性が増しているようにも見える。

 

そしてなにより、苦しんでいるようだった。

 

「あれは一体…?」

「わかりません。けど、奥に進むには」

 

戦闘装束となったセイバーとライダーに続き、慎二と桜も互いの武器を構えた。

 

 

「押し通るしかないな…!」

 

 

一歩前に出た光太郎は右半身に重心を置き、両腕を大きく振るうと右頬の前で握り拳を作る。

 

ギリギリと音が聞こえる程込めた力を解放するような勢いで右腕を左下へ突出し、素早く右腰に添えると入替えるように伸ばした左腕を右上へ突き出す。

 

 

「変っ―――」

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように、ゆっくりと右半身から左半身へと旋回し――

 

「―――身ッ!!」

 

両腕を同時に右半身へと突き出した。

 

 

光太郎の腹部にキングストーンを宿した銀色のベルト『エナジーリアクター』が出現し、光太郎を眩い光で包んでいく。

 

その閃光は光太郎の遺伝子を組み換え、バッタ怪人へと姿を変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

エナジーリアクターから流れ続ける光はバッタ怪人を強化皮膚『リプラスフォース』で包み込み、黒い戦士へと姿を変えた。

 

 

左胸に走るエンブレム。触覚を思わせる一対のアンテナ。真紅の複眼。そして黒いボディ――

 

 

「仮面ライダー…ブラァックッ!!」

 

 

 

変身を遂げた光太郎…仮面ライダーBLACKは怪人達へと駆けていく。仲間達と共に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ぐ……」

 

「頑張った方でないかな、凜?」

 

悠然と立っている綺礼は傷だらけとなり、自分の手に喉を掴まれて苦しそうに悶えている凜を見る。

 

宝石魔術やガンド、自分の全てを持って挑んだ凜であったが、過去の話とはいえ代行者まで上り詰めた男の前では通用しなかった。近距離でガントを放とうにも腕の骨を砕かれ、強化を施そうにも呼吸がまともに出来ない状況では詠唱にも集中できない。

それでも、凜は綺礼に敵意を向けることだけはやめなかった。その眼光は戦いを始めた以上に鋭く、強くなっている。

 

「さすがは遠坂の名を継ぐ者だ。このまま死なせてしまうのは先代の父君に申し訳ない」

「どの、口が…言ってるの、よ…かはッ!?」

 

喉を締める手に力が強まる。意識が朦朧とする凜に向けて綺礼は懐から取り出した黒鍵の切っ先を彼女の腹部へと突き立てた。

 

 

(ああ、こんなにもあっさりと終わっちゃうんだな…)

 

自分なりに全力は出したつもりではあったけど、結局は駄目だった。名ばかりの管理者である自分を卑下しながら凜は自分がこれから死んでしまうことを多くの人に詫びる。

 

妹の桜に、生んでくれた両親。協力者であった士郎とそのサーヴァントであるセイバー。桜を実の兄妹のように大切にしてくれた間桐の家。そして…共に戦うと誓ってくれた自分のパートナーへ。

 

凛はゆっくりと目を閉じた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君らしくもない。何時からそう簡単に諦めるようになってしまったのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪雨の如く自分の周囲に刀剣が降り注いだことで思わず凜の首を持つ手を緩めてしまった綺礼は、その隙を逃さず凜を抱きかかえて距離を取った存在に目を見開く。

 

 

『彼』は、消滅し聖杯を機能させる一部となったはずではなかったのか?

 

 

それ以上に驚いているのは、彼に抱きかかえられている凜だろう。もう、二度と会うことのないと思った存在に放った言葉は、なんとも間抜けな一言だった。

 

 

「お化け…?」

「笑えない冗談だな。そうなるとサーヴァント全員が亡霊にカテゴライズされる」

 

 

この切り返し、この言い分。間違うはずがない。凜は涙ぐみながら自分を助け出したサーヴァントの名を呼んだ。

 

 

「アーチャー…!」

「随分とボロボロとなったなマスター」

 

凛をゆっくりと下ろしたアーチャーは自らの外套を裂き、折られた腕に当て木とで固定するという応急処置を施す。手慣れた処置を受けながら、凜は聞かずにはいられない疑問を

アーチャーへぶつける。

 

「ねぇアーチャー。どうして無事だったの?あなたの時、バーサーカーとの戦いで…」

 

消えたはずではなかったのか。その証拠に凜の手に残っていた令呪は完全に消え失せたはずなのだから。処置を終えたアーチャーは立ち上がりながら答える。

 

 

 

「確かに、私はバーサーカーに死ぬ寸前まで追い詰められた。だが…」

 

 

 

 

 

 

 

アインツベルンの城から凛達を逃す為に1人バーサーカーに立ち向かったアーチャー。彼が作り出した数多の刀剣を使いながらバーサーカーの命を一つ、また一つと奪うことに成功していたが、彼の繰り出す嵐のような斬撃にダメージは蓄積し、ついに脚が自分の意思では動かないまでに至ってしまった。

 

「ぬぅ…!」

 

「驚いたわ…どこの英霊かは知らないけど、バーサーカーを4度も殺すなんて誇れることだわ。でも、これでお終いね」

 

マスターである少女の声が冷たく響く。イリヤの号令を待たずに巨人は無慈悲にも最後の一撃を下そうと斧剣を両手で構え、アーチャーを捉える。

 

(これまでか…すまないな遠坂。後は――――)

 

アーチャーが消滅を受け入れようとした寸前、彼の周りで次々と爆発が起きた。

 

「こ、これはなんッ――――!?」

 

アーチャーの声は彼を拘束し、城の外へと連れ出した幾本もの鎖によって遮られてしまう。

 

バーサーカーが身を挺して守られたことで爆発に巻き込まれずに済んだイリヤは姿を消したアーチャーの姿を探すが見当たらない。

 

(リンが令呪を使って強制送還した…?いえ、それだったら魔力を使った痕跡があるはず)

 

悩むイリヤだったが、あのダメージではそう遠くまで行けないし、後からでも止めはさせる。アーチャーを標的から除外したイリヤはバーサーカーを連れて士郎達を追い始めたのであった。

 

 

 

 

 

「何者だ、貴様!?」

 

地面を引きづられながら移動していた鎖の動きが止まったのは、ある男がアーチャーの視線が捉えた時だった。鎖は自動的に解除され、男の周りを蛇のように唸らせながら動いている。上半身を起こしたアーチャーは男が異様な雰囲気に警戒を解かないまま質問を続けた。

 

「何が目的で私をあの場から連れ出したのだ?」

 

男は無言のまま膝を付き、アーチャーと視線と合わせると、何の前触れもなく手に握った短刀をアーチャーの胸に突き立てた。

 

「き、様―――!?」

 

不意打ちには勿論だが、胸を付かれたことでアーチャーというサーヴァントを形作っている魔力の供給が完全に止まったことに驚愕した。これは、とある『宝具』の原型による効果だと知るのは後になってからである。

 

「本来なら貴様のような存在は真っ先に消し去りたいところだが、まだ使い道がある。それまでの間、この世界から『消えて』貰うぞ」

 

続けて彼の背後から現れたのは人1人が収まりそうな棺。その蓋が開くと同時に鎖が再びアーチャーを拘束し、乱暴に棺へと投げ込まれてしまった。蓋はゆっくりと閉じていくが、アーチャーには蓋を押し返す体力すら残されていなかった。

 

棺の扉越しに、見下ろしている男の声が響いてくる。

 

「その棺の中では『時』が止まり、眠った者の傷を癒す効果がある。利用価値があると言えど、我の気まぐれに感謝するのだな」

 

その言葉を聞いたのを最後に、アーチャーの意識は途絶えたのであった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、そのナイフを刺されたことで私との契約が切れたってこと?」

「そうなる。あれは、キャスターの『破戒すべき全ての符』の原型だったのだろう」

 

あの金髪には後でたっぷりと話を聞かなければならないと思いながら、凜はアーチャーの見る。本当に、生きてくれていた。契約が切れているのに関わらず、自分をマスターと呼んでくれることに凛は満たされた気分になってくる。まるで失った力が戻ってくるように。そして立ち上がろうと考えた矢先にアーチャーの待ったが入った。

 

「言っておくが、今の君の状態は気分が高揚しているだけであって怪我人ということを忘れるな。その場から一歩も歩くことも許さん」

「なっ!?なんでそんなことが分かるのよ!?レイラインすらつながっていないってのに!!」

「当然だ。私を誰のサーヴァントだと思っているんだ、君は?」

「っ…!?」

 

反則的な言葉だった。そんな事を言われたら、頬を朱色に染めた凜は動くことなどできない。

 

「さて、私のマスターをここまでの手傷を負わせたんだ」

 

 

アーチャーは距離を取り、未だにこちらを警戒している綺礼を見ると、ニヤリと笑いながら相対した。

 

 

「それ相応の報復は覚悟してもらうぞ?言峰綺礼」

 

 

 




と、言うわけで生きておりました。

弓「全てはギルガメッシュという奴のせいなんだ…」
士郎「何だって!?それは本当かい!?」

彼の狙いははてさて…ってまずい、なんだかライダーより目立ち始めてしまった…


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