Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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色々と予想外のことが重なり、ようやく投稿…年末年始ってそんな感じですね。
それにしても春のSH大戦GP…BLACKだけでなくギャレン、ゼロノスと自分の好きなライダーばっかりが御本人出演とかなんでこんなにも嬉しいニュースが飛び交うのでしょうか?

では本年最後の62話となります!
皆様よいお年を!!


第62話『妖花の思惑』

「許ナない…許さナい許さなイゆルさないユるさナいユるさナいゆるサないゆるサナイゆルサないユルサナいユルサナイ…!!」

 

翼竜の姿となり、空を飛行している大怪人ビシュムは怨嗟の声と共に攻撃を繰り出していた。

 

その大きな翼から突風を。目から怪光線を。口から破壊光線を。

眼下の地表で立つ自分達へと途絶えることなく放射を続けるビシュムの荒れ狂う姿に、防御結界を張って攻撃を防ぐキャスターはため息交じりで見つめていた。

 

「見苦しいものね。恨む理由くらい言って貰わないと反論もできないというのに…」

「どうやらあの泥によって彼女の理性は失われつつあるようです」

「2人とも何を呑気なことを言っているのです!このまま防戦一方では…っ!」

 

キャスターの防御壁は自身だけでなくライダーとセイバーを含めて3人を覆う形で展開されている。ビシュムの総攻撃を受けても亀裂が一つも走らない結界の頑丈さには感心するものの、キャスターの魔力には限りがある。短期決戦を仕掛けねばと考えるセイバーは落ち着き過ぎている2人に声を荒げてしまうが、そこにライダーが諭すように声をかけた。

 

「セイバー。急ぐ気持ちもわかりますが、あの攻撃を掻い潜って反撃するのは至難の業。ここで対処を誤るわけにはいきません」

「確かにそうです…しかしっ!!」

 

ライダーの意見に肯定しつつも、セイバーはキャスターを見る。この結界を張り続けている彼女にこれ以上負担をかけるわけにはいかない。表情に出てしまっていたのか、キャスターは苦笑しながら上を見上げた。

 

「杞憂よセイバー。この程度の攻撃で私の結界は綻び一つ生じない。だから貴方はいつでも切り込める準備をしていなさい」

「ですが…」

 

不可視の剣を強く握るセイバー。キャスターこの攻撃だっていつまでも続かない。一瞬でも攻撃が弱まればキャスターの転移魔術を用いで死角に回りこんで一撃を加えることだっで出来る。今のセイバーには、その機会を待つことしかできない。待つことしか出来ないことが、どうしても歯がゆかった。

 

「そんな顔をしないで頂戴。私だって、あんなのにいつまでも時間をかけるつもりはありません。だから、貴女は貴女の役目を果たすために今は――」

 

キャスターの言葉が途切れると同時に圧迫感がライダーを襲う。両足で自身を支えられず、地に伏せてしまったライダーはは、段々と地面へとめり込んでしまう。

 

「た、てないっ…!?」

「大丈夫ですがライダー!?」

 

立ち上がろうとも身動き一つ出来ないライダー。苦悶の表情を浮かべる彼女の周りのみ、放射されている波動に気付いたキャスターはその正体に勘付く。

 

「これは、重力操作…!?まさかッ!?」

 

結界を抜けての指向性重力操作。ビシュムは攻撃を続けながらもライダーのみに狙いを定めて重力波を放っていたのだ。理性を失っていてもその能力は変わらず、否、それ以上に力を使いこなし始めていた。

 

(これが、聖杯による能力だというの…?)

 

結界の強度を強めても、重力波は弱まる様子はない。魔術に集中するキャスターの頭に、突然耳触りな笑い声が響く。

 

(あはハははハハハは…貴女たチが…貴女タちガ悪イのよ!私をこンな姿ニなッたのモ、あノお方の傍ニいれナくなっタのも…)

(これは、あいつの思考…私達の脳に、直接話かけている)

 

ビシュムは自身の言葉をキャスターに、倒れているライダーと介抱しているセイバーへと送りつけていた。

 

 

長い時間をかけてゴルゴムの大神官へと登りつめたビシュムは、新たな創世王となるべく生まれる世紀王が現れるのを長い時間待ちわびていた。

 

自分が仕えるべき世界の王。

 

王の傍らに自分を置き、王と同じ存在となるために、ビシュムは光太郎を…もう一人の世紀王を倒すことに躍起となっていた。だが、悉く失敗。死んだはずの光太郎からキングストーンを抜き出し、献上するという赤子の手を捻るようなことすら、しくじってしまった。

 

もし、成功していたならば自分は創世王となったシャドームーンと共に覇道を歩んでいた。この世界を自由に動かせた。

 

だが今の姿はどうだ。暴走したダロムにより醜悪な姿へと変えられ、強力な力を得ても怪人以下の存在になろうとしている。

 

それもこれも全てはゴルゴムを裏切り、約束されていた未来を踏みにじった間桐光太郎が原因。

 

このまま自我が消え失せる前に、この手で光太郎を苦しめなければ気が済まない。その為に、光太郎の大切なものは壊さなければならない。後悔させなければならない。

 

ゴルゴムという組織に逆らったことを。

 

 

 

 

「笑わせて…くれますね」

 

(…っ!?)

 

重力波を受け、地面に沈んでいるライダーの手の周りに大きく亀裂が走る。ひび割れるほどに重力が強くなったのかと考えたセイバーとキャスターだったが、それはライダーが立ち上がろうと手に力を込めた事で発生した亀裂だった。

 

「貴女は…全てを光太郎のせいにして、八つ当たりをしているだけ。それに…貴女には、シャドームーンは決して振り向かない」

(何ヲ…解っタようナ事をォッ!!)

「グっ!?」

 

より強まった重力波を受けたライダーは再び地面へと沈む。それでもなお立ち上がろうと身体に力を込める姿にビシュムの怒りは頂点に達した。

 

(私ハあの方ノ為に、全テを捧げてキたのヨ!!それヲ邪魔した仮面ライダだーは絶対に許さナい!!)

「なら…なぜあの時逃げ出したのですか?そして、先ほども?」

(…ッ!?)

 

ライダーの言葉にビシュムが動揺した揺らぎはキャスターとセイバーにもはっきりと感じられた。さらに心を乱すように、ライダーは少しずつ身体を上げながらもの言葉を繋ぐ。

 

「結局、貴女が欲しがっていたのはシャドームーンが手にしようとしたこの世界の支配者という肩書だけ…彼の気持ちも、痛みも、何も分かろうともしていない」

 

身体を震わせながら両足で立ち上がるライダー。彼女の身体に掛かる重力は優に数十倍にも達している。それでも、彼女は立ち上がった。

 

「全てを捧げている…ならば、蘇った光太郎に命を捨ててでも挑めたはず。ダロムの姿を見ても、覚悟を持って挑めたはず。聞こえの良い言葉だけで見繕い、自分を正当化しているだけ。…ビシュム。貴女は―――」

 

鉛で縛られたように重くなった手を震わせながら持ち上げ、両目を覆う眼帯へと手を伸ばしたライダーは一気に引きはがし、両目が解放されたと同時に自身の持つ魔力を一気に解放する。

 

 

 

「貴女が守ろうとしているのは自分だけです。シャドームーンでも、怪人でも、支配者の創世王でもない。貴女は、自分可愛さに強者の威を着飾ろうとした小者にすぎません」

 

「アアァァァァァアアアァァッァアアアアアアアアッ!!!」

 

魔力を解放したことで重力波を打ち破ったライダーの魔眼が咆哮を上げるビシュムに叩きつけれる。しかしビシュムも聖杯の泥で強化されているためか石化できず、動きを一瞬止めたに過ぎなかった。

 

むしろ重力波を取りやめ、攻撃へと力を集中したのか、先ほどより激しくなる一方であった。しかし、それでもキャスターの結界は揺らぐことすらなかった。

 

(…ッ!?)

「まったく、あんな言葉を聞いたのなら、私だって一言言いたくなってくるじゃない」

 

自分の攻撃が通用しない余りに手を止めてしまったビシュムの姿を見てクスリと口元を歪めるキャスターの魔力量が段々と上昇していくことに気付いたセイバーは思わず尋ねる。

 

「キャスター…貴女のその魔力量、どこから?」

「ああ、そう言えばセイバーには教えていなかったわね」

 

キャスターの放つ魔力は留まる事を知らず、大きく上昇していく。それに比例してキャスター自身から溢れる魔力が視認できるほど強力なものとなっていた。

 

柳洞寺を根城としていた時ですらこれ程力強い魔力を持ちえなかったキャスターはどこでこれ程の魔力を引きずり出しているのか?

 

その出所はマスターである宗一郎からでも、冬木に住む人間の魂でもなかった。

 

 

「以前にライダーに過剰供給されて排出した彼の膨大な魔力…それを保存していたのよ」

 

 

ニコリと笑って答えたキャスターにセイバーは唖然とした。

 

ここまでの移動中にライダーから一通りの話を聞いていたが、まさか光太郎のキングストーンから放たれた膨大な魔力をただ排出していただけでなく、自身の魔力に変換していたとは…末恐ろしい女性だ。

 

「どれほどの…魔力量なのでしょう?」

「そうねぇ…貴女がエクスカリバーを4度連続使用してもまだお釣りがでるわ」

 

キャスターの魔力量を心配する必要すらなかったと理解したセイバーは大きくため息をつくと、立ち上がったライダーと共に上昇していくビシュムを睨む。どうやらライダーの言葉を受けた後に雲の上へと逃げているらしい。

 

「視線に映らなくなった所を急降下しての不意打ち…と言った所でしょうか?」

「本当に小者ね…なら、猶更教えてあげないといけないわね」

 

杖を掲げたキャスターは、紫色の魔法陣を出現させる。

 

「自分以外の為に振るう力が、どれ程強いかを」

 

 

 

 

 

雲の中まで移動したビシュムはそのまま反転。嘴の周りを覆い、ライダー達に癒えることのない傷を負わす為に落下していく。地表からの反撃にも備え、身体の周りにはバリアーを張ることも忘れない。

 

「オホホホホホホ…私ヲ侮辱したこトを、後悔――――!?」

 

ビシュムが視界に捉えたのは、不可視の剣を構えたセイバーのみ。姿を消したキャスターとライダーは気にかかるが、今は愚かにも自分に向けて剣を構えている亡霊1人。すぐに仕留め、残る2人をすぐに見つけ出せばいい。

 

「しネえェェェェエエエエェェェェェェェェッ!!」

 

 

 

セイバーを貫くため、よりスピードを上げて落下するビシュム。所詮は接近戦しか能のないサーヴァント。魔力と落下する力を乗せた自分の攻撃には敵うまい。ビシュムは自身の勝利を確信し、続いてはライダーとキャスター、どちらを血祭りに上げようかなど

考えていたが、それは早計であると思い知ることとなる。

 

もし、下で待ち構えていたセイバーが剣の真の姿を現し、対城宝具を放とうとしていたのならビシュムも後退していただろう。だが、セイバーにもそれ以外にあったのだ。距離を取った相手に放つ戦法が。

 

 

 

「『風王鉄槌』ッ!!」

 

 

剣先から放たれた暴風の渦。剣に纏わせいた風を解放し、竜巻を発生させて打ち出す『風王結界』を応用させた技。それに加えキャスターの魔力補助も加わり、威力は第四次聖杯戦争時の数十倍。その威力にセイバー自身も驚いていたが、一番に驚いているのは

暴風に浚われ、吹き飛ばされているビシュムだろう。

 

 

「こ、こんナことガあぁぁぁぁッ!?」

 

ビシュムへの攻撃は止まらない。『風王鉄槌』によって自分の意思に反し再び上昇していくビシュムを上で待ち構えていたのは、転移魔術でさらに上空で待機し、幾つもの魔法陣を出現させていたキャスターであった。

 

「言っておきますけど、加減なんて出来ないわよッ!!」

 

魔法陣から次々と解放される魔力弾。ビシュムに向かっていくその途中で全ての魔力弾が合流。巨大な魔力の束となり、ビシュムへと叩きつけられた。

 

 

地上からは竜巻。上空からは魔力によって板挟みとなったビシュムは二重の圧力に苦しみながらも信じられなかった。なぜ、自分がここまで追い詰められているのか。

 

 

「ナぜ…なゼ貴女たチのようナ人間どこロか亡霊でモない輩にィ私がっ…!」

 

 

「貴女には分からないでしょう…!いえ、かつては私も貴女と同じだったかもしれません」

 

 

自分の過去を改変するという理由で聖杯を求め戦いに参加したセイバー。自身の望みを叶える為に動いていたという点では、ビシュムと共通しているかもしれない。だが、セイバーとビシュムは決定的な違いがあった。

 

 

「貴女のように、自分以外を救おうとしない輩には一生理解できないことよっ!!」

 

放つ魔力を強めるキャスターがセイバーに続いた。自分はセイバーのように高潔な思想を持って聖杯戦争に参加したわけではない。そういった意味ではセイバーより自分の方がビシュムに近いだろう。しかし、自分以上に大切な存在が生まれた。

この世界に存在していられる限り、傍にいたいというマスターが。

 

キャスターはもし、ビシュムがシャドームーンを心より慕っていたというのなら躊躇していたのかもしれない。だが、ライダーの指摘に図星を突かれて動揺した姿を見てはっきりと決めていた。

ビシュムには一片の情けは無用だと。

 

 

「さぁ、今ですッ!!」

「さっきの借り、返してあげなさいッ!!」

 

「ナぁッ!!!」

 

 

セイバーとキャスターの声に応えるように現れたのは、天馬に騎乗し、宝具を起動させていたライダーの姿。ビシュムは自分に迫るライダーの姿に唯一自由のとなった嘴を解放し、破壊光線を放ったが…

 

 

「…貴女に思い知らせてあげます」

 

 

魔力がライダーとペガサスを包み、ビシュムの破壊光線を拡散して弾き飛ばす。

 

 

「他の誰かを守る為に戦う。その思いがどれほどの力を与えてくれるかを…あの人のように!!」

 

 

強く手綱を握ったライダーとペガサスが流星と化してビシュムに迫る。その中で、白色となった星に『赤い力』が混じっている事にビシュムは目を見開いた。

 

 

「ナっ…!?何故貴女なドがッ…きングスとーンの力をォ…!?」

 

 

「…コウタロウ、私に力をッ!!」

 

「『騎英の手綱』ッ!!!」

 

 

ライダーの咆哮と共に赤色の彗星となった光はビシュムを蒸発させた。

 

 

ビシュムは最後の瞬間まで認めることが出来なかった。マスターと共に同じ道を歩み続けたライダーが、自分の求めた力を掴んでいたことを。

 




一緒に歩んでいたか、太鼓持ちでしかなかったかの違いでした。

お気軽に感想を書いて頂ければ幸いです。ではまた来年!!

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