Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

76 / 80
GP、タイトル通り3号が中心となったお話でしたね。負けじとBLACKも目立ってくれて嬉しかったのですが、わがままを言えば昨年のXや555並みにガッツリ絡んで欲しかったところ…

では、番外編をお送りいたします!




番外編①

日が沈み月が街を照らす頃、義妹に伝えていた帰宅時間をとうに過ぎて家の前へとたどり着いた間桐光太郎は深くため息を着きながらヘルメットのバイザーを上げる。

 

「参ったな…」

 

バイクを押してガレージに移動しながら、現在光太郎が抱えている事情の説明を頭の中で組み上げていく。説明というより、言い訳かなどと思いながらも本日の出来事を振り返った。

 

大学の帰りに金髪の青年に捕獲され、連れて行かれた先はいつものゲームセンター。しかし目当ては肝心のゲームではなく、入り口前に設置されているガチャガチャであった。

商品は最近流行っているアニメのキャラクターがチェスの駒となっているものであり、数百分の一の確立でレアな駒が紛れているらしい。

後に分かったことだが、青年は懐かれている子供達にせがまれて買い漁っているようだ。つまり、子供たちの『人数分』のレア駒を揃えるまで回し続けるつもりのようであり、光太郎は両替とダブったカプセルを持ち歩く係に任命されてしまう。

無論、その店で品切れとなった場合は次への店へ移動し、無くなれば次へと無限と思われるループが続いていき、日が傾き続けた頃にようやく目的とした数に達成し、解放されたのであった。

 

問題はその後である。

 

金髪の青年から褒美として伝えられたゴルゴムによる地殻破壊の実験が新都の外れにある研究施設で行われているとの情報を聞いた光太郎はもっと早く教えてくれと言い捨て、急ぎ向かった。

 

結果としてはゴルゴムのハサミムシ怪人を倒し、実験を潰す事に成功したのだが、変身前に遭遇した怪人の不意打ちにより光太郎の背中が切り裂かれてしまう。

背中の傷は変身時のエネルギーによって回復したが、衣服はそうはいかない。下に着ていたTシャツは血液が付着しているので処分すると諦めていたがは問題はジャケット。

 

光太郎のお気に入りであった茶色の革ジャンは無残にも避けてしまい、首回りを温めてくれた襟のボアもTシャツ同様に血がしみ込んでしまった。もはや使い物にはならないだろう。

 

(貯金削ってまで買ったのになぁ…)

 

トボトボと玄関を潜る光太郎はこの後に待ち受けているであろう弟妹へどう謝罪と報告をすれば良いかと頭を捻る。しかし、そんな悩みなど吹き飛んでしまうような事態が起きていた。

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………」

 

 

 

 

「…………………………………………」

 

 

 

 

 

 

(え~…何この状況?)

 

 

口には出さず、正直な感想を心の中で呟く光太郎が見たのは、リビングで慎二と桜が互いに背を向け、無言で腕を組んでいる姿であった。

 

慎二の眉間には普段の3割ほど深く皺が寄せてあり、桜はプゥっと頬を膨らませている。共通しているのは、2人とも機嫌は宜しくないということだろう。

 

(ら、ライダー…)

(ハイ)

 

この空間を支配している重たい空気に耐えられない光太郎は思わず自分のサーヴァントへ念話を求めた。霊体化しているので姿こそ見せないが光太郎の呼びかけに応じたライダーは光太郎が求めている情報を問われる前に報告する。

 

(私が偵察から戻ったのはマスターより2分程前…その時既に貴方の弟と妹はあの立ち位置でした)

(あ、ありがとう…)

(では、引き続き外の警備に当たります)

 

事務的に会話を終了させたライダーの存在はその場から消える。本人の言った通りに家の外で見張りに向かったのであろう。

 

(打ち解けるにはまだ時間がかかるかな…?いや、直視出来ない俺も俺だけど)

 

召喚以来、まともに口を聞けていない自分のサーヴァントへどう接するべきかと同時に、自分の美女への苦手意識もどうにかしなければ…と課題が次々に増えていくが今すべきことを優先的にやっていこうと光太郎は行動に移る。まずは自分が帰ったことを報告せねばならない。

 

「た、ただいま2人とも!」

「あ、お帰りなさい!」

「…おう」

 

遅くなりながらも自分が帰宅したことを伝えると桜と慎二は普段通りに挨拶してくることに安堵した光太郎。どうやら気にし過ぎたなと軽い気持ちで一体何があったのかと聞いた直後…

 

「光太郎は知らなくていい」

「兄さんは気にしないで下さい」

 

言い方が違うだけで同じ返答を光太郎へ伝えた2人は一度目が合う『フンッ!』と鼻を鳴らしてすぐに視線を逸らしてしまう。

 

喧嘩は珍しくない…というより、泣き虫だった桜が慎二と喧嘩が出来るまで精神的に成長したことが喜ばしいし、慎二も自分を押さえ、癇癪で暴力を走るようなことが無くなったことに関心するところではあるはずなのだが、今回は相当根深いようである。

 

普段の喧嘩ならば互いに考えている不安を光太郎にぶつけ、どうにか間を取る意見に落ち着かせる事が多かったが、仲裁役の光太郎が蚊帳の外となってはまとめることすらできない。

 

今回の喧嘩の原因を聞き出そうとする光太郎だったが頑なに2人が話そうとせず、どうにかきっかけと掴もうと夕食時に本日自分の身に起きた出来事を話して場の空気を和ませようとした。

 

 

「…………………………………」

「…………………………………」

(思った以上に沈黙が痛い…)

 

四角のテーブルの席位置は桜と慎二が向かい合う形で座り、間が光太郎の席となっている。いつもは桜お手製の洋食で舌鼓を打ちながら談話を弾ませているはずなのに、今日は食器の音しか響かない。だが、負けてなるものかと光太郎は話を切りだず。一秒でも早く、この状態を脱する為に。

 

「じ、実は今日さ―――」

 

大学の講義が終わった後の経緯を話していく光太郎。金髪の青年に捕まり連れ回される所まではいつもの事であると認識されてしまっているのでまるで反応は無かったが、ゴルゴムの怪人と戦ったと話した途端に立ち上がり、身を乗り出して光太郎へと詰め寄った。

 

「大丈夫なんだろうなッ!?」

「怪我とか、していませんよねッ!?」

 

無言で食事を進めていた2人の態度が急変したことに驚いた光太郎はむせ返し、呼吸を整えから大丈夫だと心配する慎二と桜へ伝える。義兄がこうして無事に自分達と食事をしているということなら本人の言う通りなのだろうと安心した2人はゆっくりと着席した。

 

「全く…驚かせんないでよ」

「本当ですよ…」

 

同じく長兄の心配したと態度で表してしまった慎二と桜はハッと目を合わせると再び不機嫌な顔となって食事を再開したのであった。

 

(こりゃ…今日は無理だな)

 

後は時間が解決してくれるのを待つしかない。それに頭を冷やせば明日にでもいつも通りに戻っているかもしれないと光太郎は考えたが、あくまで希望的観測であったと思い知ることになる。

 

 

 

 

 

 

(今日で5日目…)

 

本日は土曜日。光太郎は休みであるが高校生である2人は午前中の授業後には昼を挟んで弓道部での練習がある。原因を突き止めようと会話を試みた光太郎だったがことごとく空振りが続いてしまい、どうすればいいかと自室で頭を抱えている時、自分の携帯電話が振動していることに気付く。

誰であろうと手にした携帯電話のディスプレイを見ると、以外な人物なが表示されている。

 

「もしもし、美綴さん?」

 

2人を関わりの深い人物、弓道部のエースである美綴綾子からの連絡であった。

 

『どーも、お久しぶりです!前に練習試合の応援に来ていただいて以来でしょうか?』

「いや、こちらこそいつも2人がお世話になって…」

 

挨拶を躱す綾子と光太郎は彼女の言う練習試合や大会で見学した時に顔見知りとなって、電話番号を交換していた。もしあの2人の事で相談するかも知れないとのことだったが、タイミングが良く光太郎が相談したい状況となっていた。年下に泣きつくというのは情けないだろうが最早手段は選んでいられない。

彼女の要件を聞き次第、話すとしようと考えをまとめた光太郎であったが…

 

「どうしたんだい?俺に直接電話なんて珍しいけど」

『ああ、そうでしたね。実は部活中に慎二と桜が妙にピリピリしていて、私と衛宮以外が怯えてしまったんですよ…』

(ああ、やっぱり…)

『その空気に耐えられなかった藤村先生が荒療治として2人に備品買いに行くように指示出したんですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『けど、近くの店に行ったのにもう2時間立つのに戻ってなくて…実は帰ってたりします?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜のせいだ…」

「兄さんのせいです…」

 

無表情で責任を擦り付け合う2人は現在新都の外れにある廃工場の一室に隔離されてしまっていた。

 

弓道部顧問の藤村教諭に従い、備品の買い出しに向かった2人を突然数人の男達が追ってきたのだ。男達の目は虚ろで、ブツブツと聞き取れない言葉を繰り返す姿を見て、2人はゴルゴムの刺客と確信する。

おそらく自分達を利用し兄を呼び出そうとしているのだろうが、この場面では逃げるが勝ちである。

幸い地の利はこちらにあるので裏道や狭い道を使いながら1人、また1人と脱落させていったのだが、最後の分かれ道の時であった。

 

「右へ行けば森に入れる!」

「左へ行けば人の多い道に出れます!」

 

と、自分の行く方が逃げ切れる確率が上がると言い合い立ち止まって口論が開始されてしまい、御用となってしまう。

 

 

 

 

掴まってからもやはり無言であるため、慎二は思わず自分達が捕まった場所の内部を眺めるそこはかつて小学校で慎二が上級生に脅されて連れてこられた懐かしき場所ではあるのだが、思い出させてくれるような状況ではない。2人は誘拐した犯人によって手錠をかけられてしまっている。

しかも1つの手錠で慎二の左腕と桜の右腕へかけられてしまっており、身動きが出来たとしても今の2人では呼吸を合わせて脱出など出来るはずがない。

そう考えた主犯は地面へ腰を下ろしている2人を見下ろしなが不気味な笑みを浮かべていた。

 

「クックック…良い様だな貴様等」

 

マントを翻して現れた甲冑を纏った男…ゴルゴムの剣聖ビルゲニアは現在2人が不仲であるという情報を聞き入れ、催眠術をかけた人間を使い拉致を計画したのだ。常人ならば怯えるような迫力で現れたはずだったのだが、

 

 

 

 

「大物ぶってないでさっさと光太郎に負けてこいよ。どうせ今回もウッカリで先走って負けるんだろうし」

「そして可能なら帰らせて下さい。まだ買い物の途中なんです」

 

冷たく言い放つ2人の発言を聞き、額に青筋が走ったビルゲニアは腰に下げていたビルセイバーを抜き、地面へと突き立てたる。それによって亀裂が走ったのは突き立てた部分だけではなく、慎二と桜の足元にも及んでいた。

 

「貴様等…自分の立場というのが分かっていないようだな…」

「分かった上で言ってるんだよ。人質ってのは無事でいることに意味がある。もし僕たちに何か怪我でも負わせた場合はどうなるかは、一番わかってるんじゃん?」

「ぐぬぅ…」

 

脅したつもりが逆に脅されてしまったビルゲニアは余裕を完全になくし、生意気にも自分へ意見する人間をなぶり殺しにしたい衝動をなんとか抑えるとビルセイバーを引き抜き、踵を返す。

 

「フン、貴様など仮面ライダーをここまで誘導させるための餌に過ぎん!特等席で貴様等の兄が死ぬ様を見ているがいい…」

 

ビルゲニアの勝ち誇っている表情を見た慎二と桜は目を合わせる。どうやら今回の作戦はここでしか出来ない事のようだと察した2人は頷くと慎二は背中を向けて歩を進めているビルゲニアに声を放つ。

 

「今回は随分と余裕みたいだね。ない知恵使って光太郎へのドッキリでも思いついたの?」

「ククク…冥土の土産に聞かせてやろう。貴様等の兄は、変身するまでもなく、俺によって処刑されるのだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここか」

 

光太郎は2人の隔離されているであろう廃工場の奥へと進んでいく。

 

綾子からの情報を聞いた直後、バトルホッパーと共に家を飛び出した光太郎はライダーに協力を仰ぎ、2人の捜索を開始。GPSを元にスムーズに後を追う事ができたのだが、敢えて場所を知らせ、誘導された可能性も高い。

そしてこのような見え透いた手を使う相手などゴルゴムの剣聖以外にいない。

 

(いや、奴のことなど後回しだ)

 

まずは慎二と桜の無事を確認しなければならない。冷静にならなければと言い聞かせながらも道を隔てていた扉を蹴り破ったその奥には、窓から差す光の元に立つビルゲニアの姿があった。

 

「よく来たな。間桐光太郎ッ!!」

「ビルゲニア…」

 

もはや隠す必要のない怒気を放つ光太郎の顔には改造手術の痕がくっきりと浮き出している。その姿を滑稽だと言わんばかりに嫌らしく笑うビルゲニアは指を鳴らすとその途端に床に設置されていたコードで繋がれた機械4基が独りでに浮き、光太郎を囲い始めた。

 

「これは…」

 

見れば機械の先端にはアンテナが付けられており、何かを照射するための兵器と推測する光太郎へビルゲニアが誇り気に説明を開始する。

 

「その機械は変身妨害光線発射装置!貴様の持つキングストーンの力を封じ、仮面ライダーどころかバッタの姿にすらなれんのだ!」

「…っ!」

 

今回、単純な人質で自分を呼び起こしたのは変身を封じる兵器を用意したことでの自信があった為か。しかし、発射される前に変身…せめてバッタ怪人の姿になれさえすれば回避は可能となると力を解放しようとした光太郎へビルゲニアは見せつけるように小型の機械を掲げる。そこには、髑髏のマークが入ったスイッチが組み込まれていた。

 

「おっと動くなくなよ…もし動けば、貴様のかわいい弟と妹は死ぬことになるぞ?」

「貴様…っ!!」

「そうだ…貴様が少しでも妙な仕草をすれば、小僧と娘が監禁されている部屋に毒ガスが放たれる…」

 

クククと笑うビルゲニアの脅迫に最悪のイメージを浮かべてしまう光太郎は拳を強く握りながらも、敵の卑怯な手段に従う他なかった。光太郎が怒りに震えながらも自分の掌にある姿を目にし悦に浸るビルゲニアはゆっくりと手を上げる。今度こそ、今度こそ仮面ライダーを倒し、キングストーンを手に入れる。そうすれば創世王へとまた一歩近づけると踏んだ剣聖は叫びと共に手を振り下げた。

 

「発射ぁッ!!」

 

ビルゲニアの号令と共にスイッチが入る機械。その先端にあるアンテナから光太郎へと照射され、仮面ライダーとしての力を失ってしまう。

 

 

 

 

 

だが、身構える光太郎は自分の身に何も変化がないことを疑問に思い、見渡してみると機械から光線を発射される様子がいつまでもなく、命令を下したビルゲニアも表情を焦りへと一変させ、どうなっているのだと叫んでいる始末だ。

 

機械の方も上下に動いたり、スイッチを何度もいじられたりと、まるで透明の生物が調子を確かめているような光景だったが、光太郎は気にする余裕はない。なぜならば、騒ぎの原因となった人物達の登場に目を見開いてしまったからだ。

 

「だから言ったじゃん、詰めが甘いってさ」

「な、何故貴様等が…ッ!!」

 

光太郎が蹴破った入り口に立つ慎二と桜の姿があった。敵味方問わずに混乱する中2人が無事でいたことに安心しつつも、この場に現れたということは敵の手を封じたのは…

 

「もしかしたらって思って鎌をかけて見たら、思った以上に話してくれて助かったよ。その変な機械が電気が必要だってね」

「それを聞いた私と慎二兄さんで、光線を発射する電源を切らせてもらいました」

 

2人はビルゲニアから光太郎の変身を封じる機械を用意したと聞き、部屋を脱出した直後に機械のケーブルを伝い未だ生きていた工場の電源のブレイカーを落とし、秘密兵器の無力化させることに成功していた。

 

「馬鹿な…貴様達は部屋に閉じ込めていた筈だッ!錠までしかけたというのにそれをどうして…」

「だから何度も言わせんなって。詰めが甘いんだよ」

「見張りをつけなかったのが失敗でしたね」

 

ビルゲニアの問いに慎二は片方の靴を脱いで手に取ると、靴の踵部分を指でコツコツとつつく。

 

 

 

 

ビルゲニアが自信たっぷりに自分の企てた内容を語り、慎二達の部屋を去った後。足音が完全に途絶えた慎二と桜は周囲に気を張り巡らせながら行動を開始した。

 

「…行った見たいです」

「それじゃ、動くとするか」

 

慎二は唯一自由となっている右腕で靴の踵部分をスライドさせる。そこにはもしもの時に控えて小型の工具が仕込まれていた。先端を入れ替えられる小型の精密ドライバーを手にした慎二は手錠の穴に差し込み、何度か内部を押し込むことで解除を成功。同様に桜の手錠を解除するともう一つの関門である施錠された扉を前にする。

今度は桜が靴を手に取ると、同じく踵の部分を取り外し、長さ5センチ前後の長方形を繋げていく。最後に取り付けた部分のケースを外すと、カッターナイフのような刃物が取り付けられた武器が完成。

それは魔力を込めることで刃に宿る温度が自在に調整できる慎二作成の道具であった。

 

魔力を込め、金属を簡単に切断出来るような状態まで熱を高めた所で扉の隙間から錠の切断。脱出に成功した後に2人は兵器に必要とされている電気設備を探しに回っていたということだ。

 

「き、貴様達、仲違いをしていたのではなかったのかっ!?」

「こんな時にも喧嘩続けてるほど、バカじゃないよ」

「私たちを甘くみないほうがいいですよ?」

 

喧嘩中であれば協力することもないと踏んでいたビルゲニアだったが、2人に返されてしまった回答に空いた口が塞がらず、プルプルと怒りに震え始めてしまう。

 

 

「は、ハハハ…」

 

乾いた笑いがもれてしまう光太郎。本当に頼もし過ぎる義弟と義妹だ。自分の表情に気が付いたのか、慎二はドヤ顔で鼻を鳴らし、桜は笑顔で手を振っている。そして敵は、好き放題にやらかした人質相手に何もしない相手ではなかった。

 

「おのれぃ…あの2人を始末しろッ!!カメレオン怪人ッ!!」

 

怒りの余りにブルブルと唇を震わせるビルゲニアの命令が工場内に響くと、浮いていた機械の内1台が床へ落下。その場に現れたゴルゴムのカメレオン怪人は涎まみれの下を揺らしながら慎二と桜へ迫るが、その寸前にどこからともなく現れた鎖によって弾き止されてしまう。

 

「ゲギャッ!?」

 

ゴロゴロと床を転がるカメレオン怪人を吹き飛ばした存在…霊体化を解いたライダーが2人の前に姿を現した。

 

「ライダーッ!2人を頼むッ!!」

 

光太郎の言葉に無言で頷いたライダーは慎二と桜の背中を押し、工場を後にする。逃がさまいと残るカメレオン怪人も姿を現し、ライダー達の後を追いかけようとするが、入り口の前に立った光太郎が道を阻む。

 

「お前達…覚悟しろッ!!!」

 

 

一歩前に出た光太郎は右半身に重心を置き、両腕を大きく振るうと右頬の前で握り拳を作る。

 

ギリギリと音が聞こえる程込めた力を解放するような勢いで右腕を左下へ突出し、素早く右腰に添えると入替えるように伸ばした左腕を右上へ突き出す。

 

 

「変っ―――」

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように、ゆっくりと右半身から左半身へと旋回し――

 

「―――身ッ!!」

 

両腕を同時に右半身へと突き出した。

 

 

光太郎の腹部にキングストーンを宿した銀色のベルト『エナジーリアクター』が出現し、光太郎を眩い光で包んでいく。

 

その閃光は光太郎の遺伝子を組み換え、バッタ怪人へと姿を変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

エナジーリアクターから流れ続ける光はバッタ怪人を強化皮膚『リプラスフォース』で包み込み、黒い戦士へと姿を変えた。

 

 

左胸に走るエンブレム。触覚を思わせる一対のアンテナ。真紅の複眼。そして黒いボディ――

 

 

「仮面ライダー…ブラァックッ!!」

 

変身を遂げた光太郎…仮面ライダーBLACKは変身の余剰エネルギーによって発生した蒸気を振り払い、カメレオン怪人を率いるビルゲニアに向けて指を差す。

 

 

「ビルゲニア…自分の目的の為に慎二君と桜ちゃんを巻き込んだことを俺は決して許さんッ!!」

「ほざけッ!!者共、透明化して攻撃しろッ!!」

 

周囲の風景へと溶け込んでいく前にカメレオン怪人を叩こうと飛びかかる光太郎だったが一歩遅く、怪人達の姿を見失ってしまった。

 

「しまった…グァッ!?」

 

背中、足へと次々に打ち付けられていく見えない攻撃に翻弄されながらも光太郎は複眼を輝かせ、マルチアイを発動。カメレオン怪人達の位置を把握しようとするが…

 

「させんぞッ!ビルセイバー・ダークストームッ!!」

「く、これは…」

 

盾であるビルテクターの前にビルセイバーを翳すことで発生する突風により視界を封じられてしまった光太郎の手足が異なる方向へと強引に引かれいく。手や足に絡まった嫌な感触から、カメレオン怪人達が舌で自分の手足を縛っているのだと考えた光太郎はこの場を凌ぐ手段を思いついた。

 

「さぁ、そのまま仮面ライダーを五体バラバラにしてしまうのだッ!!」

 

ビルゲニアの命令によって拘束が強まる痛みに構うことなく、光太郎は腕を左右に展開する。

 

(俺の手足を押さえているということはどこかに身を隠していないで、数メートル先にいる…ならば、充分に『射程内』にいるはずだ!!)

 

そして両拳をベルトの上で重ね、キングストーンの力を解放、周囲に眩い光を放っていく。

 

「キングストーンフラッシュッ!!」

 

余りの眩しさに目を抑えるカメレオン怪人達の保護色が完全に剥がれていく。

 

「いまだッ!!」

 

自分の身体を拘束していた舌を振りほどき、それを全て両手で掴むと自分を軸にして全力で振り回し始めた。

 

「ウオォォォォォォォッ!!」

 

『ギシャーーッ!?』

 

悲鳴を上げるカメレオン怪人を先程まで手にしていた機械の上へと叩きつけると、小規模ながら爆発が起きる。爆破によるダメージでふら付くカメレオン怪人達に向けて跳躍した光太郎は落下しながらもキングストーンの力を込めた拳を次々と叩きつける。

 

 

 

「ライダァー、パァンチッ!!」

 

エネルギーを纏った拳に殴り飛ばされた4体のカメレオン怪人は断末魔の叫びを上げ、次々と燃え上がっていく。その様子を構えを解きながら眺めていた光太郎は背後に迫る存在の方へと振り返った。

 

「死ねぇッ!!」

 

ビルセイバーを横薙ぎに振るうビルゲニア。狙いは光太郎の力の源となっているキングストーンを宿すベルトだ。怪人に気を取られ、隙を伺っていたビルゲニアにとっては完璧な奇襲だった。だがそれは、あくまでビルゲニアの存在が意識の外にいた場合だ。

 

「なっ…」

 

ビルゲニアの刃は光太郎の腹部に届くことはなかった。

 

ビルセイバーの刃は光太郎の左肘と左膝に挟まれるという形で受け止められしまった。

 

「…お前の隠そうともしない殺気に、俺が気付けないとでも思ったかッ!!」

 

それにビルゲニアに向けている怒りは収まった訳ではない。カメレオン怪人と戦いながらも、光太郎の意識は常にビルゲニアに向けていたのだ。光太郎は右腕でビルセイバーの刃を掴み、不意打ちを防いだ左腕と足を離すと左手で手刀を作り、赤い刀身を目がけ全力で振り下ろした。

 

手刀が振り下ろされたと同時に床へ高い音を立てて落下するビルセイバーの刀身。ありえるはずのない結果に狼狽えるビルゲニアはだた、愛刀が砕かれたという現実を受け入れられないでいた。

 

「ば、バカな…ビルセイバーが、我が愛刀が…」

 

そしてその好機を逃さない光太郎ではない。

 

両腕を左右に展開し、ベルトの上で重ねた直後、ベルトの中央で赤い閃光が放たれる。

 

右腕を前方へ伸ばし、左腕を腰に添えた構えから両腕を大きく右側へ振るうと左手を水平に、右拳を頬の前へと移動する。さらに右拳を力強く握りしめると地面を強く蹴り、跳躍。

 

 

 

「ライダー―――」

 

 

エネルギーを纏った右足をビルゲニアに向けて落下し、

 

 

「―――キィックッ!!」

 

 

ビルゲニアの胸板へと叩きつけた。

 

 

「ぬぅ…グオォォッ!!」

「何ッ!?」

 

光太郎の必殺技をその身に受けても2、3歩後退するだけで留まり、胸筋を張ることで光太郎を押し返してしまう。

 

押し負けた光太郎は着地しながらも構えと解かず、怒りに震える剣聖を警戒。だが、ビルゲニアは身体を光の球体へと変えると、捨て台詞を残して姿を消すのであった。

 

 

「覚えていろ仮面ライダーBLACKッ!!次こそは貴様の首を取って見せるッ!!!」

 

 

ビルゲニアの気配が完全に消えた事を確認した光太郎は工場を後にしようと一度背後を振り返る。目に入ったのは、今回その猛威を振るうことなく破壊されてしまった自分の変身を封じる機械。あそこまで壊れてしまえば、再び使用されることは無いだろうとその場を後にする。

 

 

 

 

しかし、その残骸がゴルゴム以外の者に回収されてしまうとは、この時の光太郎は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、喧嘩の原因って…」

 

ライダーと共に帰宅した慎二と桜へ、光太郎は今回2人が揉めていた原因を今回は真っ向から聞き出した。2人はもう意地をはらず、観念したようにその理由を説明する。

 

「その…すごく恥ずかしい話なんですけど」

「…光太郎へのプレゼントで揉めてた」

 

 

 

事は光太郎がハサミムシ怪人を撃退して帰宅する1時間程前に遡る。

 

 

 

桜が通販のカタログを持ってリビングでテレビを眺めていた慎二へと尋ねたことから始まった。

 

「慎二兄さん、光太郎兄さんへの誕生日プレゼントなんですけど」

「あ~、そういえばそんな日があったね」

「もう、兄さんったら」

 

苦笑いしながらカタログのページを捲る桜は冬物のジャケットの特集部分で手を止める。

 

「あ、これなんていいんじゃないですか?」

「ふ~ん。悪くないんじゃない?」

 

桜が指差したのはシンプルながらも丈夫を売りにしている一押しの商品であり、慎二と桜の小遣いを足せば何とか届く金額だ。慎二への同意も得られたことだし、後決めなければならないのは、衣服であれば最も大事な点…ジャケットの『色』

様々な色がそろっているが、その中で光太郎に似合うとしたら…

 

「黒だな」

「白ですね」

「はっ?」

「えっ?」

 

 

互いに信じられないという目で向き合い、ここから話がこじれ始めてしまった。

 

 

「…アイツには黒でいいんだよ。普段ちゃらんぽらんなんだから服装くらいダーク系で決めておかないと彼女の1人も出来やしないだろ」

「光太郎兄さんの人として明るいイメージに合わせてると、白になるんです。どうしてわざわざ暗いイメージにしなければならないんですか?」

「何言ってんの?そんな白なんかにしたら絶対あいつ汚して帰って来るぞ?それだったら汚れても目立たない黒でいい」

「光太郎兄さんだってそこまで子供じゃないからしっかり自分で洗濯します。もし慎二兄さんの言う通りだったら光太郎兄さんがだらしのない人と言いたいんですか?」

「そうじゃない。光太郎は普段戦ってばっかなんだから少しでも手間省ける方が良いって言ってんだよ!」

「確かに光太郎兄さんはいつも頑張って戦ってくれてます。でも、だからこそ戦いを普段忘れられる為にも明るい色がいいと思ったんです!」

 

 

2人の主張は段々と熱くなっていき、自分達の意見を曲げないまま目を合わせなくなったと言う…

 

 

 

要は、光太郎を思い合っての喧嘩であった。

 

 

 

「………………なんか、ごめん」

「…なんで謝るんだよ」

「私達こそ、ごめんなさい」

 

 

遠からずとも自分が原因と知った光太郎は謝罪するが、2人の様子を見る限り意見をどちらかに合わせるつもりは未だないらしい。

 

2人の自分を思う気持ちは嬉しいが、これ以上この問題で慎二と桜が争って欲しくないと考える。それにはどうすればいいかと悩む光太郎の背後から今までの会話を聞いていた人物から一言、意見が聞かされた。

 

 

 

 

「ならば、間をとっては如何でしょうか?」

 

 

 

 

声のした方へと3人が振り返ると同時に意見を述べた存在は再度霊体化して、去って行ってしまう。

 

 

「間…か」

「間…ですか」

 

再び服のカタログへと目を向ける慎二と桜。

 

ライダーの言葉は、正に鶴の一声となったのだった。

 

 

 

 

数週間後。

 

 

「慎二君。今日も外を回って来るよ」

「はいはい…噂の通り魔か?」

「うん、『切り裂きジャック』だったかな。やり方からしてゴルゴムの仕業に違いない。じゃ、行ってきます!」

 

そして光太郎は手放した茶色の革ジャンに代わり、愛用となった『グレイ色』のジャケットを羽織ると外で待たせているサーヴァントの元へと向かう。

 

「…来年には、2色準備するかね」

 

と、一度だけ例のカタログへ目を向けると再び魔道書を読み始める慎二であった。

 

 

 

「じゃあ、ライダー。すまないけど頼む」

「マスターの命令とあらば」

「そして、ありがとう」

「なんのことでしょうか?」

「いや、なんでもない。さぁ、行こう!」

 

そしてバイクに搭乗した光太郎は夜の新都へと疾走する。

 

 

 

光太郎がサーヴァントであるライダーと共に迎える『聖杯戦争』が幕を上げるまで、あと数日―――

 

 

 




時系列には1話の前といったところでしょうか。その為ライダー姐さんは全くデレておらず、光太郎にイライラしていた時期です。
戦闘場面が雑だったのが反省点…

お気軽にご感想など書いて頂ければ幸いです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。