Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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このお話は前回を投稿した直後に作り始めたのですが保存をミスり消去したと思い込んでいたらドッコイ生きてたフォルダの中。にあった文を手直したものです。

前回の後書きに少々リンクする内容と、あくまで慎二君がこの世界の慎二君であるという事を前提で読んで頂けばと思います。


ちょうど合計80話となるこの話。では、どうぞ


綺麗すぎた、かな…


番外編④

穂群原学園の弓道部には2名の男子生徒が所属している。

 

間桐慎二と衛宮士郎。

 

性格も考えもまるで違う2人ではあるが、学園内では知らぬ者がいない親友同士である。それを聞いたら慎二は決して認めないであろうが、照れ隠しであると周りが判断してしまうため反論を半ばあきらめかけている。

 

2人が所属する弓道部の部長、美綴綾子は慎二と士郎の会話や行動を見るのが楽しみの一つになっていた。

 

それは学園の一部に存在する邪な願望を抱く女生徒と同じく、薔薇を背景に2人が無駄に顔を接近させる光景を望んでいるわけでは決してない。いや絶対。

 

笑いながら呼びかける士郎にぶっきらぼうに答える慎二。時折、士郎の天然な部分に全力で突っ込みをいれる慎二の姿など笑いを堪える方が大変なことではあるが、あくまで一面のひとつ。綾子の関心は2人そろって貪欲にまで互いを高め合っている点だった。

 

もとから要領が良く、呼吸をするかのように技術を習得していく天才肌である慎二と切磋琢磨に練習を重ね、的に当てる事を当然であるかのような結果を出していく士郎。互いの長所や短所を言い当て、それを克服しつつ相手に負けないようにさらに鍛錬していく2人の姿を見て触発される部員も多い。

 

しかし部長としては歓迎するべきではない状況がある。一部、成績が著しくない者や高校から弓道を始めた2人の成長に嫉妬する者があらわれ始めていた。が、それによる衝突などが起きないのは、後輩である桜の影響が強いだろう。

 

慎二の妹であり、これまた士郎の妹分である桜の懐きようといったら尾を振る子犬を見るようであり、嫌な空気を緩和してくれる。

 

ただし、桜も2人に付いて回るオマケなどに収まらない。

 

2人に負けるとも劣らない練習熱心であり、顧問である藤村大河女史すら舌を巻く程に上達が早い。これならば将来弓道部を引っ張ってくれる逸材となるだろう。

 

 

 

 

そんな桜に慕われている2人へ綾子が何よりも関心を寄せる所は、彼等が実践していることはあくまで目標に辿るまでの通過点に過ぎないという所だ。両名に影響を受けたうちの1人として、あれ程の活躍を見せる2人が現状に満足せず、目標とは何かと綾子は尋ねたことがある。

 

衛宮士郎の場合は本人の口から聞くよりも早く、顧問の藤村先生によって暴露されてしまった。

 

 

『正義の味方』

 

 

最初聞いた際は理解するまでに時間をかけてしまったが、その後に士郎自身から本人から聞く限り、それは揺るぎない決意が伺えた。

 

 

衛宮がそう言うのだから、そうなのだろうと細かいことを気にしない綾子は納得した上で、慎二に尋ねたところ…

 

 

 

 

 

 

 

「お前に関係ないだろ」

 

 

 

 

 

 

これである。

 

 

言い方に刺があったかも知れないが慎二との付き合いが長い士郎から見れば照れ隠しらしいのだが、元々は負けず嫌いの綾子にとってはこれが引き金となり、とにかく理由を聞き出そうと躍起になってしまった。

先程は細かいことは気にしないなどと言いつつも、慎二の性格を把握していてもやはり気になるものは気になる。

 

 

慎二が頑なに口にしようとせず、彼をそこまで駆り立てるモノはなんなのか…?

 

 

 

彼女が好奇心に負けてしまった結果、とんでもない事件に遭遇してしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は弓道部も休みであり、外では今にも雪が降らさんと雲が空を覆っていた日の放課後。

 

図書室にて慎二は外国語の辞書を横に積み上げ、数日分の新聞を机に広げて記事に目を通しているとう一見首を傾げてしまう調べものを行っていた。

 

そんな姿を見かけた綾子は慎二とは反対側の椅子へと腰かけるとよっと気さくに手を上げて挨拶するが、慎二は一度顔を上げてるとすぐに新聞へと視線を戻す。

 

『面倒な奴が来た』と言わんばかりな顔をして。

 

「…正直なのは結構だけど、もう少し愛想をもったらどうだい?」

「遠坂を見習えってか?僕には無理な相談だね」

 

これは以外、と綾子は慎二の発言に驚きを隠せなかった。まさか自分や親しい人物以外に彼女の猫かぶりを見抜いていた人物がいたとは…と綾子は慎二の観察眼に感服していたが、遠坂凜の実妹である桜から今日の実姉情報が間桐家に日々報告されているとは今後とも知ることはないだろう。

 

 

「それで、弓道部部長が何用かな?ひょっとして、僕とお茶でも付き合ってくれるのかい?」

「私が相手しなくたって、慎二には声かけてくる子がたくさんいるんじゃないの?」

 

相手の軽口に乗った綾子はわざとらしく尋ねながら周囲を見渡す。見れば図書館の利用者を装って慎二に接近を企んでいる輩…女子生徒が何人かを発見する。彼女達から見たら自分はさぞうっとうしい存在なのだろう。睨んでいる生徒すらいる状態だ。

 

 

「そうだね。僕みたいな出来る男となると女の子達から来てくれるから、困ることはないな」

「…自分で言っちゃうんだ」

 

呆れるを通り越して感心する綾子ではあるが、この慎二という男。彼自身が言った通りに女子からお誘いを受けることは日常茶飯事であり、放課後にどこかでお茶をすることも珍しくはないが、その先には決して進もうとしないのである。

 

以前に士郎から聞いた話によると、その日も名前すらしらない女子から声をかけられ、新都にある喫茶店に入るのだが、必ず1時間もしないうちに話を切り上げて帰宅しているらしい。

それも女生徒を不快にさせるような立ち去り方をしないので、無駄に期待させてしまっているのではと友人の行動を危惧していた。

 

誘いを無碍せず、丁重に去っていくこの手際。もしや彼が目指していることと関係があるのかと思い、遠回しに理由を聞いたことがあったが…

 

 

 

「夕飯前に帰らないと怖いんだよ…」

 

 

と視線を逸らして答えた慎二は若干震えていたようにも思えた。

 

その時、綾子の脳裏にエプロン姿で絶対零度の微笑みを浮かべているかわいい後輩の姿が浮かび上がったが、その幻想を打ち切ったのは慎二の真面目な声であった。

 

「それに、そんな事に割ける時間はない」

 

慎二の視線は最近新都で目撃される怪物騒ぎの記事ばかりであると綾子は気付いたが、それよりも記事を睨み付ける慎二の顔へと目を向けてしまっていた。

 

彼が年相応の遊びより優先することとは、一体なんなのだろうと考えていると一通り新聞を読み終えた慎二は続いて鞄から単語すら読み取ることが難しい本と辞書を照らし合わせる作業を始める。綾子はそんな慎二の姿を眺め続けていた。

 

 

 

そして2時間以上が経過して日はとっくに沈み月が浮かんでいる頃。結局教師に声を掛けられるまでまで図書室で調べものを続けいた慎二に付き合きあい、ようやく帰路へとついた綾子はさっむ~とマフラーを首に巻く。

 

「…おい」

「え?」

「なんで僕たち仲よく下校してるわけ…?」

「かまやしないでしょ?一緒にいたってあれこれ噂が立つわけじゃないんだし」

「そりゃそうか」

「…すぐに肯定されるってのもなんか釈然としないわね」

 

こんな会話が続いていく中、慎二は突然立ち止まると自販機の前に立ち、ホットコーヒーを2本購入。1本を綾子へと投げ渡した。

 

「えっと…どういう心境?」

 

まさかあの慎二にコーヒーが奢られるとは思いもしなかったのか、感謝よりも疑問が口に出てしまった綾子に慎二は目線を合わせず缶コーヒーのプルタブを開く。

 

「…理由は知らないけど部活もないのにこんな時間まで付き合わせたことになったし…文句を言われる前に手を打っただけだよ」

「私が勝手に付き合っただけだってのに…」

 

苦笑しながら慎二に続いてコーヒーに口をつける綾子は、やはりどうしても気になることを問いただすにはいられなかった。

 

「…慎二、どうしてそこまで色々と頑張ろうとするの?」

「……………………」

「衛宮の場合はさ、これ以上ないってぐらいにそういう自分に成りたいって気持ちが強いから納得できた。でも、慎二の場合は…」

 

と、綾子は途中で言葉を止めてしまう。この件に関してはもしかしたら『言えない理由』があったかもと知れないと考えた綾子だったが、慎二はやはりこちらに目を向けないまま、ポツポツと質問へと答えていた。

 

「…同じだよ」

「…え?」

「僕も同じ…なりたい自分になるために、足掻いてるだけだ」

 

足掻いている…まるで自分のやっていることが報われないような言い方をする慎二に綾子が訪ねようと敷いたその時―――

 

 

「伏せろ美綴ッ!!」

「キャアッ!?」

 

突如慎二に押し倒される綾子は思わず声を上げる。突然押し倒されたことに気が動転した綾子は自分に伸し掛かりすぐに立ち上がった慎二を見上げる。口元は笑いながらもひどく焦燥していることからただことではないと推測した綾子は彼の視線の先へと目を向ける。

 

 

 

 

「参ったね…『記事』だと新都付近にしか出ないってのに、この辺にも出没してたのかよ」

 

 

 

 

先程まで自分達の立っていた場所へ立っていたのは、異形の姿。慎二が咄嗟に綾子を押し出さなければ2人してあの鋭い爪と牙の餌食になっていたかも知れない。異形・・・ヤマアラシ怪人は涎を垂らしながらジリジリと慎二と綾子へと迫る。

 

「…ッ!?」

 

声を上げない自分を褒めたくなる綾子だったが、それは隣にいる慎二が冷静である姿を見たからだろうか。怪人の出現した時は目を見開いて驚いていたが、今では真っ直ぐ見据えながら綾子を庇うように前に出ている。

 

「美綴…」

「な、なに…?」

 

自分の名を呼ばれ、返事をした途端に綾子の視界を激しい閃光が包む。

 

「な、なによこれッ!?目が…!?」

「走れッ!!」

「ちょ、ちょっと…ッ!?」

 

思わず目を閉じた綾子は自分の手を掴み、引っ張る慎二の言葉に従い視界がはっきりしない状態で走り始めていた。後で何かのうめき声が聞こえるが、恐らく怪人も同様に目にダメージを追っているのだろう。

 

 

「さすが僕お手製の目晦ましだ。けど、まだ改良の余地ありかな」

「なにとんでもないもの作った事暴露してんのあんたッ!?」

 

光の発生源である慎二は自分だけが瞬時にサングラスを着用し、被害を受けずに綾子を連れて立ち去るに至った。後方にいる怪人を警戒しつつ、懐から携帯電話を取り出て操作し、ある人物へと2,3言で通話を終えると綾子の手を握る力を強めて、未だ視界がはっきりしない綾子を連れて逃避行へと集中する。

 

 

 

 

目を閉じたまま、どれほどの距離を走ったのだろうか。

 

綾子は慎二の誘導通りに右に曲がり、左に曲がり、真っ直ぐと、とにかく走り続けていた。

 

途中、どこに向かっているのかと質問するとあの化け物に捕まりたいのかと言われた綾子の脳裏に染みついたあの異形がはっきりと浮かんでしまい、黙って従う他なかった。

 

しかし、目を閉じた為他の感覚がはっきりしているためか、綾子の耳は自分達の背後から雄叫びを上げながら疾走する存在を捉えていた。

 

このままでは確実に追いつかれてしまう。

 

そう、嫌な予感が込み上げた時だった。

 

 

 

ぼやけながらも目が開けるようになった綾子の視界がとらえたもの。

綾子と慎二が走る先からこちらへと向かってくる1台のバイク。

 

しかし、綾子の知るバイクは形状が大きく異なり、ヘッドライトに当たる部分がまるで大きな目のようにも見えていた。

 

さらに接近するバイクに搭乗する者も、人ではなかった。

 

バイクと同じような大きく赤い複眼を持ち、漆黒のボディを持つドライバーはさらにバイクを加速させると慎二と綾子とすれ違い、彼等を追っていた怪人へとバイクごと体当たりをしかけた。

 

 

鈍い音と共に怪人の悲鳴を聞き、ようやく立ち止まった綾子は急ぎ後へと振り返る。

 

月明かりと街灯の下で、バイクを降りた戦士と立ち上がった怪人の戦いが始まっていた。

 

自分の目の前で起きている光景は、果たして現実なのだろうかと頬を抓ろうとした綾子であったが、自分の名を背後で呼ぶ声を聴き、さらに混乱してしまう。

 

「美綴先輩、ご無事でしたかッ!?」

「ま、間桐!?なんで…!?」

 

そこに現れたのは制服姿の間桐桜であった。片手にはヘルメットがあり、後方には白いオンロードバイクが控えているのだがひょっとして…と考える隙を与えずに慎二は桜へと指示を送る。

慎二へ頷いた桜はボケットから赤い縁の眼鏡を取りだずと自分の目へと着用し、綾子の両目をじっと見つめる。

 

「ごめんなさい、美綴先輩」

「な、なによそ…れ…」

 

突然の行動と謝罪を訪ねようとした綾子は先ほどの眩い光にやられた時とは異なる感覚で視界がぼやけていく。

 

(眠い…なんで、急に…)

 

良く見れば桜の眼鏡の縁には細かな文字が刻まれており、レンズ越しに映る桜の瞳が淡く光っているように見えた。

 

綾子は知ることは無いが、この眼鏡は慎二が作成した道具の一つであり、着用した者が魔力を込めることにより目を合わせた者へ催眠をかけることが出来る『魔眼』のような効果をもたらすことができるのだ。その内容は、1時間前の記憶を曖昧にして眠りへと誘うということに限定されてしまうのだが。

 

術が完了し、ガクリと倒れそうになった綾子を支える慎二はもう彼女の記憶に残らないことを前提に、近くで戦いを見守る桜に耳へ届かないように、聞かれた事への回答を口にした。

 

 

 

 

 

 

「お前が言ってた僕の目標…あいつと並び立つことだよ。いっつも好き勝手行動して、全部自分で片付けようとして、心配ばっかりかけるあの駄兄を横で支えられる」

 

 

「そんな自分に、なりたい」

 

 

 

慎二が本音を吐露し、黒い戦士の蹴りによって怪人が消滅したと同時に綾子の意識は失われるのではあった。

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

「ようやく起きたか?」

「慎二…?えっと…ここは…」

 

目を開けた綾子は周囲を見渡すと、そこは商店街近くにある小さな公園のベンチに座っていた。確か、自分は慎二と共に下校をして…その後が想い出せなず懸命に記憶を呼び起こそうとするが、そこへ慎二が介入する。

 

「覚えてないか?あんまりにもお前が僕が頑張る姿が気になるってんだから時間をかけて事細かに説明してやってる途中で眠りやがって。起きるまでここにいた僕に感謝するんだね」

 

と、嫌味たっぷりにご解説してくれる同級生のしたり顔を見て殴りたい衝動にかられる綾子であったが、言われて見ればそうだったような気がする…とこんなことで眠ってしまう自分の未熟っぷりに項垂れていると、慎二が立ち上がる。

 

「つーわけだ。同じ話は二度とするつもりはないから、もう聞き出そうとすんなよ」

「ええっと…」

「もういい時間なんだから、とっとと帰れよ。部長さん」

 

片腕を上げた慎二は振り向かずに去ろうとしたが、綾子の言葉に立ち止まってしまう。

 

 

 

 

「ああ、頑張れよ!並んで立てるように!!」

 

 

目を見開いてゆっくりと振り返ると、そこにはベンチから立ち、満面の笑みを浮かべる綾子の姿があった。

 

 

「誰の事かは分からないけど、そこだけははっきりと思い出したよ。安心しな。その為に一生懸命頑張ってるのは私や、衛宮だって知っている。だから―――」

 

 

 

 

「足掻くなんて言葉使わないで、叶えてやるって胸張りなよっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

慎二が立ち去った後、綾子は思わず自分の口を押えながら再びベンチへと腰かける。

 

 

(なんで、あんな励ます言葉を必死になって考えたんだろう)

 

 

自分の目標に至るまで努力を重ねる人間なんて山ほどいる。衛宮だってその1人だ。だけど、何故か慎二を心から応援をしたくなった。

他の誰よりも、自分の目標に近づいて欲しいと。

 

 

 

(間桐慎二、か)

 

 

霞がかった記憶の中で、誇らしくもどこかで諦めているように自分の夢を語った彼の表情が印象に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾子と別れ、1人歩く慎二はマフラーを首元だけでなく耳や口元まで覆うように巻きつける。

 

 

 

(失敗、か。桜が魔力を込めて術を発生させること自体は完璧だった。だから美綴に記憶が残ったのは、術式の書き込みが甘かった僕のミスだ)

 

 

 

そう深く考え込もうとしても、彼女の笑顔が頭から離れない。そして、こんなに冷えているというのに、なんだか顔が熱い。

 

 

(今日は、遠回りして帰ろう)

 

 

こんな顔、先に帰った義兄と義妹には見られるわけには行かない。頭が冷えるまでは夜の散歩に繰り出そうと、慎二は足を前へとすすめるのであった。

 




と、意識するにはまだ至らない2人のお話。

過去の話を振り返りながらUBWの慎二君を見て、タグの性格改変はうちの慎二君の為にあるのだと改めて思いました。

この2人の関係、どう生かすかな…






あ、告知しますが新作のFate/Radiant of Xもよろしくお願いします!

では、次回の番外編にて!!
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