思いつきダークヒーロー(予定)もの 作:ネオバレットファイア
あったかもしれない日本、あったかもしれない研究所そこでは緊急事態を知らせる所内放送が流れていた。
「緊急事態発生、緊急事態発生、研究所内スタッフは直ちに避難してください。非検体AZ〜VZが脱走、研究所を隔離するので研究所内スタッフは直ちに避難してください」
この研究所は危険な動物実験を行なっていたらしく、その非検体が逃げたと放送を聞き研究所の研究員は慌ただしく我先にと出口へ走り出す。
だが、研究員達を待っていたのは出口でもなく暖かい家庭でもなく絶望だった。出口に待ち構えていたのは黒色の粘体の不定形が蠢く姿だった。
黒色の粘体は研究員が悲鳴をあげる前に全てを飲み込んだ。それこそ、瞬きすら許さないほどの速さで。
数十分後には、人の影形すらなく、天井から垂れ下がる照明機器が火花を散らし、雑多に散らばった顕微鏡、試験管などの研究資材があるだけだった。
3ヵ月後
危険な動物実験を行なっていたとされる研究所の元締めである会社、世界有数企業の一つ《オルトロンエンタープライズ》は事件を隠蔽し何事もなかったことにした。
被害者家族には、高額の見舞金、就職、進学の斡旋をし、代わりに事件の事は世間に口外しないという契約を結んだ。もちろん、被害者家族は納得するはずもない、だが、事件を口外しようとしたものは謎の事故、事件に巻き込まれ命を落としてしまうことになった。こうなると被害者家族も首を縦に振るしかなくなったため契約を結ぶことになったのだ。
北海道小樽市
そこは、港が近く漁船や卸売市場などが盛んで新鮮な海の幸を堪能でき、工芸品のガラス細工で観光客を集め、北海道の札幌、東京の新宿にも劣らない発展した観光都市。
観光スポットの天狗山の麓の高校、《私立明星(みょうじょう)高校》に通う高校1年生の《来栖悠(くるすゆう)》は両親が研究所の生物実験の失敗による死亡ではなく単なる事故死と聞かされ叔父と叔母に引き取られ過ごしていた。
性格は内向的で端的に言えばいじめの標的になりやすい少年だ。なぜこんなことを説明するかと言うと現在進行形で有り体に言えばヤンキーの先輩に校舎裏で絡まれていたのだ。
「来栖くぅん、言われたもの持ってきた?」
「は、はいこれぐらいでいいですか?」
悠が取り出したのは財布、財布から一万円札を取り出しヤンキーの先輩に取られる。
「そうそう、これこれ、わかってんじゃん。じゃあ、来週から倍持ってこい」
「え?ば、倍ですか?」
「は?当たり前じゃん。一万じゃ彼女とデートするのに最近足りなくなってきてよぉ…なんだ?その目、なんか文句あんのか?」
「い、いえ文句はないです…」
「わかったら来週までに二万もってこいや」
「はい」
ヤンキーの先輩は悠から奪った一万円札をひらひらさせながら自分の教室に戻って行った。悠も自分の教室へ戻った。
教室に戻り自分の席に戻り席に座ると1人の女子生徒が近づき話しかけてきた。
「悠、またあの先輩にカツアゲされたの?先生に言うか自分で拒否しなよ」
「渚には関係ないだろ…僕は大丈夫だから。」
「大丈夫って、アンタねぇ、毎週毎週お金取られて大丈夫なわけないでしょ、伯父さんと叔母さんにも迷惑かかるんだからしっかり断りなさいよ」
「ほっといてくれ」
そういうと、悠は自分の鞄を持ち教室から逃げ出すように出て行った。
「あちゃー」
「渚、また来栖君に説教?来栖君も転校してきたばかりだし、それにご両親の事もあるんでしょう?追い詰めたら可愛そうじゃない」
「委員長…そうね、ちょっと言いすぎた。明日あたりにでも謝っておく」
「それが懸命な判断よ。さ、そろそろ午後の授業も始まるから席に着きましょ?」
昼休みの終了を知らせる鐘が鳴り生徒たちは各々の席に着く。いつも通りの時間が流れながら。
一方その頃悠は、学校付近の商店街を抜けたところにある住宅街の公園に来ていた。ここは、比較的静かで、坂の多い小樽ならではの風景が見える高台のある公園として隠れ観光スポットにもなっていた。
そんな公園の一角にある芝生に寝転び悠はぼうっとしていた。悠にとってはこの小樽に引っ越して来て初めて訪れた公園であり、高台に登り、風景を眺め嫌なことを忘れるために訪れる場所だった。その中でもお気に入りなのが今悠が寝転がっている芝生だった。日陰で風の通りも良く、芝生が風に揺れる音が心地よかったためである。
そんな安らぎのひとときももうすぐ終わるとも知らずに。
背の高い芝生に隠れ、黒い粘体がわずかだが、ゆっくり少しずつノロノロと悠に近づいてくる。悠は瞼を閉じ寝転んでいるためそんなことには気がつかない。
粘体は確実にその亀のような歩みを進め悠へと迫る。悠へと危害を与えられる確かな距離に近づいた粘体は蛇のように鎌首をもたげ悠を観察する。もちろんそんなことをされてるとはつゆ知らず悠は瞼を閉じそのまま寝ている。粘体は観察を終えたのか素早く悠の耳の中に侵入する。
耳の中に異物が入った感触で悠は目を開け飛び上がる。
「うわあああああ!なんだ!」
慌てて悠は自分の耳を確かめるが異物が入った形跡もないためあたりを見回すが、周りにいたのは犬の散歩中のおばあさん、遊びに来ていた子連れの女性のみでどちらも悠の奇声で驚き悠へと視線を向けていた。その視線に耐えられなくなった悠は世話になっている叔父と叔母の家に走って向かった。
「ただいま…陽介伯父さん、雪子叔母さん」
「あら、お帰り悠ちゃん。あなたー、悠ちゃん帰ってきたわよー。悠ちゃん、伯父さんと一緒に地下室の水道管の修理する約束だったわよね?伯父さん先に初めてたから手伝ってあげて?あ、そうそう、ちゃんと着替えてからよ?」
「うん、わかったよ雪子叔母さん」
悠は自室に戻り、普段着に着替える。叔父と叔母の陽介と雪子は悠の両親が亡くなった時にすぐ引き取ってくれた2人だ。2人とも子宝に恵まれなかったため、悠にはとても優しく接してくれている。そんなおかげか悠もすぐに馴染むことができた。
着替え終わった悠は地下室に向かうと地下室は水浸しになっていた。
「お、悠!いいとこにきた。伯父さん1人だと地下室を浸水させるとこだった。まぁ、雪子叔母さんにはずっと伯父さんは心酔してるんだがな」
「は、はは」
悠が唯一伯父と叔母の苦手な部分を挙げるとするならばこの2人の甘々な空気だろう。
「よし、じゃあやるぞ、そっちのパイプを持っててくれ、さっさと終わらして叔母さんの夜ご飯を食べるとしよう。今日は悠の好きなビーフシチューと付け合わせに叔母さんお手製のバゲットだ。」
「そうだね。早く終わらそう」
2人は、作業に取り掛かる。だがここで悠に異変が起こる。
叔父がレンチでナットを締める時になるわずかな金属音が鳴るたびに嫌悪感が襲う。それでも我慢して続けるが、どんどん嫌悪感がまして頭痛まで引き起こした。
「よし、これで終わりだ。さぁ、手を洗ってご飯を食べよう」
締め終わった部位を叔父がレンチで叩くと今までに感じた事のない頭痛、吐き気、目眩が襲ってきた。
「どうした?悠、顔色が悪いぞ?」
「ごめん、叔父さんなんか具合が悪いから今日は部屋で休むよ。叔母さんにも謝っといて」
耐えられなくなった悠は、逃げるように部屋に戻りベッドに横になりそのまま意識を落とした。
来栖悠
身長:175
体重:75
キャラクターモデル:P5主人公
特徴:大人しく内向的で友達を作ることは自分からはあまりしない、読書が趣味。