思いつきダークヒーロー(予定)もの 作:ネオバレットファイア
眠りについた悠は全身から滝のような汗を流しながらうなされていた。
内側から何かに食い破られるような激痛が襲い、目も開けられないほどだ。瞼を閉じているのに瞼の裏にはなんの幻覚か全身黒タイツで覆ったような人型が迫ってくるのが見える。身悶えしながら寝返りをうつ、瞼の裏の幻覚はなおも自分に迫ってくる。姿形がはっきりしてきた、その人型は、口は耳まで真っ赤裂けておりその口の中からは不揃いながら鋭い牙が何本も生えておりその隙間から蛇のような舌が覗いている。邪悪な瞳は獲物である悠を捕捉し逃がさない。
「痛い!やめろ、やめてくれ…うううう、くるな!くるな!」
幻覚の化け物は悠を手にかける一歩前で足を止める。化け物と悠の間に真っ白な人型が割って入っているのだ。真っ白な人型を見た化け物はそのままそこで動かなくなった。すると、全身を襲っていた激痛は嘘のようになくなった。
「はぁ、はぁ、何だったんだ今のは…」
滝のような汗をかいたため水でも飲みに行こうとベッド脇に置いてあるメガネをかける。そこで違和感を感じる悠。
「あれ?この眼鏡こんなに度がきつかったっけ?まぁ、いいか」
眼鏡はそのままに水を求めてキッチンへ向かう。更に違和感を覚える。体がやけに軽いのだ、まるで羽が生えたかのように。心なしか筋肉もついた気がする。
水も飲み終えたのであんなに激痛が走った体に異変はないか洗面台へと歩を進める鏡を見るといつもの冴えない自分の顔が写る。特に体に異常もないようだ。
「あの痛みは何だったんだ?」
不思議に思いながらシャツを着なおし電気を消すために鏡を見ると、いや、見てしまったが正しいのか、自分の顔半分が先ほど見た幻覚の化け物に変わっていた。
「う、うわああああああああああああ!」
思わず悲鳴をあげてしまう。その悲鳴で起きてしまったのか叔父の陽介が走ってきた。
「どうした!悠!」
「か、鏡に!」
叔父の陽介が鏡を確認するが陽介といつもの悠が写っているだけである。
「鏡?何も写ってないじゃないか、悠、悪い夢でも見たんだろう。きっと疲れてるだけだ。さぁ、寝よう」
叔父の陽介に促されるまま部屋に戻ることにした。そう、これは悪い夢だと思いながら。そう、明日からもまた冴えない日々が続くと思いながら。ベッドに入り瞳を閉じる。
『これは夢ではない、れっきとした現実だ。そう、お前の両親が死んだのも』
脳に直接響くように、地獄の底から響くような声が聞こえる。ベッドから起き上がり周りを確認する。周りにはもちろん誰もいない。
『俺を探しているのか?鏡で見ただろう?俺はお前だよ』
「誰だよ…やめてくれ」
両親の死を囁くのは先ほど洗面所で見た幻覚だと声の主は説明する。その声で両親の死を知らされた時の事をフラッシュバックしてしまった悠は頭を抱え弱音をこぼすしかなくなった。
『ギャハハハハハハ!1人は怖いよなぁ?優しい優しい叔父さんと叔母さんが拾ってくれなかったらお前は1人だった。元の父と母の笑顔も見る事なく1人でどうしようもなく過ごすだけだったものなぁ?学校では教師に腫れ物扱いされ、いじめてきた奴らのいじめも更にヒートアップして自殺してたんじゃないのか?えぇ?』
思い出したくもない叔父と叔母に拾われる前の学校での扱いを掘り返す声の主
「1人は嫌だ、もうたくさんだ!いじめもうんざりだ!」
『そうだ、1人は嫌だよなぁ?いじめも嫌だよなぁ?そうさ、だから俺、いや、俺様の力を貸してやろう。俺様の力でいじめてきたやつを殺せ、金を巻き上げるあいつも殺せそうすれば楽になる』
声の主は甘くそして背徳的に悠に殺人を犯すように囁く。
「嫌だ、殺しなんてできない!そんな事したくもない!」
『ギャハハ!そんな事したくない?嘘をつくなよ、少なくともお前は、あの頃のお前は殺そうと考えてたよなぁ?いや、今もそうさ、金を巻き上げるあいつに金を渡す時に少なくとも殺意を持っている。それを表に出さないのは表に出して感づかれてヒートアップした相手に何をされるかわからないという恐怖からさ、だから前の学校の頃も家に帰ってからノートに恨みつらみを書き綴ってたんだよなぁ?』
ここで悠は気がつく。この声の主は自分の事をなぜこんなにも知っているのかということに。
「なんで、なんで僕のことをそこまで知っているんだ?」
『なんでぇ?ギャハハ!だから言っただろう?俺様はお前だって。そうさ、お前のことならなんでも知ってる。お前に入った時からな』
「僕に…入った時?」
『そうさ、お前が呑気に公園で寝てる時に入らせてもらった。』
「公園…!?あの時!」
『お前が奇声をあげたあの公園さ。あれだけの恥をかいたんだ覚えてるよなぁ?あの時にお前の脳に侵入した。お前が死ぬまで俺はお前と一緒だ。だから1人じゃない。嬉しいだろぉ?ギャハハハハハハ!』
「ふざけるな!お前は僕なんかじゃない!」
そう言ってベッド脇に拳を叩きつける。ハッとなりベッド脇を確認する眼鏡が粉々になっていた。だが、痛みはない。握っていた拳を開き自分の手を確認すると血が滴っており手の側面には深々とレンズの破片が刺さっていたが、傷口からレンズが抜けその傷口から黒い何かが押し出しているのが見えた。
黒い何かはだんだんと大きくなりスイカまでの大きさになると幻覚で見た化け物の顔をかたどった。
『だから、言っただろう?俺様はお前だって。覚えておけ俺様の名前はVirus(バイラス)お前と共に地獄に落ち、お前と共に地獄の業火に焼かれる者だ。』
あまりの出来事に悠はとうとう意識を手放した。最後に考えたのは叔母さんの晩御飯食べておけばよかったという現実逃避だった。
オルトロンエンタープライズ
世界的大企業で日本発祥の企業。
家族経営で代表取締役は代々その代の長男が付いており、突出した技能があればその分野のアドバイザーとしてその他兄弟が舵を取り仕切ることもある。
取り扱っているものは工業品、衣料品、電化製品、科学製品表立って公表はされてないが軍事産業もしている。
会社の力はとても強く社長の一声で大統領、総理大臣なども簡単に変えてしまえるほど。