真・恋姫†無双 仲帝国の挑戦 〜漢の名門劉家当主の三国時代〜   作:ヨシフおじさん

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93話:嵐来たる

         

 

 「――まさに作戦が開始されんとした時に、第2軍団の半数が進撃を拒否した。粘り強い政治将校の努力によって、ようやく彼らは夜間の出撃を始めたように見えた。しかし彼らは反乱軍の南部城壁に到達するや否や、一部の部隊がまるごと敵に降服してしまい、政治将校だけが引き返してきた。

 夜が明けると、他の軍団も同じ途を辿ったということが明らかとなった。第4軍団だけが、危うく降服しそうになっていた部下を連れて引き返した 」

 

 『小沛城叛乱』 帝立出版所。

   

 

 **

 

            

「いったい、何が起ている……!?」

 

 その様子を、関羽は目を丸くして見ていた。袁家の兵隊は次々と武器を地面に投げ捨て、その動きは急速に袁術軍の間に広がっていった。工兵も、次々と投石器の照準を市壁から外している。

 

 一万もいたはずの袁術軍は、もはや軍の体をなしていない。戦うまでもなく崩壊している事が、素人目ですら分かった。華雄ら士官クラス以上の者が必死に命令をきかせようとするも、兵士の大半は武器を放り棄てて命令を拒否。中には政治将校を含めて、まるごと全員が寝返る事すらあった。

 

「見てください、桃香さま! 袁家の兵士たちが……!」

 

 鳳統の歓喜の声を上げる。彼女だけではない。万を超える袁術軍が一戦も交えず自壊したのを見て、多くの民衆が喜び勇んでいた。

 

(―――っ)

 

 ついに、劉備は堪え切れなくなって号泣を始めた。

 

(やっと声が……届いた……!)

 

 涙に霞む視界の先では、多くの兵士たちが一直線に小沛城の門へと向かっている。小沛の側も彼らを受け入れ、門を開けて互いに喜び抱き合う。攻撃を受ければひとたまりもないが、それでも小沛を目指す人々の勢いは止まらなかった。各部隊の指揮官は劉備の指揮下に加わると宣言し、それは瞬く間に全軍に伝播していった。

 

 華雄ら袁術軍指揮官は、それを茫然と見ることしかできない。督戦しようにも、ほぼ全ての部隊が寝返ってはどうしていいか分からないようだった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ――宛城、行政府庁舎

 

 

 息を切らして賈駆が駈け込んで来た時、張勲は新調した袁術の衣装を仕上げている最中だった。

 

「張勲っ……大変よ……!」

 

「落ち着いてください、賈駆さん。一体どうしたんですか? 私はこれから、異民族傭兵部隊の運用について担当者と打ち合わせの予定が入っているんです。要件があるなら書類にまとめて後日……」

 

「それどころじゃないわ!」

 

 賈駆はドン、と強く机を叩く。驚いて振り向いた張勲に、早口でまくしたてた。

 

「小沛に派遣した軍団が寝返ったのよ! 今じゃ軍全体に同様が広がってるわ!」

 

 

「…………………………………………は?」

  

 

 **

 

 

 鎮圧部隊、造反す――その報告は瞬く間に宛城に届けられた。翌日早朝には緊急の会議が開かれ、寝ていた人民委員も強制的に叩き起こされた。中には寝癖のついたままの人民委員もいるし、女性の大半は化粧の途中だった。

 

「一万の軍勢が、半刻も経たぬ内に消滅しただと……!」

 

 造反の詳細を聞くなり、人民委員会では動揺が走った。

 

「将校以下、ほとんどの兵士が反乱軍に合流。華雄将軍らは体勢を立て直すべく、一時避難しているとの事です……」

 

 報告する方も聞く方も蒼ざめている。一回目の、袁術軍の総攻撃は惨憺たる結果に終わった。ほとんどの部隊は進撃を拒否するか、交戦せずに小沛側に降伏したのであった。

 

「反乱に同調する気風を封じ込めるべきだ! 全ての都市に戒厳令を敷いて、有事に備えた処置を……!」

 

「戒厳令など認められるか!これは行政を私物化しようとする、軍部の専横である!」

 

「その通り! 軍内部の統制すらままならぬ状況では、却って状況を悪化させるだけだ」

 

 しかしこの危機下においてさえ、袁家ではなかなか意思の統一がなされなかった。揚州出兵が停滞気味なこともあり、戦争を糧に拡大した軍務委員会の影響力は膨れた時と同じ速度で萎んでいる。文官たちはここぞとばかりに軍を吊し上げ、血の気の多い袁渙ら武官たちを憤慨させた。

 

「とにかく、動かんことには始まらんだろうが! 手をこまねいているだけでは、ますます叛徒どもを付け上がらせる事になる!」

 

 今後の作戦方針や戦闘指導を巡って会議は紛糾し、主導権を巡る武官と文官の対立は組織全体を巻き込む内紛へと発展しつつあった。

 

「だとしても、治安維持業務は保安委員会の管轄よ。軍務委員会が行うというのならば、越権行為と見なすわ」

 

 一方で賈駆の保安委員会は、戒厳令そのものには賛成だが自分たちが主導権を握るといって譲らない。当然ながら火に油を注ぐ形となって、袁渙を激怒させた。

 

「黙れよ小娘! こうなったのは、貴様ら秘密警察の怠慢だろうが!」

 

「なに? 今更その話を蒸し返すつもり?」

 

「過ぎた話だとは言わせんぞ! 元はといえば、小沛が叛徒どもの手に堕ちたのは貴様らの失態だろう! むしろ貴様が未だに保安委員会議長の椅子にいるのが不思議なぐらいだ!」

 

「ちょっと! それってアタシの人事に問題があるって言いたいワケ!? 書記局にケンカ売ってんの?」

 

「責任追及は後にしてください!」

 

 議論は白熱し、日頃は穏やかな張勲が思わず声を荒げるほどだった。もっとも幹部同士で批判合戦が巻き起こり、肝心の反乱はほとんど議題に上らなかったのだが。

 

 それ以降も袁術軍は攻撃を繰り返すも、ついには公然と命令拒否が発生。脅迫と説得で前進させても、士気低迷する部隊はことごとく敗北する。あるいは敗北ならまだいい方で、寝返りが止まらず、戦力差は反比例の関数を描いていった。

 

 そうした動きを見てか、一部の豪族や農村でも劉備たちをを支持する風潮が広まりつつあった。保安委員会は必死になって反乱軍を支持するような活動を取り締まろうとするも、劉備が立ち上がったと知った徐州の市民たちは各地で抗議活動に参加した。抗議活動は徐州に留まらず、豫洲や袁術軍部隊内にまで出回り初めていた。

 

 せめてもの僥倖といえば、張纏や華雄ら将校クラスの人間が無事に逃げおおせていた事ぐらいである。兵はともかく、上昇思考の強い中堅幹部たちにとって袁家は未だ忠誠の対象であったからだ。ひとたび栄達の階段に足をかければ、無名の青年が壮年期には州の要人となることも珍しくは無い。彼らはなまじ現在の体制下で苦労して出世しただけに、現体制の存続を強く望むようになる。

 

 ◇

 

 負傷から回復した張纏が保安委本部に戻ると、そこは前線指揮所と化していた。壁一面は地図で覆われ、部隊展開を示す軍隊符号がところどころに貼られている。

 

「――遅いわよ、張纏」

 

 地図を睨んだまま、賈駆が言葉を投げかけてくる。合理主義者の彼女らしく、ねぎらいの言葉などは一切無いらしい。

 

「酷いなぁ、これでも死にかけたんだけど?」

 

「それも含めての給料よ」

 

 そんな事よりこれを見て、と賈駆は一枚の紙切れを渡した。袁家に対する批判を書き連ねた反政府ビラで、反乱を煽るような文句で締めくくられていた。

 

「似たようなビラが何枚も、兵士たちから押収されている。それが何を意味するか、分かってるよね?」

 

 当然、と言わんばかりに張纏は肩をすくめた。

 

 軍の内部にまで、危険思想が蔓延しつつある。事態は想像以上に深刻のようだった。軍が正常に機能しなければ、反乱は鎮圧できない。このままでは、更に被害は増えていくだろう。

 

「今の所、ボクたちは完全に後手に回っている。でも、叛徒の全員が高い意識をもって動いているわけじゃない。扇動している連中さえ押さえれば、後は烏合の衆よ」

 

 自分にそれをやれ、という訳か。賈駆が何を考えているか、手に取るように分かった。張纏は顔の端ににやりと笑みを浮かべる。

 かくして予想通り、賈駆が一枚の紙を差し出した。そこには諸葛亮および北郷一刀らを含む、『人民の敵』を公開処刑にする旨が書かれていた。

 

 

「時間がない。ボクたちは今すぐにでも始める必要がある」

 

「へぇ……それで、何を始めるのかな?」

 

 これは茶番だ。次にどんな言葉が出てくるか、張繍以上に熟知し、かつ愉しみにしている人間もいないだろう。賈駆もそれを知りながら、敢えて宣言する。

 

「1つしかないでしょ。粛清……」

 

 否、ただの粛清ではない。賈駆は訂正する。

 

 

 これは『大粛清』である、と。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 それから3刻後、賈駆と張繍は張勲の執務室にいた。一刀たちの処刑を控え、どうしても彼女にその決断を認めてもらう必要があったからだ。

 

 あえて張勲を選んだのには理由がある。ただならぬ気配を感じたのか黙り込む張勲に、張繍はかれこれ一刻以上も演説を続けていた。

 

「――だからさ。本来は正規軍が平民の反乱軍ごときに負けるはずがないって、それが言い分なの」

 

 張繍の主張のひとつが、それだった。つまりは敗北の理由が知れない。どうして事前に察知できなかったのか、それについても判然としない。

 

「どうして、兵士が脱走し続けるんだと思う? どうして、こうも立て続けに反乱が起こるの? それで得をするのは誰?」

 

 誰もが抱くようになった疑問。ところが、そこにたった一言を加えるだけで、たちどころに全てが氷解してしまうのだ。シンと静かになったところに、張繍は言葉を投じた。

 

「ああ、そうだよ。裏切り者だ、袁家の中に“工作員”がいる」

 

 事実として、軍部には反体制派が多い。政治将校が見張っているから問題はなかろうと、あらゆる疑わしい人物が軍に終結していたのである。兵を使い捨ての駒としか考えない袁家のこと、反体制派ならいくら使い捨てても惜しくはない、という計算もあった。

 

 武器も装備も上の正規軍が、素人主体の反乱軍に負けるはずがない。もし負けるのだとしたら、背後からの一突きがあったのではないか……そんな風に黒幕の存在が疑われるのは、当然の帰結だった。人望だの、元徐州牧だのを別にしても、一から十まで劉備がやったとすれば、出来過ぎの感は否めなかった。

 

 一刀らが玉璽を有していたという点も、単なる偶然とは考えにくかった。劉備が実は密かに玉璽を手に入れて漢王朝に代わろうとしていたのだと、そこまで深読みはせずとも、単独犯ではないと考えた方が何倍も自然だ。

 

「もしかすると、本当の敵はもっと別の場所にいるのかもしれない。劉備たちだって、氷山の一角に過ぎないのかも」

 

 愚かで汚れを知らない劉備は、言葉巧みに騙されているのではないか。例えば劉表などに、弁舌さわやかに言いくるめられたのではないだろうか。荀彧の陰謀に乗せられて、うまく誘導されてしまったのではないか。

 

 もちろん劉備は認めないだろう。だが、否定すればするほど却って怪しく見えるものだ。

 

「そうだよ、工作員がいる。いつでも、どこにでも」

 

 張繍は2人に向けて繰り返す。そうだとすれば、これからも戦いは続く。いつまた裏切られるとも限らない。これは袁家存亡の危機だ。非常事態であり、手段など選んでいる場合ではない。超法的な措置をとり、断固として対処しなければならない。

 

 だからこそ――。

 

「やはり、粛清しかない」

 

 ただの粛清ではない。大粛清だ。長江が血に染まるほどの、大規模な殺戮を行うべきだ。事態はそれほど切迫しており、とてもじゃないが悠長に裁判などしている暇はない。

 

「そうね、ボクもそう思う。粛清しか道はないわ」

 

 後を受けたのは、賈駆だった。無茶苦茶な事を言っているとの自覚はある。考える限り最悪の形で猜疑心が暴走しているとも思うのだが、形振り構ってられないとの思いの方が強かった。

 

「もしかすると、無実の人間を殺しちゃうかもしれない。だけど、工作員だという疑いをかけられるような振る舞いをしていたら、信用したくてもできないでしょ? だから全員殺すしかないじゃない」

 

 返事はない。張勲は無言のまま。顔色が悪いというレベルを通り越して、まるで死人の様だ。今まで保身のために直接動くことを避けていた彼女にとって、今回のような決断は重過ぎるのだろう。

 

 それでも、逃げはしない。そこがいつも逃げ道を作って保身を図る、劉勲との最大の違いだ。もしかすると賈駆が思っていたより、責任感が強い女性なのかもしれない。袁術のために一命をささげて悔いなしと、本気の覚悟もあるのだろう。

 

 だからこそ、張勲には今すぐ決断してもらわなければならない。

 

「張勲、もう時間は残されていないのよ。ボクたちが工作員を根絶やしにしないと、ここにいる全員が殺される。ボクも張繍も、アンタも、袁術もね」

 

 袁術、という言葉に張勲がビクッと反応した。額から噴き出した汗をハンカチで拭い、垂れた髪を直すと、やっと張勲は口を開いた。

 

「軍をもう一度、再編するという手もあります」

 

 対立を激化させるのではなく、もっと穏健に対処する方法もあるはず。よく話合って兵士の不満を解消すれば、裏切る要因はなくなる。そう反論しようとしたが、賈駆は予想していたように先手を打つ。

 

「裏切り者は信用できない。一度裏切った人間は、次もまた裏切るに決まっている」

 

「付け加えさせてもらうとね、もたもたしてると全てが終わっちゃうよ」

 

 と張繍も続けた。いまや地方は袁家に決定的な反感を抱いている。独立派の蜂起も予断を許さない。曹操や劉表の脅威もあるし、まだ反乱軍は各地に跋扈している。刺客が宮殿に送り込まれない保障もない。

 

 断固とした措置が必要だ。今の袁家を立て直すには、劇薬を投与するほかない。

 

「何か行動が必要なの。ボクたちは、人民を救済しなければならない。誰かが敵を駆逐しなければ、江東は壊滅する。それも、もう時間がない」

 

 強い言葉で、賈駆は迫る。自分だって工作員狩りには抵抗がある。しかし領地の惨状をこれ以上、無視はできない。冤罪を恐れて工作員を見過ごすか、冤罪を覚悟で工作員を根絶やしにするか。自分なら後者を選ぶ。なぜなら工作員を見過ごせば、結局は大勢が死ぬからだ。それは一連の反乱で、すべての領民が思い知ったことだ。

 

 今も、領地では死が続いている。冤罪で殺されることは酷いことだからといって、工作員から身を守るために敵を排除するのは許されないのか?

 

「誰だって、本当は自分や自分の家族が死ぬなんて望んでない。張勲だって、それを止めたいはずよ」

 

 賈駆は逃げ道をふさぐように、張繍と2人で張勲を囲むように進む。

 

「ボクたちが反乱分子の立場を慮って譲歩を示せば、連中も譲歩してくれるとでも思う? たしかに向こうだって必要があって、やむにやまれず工作員になっているのかもしれない」

 

 脅されてるのか、あるいは人質とられているのか。そういった理由で仕方なく工作員になる者は多い。かくいう自分も、そういった人間を多く使ってきた。ああ、たしかも哀れだ。同情もしよう。だがしかし。

 

「そりゃ工作員も人間だし、冤罪で死ぬ連中もそうだけど。感情もあるし、それぞれの人生があるし、家族も大事な友人もいるでしょうね。その点は善良な市民や愛国者たちと何も変わらないわ。でも、それを理由に見逃したら、本当に何の罪もない人たちが大勢死ぬのよ」

 

 張勲はとっさに目をそむけた。背けざるを得なかった。

 

 賈駆はこの数か月で、大きく変わった。彼女に続いたら、自分も変わってしまうだろう。否、誰もが変わらざるを得ないだろう。

 彼女の言うとおりに大粛清を始めてしまったら、江東は地獄へと変貌する。

 

 ――自分は、そんな世界を袁術に見せてよいのだろうか。

 

 ◇

 

 窓の外には、暗闇と静寂――夜の街に人の姿はなく、崩壊に瀕した廃墟のようにも見える。かつては賑わっていた宛城も、今や廃墟と成り果てつつある。

 

 賈駆が自分のためを思って言ってくれているのは分かる。彼女は大運河建設以来、捜査に追われてロクに休む暇もなかったはずだ。洛陽に続いてかつてないほどの心労を負い、憔悴した姿を見れば哀れに思う。それは自分に想像すらつかないほどの心労であっただろう。

 

 だが――彼女は張繍と共に無実の人間を生贄に使おうと言うのだ。これからどんな地獄が待っているのか、想像するだけで背筋が凍る。

 

 端から殺す前提で釈放する気もないくせに、様々な拷問を繰り返し、司法取引を持ち掛けて心を揺さぶり、どうしたら都合のよい自白を引き出せるかと実験する。自白したからといって釈放する気はなかった。工作員は敵であり、生かしておくことはできない。元よりそう心を決めている。そして利用価値が無くなったと見るや、民衆の不満と不安をそらす体の良い生贄として公開処刑する。

 

 だが――それは組織や国家にとって必然なのだろう。敵を滅ぼさねば自身が滅ぶ。肉食獣を同じで、命を狩って己を生かす。好き嫌い関係なく、そうするしかないのだ。でなければ、自らが飢えて死ぬ。それを非難することは、獲物を狩らねば生きられぬ肉食獣を、命を奪うのは悪だと断じ、飢えて死ねよと命ずるに等しい。

 

 秘密警察の行動は軽率で野蛮であったが、それでも人民委員会が袁家のために尽力していることは疑いない。善意と焦るあまりの暴挙だともいえる。

 

 そう、暴挙。蛮行。秘密警察のやり口は蛮行に等しい。それなりの正義と理屈はあるが、冷静になって見ればどれだけ常軌を逸しているか一目瞭然だ。

 工作員という存在がなく、しかも領民を救うのだという大義名分がなければ、秘密警察の行為は凶器の末の暴挙にしか見えないだろう。いや、それがあってさえ傍目にはそうとしか見えない。

 

 そこまでする必要があるのか、と自問する。大虐殺を引き起こしてまで、工作員狩りをしなければならないのか。袁家を、組織を、国を守ることは、それほどの事までして守らなければならないものなのだろうか。

 

 いや、それは問題ではない。問題なのは、そうした暗部を袁術に見せてしまって良いのかという事だ。

 

 賈駆が変わってしまったように、袁術も変わってしまうのではないか。穢れを知らず、天真爛漫なあの笑顔を、二度と見る事が出来なくなるかもしれない。それは大いなる恐怖だ。

 

 そこまで考えて、張勲は答えを発見した。

 

「だったら……隠してしまえばいい」

  




張勲の脳内
 袁術>>>>>(越えられない壁)>>>義務とか愛国心とか何とか>無実の人々

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