テルside
「はぁっ!」
紅白女が気合を迸らせながら、妙な棒で打撃攻撃を仕掛けてくる。その攻撃のキレはかなりの物で、避けるだけでもかなりの集中力を要する。この戦い、明らかに分が悪いのはこちらだった。紅白女を相手取るだけでもかなり厄介なのに、絶妙なタイミングで魔法使いの女が魔法光線を挟んでくるので俺の体には確実にダメージが蓄積されてゆく。そして、蓄積されたダメージは必ず体の何処かに表れてしまう。
「しまったっ!」
魔法光線を避けるタイミングがズレてしまった。ズレたのは一瞬だが、致命的なミス。
「がはあっ!」
紅白女の打撃を受け身すら取れずにマトモに受けてしまう。辛くも地面に激突は避けられたが、飛行が少し覚束なくなる程のダメージを受けてしまった。このままでは絶対負けてしまうだろう。だがそれではダメだ。フランドールに戦うように言ったのは俺だ。なら、それを最後まで見届ける責任があるだろう。……本当は使いたい無いが、アレを使うしか無いようだ。
「これは結構体に負担がかかるんだけどな……まぁ、仕方ないか」
そう零し、俺は体に力を込める。宙に漂っている魔力を自分と言う箱の中に押し込めるイメージ。
この世界の戦闘(と言ってもまだ3回目だが)で俺は初めて《闇の王子》としての力を体に出した。……だが、始祖のルーンの光を浴びすぎたからかもしれない。明らかに力が落ちている。いくらまだ上があるからと言って、ここまで弱くなっているとは思わなかった。
まぁ、今それを気にしてても仕方ないか、と気持ちを切り替えて、正面の二人を見据える
「……行くぞ!!」
霊夢side
一体なんなの!?この男は!?
私はそう考えずにはいられなかった。博麗神社から遠くに新しく発見されたと言う紅い館から何やら紅い霧が出て空を覆い隠してしまったから、また新しい異変かと辟易しながら館に向かえば、館は半壊してたし首謀者であろう吸血鬼姉妹は戦っていたしで、何がなんだか分からないうちに魔理沙と合流した。
二人で少し吸血鬼姉妹の戦いを見ていると、自分達以外にもあの戦いを見ていた男がいた事に気づいた。とにかく話を聞こう……と思ったのだが、男に近づいた時に、纏っている魔力の異質さに驚いた。「闇」としか形容できないその魔力は、感じるだけで心臓をがっちり掴まれたような恐怖を感じた。その魔力に怖気ついてしまった私達はその男を危険人物として攻撃をした……のだけれど、案外大したことはなかったのだ。
そう、つい十数秒前までは。男は、何かを呟いた後に周辺の魔力を集め始めた。男の元に集められた魔力は全てあの異質な魔力に変換されてゆく。この周辺の魔力を粗方集め終わって途端、男の姿が変わった。服に鎧が付き、髪が少しだけ伸びたのだ。それだけでも随分と私達を驚かせたのだけれど、それ以上に私達に衝撃を与えたのはその魔力の量と身体能力の向上だった。さっきまでは、あの異質な魔力は感知しようと思わなければ全く感じられなかったのだが、今は違った。感知しなくてもあの恐ろしい魔力がしっかりと感じられているのだ。それ程魔力量が上がっている。その上、身体能力など最早化け物の域にまで達している。今の男の強さは通常の私を超えている。
「不味いわね……」
口内に焦りが広がる。私一人であれば一時撤退はできるが、ここには魔理沙がいる。魔理沙は決して弱くは無いが、それでもあの男より遥かに弱い。今の私も。なので、彼女に気を回しながらだと最悪の場合、二人とも殺されてしまう可能性がある。それだけは避けなければならない。この場合、優先されるのは……間違いなく魔理沙だ。彼女は私よりも明らかに伸び幅がある。ならば、将来有望な方を残すのは当然だろう。
「魔理沙、私がアイツの目を引くから、その隙にアンタは逃げなさい」
「はぁ!?何言ってんだ!当然私も戦うぜ!」
「お願い、今は素直に言う事を聞いて」
私の滅多にない真剣な声も表情に、魔理沙は意表を突かれたようだった。納得はしてないながらも、「おう」と答えた。
「五秒後に合図するわよ。五…四…三……え?」
私が「え?」と声を出してしまったのは、男が攻撃を止めたからだ。攻撃を止めた男は、そのまま眉をひそめ、もう一つの戦いに目を向けた。その時、私はようやく気づいた。あの男と戦う前はうるさい程に鳴り響いていたもう一つの戦いでの戦闘音が、今はぴったり鳴り止んでいる事に。
テルside
フランドールとレミリアの戦いの音が全く聞こえない事に気付いたのは、《闇の王子》の力を出してから十数秒後の事だった。
二人の方に目を向けると、レミリアがフランドールを抱きしめているのが見えた。所々漏れ出してくる二人の会話から推測すると、レミリアがフランドールを説得している……と言う事になるのだろうか。その後の様子から見るに、レミリアの説得が成功したようだ。
「改めてご挨拶するわ。私はこの紅魔館の主にして誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットよ。そして妹の…」
「フランドール・スカーレットよ」
「そこの「魔」はともかく、他の人間の事は知らないから自己紹介を願うわ」
と、レミリアが言うと博麗霊夢はさっきの真剣な表情と打って変わって面倒くさそうに答えた。
「博麗霊夢、知ってるみたいだけど博麗の巫女で、妖怪退治が仕事。言わなくても分かると思うけど、あんたらの出してるあの霧、迷惑だからやめてちょうだい。今すぐに!」
「私は霧雨魔理沙。探検家で普通の魔法使いだぜ!」
「待たせたわね、博麗の巫女!幻想郷を賭けて、決戦といきましょう!」
「今からやっつけてやるー!」
レミリアとフランドールの戦線布告を聞いて、博麗霊夢は覚悟を決めたように俺に話しかけた。
「ねえ、私達は一回あんたに休戦を申し込むけどそれで良いわね?」
その問いに俺は頷きながら肯定を示す。
「なら、あんたには魔理沙と一緒にあの金髪の方をお願いするわ!少ししたら紫の髪の方に誘導して!」
「ちょ、私かよ!?」
と言う霧雨魔理沙の叫び声が聞こえるが、博麗霊夢はそれを綺麗に無視した。
それで良いのか、と俺は呆れながらも
「分かった!」
と言葉を返した。
今ここで、この異変最後の戦いが始まった。
レミリアとフランドールは本気で俺達を抹殺しようとしているようだ。今までとは尋常じゃない程の数の弾幕が俺達を襲う。だが、それらは威力と数に力を向けているのか、速度は決して遅くは無いがそこまで速くもないので、確実に避け、フランドールを視界に捉えると、フランドールは巨大な炎の大剣をこちらに向かって振りかぶって来た為、自分の剣が燃えないように軽く闇を纏わせ、フランドールの斬撃を正面から受けた。
炎と闇の激突によって起きた爆発にフランドールが気を取られている隙に、俺は彼女に急接近する。
俺が超至近距離にいる事に気づいたフランドールは、少し驚きを見せたものの、すぐに無邪気さと狂気さが合わさった笑顔を浮かべ、その体を五つに分身させた。分身したフランドールに囲まれた俺は、強く翼を打ち鳴らして猛スピードで上空に飛び去った。フランドールは俺を追ってくる。このままでは俺は五人のフランドールに細切れにされるだろう。だが、その心配はいらない。何故なら霧雨魔理沙が俺をこのまま放っておくことはないからだ。……案の定、フランドールの分身に霧雨魔理沙が放った弾幕が炸裂した。その弾幕は威力が高いらしく、フランドールの分身を一撃で消し去った。分身が消えてもなお、フランドールは俺の事を追ってくる。
だが、彼女は気付かない。俺の事を追い続ける事に夢中で、レミリアの真上にいた事を。
「あとは任せたぞ!」
そう言って俺は後退する。
「ええ!」
と博麗霊夢は答え、続いて、
「霊符〈夢想封印〉!」
と言葉を発した。すると、彼女の周りに巨大な黒白の玉が現れる。その玉の威力は凄まじいもので、スカーレット姉妹をまとめて戦闘不能にまでさせてしまった。
「要注意……だな」
俺は博麗霊夢の事をそう分析する。一度共闘したからと言って、警戒が薄れるわけではない。あの「夢想封印」とやらの威力には目を見張るものがあった。アレを使われれば今の俺では勝てないだろう。取り敢えずあの博麗の巫女を「今は大丈夫だがいつ敵対するか分からない」としておく。そうする事で、博麗霊夢との接し方も変わってくる為、結構重要だ。
戦闘に敗れたスカーレット姉妹は力尽きた様に座り込んでいるが、その顔には微笑みを浮かべていて、どこか幸せそうだった。
そう。まるで俺に生き方を叩き込んでくれたスキアーズの最期の様に……
俺は、先の戦闘疲れた体を引きずって、なにやら色々聞き込みをされているらしい博麗霊夢達の元へ足を踏み出した。
to be continue……
珍しく連続投稿でございます。遅れたせめてものお詫びに頑張りました!(10ヶ月あったら頑張りにもなってない)
霊夢さんは案外友達思いなのです。