黄巾党が大きくなっているという情報を炎蓮たちが手にしてから二月が経とうとしていた、そんな頃都では大きくなった黄巾党を掃討するため討伐軍が出された、しかし結果は張角を討てず黄巾党の大部分がバラバラに中央の外に逃がすという最悪の結果となった、しかし都の軍はこれを追撃することはせず、逃げこんだ州の州牧に全てを任せるという書面を各州牧に渡した、それは建業の炎蓮にも届いており、その事で建業では緊急の軍義が信玄たちや一刀も交えて行われていた。
「なんなのよこの内容は、ようはバカな官軍の尻拭いをしろってことでしょ!!」
「うるせぇぞ雪蓮、少し黙ってろ」
炎蓮の怒気を孕んだ言葉に雪蓮は言葉を飲んで黙ってしまった。
「冥琳うちに逃げ込んできた奴等の規模はどのぐらいなんだ?」
「官軍が相手にしたのは五万でしたがそのうち一万を討伐したと聞いています」
「まどろっこしい話はいいどのぐらいなんだ」
「・・・およそ二万といったところです、他の二万は他の州に流れたようで」
冥琳の言葉にその場にいるものたちがざわめいた、しかしその中でも信玄や幸村炎蓮は何かを考えているようだった。
「今佐助に規模を確認するため偵察に出てもらっています、あやつの足なら明日には正式な数が分かるでしょう」
「今賊は何処を根城にしてやがるんだ?」
「都との州境の山です」
「あそこかあの山はデカいからな二万ぐらい入るな・・・よし今から軍を編成して退治してやるとするか!!」
「お待ち下さい炎蓮様!?、今佐助が調査に行っているので」
「まどろっこしい、俺が一暴れすれば解決する事だろ」
「母様何も討伐しないと言ってるんじゃないわよ、今佐助が調査に行ってるんだから、それを待っても遅くないわ」
すると今まで黙っていた信玄が口を開いた。
「炎蓮よここは雪蓮や冥琳の言うことに一理ある、相手は少なく見積もって二万、対してワシ等の兵力はかき集めても一万五千といったところだろう、五千の兵力差で相手は高所に陣取っている、相手の方が一枚上手よ、ここは佐助の情報を待つべきじゃ」
信玄の言にその場にいたものたちはこぞって頷いた、流石の炎蓮もそれに折れ佐助の情報を待つことにした、そして次の日の朝早く佐助が情報を持って帰還し軍義が開かれた。
「報告せよ佐助」
「・・・・」
「どうした?」
「それがですねお館様いなかったんですよ」
「何がじゃ?」
「二万の黄巾党が、いや実際にはいたといった方がいいかな?」
「まどろっこしいぞ佐助、見てきたままを話せ!!」
「俺様が山に着くとそこには戦った跡はあるんだけど黄巾党がいなかったんだよ」
「死体はあったのか?」
「ありません」
(あそこの山には山村がいくつかある、それにしても暴徒化した賊を民だけじゃ潰せねぇだろ)
「でもそれだけじゃなくてさ、山に入ろうとしたら・・・」
「したらなんだ?」
「かすががいました」
「な、何と上杉の忍殿が!?」
「・・・そうか」
すると信玄は自分の武器を持って玉座の間から出ようとした。
「おいちょっと待てよ」
「何だ?」
「かすがっていうのは誰だ?」
「この間話した、ワシの宿敵の剣と呼ばれているおなごよ、恐らく二万の黄巾党を破ったのは謙信の奴よ」
「二万を相手にして勝つとはな、流石はお前が宿敵と呼ぶ男だな」
「謙信は義に厚い男よ、恐らく黄巾党は官軍に追いたてられ建業の土地に入った、そして近くにあった村に略奪に入りそこに謙信が通りかかり助けた、まあそんなところだろう」
「そんなことを簡単にやってのけるなんて」
「信じられん話だが佐助の情報と一致するな」
「ワシはこれから謙信のところに行ってくる」
「お館様、幸村もお供致します」
「好きにせい、炎蓮よお主はどうする?」
「この間言った通りついていくぜ」
「ちょっと母様、得体の知れない奴がいるっていうのに」
「雪蓮の言う通り危険です炎蓮様」
「だから俺が行くんじゃねえか、この建業で一番強い俺がな、それに信玄が宿敵と言うほどの男だ会ってみてぇ」
炎蓮の目を見た雪蓮や冥琳は止めても無駄だと思い首を横に振ってそれ以上は言わなかった。
「よし冥琳兵はいらねぇ、佐助の話じゃ黄巾の奴等は確認できなかった、人選は祭と雪蓮後補佐にお前の三人だそれでいいな?」
「ちょっと待ってください」
「一刀か、何だ?」
「俺も面子の中にいれてください」
「一刀よ震えておるぞ、無理はせずとも」
「行きたいんです、何故だかは分からないんですけど俺は信玄さんを見てなきゃいけないような気がして」
信玄は一刀の言葉に少し驚いたが次の瞬間口を大きく開けて笑いだした。
「ヌァハハハハ、良かろう一刀よワシにどこまでもついて参れ」
「は、はい!!」
「なら一刻後城門の前に集合でいいな」
「分かりました、ならすぐに馬の準備をして参ります」
冥琳はそう言い残すと部下に命令するために玉座の間から出ていった、雪蓮と祭も武具の用意のため自室に戻った、そして一刻後城門の前には二体の馬ノ上に仁王立ちした信玄と、まだ一人で馬に乗れない一刀のために幸村が一刀と相乗りしていた、そして炎蓮たちが戦仕度を終え城門まで来ると信玄たちは馬を走らせ国境近くの山に向かった、信玄たちが国境近くの山に着いたのは昼過ぎの事で信玄たちは山に着くと馬で山道をかけ上がり程なくして山村に到着した、炎蓮が着くと村長らしき老人が炎蓮に近づいてきた。
「これはこれは孫堅様、ワシはこの村の村長にございます」
「この村に黄巾党が来たらしいな、村人は大丈夫か?」
「はい、偶然武芸者の方々が通りがかって下さり皆も無事にございます」
「そりゃよかった」
「ご老体、つかぬことを聞くが武芸者は二人ではないのか?」
「全員で四人にございます、若い方が二人と女性が一人後ワシと同じぐらいの方が一人にございます」
(謙信に剣、若いのは前田の風来坊か?、それにしても後一人の老人が分からん)
「そいつらは今何処にいるんだ?」
「この山の山頂に祭りで使う広場があります、今は全員そこにいらっしゃるかと」
「分かったとりあえず行ってみる、何か必要なものはあるか?」
「いえ、さいわい何処も壊されませんでしたから」
「そうかなら行くぞ」
信玄たちは村の奥へと進んだ、少しすると長老が言った広場が見えてきた、そしてそこには謙信とかすがさらに前田慶次がいた。
「来ましたね」
「待たせたな謙信」
「待ちましたよ甲斐の虎」
信玄と謙信は互いから目を離さず対峙しあった、かすがはそれを微妙な表情で見ていた。
「どうしたんだい?かすがちゃん」
「いや、やはり謙信様を満足させる事が出来るのはあの男しかいないんだなと思ってな」
「まあ、あの二人は特別だからね」
そして謙信を見た炎蓮たちは、謙信の闘気に冷や汗が止まらずにいた。
「信玄の世界の奴等はどいつもやべぇな」
「尋常じゃないわね、母様変な気起こさないでよ」
「ああ手は出さねぇ、信玄との約束だからな」
すると森の中から重い足音が聞こえてきた、炎蓮たちは武器を即座に構え音のする方を見た。
「お本物の甲斐の虎じゃ、軍神どんの予言が当たったみたいね」
「なるほど最後の一人はお主だったか島津の」
炎蓮たちの前に現れたのは日ノ本で最強の名を欲しいままにしている鬼、島津義弘であった。
(こいつ、謙信や信玄よりもやべぇな)
(なんなのこの人は身体が震えてくる)
(凄い闘気よ、ワシでも立っているのがやっとじゃな)
(信玄公も大概だと思っていたがそれ以上の者がいるとは)
炎蓮たちが義弘の闘気にあてられている中、義弘はゆっくり炎蓮たちに近づいた。
「甲斐の虎このおなごたちは誰ね?」
「今ワシが世話になっておる孫家の者たちじゃ」
「孫家ちゅうことは・・・」
「一番前にいるのが孫堅、次に娘の孫策、髪が白いのが黄蓋、黒いのが周瑜じゃ」
「村長に聞いとったがほんとに三国の武将がおなごとはの、しかし孫堅殿か納得じゃおいを食わんとする闘気を出しとるわ」
「すまねぇなあんたを見てたら勝手に出ちまう」
すると謙信と対峙していた信玄がフッと笑った後に言った。
「それもそのはずよ島津は日ノ本で鬼島津と恐れられ最強の称号を欲しいままにしている男よ」
「お前の世界の最強か・・・」
「がはははは、甲斐の虎に誉められるのは悪りかねぇが、少し誉めすぎね」
「信玄」
「ん?」
「これからお前はそこにいる謙信て野郎とやるんだろ?」
「そのつもりじゃ」
「なら、鬼島津さんよ俺と勝負しねぇか?」
「ほう、江東の虎直々の挑戦かね、よか島津義弘その勝負受けてたつ!!」
炎蓮が義弘に突然勝負をふっかけたことに雪蓮と祭はビックリしたが止めることはできなかった、何故なら自分たちも武人、義弘と相対したら勝負をせずにはいられないだろうと思ったからである、そして信玄も謙信との闘いを始めようとしていた。
「謙信よワシは長く床に伏せっておった、そのせいかこの世界に来ても本来の勘が掴めずにいた、しかしやはりワシの体に渇を入れるのはお主の太刀をおいて他になし」
「再開の記念に一勝負参りましょうか、甲斐の虎」
「鬼島津、ここにいるとコイツらの邪魔になる、場所を移すぜ」
「よか」
炎蓮と義弘は信玄から距離をとるため広場から出ていった、雪蓮と祭と冥琳は炎蓮についていった、そして拓けた場所を見つけるとそこで勝負をすることに決め互いに武器を構えた。
「孫堅どんおいは手加減ば知らんがそのつもりね?」
「手加減なんていらねぇ、全力で来い!!鬼島津」
「よか覇気ね」
信玄対謙信、炎蓮対義弘の闘いが今始まろうとしていた。
次回はバトルシーンになります、二組を一話にまとめるので少し長くなるかもしれません、それではまた八話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。