馬の状態となった成瀬は咲夜を乗せて、運んでいた。
「成瀬さん…降ろして下さい…とても恥ずかしいです。」
しかし、咲夜の顔は真っ赤でありかなり照れていた。
「ダメに決まっているだろ?それもお前の自業自得だ。諦めろ。」
成瀬がこう言っているのには理由がある。
咲夜は先日、珍しく酒を自重せずに飲み二日酔いになっていた。その為、成瀬は咲夜を永遠亭に運ぼうとした。しかし咲夜は拒否し、弾幕ごっこをすることになった。
結果成瀬が勝ち、咲夜を永遠亭に運んで治療を受けて貰うことにした。主な勝因は咲夜が二日酔いだということだ。
それでも咲夜は諦めが悪いのか能力を使って逃げようとしたが成瀬に回りこまれてしまい、逃げられなかった。
それどころか逃げようとしたせいで咲夜は罰を受けていた。
それは…『ロリ服を着て成瀬に乗る』というものだ。
まだ比較的軽い罰だが、普段ロリ服を着せる側の立場であっても、ロリ服を着ていない咲夜にとっては、それでも恥ずかしい罰だった。
「ほら着いたぞ。」
成瀬がそう言うと永遠亭に着いた。
「成瀬さん…私を心配してくれるのは大変ありがたいのですが…私の身は私が知っています。ですから、メイド服を返して下さい…お願いします。」
「嘘をつくな。二日酔いは鬼ですら嫌がるものだ。咲夜…お前も二日酔いをこのままにする訳には行かないだろう?」
「しかし…!」
「主人のいうことを聞けない従者は首だ…だが俺は寛大だ。もう一度言おう…今日は二日酔いを治せ。」
成瀬は自分が主人であることと咲夜が完璧主義であることを利用し、咲夜を休ませる様にした。
「…わかりました。ですが明日は今日の分もきっちりと仕事をやりますから。」
「お前らしい答え方だ…それじゃ入るぞ。」
「(やっぱり恥ずかしいです…)」
咲夜は顔を真っ赤にして、永遠亭へと入った。
「永琳はいるか?」
成瀬が声を出して出てきたのは、ブレザーのうさ耳少女の鈴仙・優曇華院・イナバだった。
「師匠なら少し前に出かけましたよ。」
「そうか…なら二日酔いを治す薬はあるか?」
「二日酔いですか?ちょっと待ってくださいね…」
「それまでの間、咲夜はこれに着替えてろ…俺はトイレいってくる。」
そう言うと成瀬は馬の状態から人の状態となりトイレに向かった。
「はい…」
~トイレ~
「ふう~…(やれやれ…俺の能力でも二日酔いを治すことが出来たのに咲夜はなんで気づかないのか?)」
成瀬がそう思っていると尿が出終わり、トイレを流した。
「さてと…」
そう言って成瀬がトイレから出ようとした瞬間…
DOOOGAAAaaaaaaaaan
いきなり、幻想郷に隕石落下を思わせる様な大きな音がなり、地面が大きく揺れた。
「おいおい…面倒なこった。」
成瀬は表面上冷静だったが、呆れていた。
それもそのはず…その原因とは…
~回想~
迷いの竹林にて…
「やい、輝夜!私のとっておきの…饅頭返せ!」
白髪に大量のリボンをつけている、見た目少女の藤原妹紅が輝夜に喧嘩を売っていたからだ。
「饅頭の一個くらいでうるさいわね!!そのくらいいいじゃない!」
「何を!?」
「やるっていうの!?」
「「勝負!!」」
~回想終了~
その余波が原因で永遠亭は大きく揺れた訳だ。
「はぁ…なんであいつらは喧嘩するんだ…」
成瀬はブツブツと言いながらも妹紅と輝夜の場所へと向かった。
「お前が悪い!」
「あんたよ!」
二人はまだ言い続けあい、くだらない戦いが始まっていた。
「おい、お前達。」
成瀬が声をかけると二人は一気にこっちを向いた。
「あっ!?成瀬!」
「丁度良いところに来たな!!」
「「どっちが悪い!?」」
「と言われてもな…喧嘩の経緯を話してくれ。まず輝夜から」
「良いわよ…(自分の都合の良いような事情説明中…)と言う訳」
「なるほど…次もこたん。」
「もこたん言うな!!…それよりも説明するぞ…(自分の都合の良いような事情説明中…)とまあそんな感じだ。」
「なるほどな。要は饅頭を輝夜が食べたからもこたんはそれを怒っていると…(こいつらの精神年齢いくつだ…?少なくとも1000年は生きているだろうに。)」
「「どっちが悪いの!?」」
二人が同時に聞くと成瀬は少し考え…
「あ~…もこたん。耳を貸せ。」
妹紅に耳を貸す様に命令した。
「もこたん言うなって…何?」
それに妹紅は従い、成瀬に耳を貸した。
「(お前な…ここは許してやれ。俺から見たらお前達のやっている事はガキの喧嘩だぞ?)」
「(ガキとはなんだ!ガキとは!)」
「(まあ落ち着け。逆に言えばここで許せばお前の方が大人に見えるということだ。)」
「(…そうか。その手があったか!!)」
「(輝夜が何言っても気にしない上に挑発行為をしないなら尚更な。)」
「(ありがとう!成瀬!!)」
妹紅は成瀬に感謝した。これ以上良い案が浮かばなかったからだ。
「あー…輝夜。」
「何よ?」
「さっきの饅頭の件は許してやる。」
「そう…ありがと。」
「だけどな。今度からはきちんと私に許可を取ってから食べてくれよ。私はお前のことは嫌いだが全否定している訳じゃないからな。」
「ふふふ…(ツンデレね…これは。)」
「話は終わり!私は帰るぞ。」
「そう?もっとゆっくりして行きなさい。」
「いや、遠慮しておくよ。それじゃ。」
そう言うと妹紅は立ち去って言った。
「…成瀬、能力使った?」
「まあな。」
成瀬はありとあらゆるものを覆す程度の能力を使い、輝夜と妹紅の仲を覆したのだ。つまり…
「なるほどね…そんでもって適当なことを言って妹紅をツンデレにさせたって訳ね。」
成瀬はうなづき、納得した顔で語る。
「まあ…お前らの場合、競走馬に例えるなら全ての馬をごぼう抜きした後で騎手まで振り落とす暴れ馬だからな。その度に俺がやらないとあの時と同じく乱闘だ。」
「…否定は出来ないわね。何しろこれで何回目だっけ…」
「五回だ。まあ無理もない。お前らは死ぬたびに俺の能力が解けるからな。それまでの間はお前達の仲は良好なんだがな…」
「普通の人間だったら絶対に解けないものね…それ。」
輝夜の言うとおり、成瀬の能力は成瀬以外に解けるものではない。解く方法は死ぬしかない。
「そういえば風見幽香はどうした?」
「幽香?あのUSC(ウルトラサドスティッククリーチャー)なら自宅に帰って休養中だけど…好きなの?」
「いや、お詫びだ。前に目を怪我させてしまったからな。」
「あの女の言う事だから成瀬にろくでもない事言いそうだけど…これを持って行きなさい。」
「これは…?」
「花束よ。それも私が育てた奴。」
「そうか…ありがたく頂こう。」
「どういたしまして。」
~人里~
成瀬は珍しくシャキッとしており道を歩いていた。するとその周りからヒソヒソと話し声が聞こえるが成瀬は自分がマダオだと自覚しているため、どうせろくでもないことだろうと思い無視した。
実際には
「めちゃくちゃイケメンじゃない?私好きだな…」
とか
「でもショタなのが残念よね~」
とかである。
それは主に女性であるが…男性は成瀬が賭博場のオーナーなので…
「成瀬さんじゃねえか?あの妖怪には感謝しているよな…」
や
「ホントホント。あの人…じゃなかった。あの妖怪には感謝しているよ。」
などの声が上がる。
誰も成瀬がマダオだとは思っておらずむしろ感謝されていた。
もちろんそれに黙っていない者もいる…
「お待ちなさい!」
緑髪の少女が成瀬に向かって近づいてくる。
「ん?何の用だい?嬢ちゃん。」
成瀬の身体の中の酒は完全に抜けているため、成瀬は紳士な対応をした。
「貴方…なんで妖怪なのにそんな馬鹿でかい神力を持っているんですか!?」
「神力?何かなそれは。」
「えええ!?それだけ持っているのに神力をご存じないんですか?」
「全く。」
「いいですか?神力というのは神様が持つ力のことですよ。信仰されることでその力が得られます。その神力は妖力、魔力、霊力などにも代用できるすごい力なんですよ!」
「なるほど。」
少女の教えに成瀬は納得した顔になる。
「で、なんでそんなに神力があるんですか?」
「信仰される心当たりがあるが幻想郷の外だしな…それに妖怪故に神力を使わないからか?」
成瀬は気づかない。人里は全員成瀬に本気で信仰しており、一部の妖怪も成瀬を信仰していることに。
しかも成瀬は競走馬のファンから産まれたようなものので外からの信仰心もある。それ故に馬鹿でかい神力を持っている。
「それでも馬鹿でかすぎます!こんな馬鹿でかい神力を見たのは初めてです!!」
「と言われても…イマイチピンとこないが…」
「こう言えばわかりますか?私は守矢神社の風祝、東風谷早苗と…」
「守矢神社…ああ、思い出した。射命丸が新聞に書いていたな。」
「そうですよ!あの守矢神社ですよ!風神と祟り神が同時に経営している守矢神社です!」
「しかし、俺がその風神と祟り神を凌ぐほどの神力を持っているのはおかしいくはないとは思うんだが…」
「何を言っているんですか!?」
「少し考えてみろ。ここは幻想郷。外の世界で忘れ去られた者が来る理想郷だ。だが例外というのはある。外の世界からの信仰があったにも拘らずここに来た奴だっている。」
「それが貴方と…」
「平たく言えばな。内容はもっと複雑なものだ。」
「どういうことですか?」
「それを言ったとしても多分理解出来やしないぞ?妖怪の賢者といわれている八雲紫ですら半分くらいしか理解出来ない。この謎は蓬莱山輝夜の能力並みだ…」
「マジですか…」
「マジ。それよりも俺は賭博場に行かなきゃなんないんだ。どいてくれないか?」
「はい…」
~賭博場~
そして成瀬は賭博場に行くと…
「オーナー!」
突然オーナー代行の妖怪が成瀬に向かって来ていた
「どうした?」
「うちが潰れそうなんです!なんとかしてください…!」
「…わかった。相手は誰なんだ?」
「ポーカーの所にいる吸血鬼です!」
その先にはなんと…咲夜の主人であるレミリアがいた。
「そうか…まさかここまでやるとはな。じゃあ潰してくる。」
「おおお!ありがとうございます!」
「退屈ね…」
「レミリア嬢。退屈ならこちらでやられたらいかがかな?」
成瀬は言葉遣いを改め、従業員そのものになっていた。
「成瀬、久しいわね。貴方が来たと言うことはこの賭博場もマズイ状況なのね。まあ、貴方の言うことを聞いてみるわ。どうせ私勝つ運命なのは確実だし。」
「それはやって見ないとわかりません。ではどうぞ。」
「ルールを説明します。と言っても通常のポーカーと変わらず、違うところは3回以上勝ったらそのかけた分のコインが入ります。もう一つはイカサマが出来ないように勝っても負けても破って捨ててください。すぐに新しいトランプが用意されますのでご心配なく。」
「なるほど。わかったわ。」
「では配ります。」
成瀬はそう言ってトランプを配る…
「(ふふふ…8のフォーカードか。どれ…成瀬は?どうやらブタのようね…大したことないじゃない。)」
レミリアは運命を操る程度の能力で成瀬のカードを見て、掛けるか掛けないか決めていた。
「いくらおかけになりますか?」
レミリアの答えはもちろん…
「全額よ。」
相手がブタだとわかっているのに全額かけない方がおかしい。つまりレミリアは絶対勝利することを確信して全額かけた。
「承知しました。」
そう言って成瀬はトランプを見せる。そこには1ペアも揃っていないカードがあった。
「レミリア様の勝ちです。コインをお返しします。では続けます。」
その次も成瀬は負けてしまい後がなくなった。
「お、オーナー…!」
オーナー代行が情けない声で成瀬を呼ぶ。
「任せろと言ったはずだ。黙ってろ!」
成瀬はムキになっているのかオーナー代行に怒鳴る。
「この賭博場の運命が見えたわ…」
レミリアはそう言って先程とは違いかける量を半額にすることに決めた。
「レミリア様。ではどうぞ。」
成瀬はそう言ってトランプを配る。
「(もう私の勝ちね…こっちは3のファイブカード…向こうはブタもいい所…もはや勝負はきまったわ。)」
レミリアはそれだけ思うとコインを先程の半分にした。
「よろしいですか?」
「いいわよ。」
そう言ってレミリアはトランプを出す。
「レミリア様…貴方の負けです。」
「へっ?私は3のファイブカードよ?」
「ええ…ですから貴方の負けです。」
「でも貴方はブタのはず…何を言って…!?」
そこでレミリアが見た物は驚くべき物だった。それは
「ロイヤルストレートフラッシュ…!!」
そう成瀬が出したのはポーカーで最強の札…ロイヤルストレートフラッシュだ。
「こんな馬鹿な!確かに運命ではブタだとわかっていたのに!」
「その運命は真っ赤な偽物でしょうね。さて…続けますので捨ててください。」
その後三連勝し、見事にレミリアを一文無しにした。
「ああ…しょんな~!咲夜ー!」
そこにはカリスマブレイクしたレミリアが頭を抱えていた。
「咲夜はここにはいません。彼女は二日酔いのため今永遠亭に預けています。」
「うー!!咲夜か傘がないと帰れないじゃない!」
レミリアの傘は最後にポーカーに掛けた物で成瀬に負けてしまい、取られたのだ。
「…レミリア様。良ければ私の傘を使いますか?」
「ありがとう…って私の傘じゃない!?」
「貴方が負けてしまい、それは私の物になりました。ですが良く良く考えたらいりませんので、使う人がいれば差し上げる。これが一番いいんです。」
これがレミリアの心に響き渡りまたもや恋する乙女が現れた。
「…咲夜が気に入る理由が良く分かったわ。ありがとう成瀬。」
「では…御気をつけてお帰りください。」
「今度くる時は競亀が出来た時ね。じゃあ…」
そしてレミリアが立ち去ると賭博場に大歓声が湧いた。
「いいぞー!」
「流石スター!」
そして人里の人間達はまた成瀬を深く信仰し始めた。