成瀬は元々は、予後不良となったサラ系の馬達の無念から生まれた妖怪だ。それ故、賭博場で残そうとしたのは…競馬の亀版である競亀だ。
なぜ競馬ではなく競亀にしたかと言うと亀の食費は馬に比べ遥かに安価である。その上亀自体が小さいので場所もそんなには取らなくてすむ。それに比べ、サラ系の馬の値段は安くとも5千円(外の世界の価値50万相当)…単体の値段だけでもそんなにするのに食費はどうなるという話だ。それが金持ちがかなりの人数ならまだいい。
しかし、幻想郷にて大金持ちと言えるのは紅魔館の主レミリア・スカーレット、永遠亭の主蓬莱山輝夜、そして幻想郷を管理している八雲紫だ。それら3人が個人では幻想郷の中では金持ちと言えるだろう。ただしもう1人大金持ちはいるにはいるがそれをすべて食材にしてしまうためその大金持ちは含まない。
しかし、それ以外はというと…せいぜい3人の雀の涙程度のものだ。故に3人以外が馬を持とうとしても無駄だろう。よほど強い馬で無い限りあっという間に経営悪化となる。そういう理由なので競馬を流行らせるのはやめておいた。
話しを戻そう…そんな彼が今回来たのは…
「あら!成瀬。よく来たね~!それで私に何か用?!」
黒髪の美女がそう言って成瀬に抱きついた。
「…輝夜。ひっつかないでくれ…」
そう、永遠亭だ。彼は輝夜にスポンサーとして協力してくれるようにお願いしに来たのだが…ご覧の有様である。何故輝夜が成瀬に対し友好的かと言うと…
~回想~
輝夜は、あまりの怠惰ぶりに従者である八意永琳がブチ切れ。それが原因で空が飛べないような装備まで強制的につけられた。その上、外で寝るように(自分がご主人様なのに)命令されたのだ。しかもいつも突っかかってくる白髪女は里にお泊りというふざけた事をやっていたのだ。その上、迷いの竹林に運悪く入ってしまったため、迷子になるという結果になったのだ。
「永林どこ~?私が悪かったからだずけで~!」
永琳に助けを求めても永遠亭の中にいるし、兎達は永琳に命令されたのかいないし、餓死するしかないのかと輝夜はそう思い諦め掛けた。
「やれやれ…どうしたんだ?」
そこへ1人の少年が輝夜に話しかけた。
「誰…?」
「俺か?俺は馬頭成瀬。馬妖怪だ。」
「馬妖怪?」
鬼に酒勝負で勝った成瀬はぶらぶらと散歩していた。そして散歩している最中に泣き声が聞こえたのでここに駆けつけた訳だ。
「ああ、詳しいことは俺が作ったテントの中で話そう。」
「いいの?」
「何がだ?」
「テントに入っても。」
「何心配するな、人一人、入っても何も変わらないさ。」
~テントの中~
それぞれ自己紹介し、事情を話しあった。
「ふぅん…なるほど。貴方、鬼に酒勝負で勝ったのね。」
「まあな。勝負して勝っちまったもんで浮かれてここに来ちまったてことだ。まあ、そのおかげでお前を助けられたかと思うとラッキーだぜ。」
ドキッ…!
「(え?何よ今の?もしかして…)」
輝夜がそう考えていると成瀬が顔を覗かせ心配そうに見つめていた。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「な、なななんでもないわ!」
「そうか、なんでもないならいいが風邪はひかないようにしてくれよ。最近の風邪は質が悪いからな。」
「ありがとう…」
「じゃあ俺は寝る。」
トクン…
成瀬がおとなしく寝ると輝夜が発狂しそうになった。
「(もしかして私、成瀬のこと好きになっちゃった?!)」
輝夜は、かつてなよ竹のかぐや姫と呼ばれ、その美貌は時の帝をも動かすほどである。
しかし、彼はあくまで気遣う程度で恋愛対象として見ていなかった。そのおかげで彼女のプライドが傷つき、焦った。その焦りが恋に変わっただけだ。
「こうなったら、成瀬!貴方の心を絶対に奪って見せるわ!!覚悟なさい!!!」
成瀬に惚れてしまった輝夜はそう決心した…
それから成瀬に惚れるように明るい女の子のような性格をだしている。最も、それはゲームで学んでいるようだが、それはまた別の話。
~回想終了~
「あら、別にいいじゃない。減るもんじゃないんだし…」
「まあ…それはともかく頼みごとがある。別に断ってもいいぞ。」
「え?!何々!?」
「実は、俺の経営している賭博場で、とある事情でやることが一つになる。そこでその質を上げたい…スポンサーにならないか?」
「どのくらい必要なの?」
「これを見ろ…」
成瀬が渡したのは競亀の予定費用だ。
「亀をレースさせるの?亀って遅いからあまり人気出ないんじゃない?」
「あえて亀にしたのは歩くのが遅いからコースも短くて済む。」
「でもその亀って用意してあるの?」
「永琳にすでに頼んでレース用の特殊な亀を作らせてある。おかげで金はすっからかんだ。」
「あ~…なるほどね。」
「で、どうなんだ?スポンサーになるのか?」
「コース拡張80万円(8000万円)、賞金8万円(800万円)その他支出12万円(1200万円)ね…いいわよ。それくらいなら出せるわ。」
「そうか…じゃ諦め…今なんと?」
口調が変わるほど成瀬は輝夜の言葉に驚いた。
「だから出すって言っているでしょ?」
「そうか!!では、今週中に頼む…」
「一週間後にここに来ればお金は用意してあるから必ず来なさいよ!!」
「ありがたい…」
「永琳はいるか?」
「ここにいるわよ…」
「例の件はどうした?」
「一応終わったわ。」
「それじゃあ見せてくれ。」
「別にいいけど…」
そう言って永琳は競亀用の亀を見せた。
「おおおお、素晴らしい…!」
成瀬が見たのは金の甲羅をした亀…ではなく掌サイズの大きさの亀30頭程だ。しかし、いずれも覇気を持っている亀だった。
「しかし、貴方もだいぶ無茶言うわね…」
「何がだ?」
「『亀妖怪、亀の神…その他諸々の亀を提供する代わりに、レース用の掌サイズの亀を作れって』…おかげでこっちは寝不足よ。」
「ハハハハ!そりゃ済まん。だが、そのおかげでやっと夢とロマンの競亀が出来る。」
「どこに夢とロマンが有るのが私には理解出来ないわ…」
「月の頭脳でも理解出来ないことがあるんだな。」
「私くらい、それくらいはあるわよ…」
「それよりもサンキュー。競亀用の亀を作ってくれて。」
「…でもどうやって持ち帰るの?」
「まあ、この中に入ってもらうさ。」
成瀬はそう言うと亀用の桶を取り出し、指差した。
「いつの間に持っていたの?そんなもの?」
「最初から。」
「気づかなかったわ…」
そう言うと永琳は軽く落ち込んだ。
成瀬はそれを切り替えて永琳に話しかけた。
「それよりもお前達が競亀の亀主になるんだったらそのうち3頭くらいはやるが…」
「いいの?」
「まあ、どうせやるならみんなやったほうが楽しいだろう?」
「成る程…(上手い策ね…私達永遠亭が競亀をやることによって里人の皆に独占状態じゃないことを見せつける訳ね。しかも私達にも利があるように仕向けている。断ったら逆に損をする…これは決まりね。)」
「で?どうするんだ?」
「じゃあ、もらっておくわ。登録をするから手続きをしたいわ。」
「そうか。じゃあここに名前を書いて終わりだ。」
成瀬はそう言うと書類を出して、永琳に渡した。
「(何もないわね…)はいはい。」
永琳は書類を確認し、裏がないか確かめる。
「さて、ここらでお暇するぜ。じゃあな。」
「ええ、またね。」
今回はマダオこと、成瀬は競走馬だったということと、競亀を流行らせる計画を立てているというお話でしたね。競亀の元ネタは龍が如く見参より。