~霧の湖~
「グビグビ…ふぅ~酒がようやくうまく飲めるぜ…」
成瀬は八雲紫が自分に交渉した後、酒を飲んで紅魔館に向かった。
「あーっ、あんたは!!ヤギ妖怪!」
チルノが成瀬を見つけて、叫んだ。
「チルノちゃん!あの妖怪は馬妖怪!」
しかし、それ以上に大妖精が大きな声で訂正する。
「どっちだって一緒よ!決闘よ!」
「血統?俺の血統は、父サラブレッド、母マボロシだぞ?」
成瀬は決闘を血統と勘違いし、そう答えた。酒を飲んでいない状態ならそう答えないが、今は飲んでいるのでボケが酷くなってしまった。
「まさか、チルノちゃん以上のボケが来た!」
「んだと、こら!アホ妖精と一緒にすんな!」
大妖精のあまりな言い草に、成瀬は怒る…普段ならやんわりと間接的に違うと答えるが、酒を飲んでいるために切れやすくなったのだ。
「アホって何よ!あたいはアホじゃない!!」
アホ扱いされてチルノは怒る。それはそうだ。彼女は自称幻想郷最強だが妖精の中では間違いなく最強だ。そのためプライドが高い。それ以上にプライドが高い紅魔館の主レミリアが近くにいるため目立たないだけで彼女も幻想郷の中では高い方だ。
「だったら俺が前に出した問題答えてみろ!」
成瀬はチルノ達が絡んで来たのでその二人に問題を出して去ったのだ。
「えっと…」
チルノと大妖精は考えてしまう…無理もない。その問題とは日本ダービー馬を10頭答えろという無茶苦茶なものだ。外の世界の競馬に関係する仕事をしている者やファンならともかく、一般人が知るよしもない。
「ほら、答えらんねえだろ?」
いやいや、あんたが外の世界の問題を出すからです。
「なんか変な声が聞こえたが…まあいいだろ。それよりも答えを言ってみろ。」
「ダービーセイハ!」
チルノは成瀬の質問にやっと答えた。
「外れ。」
しかし、当然そんな単純な名前で正解なはずがなく…完全にアホ丸出しである。
「ダービーチャンプ!」
「違う!」
それからもチルノは答え続けるが結局、全部外れとなった。
~数分後~
「で?50回やっても答えられないとはどういうことだ?」
すっかり成瀬は酔いが冷め、ジト目でチルノを見ていた。
「ううう~!そんなの知らないもん!」
「…アホだな。」
「うわ~ん!」
チルノは逃げ出した!…RPG風に表すならそうなるだろう。
「あっ!チルノちゃん!」
それを大妖精が追いかけてチルノと共に目の前からいなくなった。
「さて、紅魔館に戻るか。」
「待ちなさい…!」
成瀬を呼び止めたのはルーミア…しかも封印が解けたEXルーミアだ。
「ん?常闇の妖怪…にしては随分妖力がデカイな。」
「さっきはよくも…!」
ルーミアは、成瀬のど音痴な歌のせいで外来人を食い損ねた。しかし、なんの因果か頭についていたリボンが外れ、封印が解けたのだ。
「さっき?なんのことだ?」
「貴方のせいで10日ぶりの食事が…できなかったのよ!という訳で死ね!」
EXルーミアが闇の剣で成瀬に攻撃する。
「ったく…面倒臭い奴だ。だがお詫びと言ってはなんだが…俺の二つ目の能力を体験させてやる。」
成瀬はそれを紙一重で避ける。
「二つ目の能力?」
EXルーミアが構え、弾幕を打つ。
「後でわかる。」
成瀬はそれら全てを紙一重でかわし、EXルーミアに立ち向かう。
このことを見ていた咲夜と美鈴は…
「…成瀬さんがあんなに強いなんて思わなかった。それにあの常闇の妖怪も実力を隠していただけでお嬢様を遥かに上回る実力を持っているなんて…」
「あの子は封印されているからともかく、成瀬さんがあんなに強いのになんで紅魔館で話題にならなかったのが不思議なくらいですね~。」
「…美鈴。」
「なんですか?」
「どっちが勝つと思う?私の予想だと常闇の妖怪の方が勝ちそうだけど…」
咲夜はそういうと二人の戦闘を見た。
「でもなんでいかないんですか?」
「あんなハイレベルな動きについて来れないわ。時を止めて救出したいのは山々だけど成瀬さんが怒るでしょう…あの妖怪は競走馬が元らしいし…」
咲夜の言うとおり、成瀬は元が競走馬だ。それ故に成瀬は戦闘狂でもある。
成瀬とEXルーミアの戦いに横槍を入れるような真似をしたら成瀬が切れてしまうだろう。
「そういうことですか…じゃあここで成瀬さんが気絶するまで待つ訳ですか?」
「そうね。そういえば貴方の予想は?」
「私の予想ですか?私は…」
元に戻って…
EXルーミアは闇を操り成瀬に闇の剣で攻撃する。すると、その周りの野原がなくなっており、まさに闇に消えたかのようなものだ。
「火力に関しては、大妖怪でも上位クラスか…相当な逸材が眠ってたもんだな。」
成瀬は感心する。何しろ、八雲紫並の強さを持った敵が現れ、楽しめるからだ。紫の時は憎悪しかない、挑戦者も王者もない、くだらない戦いだったが今回は違う。今回は王者として挑戦者を受け入れる立場で戦えるからだ。
「あら?そんな余裕いつまで聞けるの?」
「いつまでだろうな?お前がスタミナ切れをする時までか?」
「ふうん…ならその前に貴方を倒すまで!闘魔傀儡掌!」
「どっから覚えたんだ!そんな技!」
成瀬は何故か、その技を知っており見事に避けた。
「バ○ン様ー!ってうろたえてた外来人に教えてもらった。」
「どんな外来人だ…」
そんな会話を続けながらEXルーミアと成瀬の攻防は続く…
「…ルーミアちゃんの方が限界に近づくでしょう。」
「なぜ?」
「成瀬さんは全くと言っていいほど無駄な動きをしていません。それに引き換え…」
「常闇の妖怪の方は、がむしゃらに攻めていると?」
咲夜がそういうと、EXルーミアの方は既にスタミナが切れており最初の頃に比べると動きが鈍くなっているのがわかる。
「ええ…それがわからないところなんです。あのくらいの妖怪なら戦闘経験が浅くてもセンスでわかるはずなんですよ。」
「どういうこと?」
「いくつかの推測があります。」
「推測?」
「一つ、成瀬さんを格下だと思って侮った。」
「…それこそあり得ないわ。」
「二つ目、成瀬さんがルーミアちゃんを焦らせて短期決戦に持ち込ませたか。」
「それなら成瀬さんも動きが鈍くなるはず。なのに…全くと言っていいほど鈍っていない。」
「三つ目…成瀬さんの能力の影響でしょう。」
「…それが一番高いわね。成瀬さんは三つの能力を持っているって聞いたし。」
「だとしたら…一体なんの能力なんでしょう?」
「(もしかして…競走馬が勝ちやすくなる能力と言っていたから…恐らくとんでもない能力を持っている。)」
「どうした?もうバテたのか?闇の剣が弱々しくなっているぞ。」
「おかしいわね…なんで、こんなに疲れる…の?」
「それはお前は10日も飯を食わなかったからだ。」
「嘘ね、それは。お腹がすいても疲れやすくはならない。力がでなくなるだけ…大方、貴方の能力でしょう?」
「さて、どうかな?」
「私にはそれをなすすべがないわ…もう、煮くなり焼くなり好きにして。降参!」
「そうか…なら俺について来い。人を食うなとは言わん。どうせ食うなら、人里の屑の人間を食え。」
「いいの?」
「まあ慧音にでも頼んで食ってもいい人間か食物を貰うことだな。」
「うん…」
「(最も、慧音は幻想郷一と言っていいほどの人間好きだ。そんなことをするのはよほどの事情でもない限り無理だと思うがな…)」
「あ…でもこの姿だとスキマがうるさいよ。今度この姿で会うときは貴方が異変を起こしたときになるね。」
「そのときは霊夢がすぐに俺のところに直行する…ま、そんなときは時間でも稼いでお前に会うさ。」
「え…?」
ここでまたもや成瀬に恋する乙女が現れた。
「どうした?不満か?」
「なんでもない!とにかく、博麗のところで封印して貰うから絶対に私のことを覚えておいて!」
「?そんなのは当然だろう。」
「いいから!私の名前はルーミア。常闇の支配者ルーミア。それだけ覚えておいて!」
「お前…いやルーミアがそういうならしょうがない。」
「もう行くから。じゃ!」
EXルーミアがそういうと脱兎の如く素早く霊夢のところへと向かった。
「…」
「(ひいっ!咲夜さんが怒っている!)」
「美鈴。」
「はい!」
「昼寝だけは絶対しないようにね…ふふふ。」
「めっちゃ怖いですから!その笑いかたやめてください!」
コン!
咲夜が投げたナイフが美鈴の顔の横を通り過ぎて門に当たる。
「何か言った?」
咲夜は口は笑っているが目が笑っていないという器用なことをしていた。
「なんでもありません!」
「ならいいわ。私は成瀬さんを呼び戻すから、美鈴。絶対に寝ないで門番の仕事をするように。」
「わかりました!全身全霊で侵入者は撃退します!」
「それじゃ…行ってくるわ。」
その言葉に美鈴は頷くことしかできなかった。
EXルーミアの戦闘力について…
恐らく状況次第では幽香や紫ですら倒しうる最強の妖怪。
身体能力に関しては幽香と紫の平均よりも上です。
ちなみに幽香は身体能力においては最強クラスです。紫は大妖怪の最低条件をクリアした程度の身体能力です。つまり、大妖怪の中では中の上くらいです。
能力は闇を操る程度の能力。しかし封印状態とは違い、いつでも異変が起こせるほどの闇を操り、しかも闇そのものが武器となることができるため、能力に関しては幻想郷でも五本の指に入るほどのチートな能力。