危険がないことを確認し、扉を完全に開ける。前方と右側に廊下が伸びている。見取り図によれば前方の廊下には更衣室、図書館、所長室等に繋がっており、右側の廊下は測定室、研究執務室等に繋がっている。まぁ、廊下は全て繋がっているので、迷うことはない。
「さて、研究施設なだけあってかなり部屋に数があるけど、どこから攻める?」
「そうだな、今俺たちが持っている腕輪はクラス2だから探索できる場所に制限がある。俺も流石にどの部屋が何ランクかまでは覚えちゃいねーからな。そこでまずは高ランクの腕輪の入手が最優先だ」
「それなら所長室でしょうか?ここの最高責任者なら最高ランクの腕輪があると思いますが?」
「いや、所長室に所長はいないんですよ。理由は地下室に行けば分かります」
「そうなると、次に偉い副所長か?流石に全部の石像から探し出すのは骨が折れそうだ」
「探すやつは正解だが石像を調べる必要はない。原作通りならまだ石化はしていないはずだが、探すにしても原作だとKPの任意のタイミングだったからな。それに副所長は発狂してるから襲ってくる。手分けして探すわけにもいかねーから地道に待つのが一番さ」
「やっぱり経験者がいるだけで安心感が違いますね。ですが、待っている間はどうしますか?」
「とりあえず、最期に使う切り札の回収からですかね。このまま立ち話も何ですから最初にそこに向かいます」
確かに、石像が並んだ廊下で長話するのも変だし、前方の廊下を歩き出した氷室の後についていく。廊下の突き当たりまで行くと左右に道が分かれ、左は仮眠室が二つあるだけで行き止まり。右はコンピュータールームに通じており、そのまま進めば再び廊下は左右に分かれていた。
氷室は迷うことなく左に進み、仮眠室の前に立つ。氷室は一番手前の扉に片耳を当てて、中の音を聞き取ろうとするが、こちらに振り返り首を左右に振る。
「流石に研究施設なだけあってか、仮眠室にも防音設備がありやがる。悪いが聞き耳してくれないか?」
「任せろ」「任せてください」
《ロール聞き耳 九十九81 失敗 山下25 成功》
失敗した俺には氷室同様何も聞こえないが、山下さんは何かを聞き取ったらしい
「この部屋の隣の仮眠室から、テレビの音……ですかね?」
「了解、隣の部屋ですね」
氷室は隣の仮眠室に立つと、電子パネルに腕輪をかざす。クラスは2なので、電子扉に腕輪をかざすと共にピッと電子音が鳴ると扉が開いた。
中を覗くと、左に2段ベッドが置かれているがコンピュータ雑誌やうまい棒とフ○ンタのペットボトルが散乱しており、正面には机の上にパソコンと数種類のゲーム機が置かれている。どうやら音の発生源は、このコンピュータから流れ出したものらしい。そして、その机の前に椅子に座ったまま石像になっている、でb、ゲフンゲフン、ふくよかな体型の男性が座っていた。
「うわっ、こいつ既に石化してんのかよ。まぁ別にいても問題なからいいか。例の物だけあればいいさ」
「その口ぶりに原作だと石化していなかったんだね」
「その通りです。ですが、こいつから得られる情報は既に知ってますからね。それでも一応石化していなかったら原作と相違がないか確かめたかったんですが、残念です。この職員女性に弱いんで、九十九がチョロっと色仕掛けすれば話してくれたんですがね」
「オイコラ。サラッと人を差し出すんじゃねーぞ」
「別にいいだろ?減るもんじゃあるまいし」
「減るわ!主に俺の男の尊厳が!」
何が悲しくてこんな奴に媚び売らねばならんのだ!どうせなら可愛い女の子と仲良くなりたいわ!
俺の意見の軽くスルーして氷室はなにかを探し始めた。山下さんも氷室に探し物を聞き出し一緒に探しているが、やる気が出ないため、机の下にあった小型冷蔵庫からフ○ンタを取り出し、被害の少ない2段目のベッドでくつろぐことにした。
《シークレットロール》
再びメッセージが流れた。おそらく進行度のやつだろう腕輪を見るに進度が2になっている。まだまだ余裕はあるので気にせずフ○ンタを飲む。
そこまで広くないので、10分ほどすると目的の物を見つけたらしい。どうやらUSBメモリーで氷室がパソコンを使い調べると、ファイルには《ノストラダムス》と書かれていた。この歳になってまだ厨二病が治っていなかったのか。
「目的の物も手に入った。お次は魔道書の入手と洒落込みます?」
「へぇ、魔道書なんてあるのかい?それは是非一度拝見してみたいね」
「魔道書かぁ……出来ればあまり見たくはないな。というかそもそも俺自身もこのキャラも外国語はからっきしだし、見たいならお好きにどうぞ」
「それじゃ、この職員から腕輪頂いて……よし、ランクは3だな。つぎは図書室だ」
仮眠室から出ると来た道を戻り、図書室に入る。この扉はランク2ですんなり入れた。図書室は壁一面に本が並べられており、どれも外国語で書かれているので俺にはどんな中身なのかさっぱり分からない。中央には複数台の机と椅子が並べられている。
「おかしい、確か原作だと小型の金庫がおかれているはずだが、見当たらねー。ちょっと探しますね」
「それなら僕も探しますね。九十九君もお願いしていいかな?」
「分かりました。手伝いますね」
さて、こうゆう時は定番の目星かな?全員で怪しいところはないか一斉に調べてみる。
《ロール目星 九十九20 成功 氷室54 失敗 山下91 失敗》
危ない。危うく全滅しかけるとこだった。俺は強化された視覚で、部屋の端にある本棚の一番下の本が何度も移動されている後を見つけた。本をどかしてみると案の定壁に埋め込み式の小型金庫があった。幸い暗証番号ではなく、ランク3と書かれていたので氷室を呼び出し開けてもらった。中身はお目当ての魔道書ではなく、スパイ映画でよく見かける小さな拳銃だった。予備の弾丸も置かれており、数は6発。拳銃に弾はこめられてはいない。拳銃を手にした際にメッセージが流れてきた。
《レミントン・デリンジャー ダメージ1d8 射程15m 故障99 攻撃回数2 装弾数2 耐久6》
「おいおい、まさか拳銃があるなんて、こんなの知らねーぞ!?」
「あるもんは仕方ねーだろ。俺は拳銃からっきしだから、技能持ってる氷室が持ってれば?」
「ああ、サンキュー。これで俺も戦力になるが、ラスボス戦が不安になってきたぞ。気を引きしめろ……一筋縄ではいかないかもしれん」
「そうだね。拳銃を使わないと勝てない相手かもしれない……ん?ちょっと待ってくれ。まだ中に何かあるみたいだよ?」
山下さんが金庫に手を突っ込むと、中から一枚のメモ用紙が出てきた。拳銃に気を取られすぎて気がつかなかった。
《万が一のためにこの拳銃を置いておく。私以外の誰かが手にしたとしたら、アイツを殺すためにぜひ役立ててほしい》
一体誰が置いたのかは知らないが、こうなることを予期していた人物がいたらしい。
「……ここに魔道書がないとすれば所長室か?まさかユーリとかいうNPCがいない影響?考えたって仕方ない。とりあえず弾は込めておくか」
《シークレットロール》
ここでまたもやメッセージが流れる。腕輪を見ると進度が3になっていた。そろそろ半分になろうとしているので、少し急がなければ。
図書室から出る前に次の行き先を決めることにした。椅子に座り、見取り図を机に置くと、氷室から話し始める。
「さて、未だに二つしか探していないが、いかなくていい場所がいくつかある。場所は生体実験室、測定室、コンピュータルームだ。この三つは罠で、行けばSAN値やHPが減るやつばかりで、ろくな情報も手に入らない。だけど、改変もされてるともしかすると何かあるかもしれないが、後回しにしても問題はないはず」
「となりますと、残りは所長室、実験室、倉庫、サーバー室に地下ですか?」
「そうなりますね。ですが地下室に行くためには確かクラス4が必要なんです。所長室も通った際に確認しましたがこちらも同じで、行くためには副所長から奪わないといけません」
「そうなると、廊下をうろついて副所長にエンカウントするのを待つか?」
「それだと余りにも非効率だ。そこでまず実験室に行き、情報を入手してその後、倉庫へ行き役に立ちそうなものをぶっしょk……拝借する!」
「お巡りさんこの人です」
「既に前科(警棒盗み)持ちが何言ってんだ?」
「おう、そのポケットに入れてるもん(拳銃)見てから言ってみろ」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩はそこまでにして。行き先が決まったのなら行動に移しましょう」
「「了解です」」
「(仲がいいのか悪いのか分かりませんね)」
図書室を出て実験室を目指す途中、丁度コンピュータルームの前の廊下を歩いている時、急にメッセージが流れた。
《聞き耳を使用しますか?》
俺は少し迷ったが、ここは素直に振ることにした。
《ロール聞き耳 九十九48 成功 氷室41 失敗 山下63成功》
強化された聴力からは、前方の廊下から鉄を引きずる音とともに、誰かの足音が聞こえる………と同時に、後方からもペタペタと何かが歩く音が聞こえる。引き返そうにも今いる場所は一本道の廊下で、進むも戻るも必ずどちらかに鉢合わせる。小声で失敗した氷室に情報を伝えると、苦虫を潰したかのような顔になる。そうしているうちに足音はどんどん大きくなり、ついにその姿を見せる。
前方からは、50歳くらいだろうか。頭部の一部が不毛地帯と化した冴えなさそうな老人が、鉄パイプを片手に丁度廊下の奥にいた石化した職員の頭部を殴りつけた。石化した職員の頭部は粉々に砕け散り、首からもげ落ちた。首の断面からは、大量の血液が噴水のように吹き出して辺りを血の海に変えていく。老人はブツブツと何かをつぶやいているが、強化が切れたのかよく聞き取れない。
目の前の惨劇に目を取られていると、後方からけたたましい叫び声が聞こえる。反射的に振り返るとそこには至る所が灰色に変色しているチンパンジーがいた。こちらは手に石化した人間の腕が握られており、こちらを見るなり「ウキキキ、ウキーーー!!!と興奮気味に騒ぎ、手にした腕を振り回している。
前門にジジイ、後門に猿と文字だけ見るなら意味不明だが、どちらも正気ではないことは一目瞭然だった。
「まさか一斉に来るなんてKPのやつ頭おかしんじゃねーのか?いや、アイツなら嬉々としてやりそうだな」
「そ、そそんなことよりどうするんだい!?挟まれてしまったよ」
「大丈夫ですよ山下さん。氷室、俺はあの波平野郎を片づけるからそっちの処理は頼んだぞ。ヘマしたら承知しねーからな」
「へいへい、了解だ。そっちこそヘマすんじゃねーぞ?ファンブって警棒が飛んで来るなんてしたら、代わりに鉛玉が返って来るからな」
「ハッ、上等だ。どっちが早く片づけるか競争するか?」
「OK、負けた方はここを脱出した後、飯奢りな」
「絶対高い店に行ってやる」
「それじゃ」「とりま」
「「ぶっ潰す!」」
「(仲良いなぁ)」by山下
《SANチェック 1/1d3 九十九23 成功 氷室88 失敗 2 山下72 失敗2》
こ、今回は無難なダイスに終わりましたが、次回の戦闘が不安で仕方ない
果たしてKPの嫌がらせを無事にのりこえれるのか!?