広瀬"孝"一<エコーズ>   作:ヴァン

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パラレルワールドのジョジョキャラを使って何か作りたいなと考えて。書いてみました。
康一君の名前が孝一なのは、パラレルワールドだからです。初投稿ですのでなにぶん勝手が分かりません。


第一部
始まりの日


子供の頃、ヒーローに憧れた。

弱きを助け、悪を倒す、完全無欠のヒーロー。

誰でもあるだろう?そんな唯一無二の、選ばれた存在になりたいという憧れが。

 

だから、そんな自分の願望をかなえてくれる「学園都市」という存在を知ったとき、僕は歓喜したよ。

子供ながらに土下座までして、両親を何度も何度も説得した。

 

学園都市に旅立つ前日なんて、すばらしい冒険の日々が僕を待っているんだって、

わくわくして眠ることが出来なかったっけ。

 

でも・・・

 

システムスキャン・・レベル0・無能力者・・・

 

それが僕に与えられた現実だった。

 

確かに世界は変わった・・・僕の望まない形で、最悪の現実を突きつけて・・・

 

 

 

「~と、言うわけで、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が能力発達の重要な要素となりうるのです」

 

どこか上の空で教卓で熱弁をふるっている教師の言葉を、広瀬孝一は上の空で聞いていた。

 

広瀬孝一。柵川中学一年生。身長157センチ。成績、中の上。

特に秀でた所のない平凡な学生。そしてレベル0。

好きなもの・なし。将来の夢・なし。

 

「孝一くーん。一緒に帰ろう。」

学校の帰り際、そういって同じクラスメイトの袴田が声をかけてきた。

 

 

「結局、僕らは何のためにここにいるんだろうな、そんなことを思うときがないかい?」

 

「どういうこと?孝一君」

 

「よく目の前の障害を乗り越えてこそ、人は成長するという人がいるだろ?

でもそれは成長できる障害があって始めて成立する事柄なんだ。

僕達の場合、その障害そのものが存在しないんだよ。」

 

「確かにね、僕達はレベル0だもんね。何をどうかけても0にしかならない。

プラスになる方法すら見つかっていない。」

 

袴田とは同じレベル0同士という事もあってか、とても気があった。その為、孝一も日頃の不満を

ぶちまけながら帰宅する。というのが彼らの日課となっていた。

 

「それじゃ、元気出して。お互いがんばろう」

 

「うん。ありがとう袴田くん。」

お互いが分かれる際のこの言葉も、もはや日課となっていた。

 

 

「はぁ・・・」

何もすることがおきなくて、孝一は帰宅するなりベットに倒れこんだ。

 

「ホント、何やってんだろ僕・・なんでここにいるんだ・・・何のために・・・」

 

無能力者の判定を出されてからの孝一は、何をやるにもやる気がおきなくなっていた。

超能力者がその大半を占める学園都市において、

無能力者はそれだけで蔑みの対象とみなされることがあった。

自分ではどうしようもないこの現実に、孝一は恐怖した。

 

夢あふれていた若者にとってレベル0という現実は

まるで自分の存在自体を否定されているも同然の出来事だった。

 

(こんな毎日を、これからも過ごすのか?自分は無能だって劣等感を感じながら?

いつまで?一生?)

 

そんな漠然とした不安と焦燥感を感じながら、孝一は目を閉じる。だが・・

 

「だめだっ・・眠れない・・」

 

何度やっても眠ることが出来なかったので、孝一は夜の街をぶらつくことにした。

 

 

時刻は11時を回っていたが、街は眠ることを知らないかのようににぎやかだった。

 

どこかから聞こえるゲーセンの音。呼び込み、人のしゃべる声。それらをボーっ聞きながら

孝一はどこを目的にするでもなく、歩き続ける。

 

「オィオィ、誰ぁ~れが寝ていいって言ったヨォ!」

ドゴォ!

「うっ・・、ゲェッ、うっ・・もう、勘弁してください・・・」

「シャべんなゃ、豚ちゃ~ん、ぁ~?」

ベキッ!

「げぴぃ!」

「そうそう、てめぇはそうやってブヒブヒないてりゃいいんだよォ!」

 

ちょうど人通りの通らない暗がりで、不快な音が聞こえた。

 

声を聞いていれば分かる。これは明らかに一方的なリンチだ。

 

しかもその行為は次第にエスカレートしている。

 

「ほらぁ~。シュート!!」

ドゴォ!!

「ゲボッ!?」

 

(とっ,止めないとっ!)

しかし、

足がその場から動かない!

 

(考えろ、孝一。相手は5人だぞ!しかもかなりの筋肉質で、ケンカ慣れしてそうな奴らだ。

お前見たいな非力なチビがいって何になる?しかも、見ず知らずの相手を助ける?

そんな義理がどこにあるんだ?

幸い奴等はこっちに気づいていない。このまま逃げろ!そしてアンチスキルに連絡すればいいじゃないか!)

 

心の声が聞こえた。

 

通常は二次被害を防ぐためにもそのほうがいい。わざわざ危険なことに足を突っ込むのは馬鹿のやることだ。

 

(だけど!だけど!)

 

「お、おいっ。それ以上やったら、本気で死んじゃうだろ!?

もうやめろ!」

 

(!?なんで?僕はこんなことを?)

 

自分でも信じられなかった。自然と口が言葉を発していた。

 

そして相手のほうに自然と歩み寄る。

 

 

「おいデブ。てめぇの知り合い?親友?」

「いっいえ・・・」

「オィオィ、ヒーロー気取りの馬鹿参上ってかぁ?」

 

「・・・そんなつもりはないよ、けどそんな一方的な暴力は

見ていて不快なんだ。とにかく、もうやめ・・・」

 

ガスッ!

「ウゼェ!!!」

男の1人が孝一の右顎を思いっきり殴り飛ばした。

 

「うっ!がっ」

孝一は成すすべもなく地面に倒れこむ。

頭が揺れる、視界が定まらない。完全に脳震盪を起こしていた。

 

「オイ馬鹿。そんなにこいつの肩を持つならよぉ!」

ドゴッ

「げェ!」

「テメェが!」

ガスッ!

「!」

「コイツの変わりに!!」

ドスッ!!

「ウゴッ!!」

「サンドバックになってくれんだろぉーなぁー!!!」

ドガッ!!!

「・・・ゲホォ!!!!」

 

何度も何度も孝一のお腹に大男はサッカーボールキックを叩き込む。

 

もはや孝一に抵抗する気力は残っていなかった。

(なんで、こんなことになったんだっけ?何を間違ったんだ?)

朦朧とする意識の中、孝一は昔の自分を思い出す。

 

・・ヒーローになりたかった。

特別な自分になりたかった。昔自分を助けてくれた、あの人みたいに、自分も・・

自分もその高みへ・・・

 

今日、不良グループから逃げなかったのは、レベル0の自分に対する焦りや不安だけではなかった。

今逃げたら、自分はもうあの人に顔向けできない。自分が許せなくなる。

だって、ヒーローは逃げ出さないから・・・

 

力が欲しかった。自分の、自分だけの・・・

 

「チ カ ラ ・・・ぼ・・ぼくだ け の・・」

「なにぶつくさ言ってんだコラァ?まだ寝ぼけんのは早ぇぞコラァ!!!」

 

男の足が大きく上がり孝一の後頭部を蹴り飛ばそうとしたその瞬間!!

 

ドゴッ!

「は?」

ふいに男の動きが止まった。

「?」

ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!

(なんだ?何の音だ?後ろ?)

男は後ろを振り返るが何の異常もない。

だが

ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!

だんだんと音が大きくなる

「うるさっ」

 

ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!

「がぁ!!!?」

男は耳を押さえて苦しみだす。その様子にただならぬ事態を察して、他の仲間4人が集まってくる。

「おっおい。ミッチャンどうしんたんョ?」

「こ、この音どこから鳴ってんだ!?」

「う!うるせ~!!!こ、この音を消してくれ!!!!、ガァ!!!」

「そ、そういわれても、この音、ミッチャンの顔から出てんだぜ!

な、ナンだよこれ?どうなって」

ガスッ!ガスッ!ガスッ!

「あ、あばばばっお、オレにも音がき聞こえて」

ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!

「う、うるせえ!!!!」

「ひっひぃ!!なんなんだョ!これはヨォ!」

 

「うっ。」

うっすらと、孝一は目を開ける。

なにやら周りがやかましい。

(なんだ?いったい何が?)

そこで見たものは。

 

ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!

ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!

ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!

「ウガァ!!!!」

「こ、この音を止めてくれぇ!!!!」

「おおおおおおおお」

 

5人の不良たちはそれぞれが悶絶していた。

 

(ドゴォ?)

テレビアニメやドラマなどで使われる効果音はこの文字を中心に発生しているようだ。

「なんなんだ?これ?」

孝一が疑問に思ったそのとき。孝一の少し上のほうにふわふわと浮かぶ物体を発見した。

「!?」

そいつは今まで見たこともない生物?だった。

自身の身長ほどもある長いしっぽと、人間のような両手、車輪?

はたしてロボットなのか生物なのかよく分からないそれは

形容するなら、まるでさなぎから孵ったばかりの幼虫のようだった、

それ?は特に逃げる様子もなくこちらを凝視している。

 

普通ならこの奇妙な生物を「不気味」「得体の知れないもの」と形容するのだろうが、

孝一は特にそんなことを感じなかった。むしろ

(命令を待っている?)

なぜそんなことを感じたのか分からないが、孝一には確信があった。

こいつは決して僕に危害は加えない、と。

 

「うっ・・・うっ・・・」

ふと気が付くと、不良たちが口から泡を出して痙攣している。

(このままだと死んでしまう。なんとかしなきゃ)

孝一がそんなことを思った瞬間。

ピタッと

世界は静寂に包まれた。

 

(!?こいつは、もしかして?)

 

(そうだ!こうしちゃいられない、とにかくここから離れなきゃ)

いまだ呆然としている被害者の太った男を伴って、孝一はこの場を離れることにした。

 

「・・・うっ・・うっ・・ありがとうございました。彼らがいきなり因縁をつけてきて・・

君がいなかったらあのままどうなっていたか分からないよ。」

「いえ、こっちも黙ってみていられなかったというか、とにかくお互い無事でよかったよ。」

「それにしても、あの変な音は何だったんだろう?あの不良たちがいきなり

苦しみだして・・・」

「さ、さあ?とにかくあの辺りにはしばらく顔を出さないほうがいいよ。」

 

なんだか分からないけど助かったことを健闘?し、孝一たちは岐路に着いた。

 

「さて・・と」

帰宅した孝一は今自分のおかれている状況を確認していた。

孝一の後ろをずっと付いてくるこの”生物”の事と、

さっきの奇妙な現象のことを。

 

(どうやらこいつは他の人間には見えないようだ。

先ほどお礼を言っていたあの瞬間にも僕の隣にこの生物はいたのだが、彼は気づかなかった。

というより見えていなかった。

そしてどうやらこいつは僕の命令を聞くという事が分かった。

さっきの不良たちに対して、僕は何とかしなきゃと思った。その瞬間こいつは音を消した。

と、いうより・・・)

孝一は自分の机に目を向け、この生物に心の中で、不良たちにやった事と同じことをやるように命じた。

すると、この生物は小さな腕を振り上げ、机に向かって、殴るような動作を見せた。

ドゴッ!

 

あの小さい腕から出たのかと、想像もできないような音が発生した。

そして。

カンカンカンカン

机から、遮断機が降りて来るときに発生する効果音が何度も何度も発生している。

不良たちを襲った音とは違った音だ。

これは、さっきテレビドラマのワンシーンで流れていた音だ!

そしてその音は次第に強くなっている。

カンカンカンカン!!!!

「おっおい!もういい!ストップ!やめろっ!」

孝一がそう叫ぶとその瞬間!

ピタッ

音がやんだ。

 

孝一は確信した。これは、この生物は自分の分身だと。そしてこいつの能力は色々な音を発生させる能力だと。

 

ドクンッ

心臓が高鳴る。

こんな能力、学園都市でも聞いた事がない。今までにない能力だ。

 

ずっと、ヒーローになりたかった。

ブラウン管の向こうの先で、いつもまばゆい光を放っていた。ヒーローに。

この学園都市でその願いは叶わないと一時は絶望した。

でも、それに変わる新しい能力を獲得した。

これが何なのか分からない、でもそんなものはどうでもいい。

 

もっと知りたい。こいつには何が出来て何が出来ないのか、能力の限界を。

 

そして願わくば、この能力を正しい事に使いたい。かつて僕を助けてくれたあの人のように、

僕も誰かを助ける存在になりたい。

 

何故かわくわくした。昔、学園都市に来る前に感じた、あの煌きをまた感じた。

失った何かをまた取り戻した。そんな気がした。

 

ドクン ドクン

 

 

世界が変わる音を、僕は確かに聞いた。

 

「そうだ、こいつに名前をつけよう、色々な音を発生させる能力だから、エコー・・・

エコーズ!、こいつの名前はエコーズだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず思いつくまま書きなぐってみた感じです。
初めて小説というものを(これが小説という体裁を持っているのかはべつとして)
書いてみました。
この先どうなるかはまだぜんぜん分かりません。
何かを生み出すってとても疲れますね。まさかこんなに大変だったとは。
でもとりあえず満足です。

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