広瀬"孝"一<エコーズ>   作:ヴァン

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今回で完結させるつもりだったのに…
長くなりすぎて、次回に持ち越しとなってしまいました。


巣立ちの前に

「…12号ぅ!」

 

孝一を担いで歩くエルと佐天の背後で、男の怒号が響きわたる。

見ると、血だらけの白衣に、拳銃を持った男が、目を血走らせてこちらに銃口を向けている。

先程孝一に発砲し、音石の攻撃でその身を焦がされた男・徳永である。

 

「あいつ…。死んだはずじゃあ…」

 

佐天は、再び発生した危機的状況に、どうすれば良いのか分からず、ジリジリと後ずさろうとする。

しかしそれをエルが制する。

 

「…涙子様…。しばらく、孝一様をお願いします」

 

そういって、孝一の体を佐天に託し、徳永の方へ一歩ずつ歩き出す。

 

「エルちゃん!」

 

思わず、佐天がエルを止めようと、手を伸ばす。

このまま、エルが帰ってこないような気がしたからだ。

 

「…大丈夫です。エルはどこにも行きませんよ?用件はすぐに終わります」

 

そういって、エルはふっと口元を緩ませ、笑顔を作る。

その笑顔は、まだまだ練習が必要なくらい拙い物だったが、佐天には、それがとても頼もしいものに思えた。

 

 

「うれしいぞ!12号!!役に立たないと思っていたお前が、最後の最後になって、ようやく私に報いてくれた。…実験は成功だ!!となると、俄然生きる意欲が湧いてくるというもの!…逃げてやる!どんなことをしても、必ず!!さあ、私と一緒に来るのだ、12号!!お前の体、隅々まで調べつくしたい!!」

 

徳永はそういって、銃口を佐天に向け、吼える。

 

「だが、その前に、そこの女と仲間達はどうしても許せん!この手で殺さなければ、気が治まらん!12号!女を抑えろ!そして跪かせるのだ!」

 

徳永は、エルが自分の命令に逆らうはずがないと確信していた。コレは命令に忠実な、ただの人形。壊れたら交換のきく、代用品。そう思っていたからだ。だがエルの発する次の一言で、徳永は自分の考えが間違っていたことに気づく。

 

「…意外でした。「とおさま」が死なずに、生き残っているなんて…。物語の中では、こういった場合、悪い人が真っ先に死んでいくと書かれていたのに…。悪運がお強いんですね」

 

そういって、エルは冷ややかな目を徳永に向ける。

 

「な…ん…だと?…貴様…。父親である私に、よくもそんな口が聞けたな!!誰のおかげで、今まで生かしてもらったと思っている!!この恩知らずが!!」

 

そういって徳永が銃口をエルの方へと向ける。だが、エルはそんなこと意にも返さずに、つかつかと、徳永のほうへと歩み寄る。

 

「近づくんじゃあない!これが見えないのか!!」

 

徳永が、銃口におびえないエルに、苛立ちの声をあげる。だがエルはそんな怒号にきわめて冷静に、冷酷に、答える。

 

「はい。見えません。その手には、何かあるんですか?"…何もありませんよ"」

 

「な?」

 

 

ズグンッ

 

手に激痛が走る。

見ると、先程まで握っていた拳銃がなくなっている。…いや、拳銃だけではない。握っていた、指が、手のひらが…。徳永の右手すべてが、まるで何かにかじられたかのような状態になり、鮮血を滴らせている。

 

「うぅぅぅぅぅわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

徳永が絶叫し、右腕を押さえながら、その場にへたり込む。

 

「…アル。これ以上食べちゃダメですよ?」

 

「…チュ…」

 

アルは残念そうに、部下達に攻撃を控えるよう、命令する。

 

徳永には見えないが、すでに彼の周りには、黒ねずみ達が取り囲んでおり、リーダーの号令を、今か今かと待ち構えているのだ。黒ねずみ達は、攻撃中止の命令を、とても残念そうにしている。エルはそんな黒ねずみ達に、「ごめんね」と謝ると、再び徳永に近づいていく。

 

「…先程、あなたは、自分のことを、父親だとおっしゃいましたね?」

 

エルが右手を押さえてうずくまる徳永に、声を掛ける。

 

「…もし、あなたがエルの親だというのならば、どうして愛情を注いで下さらなかったのですか?愛情は、親が、生まれてくる子供に最初に与えてくれる、大切な宝物です。ですが、エル達はそのようなもの、一度たりとも与えられていません。あなたが与えてくれたのは、暗いコンクリートの一室と、硬いベッド。そして、生命維持に必要な栄養素だけです。」

 

「き…さ…ま…!!」

 

エルはついに徳永の目の前、触れば手が届く距離まで近づく。

 

「…ですから、エルはあなたを親だとは認めません。いいえ、あなたには親としてだけではなく、人間として、何か大切な感情が、抜けているようにも思えます。そんなあなたに殺された、エルの姉妹達が不憫でなりません」

 

「ハァッ…。ハァッ…。近づくな!この、化け物がぁ!!」

 

「!?」

 

一瞬…。エルの顔が悲しみにゆがんだ…

 

元々、親子の縁などないと思っていたが、それでも期待していた…。いつか、いつの日か、自分のことを、一人の人間として扱ってくれるのだと…。だが、それは幻想。触れたら壊れる、ただの儚い夢。

エルは、激しい胸の痛みを感じながらも、それでも、声を絞り出し、徳永に自身の感情をぶつける。

 

「…エルが化け物なら、そうしたのは、あなたです。…エル達は、あなたの身勝手な欲望が生み出した、ただの消耗品なのかもしれません。でも、意思があります。…感情があります。あなたの実験で、姉妹達が殺されるたび、エルがどんな気持ちでいたか、わかりますか?…怖くて、痛くて、辛くて…。それでも逃げ出すことの出来ない恐怖が、あなたに分かりますか?」

 

エルの瞳から涙が零れ落ちる。こうして今まで表現することが出来なかった感情を、生みの親である徳永にぶつけることで、気持ちが高まり、感極まってしまったのだ。

しばらくの沈黙の後、エルは両手で涙をぬぐうと、徳永に対しこう宣言する。

 

「…お別れです”とおさま”。エルはここから出て行きます。ですがその前に、あなたからもらったものを、返させて頂きます」

 

そういうと、エルは握りこぶしを作り、右腕を大きく振り上げた。そしてそのまま--

 

ガッ!!

 

徳永の顔面を殴りつけた。

 

「ガハッ!!」

 

徳永は、鼻血を噴きながら、地面に倒れこむ。

 

「…これは、今まで殺された姉妹達と、エルの友達を傷つけた、お返しです」

 

そしてくるりときびすを返す。

 

「さようなら。"とおさま"。…いえ、研究所の所長さん…。あなたには怒りや憎しみの感情しか貰えませんでしたが、それでも、エルを生み出してくれたことには感謝します。…そのおかげで、エルはかけがえのないものを、友達を、手に入れることが出来たのですから…」

 

それきり、エルはもう二度と、徳永のほうを振り返らなかった。

そして、二人のやり取りを見守っていた佐天と共に、孝一を担ぎ、去っていってしまった。

 

「…」

 

後には、残された徳永のみがいた。

 

「ふっふふふ…」

 

徳永は、どこかおかしかったのか、突然笑い出す。

 

「ヒヒヒヒヒヒヒヒ。人形が、自我を持ったか?ひゃひゃひゃひゃッ!くだらん!!実に下らん!!!そんなことより、ついに、私はやったのだ!!実験を、成功させたのだ!!!この新薬を投与すれば、誰であろうと異能力を手にすることが出来る!!それが生み出す金は、計り知れない!!各国が、私の研究資料に、こぞって、大金を投資してくれる!!やるぞ!!もっとだ、もっと研究を進めて、ゆくゆくはこの新薬を大量に生産するのだ!!ハハハハハハ!!ヒィーッヒッヒッヒッ!!!!」

 

まるで狂ったように笑う徳永の声が、辺りに木霊していた…

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

…夢を見ていた。

ある、はつかねずみの夢を…

 

そのはつかねずみは、実験動物であり、研究職員達はこぞって彼女の仲間達を実験と称しては、過酷な実験に使用していた…。仲間が一人減り、二人減り、遂には彼女だけとなってしまった時、そのはつかねずみは脱走を試みる。研究職員の手を噛み、隙を見て逃げ出したのだ。

彼女は走った。外の世界を求めて、自由な世界を夢見て…

 

そして、とうとう研究所から逃げ出せる、小さな穴を見つける。

 

--これで逃げ出せる!外の世界にいける!--

 

彼女は歓喜した。だが、その穴は、彼女のお腹には小さすぎて、彼女は壁に挟まってしまった。

…彼女は、妊娠していたのだ…

やがて、研究職員が、壁に挟まれた彼女を発見する。

 

--おい。こいつのお腹、やけに膨らんでいないか?--

 

--たぶん。妊娠しているんだよ。やったな。この子供達を使って、また実験が出来るぞ--

 

彼女は叫んだ。

 

--やめて!お腹の子供達には、手を出さないで!--

 

だが、そんな彼女の声が、人間には聴こえるはずもなく、彼女は再び檻の中に入れられてしまった…

逃げ出したくても逃げ出せない。

やがて、彼女は絶望し、自分の腹を噛み千切り、お腹の子供達と共に、死んでしまった…

 

職員達は、そんな彼女の死体を、さも汚そうにつまみ上げ、焼却炉に投げ捨てた。

後には、何も残らない…自分の生きた証も…夢も、希望も何もない…

 

 

そんな、悲しい夢だった…

 

 

 

◆◆◆

 

 

「う…」

 

「おっ。起きたのか?親友」

 

目を開けると、いきなりジャックの顔があった。

 

「…ジャックさん…。ここは…。イッ!?っ~!!」

 

孝一が、起き上がろうとすると、とてつもない激痛が襲ってきた。そのとたんに、曖昧だった記憶がよみがえってくる。

 

(そうだ!僕は音石を倒して、その後、銃で撃たれて!…その後、ねずみが出てきて?あれ?その後は?…そうだ!エル!ねずみと一緒に、エルが出てきたんだ!)

 

「ジャックさん!エルは!?佐天さんは?皆は!?…ウグッ!?~!!!」

 

「無理すんなって。全身打撲に、出血多量。肋骨にはヒビ。おまけに銃で撃たれていたんだぜ!?命があったのが奇跡みたいなもんさ。わからネエだろうが、あれからもう1週間も経っているんだぜ?」

 

そういって、ジャックが「ほれっ」と、孝一に水の入ったコップを差し出す。

 

「ありがとうございます…」

 

孝一がそういってコップの水をごくごくと飲み干す。

周囲を見渡すと、清潔なベッドにカーテン。薬品の独特なにおい。周りでは、ナースコールや患者を呼び出す放送が聴こえてくる。時計を見ると朝の8時を指していた。

 

「?」

 

良く見るとジャックの真後ろに、初老の医師が立っていた。その顔は、どことなくカエルを連想させる。

 

「気が付いたようだね。広瀬孝一君」

 

そういって、カエル顔の医師は、孝一に話しかける。

 

「君の事は、ここにいるジャック君から聞かせて貰ったから良く知っている。…なんでも、君には普通の人間にはない、特殊な能力が備わっているみたいだね?」

 

「え?」

 

孝一はジャックの顔を見る。まさか、この人に、僕の能力の事を、話したんだろうか?

するとジャックは、「安心しろ。この人は信頼できる」と言って、頷いてみせた。

 

「そう不安になる必要はないよ。僕は君をどうこうするつもりはない。…君に能力が備わっていようが、なかろうが、医者のする事は、たった一つ。『患者を救う』ただそれだけだから」

 

そういって、ニッコリと孝一に対し、笑顔を見せる。

 

その時、ガラッと勢い良く扉が開かれる。

 

「孝一君!!」

「広瀬さん!よかった、意識が戻ったんですね!」

 

そういって入ってきたのは、佐天涙子と、初春飾利である。彼女達は孝一の意識が戻ったのを確認すると、孝一のほうへ走りより、そのまま孝一に抱きついた。

 

「うあっ!?」

 

「うっうっっ。良かった…良かったよぉ~!孝一君が、生きていてくれて~!」

「このまま、意識が戻らないんじゃないかって、ずっと心配してたんですよぉ~!!」

 

そういって彼女達は、しばらくの間、わんわんと泣き続けた。

 

しばらくの間、孝一達はお互いの再会を喜び合っていたが、さすがに孝一は気恥ずかしくなり、佐天達から離れるために話を振ってみる。

 

「あ…あのさっ。佐天さん。あの後、どうなったんだい?…正直、撃たれた後からの記憶が、酷く曖昧なんだ…。アンチスキルの人達と、鉢合わせしたり、しなかった?」

 

その孝一の問いに、佐天と初春は、孝一から体を離し、答える。その顔は、少し辛そうだ。

 

「…正直、私一人の力じゃ、皆を運び出せなかった…。初春達とも連絡取れないし、気絶した白井さんと安宅さんを、どうやって運び出そうか、本当に分からなかった。それをね、エルちゃんが助けてくれたの…」

 

「…エルが…?」

 

「…うん。あいつらの実験で、エルちゃんに投与された薬…。それのおかげで、エルちゃんは孝一君と同じ力を持ったの…。私には見えなかったけれど、エルちゃんが言うには、たくさんのネズミを操る能力みたい…。その力で、白井さんと安宅さんを、地上まで運んでくれたの」

 

その後、ジャックにより、この病院へ連れて行かれ、孝一と白井は緊急入院となったこと、佐天と初春も一応精密検査を受け、その日のうちに家に帰されたこと。白井は3日間入院し、その後、学校を無断外出したことで、二週間の謹慎を食らってしまった事などを佐天は説明した。

 

孝一は、「白井さん。すいません」と、心の中で謝罪しながらも、さっき見た夢を思い出していた。あれは、エルの事を暗示していたんだろうか?

…そういえば、その肝心のエルが、いない…。まさか…。

孝一は、今話題に上っている少女がいない事を不安に思い、佐天達に尋ねる。

 

「…そういえば、エルがいないみたいだけど、どうしたの?あれだけの血が出ていたんだ、僕と同じで、とても傷ついているはずなんだ…。エルは無事なのかい?」

 

「あ…」

「それは…」

 

佐天も、初春も、互いに顔を見合わせ、言いよどむ。その様子に、孝一は、エルの身に何かあったのだと、直感的に思い、彼女達に、さらに詰め寄ろうとする。しかし--

 

「…そこから先は、僕から話そう」

 

カエル顔の医師が、孝一達の話に割って入った。

 

「結論から言うと、彼女は無事だ。ちゃんと生きている。…だが、それは本質的な解決には、なっていない…」

 

「?」

 

生きているのに、どうしてそんなに歯切れの悪い答え方をするのだろう?エルは、助かったのではないのか?

孝一は、医師の言っていることが今一つ、良く分からないでいると、医師はもう少し分かりやすく説明する。

 

「彼女は…エルさんは、御坂美琴さんのクローンを、違法にコピーした、悪質な劣化複製(デッド・コピー)だ。当然、体細胞や身体機能、テロメアに至るまで、様々な障害を抱えている。…おそらく、このまま行けば、確実に機能障害が起こり、あと数年で、死亡してしまうだろう…」

 

「!? そ…そんな…」

 

孝一は頭の中が真っ白になった。せっかく、エルを助けることが出来たのだと思っていたのに…

これじゃあ、何のためにエルが助かったのか、分からないじゃないか!

 

そんな孝一の表情を察して、カエル顔の医師は頼もしく、言い放つ。

 

「そんな顔を、しなくてもいい。エルさんは、必ず助けてみせる。この腕に誓ってもね」

 

「…本当ですか!?本当に、エルは助かるんですか?助けてくれるんですか?」

 

藁にもすがる思いで、孝一は医師にたずねる。

 

「当たり前だ。僕を、誰だと思っているんだい?」

 

その自信にあふれた顔は、とても頼れるものに思えた。

 

 

◆◆◆

 

 

医師の後ろを、孝一達が付いていく。孝一は、まだ起き上がれる状態ではなかったので、病院の車椅子に乗っている。

 

「孝一君。無理しなくてもいいのに…」

 

佐天が孝一の車椅子を押しながら、廊下を歩く。その後ろを、ジャックと初春が続く。

 

「…いや。どうしても、見ておきたいんだ。エルがどんな状態なのか。…佐天さん達は、もう見たんだろ?どんな状態だった?」

 

そういって佐天に、エルの状態を尋ねる。佐天はしばらく考えた後、孝一にこう答える。

 

「…なんていうかね…。とっても綺麗だった。まるでおとぎ話に出てくる、眠り姫みたいに…」

 

 

◆◆◆

 

 

「…エルさんは、この部屋にいる。待ってなさい。今、ロックを解除するから」

 

そういって、医師はドアに備え付けてあるボタンを操作して、ドアのロックを開ける。

 

ピッ。

 

小さな電子音と共に、ドアが開閉される。

 

「…あ…」

 

孝一は中の様子に、思わず小さな声をあげた。

 

「…」

 

エルはその部屋の中に、確かにいた。

だが、ベッドに寝ているのではない。

 

ゴポッ…ゴポッ…

 

彼女の体は、長方形の、機械で出来た棺桶のようなもので覆われていた。その機械には、大小様々な大きさの管が接続されており、独特の機械音を発している。彼女はそこに寝かされていた。

その横には、誰かが置いた花が綺麗に花瓶に飾ってある。ここの看護婦が行ったのだろうか?

 

ゴポッ…ゴポッ…

 

そして彼女の体は、培養液とでも言うのだろうか?オレンジ色をした液体に包まれ、口には酸素マスクのようなものを装着している。唯一、顔の部分だけが、透明なガラスで出来ていたため、孝一はエルの寝顔を見ることが出来た。その寝顔は、先程佐天が形容したように、とても可愛らしく。まるで今にでも起き上がってきそうだった。

 

「この機械はね、傷ついたり、失われた体内の細胞を修復し、一般人と同じ、正常な細胞に再生させることが出来る装置だ。そして、それと同時に彼女には、ナノマシンによる治療も行っている」

 

「ナノマシン?」

 

思わず孝一が聞き返す。

 

「うん。このナノマシンには、損傷したテロメアを自動修復する機能が備わっている。これにより、短命だった彼女の寿命を、飛躍的に延ばすことが可能となっている。ただ、副作用として、病気になりにくくなったり、ちょっとした傷なら、すぐにでも回復可能といった、人間離れした機能も持ち合わせてしまう事になるけれど…」

 

そういって、頬をかき、カエル顔の医師は笑った。

 

「…良かった…エルは…、助かるんですね…?本当に、良かった…。うっ…ううう…」

 

孝一は顔をうつむかせて、泣いた。また、エルと会話が出来る。それが何よりも、嬉しい…。

何でもいい。他愛のない話でも、馬鹿な話でも、これから毎日でも出来るんだ。そのことが嬉しくて、心の底から、嬉しくて、泣いた…

 

「グスッ…」

「うう…」

「ヘヘッ…泣かせてくれるぜ、まったくよ…」

 

気が付くと、3人共、孝一と同じように泣いていた。

こうやって、自分と同じ思いを共有できる仲間がいる。それが、孝一にはとても嬉しかった。

 




困ったときのお助けキャラ。カエル顔の医師の登場です。

エルの寿命の問題を解決する方法を考えていたら、真っ先に、この人の顔が浮かんできました。

当初の予定では、エルは最後まで懸命に生きて、孝一の腕の中でとびきりの笑顔を見せて、死ぬ。
そして、エルの思い出とともに、孝一達は涙を振るい、未来へ向かって歩き出す。といったエンディングを考えていました。でも、この物語に、そんなバッドエンドはふさわしくないだろ?と思い直し、出てきたのがカエル医師です。このお医者さんがいてくれて、本当に良かったー。

ラストまで後1話。精一杯、頑張りたいです。

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