広瀬"孝"一<エコーズ>   作:ヴァン

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書いても書いても終わらない現象が発生し、
二倍くらいの文章量になってしまいました・・・
書いても書いても終わらない・・・



接触

うかつだった・・・誰もいないと安心しきっていた・・・

まさかジャッジメントと遭遇するなんて・・・・

予想出来たはずじゃないか。

・・・浮かれ過ぎていたんだ。エコーズの能力に・・・

能力を持った自分に・・・

そしてそのせいで、僕はとんでもない事件に足を突っ込むことになる。

でもこの時点の僕にそんな事は解る筈もなく・・・

 

 

 

「・・・・抵抗、いたしませんの?」

ツインテールのジャッジメントがそうつぶやく。

もちろん孝一としては最大限抵抗して、この場から逃れたかった。

しかし・・・

(逃れてどうする?)

もう一人の孝一がそれを制する。

(もう僕の顔は判ってしまっている。そして、ジャッジメントが来たという事は、

この辺に隠し監視カメラがある可能性が非常に高い。)

そうなら孝一と不良たちとの一部始終も映像にばっちり映っている事だろう。

(それに今逃げられたとしても、やがていつか捕まってしまう。)

この学園都市という檻の中、孝一が100%安全に逃げ切れる保証などどこにもないのだ。

ココで下手に騒いで、もしジャッジメントに怪我でも負わせてしまったら、それこそ

刑務所送りにでもされかねない。

それなら---

孝一は、一番誰も傷つかない方法を選択した。

「言い訳はしません。彼らが男の人を集団で暴行しようとしていたので

仲裁に入ったら、殴り合いのケンカになってしまったんです。」

そういって、両手を差し出した--

 

バチッ!バチッ!バチッ!

ふいに、孝一達の周辺にある明かりの灯っていないビルが激しく点滅した。

いや、点滅というより?スパーク?プラズマ?

一瞬、今が夜だということを忘れるくらいの明るさ。

それが次第に孝一たちから遠ざかって、100メートルくらい先の銀行に吸い込まれる。

そして----

ジリリリリリリリリリ!!!!

鳴り響く警報音、そして、

ドッグゥォッンンンンン!!!!!

爆発音!!!

「な、!?」

「何が起こっていますの!?」

ツインテールの少女は急いでどこかに電話を掛け、なにやら話している。

おそらくジャッジメント支部に状況を報告しているのだろう。

「とにかく、被害状況と犠牲者がいないかの確認が先決ですわ。!

そこのあなた!状況が変わりましたので、今回のことは見逃してあげます。

ですが、詳しい状況が聞きたいので、後日ジャッジメント第一七七支部にまで

顔を出してください!」

「ちょ・・・」

言うが早いか、ツインテールのジャッジメントは一瞬でその姿を消してしまった。

おそらく瞬間移動であろう彼女の能力。孝一は改めて彼女とやりあわなくて正解だと確信した。

しかし、あの爆発は何だったんだ?それにあのスパークは?

(ひょっとして、自分は何かヤバイ事件に遭遇してしまったのか?)

ウ~ウ~ウ~

銀行に接近する消防車の音をどこか遠くに聞きながら、孝一はそう思った。

 

 

バチバチバチッ

そんな孝一を見つめるようにスパークが走った。

それは一瞬、顔の形をとったように見えたが・・・

「・・・・」

孝一に対する興味を失ったのか、すぐにただのスパークに戻り

夜の街中に消えていった。

 

 

 

 

ジャジメント第一七七支部。そこは学園都市第七学区のとあるビルの一角に存在する。

そのビルの入り口に、広瀬孝一は佇んでいた。時刻は午後六時。あの、トミタ銀行大爆破事件から

一日が過ぎていた。

事件は各メディアで大々的に報道されていた。

 

事件の概要はこうだ。

深夜12頃、トミタ銀行内で謎の大爆発が発生する。

原因は不明。目撃情報もなし。

その際作動していたであろう店内カメラにも、なんら不自然な点はなかったことから

当初はガス漏れが原因ではないかとの憶測も飛び交っていた。

しかし、店内のATM、金庫内の現金が全て消失し、

ガードロボットにも明らかに攻撃を受けたであろう損傷が発見されたため、何らかの

能力者の集団による犯行との見方をアンチスキルは発表している。

 

その場にいた孝一にとってこの事件は他人事ではない。しかし今の孝一は別の目的で

ジャッジメント支部に訪れていた。

その目的は自身の潔白を証明するためである。

昨日、事件現場の近くにいたのは事実である。それを無理やりこじつけられ、

今回の爆破事件の関係者と見られるのだけは、どうしても避けなければならない。

(理由もちゃんと考えてある。後はいかに自分が加害者ではなく

事件に巻き込まれた、ただの被害者であるかアピールできるかにかかっている。

大丈夫、僕には出来る、出来る・・・)

そう自分に暗示をかけ

「よしっ。」

孝一は意を決し入り口に足を勧める。

 

「あれ~?ひょっとして、広瀬君?何でこんな所に~?」

孝一の意気込みを削ぐように、後ろから見知った声がかかる。

「さ、佐天さん・・・・」

クラスメイトの佐天涙子だった。

「な、何でこんな所に?」

「あれ?言わなかったっけ?ココ、初春がいるんだよね

ヒマだったから遊びに来ちゃったんだ♪」

(そういえば初春さんはジャッジメントだったっけ、

でもまさかこの支部にいるなんて・・・

というか、遊びに来ていい場所なのか?)

「孝一君は、何の用?まさか!事件の関係者!?

殺人?爆破?強盗?」

「ち、ちがうよ!ちょっと、ケンカに巻き込まれただけだよ」

いったい彼女の中で自分はどんな人間なのか、その頭の中身を調べたくなるが

とりあえず黙っておく。

 

 

「へぇー、じゃあ不良に絡まれていた人を助けようとしてケンカになっちゃったの?」

一七七支部の部屋に向かう途中で、孝一は事の顛末を、佐天さんに説明した。

もちろんエコーズのことは伏せておいてだが。

「やっぱり孝一君、変わったね。」

不意に、佐天さんがポツリとつぶやいた。

「そんなに変わったかな?正直自覚ないんだけど。」

「変わったよ。前の孝一君はなんと言うか、テストで0点とったような顔してた。」

「それって、すごい落ち込んでたって事?」

「うん。少なくても誰かのために、体を張るような人じゃないなぁって思ってた。」

確かに以前の自分は、全ての事柄に対して諦めていた。

どうせ何をやってもレベル0。これ以上の能力向上は認められない。

自分で自分の可能性を否定していたように思う。

「ねぇ。何があったの?孝一君の世界観を変えた出来事って、一体何?」

不意に真顔で佐天さんが孝一の顔を覗き込んできた。

その顔はどこか切羽詰ったようにも見える。

(そういえば彼女もレベル0だったっけ・・・)

意外だった。彼女はクラスのムードメーカーで、楽天的な人だと思っていた。

少なくともこんな表情をする彼女を孝一は知らない。

 

「出会ったんだ・・・運命を変えるようなヤツに・・」

「やつ?」

「そいつは、小さい世界観で物事を見て、腐っていた僕の世界観そのものを変えてしまった。

もし運命というものが存在するのなら、あの出会いこそそれだったんだ・・・」

それは嘘偽りのない正直な感想だった。

もし、あの時別の道から帰っていたら・・・不良達から逃げ出していたら・・・

きっと孝一の人生は、いつまでも誰かを妬むことをやめることが出来ない、

暗いものになっていただろう。

 

「・・・うらやましいな・・・そんな出会いをした孝一君が・・・」

それは羨望。

自分と同じ立場だと思っていた人が、いつの間にか自分より先を行ってしまっている

羨望のまなざし。

「私にも、いつかそんな出会いがあるのかな?」

「・・・・」

孝一にはその質問に対する答えを持っていない。彼女を慰めるため、「絶対あるよ」

と言うのは簡単だったが、その答えをきっと彼女は望んでいない。

これは彼女自身が乗り越えなければならない問題なのだ。

それが分かっていたのか、彼女は勤めて明るく振舞うと、

「その孝一君を変えた人って、どんな人なのかな~。彼?彼女?ねぇねぇ、今度紹介してよ~」

といつものようにおどけて見せる。

「まぁ、その内にね・・・」

(人じゃないんだけどね・・・)

とは死んでもいえなかった。

 

 

「ここが第一七七支部だよ。あっちょっと待っててね。」

勝手知ったる何とやら。まるで自分の家の様に孝一をエスコートし、

佐天さんは、中に入ろうとする孝一を制する。

「あっ。いたいた。ぬっふっふっ」

「?」

佐天さんはまるで空き巣にでも入るかのように、音も立てずにドアを開け、

中腰姿勢で前進する。その先には、何かの資料を大量に持った。初春飾利がいる。

その姿は後ろを向いているので見えない。そして佐天さんはそんな初春に対し

音もなく接近する。

(はっ。まっまさか・・・)

さすがに孝一も途中で気づく。これは?!この動作は!?

(で、でも、さすがに・・・まさか・・・ジャッジメント支部で?

嘘だろ?)

「う~~い~~~」

すべてがスローモーションのように・・・

「は~~~」

「さ、佐天さん?やっ、やめっ・・・」

ゆっくりとそして、寸分の狂いも許さず、佐天さんは・・・

「るっ!!」

初春飾利のスカートをめくり挙げた。

「!? !? !?」

それは一種の完成された動作のように華麗で佳麗だった・・・

「うぎゃぁああぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!」

か、どうかは分からない。

 

 

「うっうっ・・・男の人に・・・しかもクラスメイトの人に見られてしまいましたっ・・・

もう、お嫁にいけません・・・・・」

「まあまあ、ちょっとしたスキンシップ---」

「スキンシップでもコミュニケーションでもありません!

明日から私、どんな顔をして広瀬さんと接すれば良いんですかぁ!!!」

目に大粒の涙を浮かべた初春をなだめる佐天さん達(原因は当の佐天さんだが)

を尻目に、孝一の焦点はどこか定まらない。というか顔が赤い。

(見てしまった・・・ピンク・・・ピンク・・・)

さっきの光景が何度もオーバーラップする。

やはり孝一も健全な中学男子だった。この手の光景にはテンで弱いようだった。

 

「・・・まったくもう、あなた方はいったい何をやっているんですの。」

ツインテールの少女は呆れ顔でその光景を眺めていた。やがて、

「とにもかくにも、広瀬さん。素直にジャッジメント支部に来ていただいた事、

感謝いたします。こういう場合、知らぬ存ぜぬを通す方が多く、強制的に連行というケース

が多々ありますもので。」

「いっ、いえ。僕は疑われるようなことは何もしていませんから。」

ボーっとしていた孝一の思考がこの少女の一言でクリアになる。

(そうだ、今日は身の潔白を証明するためにきたんだった・・・

しっかりしろ。孝一。)

 

「あの、最初に言っておきますけど、今回のケンカと銀行の爆発事件は何の関係もありません。

もし僕を犯人と疑っているのならまったくの見当違いです。もし疑われるのなら、

僕の能力を調べてください。僕の能力はレベル0、無能力者です。」

とりあえず自分の身の潔白をアピールしてみる。

自分を無能力者だと口外するのは癪だが、

現時点では孝一は無能力者だと登録されている。この情報を使わない手はない。

 

「それは書庫(バンク) に登録されているあなたのデータからも確認済みです。

あなたを犯人とは思っていませんからご安心を。」

それを聞いて孝一は安心する。

(良かった。という事は不良たちとのケンカについてか。これについては

反論のしようもない。幸い彼女達は今回が初犯だと思っている。

ここは潔く罪を認めて、こってりと絞られることにしよう。)

思ったより罪が軽くなりそうだと安堵する孝一。しかし---

「実は、あなたに見てもらいたいものがございますの。」

そういうとカタカタッとパソコンを操作し、ディスプレイに画像を映す。

(これは---)

それは昨日の映像。孝一と不良たちが争っている映像である。

(やっぱり監視カメラがあったのか。あっ!?もしかして)

場面は孝一が不良達を一人、二人、三人、と倒している場面である。

「この場面、実に不可解です。この殿方たち、あなたに襲いかかる寸前に急に苦しみだしているんです。

そして最後の三人目を見てください。」

そういってツインテールの少女は画面を操作して映像を早送りする。

「この最後の一人。あなたに攻撃なさる瞬間。ビニール袋が顔に張り付きます。

わたくしも長い間ジャッジメントをやっておりますが、

戦闘中に、ゴミ袋が、偶然にも、

犯人の顔に張り付くなんて事はありませんでしたわ。」

ダラダラと嫌な汗が孝一の頬から流れる。

(疑いが晴れた?違う!最初から彼女は僕を疑っていたんだ!

最初に犯人じゃないと安心させて、その後追い込む!

まずい!まずいぞ、どうする?どうやって切り抜ける?)

よく見るとその場にいた佐天涙子と初春飾利も

こちらの様子を不安げに見つめている。

「十中八九何らかの能力が使われた証拠。そう思いませんか?広瀬孝一さん?」

チェックメイト。そう言いたげに、彼女は孝一の顔を見つめる。

その顔はまさしく犯人の一味を尋問する時に浮かべる刑事のそれと同じだった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!白井さん。どうして、孝一君が犯人だと決め付けるんですか!?

私は毎日孝一君と顔を合わせています!そんな私だから分かることがあります!

孝一君は!絶対にそんなことはしない!!」

そんな孝一をかばう様に、佐天涙子は激怒して、まくし立てる。

それは友人が、クラスメイトが疑われたことによる怒りから来る言葉だった。

しかしそれはあまりにも論理性に欠ける。

「ですが、全ての状況証拠はこの殿方がクロだと証明しています。

彼は何かしらの能力を隠し持っていて、あの爆発現場にもいた。こんな偶然ありまして?

あるのでしたら、納得のいく説明をなさってください。」

「そっそれは・・・」

その言葉にさすがの佐天涙子も沈黙する。そして孝一をそっと見る。

その目は「違うよね?」と、孝一に語りかけていた。

 

その佐天さんの視線に、孝一は応えない。なぜなら、ほぼ事実だから。

孝一は不可思議な力を持っており、不良たちを撃退した。それは事実だ。

違うことは、爆発事件の犯人ではないということだが、それを証明するのは難しい。

(どうする?正直に言うのか?でも、なんていう?ある日、不良たちにボコボコにされたら

不思議な力に目覚めました、とでも言うのか?)

 

視線が、痛い。

この場の全ての視線が孝一を疑いのまなざしで見つめている。

その視線に耐え切れなくて、孝一はふいに顔をそらす。

 

「!?」

不意に孝一の目が見開かれる。

それは監視カメラの映像。不良たちを倒し、白井というジャッジメントの少女に

拘束されそうになるその瞬間の映像。そこに不可思議なものが映っていた。

いや、映像自体に映っているんじゃない。

パソコンのディスプレイ自体に、

人間ではない何かの、

顔が浮かび上がっていた。

「ヒッ!」

孝一は驚きの声を上げる。

そいつと目が合ってしまった為だ。

「・・・お前、やっぱりオレの姿が見えるんだなぁ~」

そういうとそいつはにやりと笑う。

そいつはまるで恐竜が人間に進化する途中といった姿で

パソコンの場面から出現する。

しかし白井も、佐天も、初春も、

誰も何の反応もしない。

(!こいつは、・・・こいつは・・・)

「そう、お前と同類だよ~」

孝一の思考を呼んだかのように恐竜もどきは腕組みをしながら答え、

バチバチバチッ!!!

放電する。

 

「え?」

「なんですか?」

「なんですの?」

突然起きたスパークに三人は驚きを隠せない。しかしこの後もっと驚く現象が

彼女達の身に降りかかった。

ピーーガッガガガッ

ふいにパソコンのスピーカーがノイズを発生させたかと思うと。

「ザ・・・ザザ・ザ・・・・・ヨォ・・・ザザザ・・・オレの声が聞こえるカイ?」

パソコンから声が聞こえる。しかもそれは自分達に向けて・・・

「!!!!!」

それぞれがあっけにとられる。

しかもスピーカーからはなおも声が聞こえる。

「驚くのも無理はネェが、まぁ聞いてくれや、

実はヨォ~明日銀行を二、三ヶ所襲撃するつもりなんだが

能力に目覚めたばかりで、まだ力加減がうまくいかねぇんだ。

余計な邪魔が入ると周りの建物全部ぶっ壊しちまいそうなんで、

ジャッジメントやアンチスキルには一般市民の誘導をお願いするワ。

襲撃場所を教えっからヨォ」

「ななななッ」

「というかこれからのことも見てみぬフリを決め込んでくれると

助かるんだけどよォ~。しばらくは銀行襲撃に専念したいし。」

「何を言っているんですの!あなたは!!!」

白井が青筋を立てて激高する。無理もない。それだけヤツの言動は

荒唐無稽なものだった。

「ア、アンタが犯人なの?銀行を爆破した犯人?」

恐る恐る佐天は姿の見えない犯人に質問する。

「ああ、そうだぜ、初めてだったんでつい加減が出来なくてなぁ~

ちょっとやりすぎちまったがな~」

そう平然と応える犯人に対し、佐天は

「ふざけんな!!!!」

怒りの声を上げた。

「ちょっとやりすぎた?見てみぬフリをしろ?

銀行は、アンタの私物じゃないんだぞ!!

あそこには色々な人たちが生活するためにお金を預けてるんだ!!!

アンタの私利私欲のためにお金を預けてるんじゃないんだぞ!!!」

そう激高する。

(だめだ!)

孝一はヤツの顔をみた。

その顔は佐天達には見ることも叶わなかったが、明らかに不機嫌そうに歪んでいた。

そして

「ウゼェ」

そうスピーカーから言葉が発せられると

バチッ

見えない何かが佐天に向かって飛んでくる。

孝一には見えた。やつの手から発射された電気が。それが佐天涙子を襲おうとしていることも。

それに佐天涙子は気づかない!

「危ない!!!!ッ」

「きゃっ」

電気が佐天涙子に着弾する寸前、済んでのところで孝一が涙子を押しのける!!

バチバチッ

瞬間。

涙子がいた地面に放電現象が起こる。地面は黒く変色し、辺りに嫌なにおいが立ち込める

「ハァ--ハァ---ハァ---」

「こ、孝一君?」

孝一の顔は蒼白だった。

一瞬で分かってしまった。こいつは強い。今まで孝一が戦ってきた不良なんて

こいつに比べたらザコだ。エコーズで何とかなる相手じゃない。

 

「気分が悪くなった。お前ら、死ね。」

バチバチバチバチッ!!!!!

今までとは比べ物にならない放電現象が起こる。

パソコンが、コップが、電球が、その場にあるものが粉々に砕け散る。

その圧倒的な破壊力に、その場にいる誰もが成すすべもない。

(死ぬ?死ぬのか?まだ何もしてないのに?まだ始まってもいないのに?

でも、僕に何が出来る?あんなヤツに勝てるわけないじゃないか)

その時---

ギュッ

佐天涙子が孝一の制服を強く握る。

何が起こっているのか理解できないのだろう。

その目は硬く閉じられ、体は震えている。

 

その瞬間、孝一の胸に熱いものがこみ上げる。

それは怒りでもなく、恐怖でもなく、悲しみでもない。

それは守りたいという心。誰かのために、命を懸けたいという想い。

(しっかりしろ!広瀬孝一!!

僕しかいないんだ!あいつと対峙できるのは!!

ヒーローになりたかったんだろ!今がそのときだ!!!

命を懸けろ!彼女達を、彼女だけは守るんだ!!!)

 

ゆっくりと、立ち上がる。

「・・・・大丈夫。守るから。僕が、君達を。」

彼女を不安がらせないように、にっこりと微笑む。

「こっ、孝一君ッ」

そしてそっと彼女が握っている制服を解く。

そして対峙する。

「いくぞっ!」

キッと相手を睨み付ける。

「ケケケッ、ヤレルノかい?お前ごときザコがヨォ~!!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

こうして広瀬孝一と犯人との戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レッドでホットな彼が登場。
作中最強と謳われた彼を、孝一君は倒すことが出来るのか?
正直倒す方法が思いつかない・・・どうしよ・・・

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