広瀬"孝"一<エコーズ>   作:ヴァン

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戦闘描写が難しい・・・・です。
書いてる途中、ああでもない、こうでもないと
試行錯誤を繰り返してしまいました・・・


VS(バーサス)

「うおおぉぉぉぉぉ!!!」

孝一は己を奮い立たせるように吼える。

だがそれは弱い立場の野生動物が、自分より大きな動物に対し威嚇するようなもの。

ただのやせ我慢だ。そうでもしなければ、とてもヤツには立ち向かえない。

「エコォーーズッ!!」

孝一は絶叫しエコーズを出現させ、ヤツに向かって文字付きの拳を繰り出す。

ドッシュン!

だが---

「ヘェ~、それがお前の能力かイ。その文字で俺を攻撃して?その先は?」

・・・簡単に、避けられる・・・・

「くっそっ!!」

ドシュ!ドシュ!ドシュ!

諦めず間髪いれずに拳を繰り出すエコーズ。

だが、

「文字が張り付いたら、音がでる。それだけ?お前の能力?」

エコーズの拳が全て空振りする。

(!?っ。早すぎるッ!ヤツの動きが目で追えない!)

エコーズの動きは決して遅いものではない、しかしヤツの動きはそれにも増して素早い。

ドシュ!ドシュ!ドシュ!

攻撃の外れたエコーズの文字が床に張り付き、虚しい効果音を響かせる。

一方の敵は仕方ネェナといった表情で、孝一を見つめると、

「おせぇんだよぉ~。パンチってのはなぁ~。」

敵の右腕が一瞬光り---

 

「!?」

高速の鉄拳が、孝一の頬をかすめる。

「こうやるんだぜ。」

ブシュッ

時間差で孝一の右頬から鮮血が噴出す。

「!?」

(見えなかった。ヤツの攻撃が・・・これほどパワーの差があるなんて・・・)

「ホラホラホラァ!!さっきまでの威勢はどうしたんだヨォ!!!

オレに一発打ち込んでみろヨォ~!!!」

シュッ!ドガッ!バキッ!!

「グハッ!!」

ワザとさっきとは威力を落とした攻撃を繰り出す敵。

何か理由があるのだろうか。

(そんなの、分かりきっている。こいつは、ただ単に相手をいたぶりたいだけなんだ。

まるで猫が獲物をいたぶるように。そこに意味なんて、ない。)

「ハハハハハハアハハハハハハ」

敵の高笑いが、部屋中に木霊する。

 

最初の威勢は鳴りを潜め、展開は一方的になってきた。

見ると孝一の体は所々ぼろぼろになり、床には血だまりが出来上がっている。

「ハァーッ。ハァーッ。ハァーッ・・・・」

 

 

一方。

目の前で不可思議な現象が発生しているこの現状を、佐天達は意味も分からず傍観していた。

無理もない。犯人の姿はこの部屋のどこにも認識できないのに、それに対峙しているであろう

孝一は、明らかに何らかの攻撃を受けているのだから。

「初春。佐天さん。この場を離れましょう。」

ふいに白井が小声で二人に話しかける。

「え?」

「白井さん?なんで?」

「佐天さん。分かりませんの?このままここにいてもあいつに殺されるだけです。

悔しいですけど、姿も見えず、能力も不明な敵との戦闘など愚の骨頂。

勝てる確率はゼロですわ。」

努めて冷静に話をする白井。

「じゃ、じゃあそんな敵と戦っている孝一くんは、もっと危険ってことじゃないですか!

私は嫌です!孝一君を、友達を見捨てるなんてわたしには---」

パシッ

佐天の頬を白井がうつ。

「冷静になりなさい。!そして考えなさい!あの殿方、広瀬君は、わたくしたちを逃がすために

ワザと時間を稼いでくれていますのよ!その努力を、あなたはふいにするおつもりなのですか!」

「あっ」

(---守るから。僕が、君達を------)

「こぉいちくぅん・・・・」

佐天涙子の瞳から、涙が零れ落ちた。

 

 

「ゲホォ!グハァ!!」

「どうした、もうオネンネかぁ~。同じ能力者同士でも、こうまで才能ってヤツに

開きがあるとはヨォ~。ヤッパどこにいってもおちこぼれっているもんだよなぁ~。」

すでに孝一は起き上がることも出来ないほど、ダメージを負っていた。

その状態は傍目から見ると、孝一が見えない何かに土下座をしているように見える。

「その点、オレ様は違う。オレ様は神に愛されてこの能力を授かった。

オレは選ばれた人間だ!俺ほどこの能力を使いこなせる人間はいねぇ!

だから好き勝手に生きる!今までオレを無能力者と馬鹿にし、虐げてきたこの街の連中を、

今度はオレ様が征服してやる!!」

敵は自分に酔っているのか、孝一には目を向けることなく演説している。

孝一は周囲を見回す。見ると佐天達の姿が見えない。

(良かった。無事逃げ出せたようだ・・・時間稼ぎは無駄じゃなかった。)

こんな状態でも孝一は満足だった。

(こんな僕でも、誰かを救えたんだ。状況は最悪だけど、悔いはない。あとは---)

敵に見つからないようにそっとあるものを掴む孝一。

(今度は僕が助かる番だ。僕は、こんな所で死ぬわけには行かない!)

その闘志は、いまだ衰えていなかった。

 

「白井さん!早く!早く孝一君も助けに行ってください!!」

「お願いします!白井さん!!!」

「分かっています。そうせかさないでくださいな、あなたたち!」

無事、ジャッジメント支部から脱出できた佐天達。

佐天と初春は早く孝一を救出するようにせがむ。

そんな時---

「なにがあったの?」

その声のする方向に一斉に振り向く三人。

この声は知っている。こういう場合、一番頼りになるあの人の声だ。

「おねえさま。」

白井が歓喜の声を上げた。

 

 

「なんでだ?」

「は?」

一人高笑いをしていた敵が孝一の一言に振り向く。

その顔はいまだに四つんばいの状態なので見えないが、

明らかに怒りの成分が含まれている。

「それだけの能力を持っているのに、何で奪う?何で人を傷つける?

神様からもらった能力だといったな?だったらなんで、人助けに使わない?

なんで、快楽目的でしか使えないんだ!!」

「うるせーーーーーー!!!」

カッッ!!バチバチバチバチッ!!!!

敵が激昂し、周りに放電現象が起きる。

その顔は、崇高な演説を邪魔された怒りと、ウザイ説教をたれる

孝一に対して怒りに歪んでいた。

「誰の為かなんてカンケーネェ!!!!

他人なんぞ、勝手に生きて勝手に死ね!!!

人助けに使え?そんなウゼェマネ、誰がやるかよ!!!!

せっかくこの能力を手に入れたんだ!!!ウゼェ教師!ウゼェクラスメイト!!!

気にいらねぇやつは、かたっぱしからブッコロス!!!!!

それのナニがいけネェ!!!!」

そしてグイッっと、

孝一の制服の襟首を掴み、無理やり立たせる。

「お前も気にいらネェ・・・弱いくせに口先だけは達者な偽善者がヨォ・・・」

敵が右腕をひき、孝一の腹部に狙いを定める。

あのパワーだ。当たればまず間違いなく、孝一の腹部に風穴が開く。

「・・・・能力を持つ前の僕は常に誰かをひがみ、時には憎んできた。

世の中全てを呪った時期もあった。そういう意味では・・・僕とお前は同類なのかもしれない。」

「ハァ?ナニ言ってやがんだ?テメェ」

「でも、お前と僕とじゃ、決定的に違うことがある。それは、決して他人を傷つけようだなんて

思わなかったことだ!そうやって気に入らないものを消し続けて、その先に何が残る?

永遠に殺し続ける気か?結局お前は傷つく事が怖いだけの、ただの臆病者だ!!!」

「へっ減らず口を・・・」

ビクビクと敵の恐竜もどきに、血管が浮かび上がる。

「僕は死なない!お前なんかに殺されてたまるか!!!」

そういって、孝一は右手に隠し持っていたあるものを、敵の顔面に突きつける。

それは小瓶。しかしその小瓶には、不思議な文字が書いてある。

それは

「最大出力だ!!エコーズ!僕の両耳を塞げ!!!

プワーァーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!

「!!!!!」

それは、トラックのクラクション。普段の状態でも聞けば軽く耳がおかしくなるそれを

敵の至近距離から、リミッターを外しての一撃。

そのあまりに強烈な音は、音の衝撃となって敵と孝一に襲い掛かる!

「ぐはッァ!!」

ちょうど壁側にいた孝一はそのまま壁に激突し、

「クゥワァァァ!!」

ガシャァァン!

窓ガラス側にいた敵はそのまま外に投げ出された。

 

 

音域を最大限にまで高め、攻撃する。

これは事実上、物理的な攻撃手段を持たないエコーズの必殺技といえた。

 

孝一がこの奥の手を出し渋っていたのには理由がある。

その、あまりにもすさまじい音域は、

敵ばかりか周囲の人間にも被害が及ぶからである。

元々人を傷つけることを好まない性格の孝一からしたら

そのように人を傷つける攻撃方法は絶対にやりたくないことである。

現に不良たちを相手するときでも、

知らず知らずのうちに、孝一はエコーズにリミッターをかけている。

出来るだけ、人を傷つけないように。

そのリミッターを今回始めて解除した。

成果のほどはすさまじく、エコーズで耳を塞いだにもかかわらず

耳がまったく聞こえなくなる。そして襲う激しい激痛。

 

(ざまぁみろ・・・、一泡、吹かせてやったぞ・・・

でも・・・・この攻撃は・・・もう・・使いたくない・・・・・

こっちの・・・体も・・ボロボロだ・・ぁ・・・・)

意識が少しづつ薄れ始める。やがて

(・・・・・・・・・・・・・)

孝一の意識は完全に失われた。

 

 

 

 

 

(・・・体が動かない・・・・敵は逃げたのかな?

いや、倒された?ボクが?敵が?

あれ?体の感覚がない・・・・

ぼくは・・・死んだのか?)

意識をとり戻したものの、

孝一の思考が定まらない。

それどころか、時間の感覚すら分からない。

何時間過ぎたんだ?1時間?10時間?1日?

しばらくこの不思議な感覚を体験していたが・・・

 

少しだけ感覚が戻ってくる。

 

すると頭のほうになにやら暖かい感触がある。それになにやら顔が温かい。

これは何だろう?水?お湯?

「・・・・・ぅっ、ぅぅっ、孝一くん・・・孝一君・・・」

意識が次第にはっきりしてくる。

誰かが泣いている・・・

この声は誰か知っている・・・

誰?誰だっけ・・・

「孝一君・・孝一君・・・ひっく・・」

 

ああ・・・そうか、思い出した。

彼女は僕のクラスメイトで・・・

セクハラクイーンで・・・問題児で・・・

元気で・・・明るくて・・・

そして、

僕がはじめて、守りたいと思った女の子。

 

「ぁ・・さ・・さてんさん?」

「あ?ああああ孝一君?孝一君が生きてる!生きてるよ~~!

ひぐっ、うっっ、うっ」

「なんで、ないているの?」

孝一は疑問に思った。どうしてこの子は、僕のためにこんなに泣いてくれるんだろう。

僕なんかの為に。

「そんなの、君が生きていてくれたからに決まってんじゃん!

勝手に死ぬな!バカぁ」

「いきてるよ、ありがとう。」

 

あの時、敵と対峙したとき、一瞬だが孝一は死んでもいいと思っていた。

自分の命と引き換えに3人を守れればそれでいい。そう、思っていた。

だがこうして助かり、膝枕を佐天涙子にされていると別の感情が浮かんできた。

----いきたい、彼女の為にもっと生きていたい、と-------

 

 

そんな孝一たちを遠目に、白井たちの表情は暗く、重かった。

「やられましたわ。事実上、第一七七支部は壊滅したといってよいでしょう。」

そういって白井はジャッジメント支部のビルを見る。

遠目から見ると、まるで爆弾テロがあったかのように歪むビル。

いや、実際あいつの出現は爆弾テロのようなものだった。

この施設の復旧までに、いったい何ヶ月かかることやら・・・

「これから、どうしましょう・・・」

そう初春がポツリとつぶやく。その瞳はどこか虚ろだ。

今の言葉も、おそらく自然と口から出てきたものであろう。

その初春のつぶやきに、

「決まってんでしょう!リベンジよ!今回は遅れをとったといえ、私達の完敗。

それはしょうがない。でも、やられっぱなしはやっぱムカツク。

絶対にあいつに一泡拭かせてやる!!」

今まで黙っていた「おねえさま」が口を開く。

 

あの瞬間。ジャッジメント支部の窓ガラスが割れた瞬間。おねえさまこと御坂美琴は敵の姿を確認した。

それは美琴の持つ電気や電磁波を操る能力が原因である。

まるで恐竜人類の様なそいつは、吹き飛ばされながらも周りにあった電線に同化し、その姿を消した。

「あいつは私達にケンカを売った!わたし、売られたケンカは必ず買う主義なの!」

 

 

御坂美琴。常盤台中学の電撃使い(エレクトロマスター)であり、

この学園都市に七人しかいないレベル5の内の一人。

超電磁砲(レールガン) の通り名をもつ彼女の瞳が、燃える。

この学園都市に潜伏している犯人に対し、こう宣誓する。

 

「絶対に、捕まえてやる!」

 

 

 

 

 

 




ビリビリおねえさまこと、御坂美琴さんの登場です。
この後、話にどうオチをつけよう・・・・
うまく話がコントロールできれば良いのですが・・・・

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