Fate/EXTELLA Liner 無銘と新王と万華鏡の魔法少女 作:ノラネコ軍団
LINKのこのセリフが最高だったので書きました。
竹箒日記できのこ先生もテラZeroで無銘がメインだった場合にちょっと言及してたけど
そういう世界があっていい。何せextraは記録宇宙だからネ
月の聖杯戦争第7回戦
エレベーターを降りた先にあったのは、壮麗な劇場だった。
赤と金、色とりどりの宝石に彩られたその場所は、とても殺し合いの場には思えなかった。
「よく言って壮麗、はっきり言えば悪趣味だな」
赤い無銘の英霊、アーチャーはその光景をすっぱりと否定した。彼のマスターである少女、岸波白野は彼の質実剛健さと皮肉癖を知っているので『アーチャーならそういうだろう』と納得した。
だが、白野には一概にそうとも思えなかった。確かにこの劇場は悪趣味だ。しかし、根底には何らかの願いがあると思えてならない。
人間への愛、文明への愛、芸術への愛。そういった、未来への希望がこの空間には込められているように思える。
「マスター、君の所感は否定しない。だが、愛とは得てして独りよがりになりがちなものだ。一面では人を救い、人生を豊かにする。だが、愛が極まり、反転した時、それはまた別の物へと変化することもあるのだ。この空間は――――」
それと紙一重だよ、とアーチャーは吐き捨てた。彼の出自は知っている。機械的な正義の味方、人を数でしか量らなかった愚か者、と自虐していた。彼にとって、何か思うところがあるのかもしれない。
「むぅ。酷い言い草だな、アーチャー」
「あなたは」
白野は驚愕した。と同時に「ああ、やっぱり」と納得もした。
現れたのは赤いサーヴァント。金髪碧眼の美しい剣の英霊。
―――度々、白野の危機を救ってくれた謎のサーヴァント。
彼女は円形劇場の、丁度白野たちの反対側の2階席から見下ろしていた。
「うむ!余こそオリンピアの花にして、至高の芸術!あらゆる才に愛された剣の英霊!そして―――」
「今回の君たちの敵だよ」
奥から彼女のマスターが現れる。それは茶色い髪を持った青年だった。彼も度々白野の前に現れては助言を送ってくれたり、助けてくれた人間だった。
少女は青年を見据えた。
青年も少女を見据えた。
掲示板に名前の表示されなかった7回戦の敵。それが彼だった。そして、彼は――――
「改めて名乗らせてもらうよ。俺は岸波白野。君と同じ、NPCだ」
「―—―なるほど」
アーチャーは何事か納得したようだった。
それは彼の鷹の瞳か、あるいは解析魔術か、はたまたムーンセルと契約した正義の味方だからか。
「つまり君は、複製品と言うわけだ。ここにいる岸波白野を元に、何らかの形で―――大方、データのコリジョンを起こさないために性別などのデータを変えて―――同じ思考、同じあり方を持った同一存在を作り上げた、とそんなところかね?」
「そこまではっきり言われるとは思わなかったけど」
青年は苦笑した。
「きっとその通りだよ。俺も事実を知った時にはショックだったけど」
少女は、と言えば驚きに目を見開いている。
確かに自分は地上に生きていた人物のコピーだった。それはいい。受け入れた。だが、さらに自分のコピーだって?情報に頭が追いつかなくなっていた。
「なるほど―――つまりこれまで我々を助けてきたのは、マスターが傷つくことと君が傷つくことがリンクしていたから、だろう」
「その通り。彼女が死ねば、俺も死ぬ」
「しかし、逆は無い。君が勝ったとしても、どのみち君に未来は無いはずだ」
「それもそうだよ。でも――――」
「愚問だな、アーチャー!」
今度はセイバーが答えた。
「戦っても戦わなくても死ぬ?その通りだとも。我々に未来は無い!
だが―――人生とは突き詰めれば絶え間なき選択の連続。
余の奏者は選択をしたのだ。たとえ未来がなくとも、たとえその先に何も残らないとしても。決して立ち止まらぬ、と!
貴様、よもや意味がないから、その選択が無価値だからと貴様のマスターに勝ちを譲れなどとは言いだすまいな?だとしたら答えは否!だ!」
アーチャーは一瞬惚けた顔をしてから、すまない、と笑った。
「今のは失言だった。なるほど、彼とマスターは同一存在のようだ」
アーチャーは白野に向き合う。
「マスター、衝撃的なのは分かる。だが、これは事実だ。そして君もまた生き残るべく戦ってきた。他者の願いを否定し、他者の生を否定してきた」
そうだ、と白野は歯を食いしばった。
シンジ、ダン・ブラックモア、ありす、アトラム。
彼らの思いを切り捨てて、置き去りにしてここまでやってきた。
『おまえな、生きるってコトはそういうコトだ。人間はみんな、無自覚に敗者の願いを踏みつぶしてるんだよ』
シンジと共に消滅する間際のライダーの言葉を思い出す。
ああ、その通りだった。たとえそれが、自分であっても変わらない。いや、自分だからと変えてしまっては、これまで殺してきたマスターたちに言い訳が立たない。
岸波白野は覚悟を決めた。
令呪に魔力を込める。全身の魔術回路が焼けるように熱くなっていく。
「戦おう、アーチャー」
「了解した。行くぞ、セイバー!ここが貴様の敗着と知れ―――!」
青年はその姿を見ると、彼もまた魔力を回し始める。
「始めようセイバー、これが、俺たちの最後の戦いだ」
「うむ!任せるがよい!」
こうして、月の聖杯戦争の最後の一幕が落ちた。
最後の戦いの勝者は岸波白野となる。6回戦まで二人の白野が生き残ってきたことで、それは確定した未来となった。
戦いの結果を語ることは無粋であるかもしれない。だが、最後に立っていたのは一人の少女と錬鉄の弓兵だった。それは予定調和であるかもしれないし、番狂わせであったかもしれない。どちらにせよ、彼らは命の限り、その戦いを全うした。
「私たちの勝ちだよ」
「うん。そして、俺たちの敗けだ」
赤い壁の向こうにいるセイバーと青年が消滅していく。その様子を、白野はじっと見つめる。最後に言葉は交わされなかった。ただ、彼の言いたいことは分かる。立ち止まるな、進み続けろ、決して―――諦めるな、と。
紫の粒子となって、二人は消滅した。もはやこの先には何もなく、残ったのは勝利だけ。
「言われるまでもないことだよ。私は先に行く」
この後のことを少し語るなら―――それは皆の知っている最後の戦いと、ある反英雄の犯したちょっとしたズルである。
中枢部に残っていた人類の未来を憂えた男の欠片と、それを見守り続けた覚者との決戦。
勝利した結果、聖杯へは「聖杯戦争を終わらせること」を願い、それと引き換えにマスターは消滅する。アーチャーもそれに付き合おうとしたのだが。
「ご主人様!良かった、お目覚めになられましたね?」
「キャス、ター?」
規格外の力を持つキャスターがズルをしたことで消滅する運命にあった白野はその命を長らえさせ、契約の続いていたアーチャーも消滅せず残っていた。
キャスターは泣いている。アーチャーはやれやれ、とあきれながらもどこか晴れやかな顔をしていた。
そうこうするうちに、新たな体制に入ったムーンセルを守る新王として白野は選ばれ、また新たな戦いへと歩みを進めていく。
月の覇権とマスターを争う大騒乱、遊星の少女を救うための世界戦を超えた戦い、
オラクルの脅威――――
岸波白野の戦いは続いていく。これまでも、これからも。
この物語は、そんな彼女たちに起こった事件のうちのひとつ。
並行世界―――同じ世界の幹を飛び越えるのではなく、木そのものが違う場所への冒険。
捕らわれたアルテラを救うための戦い。
そして、友達と世界を救うために戦う魔法少女たちとの出会いの物語だ。
いきなり妄想がベースなのでちょっと補足
竹箒日記に書かれていたエクステラZeroはみなさんご存じだと思いますが、
エクステラを「ネロがメインサーヴァントだった場合」をベースにして書いた、
というだけで、きのこ先生はあれがすべてとは言ってませんでした。
「ネロルートだった場合」「無銘ルートだった場合」「タマモルートだった場合」
で細部が異なる、という記述もありました。これは他二名がメインサーヴァントの場合のテラも無いわけではない、といっているようなものではないだろうか(暴論)
今回は「無銘ルートだった場合」を前提にクロスオーバーさせようと思ってます。
以下登場人物紹介
岸波白野(♀)
本作の主人公にしてオリジナルの岸波。
竹箒日記の書きぶりとエクステラ本編では女性でも選べるから
はくのんがテラ主人公でもアリなはずだと思う。
(♂)と記憶は統合されているのですが、エクステラの時にまた吹っ飛んでます。
ただ吹っ飛んでいるなりにおぼろげに覚えていることもある……くらいの雰囲気。
岸波白野(♂)
はくのんのコピーとして作られた岸波。
謎の少年ムーブをしてはくのんを度々守ってきた。
レオを倒したのは彼とセイバー。そして最後の敵は――――
例え意味がなくても、勝った先に何もなくても。
彼は止まることなど決してないのです。
無銘
本作における岸波白野のメインサーヴァント。
もう一度言います、メインサーヴァントです!
エクステラ本編ではドリフトしてきたからか副官として一歩下がって裏方に徹していたが、本作では孫うことなく岸波のサーヴァントとして世話焼き全開である。
テラZero、エクステラを通して白野のサーヴァントとして戦ってきた男。
聖杯戦争に勝てたのも、軍神の剣で鍛冶神ウェウカヌスと接続してセファールとアルテラのつながりを絶ったのも、全部アーチャーが居たからじゃないか!謝れよ!
アーチャーウェルカヌスとかリミゼロ風ムーンドライブとか色々妄想してましたが本作ではカット。
———それは、無銘の英霊の完成形のひとつ。
多くを救うために多くを模倣した剣の丘でなく、用いうる一つの道を限界まで収斂した究極の一。
銘をリミテッド/ゼロオーバー。彼がたどり着かず、しかし誰かのたどり着いた剣製のカタチ。
「生前の私はこの力を手にしたわけじゃない。これは多くを修めた私の剣製とは別のもの。
本来であれば存在を固定されたサーヴァントである私には辿りつけない答えだ。
だがムーンセルはこの剣製をどこかで観測し、データに収めていたのだろう。
———ゆえに、この在り方を私という霊器を用いて再現できる」
「さぁ、来たまえキャスター。この刃は収斂された錬鉄の炎そのもの。
自慢の計算式とやらで防いで見せるがいい。もっとも、解は貴様の敗北だろうがね」
とかやってアルキメデスをかっこよく倒す予定だったんですが。悲しい。
赤王
岸波(♂)のサーヴァント。
赤王からすればアーチャーと白野は自分を負かし、マスターを殺した対戦相手……
なのだが、白野同士の記憶が統合されている&奏者から白野のことを託されたこと、
それはそれとして気に入ったのでハレムには加えるという距離感。
ラストアンコールでハクノを白野とは別の、しかし自分の奏者として認めたのに近い。
アーチャーのこともも忠義者として評価している。
この経緯を学士殿につけ込まれ……たりは絶対にない。。
「見くびられたものだな、シラクサのアルキメデス!
余の奏者はこの世に二人といない、代わりのいないたった一人の奏者なのだ!
決して誰かの代わりとして見たりしているわけではない!
いや、もちろんちょっとくらい独占したいな、なんて思うこともあるが……
むしろキャス狐みたいに余もエンゲージリングに入った奏者と戦場を駆けたい。
ずるいぞ!……いや、そうではなく。
余の愛とはすなわち美しいものを愛することだ。
偏狭な貴様の策略程度で揺るがぬものと知れ!」
ちなみにこのルートでも無銘陣営はほぼ彼女が連れてきました。アーチャーがク―フーリンとか勧誘する未来が想像しずらいし…
キャス狐
テラZero通り、アトラムのサーヴァントとして召喚されたが白野のイケ魂にやられて寝返り、そのまま仲間になった人。
テラでもほぼ本編通り好き勝手はっちゃけた挙句に元さやに戻った感じ。
本作での赤王、無銘、キャス狐トリオはブロッサム先生とか花札くらいには仲がいいイメージ。赤王とキャス狐でマスターを取り合うとなんか生々しいけど間にアーチャーが挟まってマイルドになると思う。
本話はほぼこれまでのあらすじみたいなものなので、本編は次回からです。