Fate/EXTELLA Liner 無銘と新王と万華鏡の魔法少女   作:ノラネコ軍団

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今回投稿から一時下げすることにしました。
これ以前の話でも全部修正しています。
こちらの方が読みやすいか辛いかでと何かあれば感想で頂ければ。


第11話 負けました/黒化英霊・キャスター初戦

 約束通り凛と合流した白野、アーチャーは未遠川周囲の公園、冬木大橋が見える場所までやってきてジャンプと相成った。

 白野にとっては昨日、この世界で最初に来た場所、ということになる。

 

「最初に来たときは特に異変は感じ取れなかった。アーチャーは?」

「あの校舎の異変を感じ取れたのはトオサカリンとイリヤスフィールが消えたのを発見できたからだ。確かに少し厭な流れは感じたが……この町ではそう珍しいものでもなかったからな。いずれにせよ言い訳をするつもりはない。私の落ち度だ」

 

 この場にはすでにイリヤと凛がいた。

 ルヴィアと美遊はまだ来ていない。

 

「はは、どうも、こんばんは……」

 

 とイリヤは遠慮がちに白野に挨拶する。

 昼間の会話のこともあって少し気恥しいようだった。

 

「うん。これからがんばろう」

「呑気よね。もうちょっと緊張感持ったら?」

「自然体だ、ということだ。目くじらを立てることもあるまい」

「ふぅん。それがあんたたちのやり方ならそれでいいけど」

 

 会話をしているとやがてルヴィアと美遊が現れた。

 美遊すでに転身を完了している。臨戦態勢、といった雰囲気だ。

 

「遅いわよ、ルヴィア」

「あら。約束の時間は今夜0時でしょう?まだ10分もありますわ」

「時は金なりっていうことばは知ってるかしら?」

「ええもちろん!時間順守しか誇れない貧乏人の戯言ですわよね?」

 

 相変わらず皮肉が絶えない二人だった。ギスギスとした言い合いが続いていく。

 

「『ごめん、待った?』『ううん、今来たところ』に通じるものが―――ないか。でもあそこまで喧嘩が続くのは一周回って仲がいいんじゃないかって気がしてくる」

「その例えはどうかと思うが。まぁ、君の指摘もそう的外れではあるまい。あのコンビ、何だかんだ続いて、10年ほどたてばいい感じに背中を預けあったりするかもしれん」

 

 まるで見てきたかのように語るアーチャー。

 イリヤは「そういうものなのかな…」なんて考えている。それからふと、美遊を見た。彼女としたのはケンカ……とは違う。凛とルヴィアとも違う関係だろう。だが、彼女友やがて信頼を結べたり出来るのだろうか。

 

 そうこうするうちに約束の12時の1分前となった。

 

「油断しないようにね、イリヤ。敵もそうだけど、ルヴィアたちが何をしてくるか分からないわ」

「速攻ですわ。開始と同時に距離を詰めて一撃で仕留めなさい。あと可能ならドサクサ紛れで遠坂凛も葬ってあげなさい」

 

 カレイドの魔法少女たちに基本方針を示す二人。どこかおかしいが、基本的に言っていることは半分くらいは全うである。

 白野は手を挙げた。

 

「それでわたしたちは?」

「基本的にあなたたちは私たちの調査のサポートをしてもらいますわ」

「ええ。今回の調査に限らず、だけど。アーチャー、あなたのその出鱈目な魔術特性は切り札となりうる。だからこそ、もしもの時の切り札として温存しておきたいの」

 

 凛には朝の時点で魔術特性の話をしている。その時は「なんて出鱈目!」といつものキレ芸が発動したが、彼女元来の甘さか、あるいは時計塔に自分たち以外の協力者について報告することに問題があるからか、アーチャーが出した他言無用という条件を呑んだ。

 

 継げたのは大まかに言って、彼の魔術特性は投影―――それも条件付きで宝具すらコピーできる、という部分。流石に固有決壊のことは告げていない。

 普通に考えればそれですら告げるのはリスキーなのだが、アーチャーも白野もこの世界にそう長居するつもりもないので、協力するためにもある程度情報を開示した形になる。

 

「後詰めってこと?」

「そうなるわ―――っと、もうすぐね。時間を合わせるわ。5,4,3―――」

 

 凛がカウントダウンを始める。反射炉の形成はルビーとサファイアで折半することになっている。白野もケータイで可能なのだが、彼女たちの役割はもしもの時の撤退準備も含まれているので今回は動かない。

 

「2、1!」

 

『限定次元反射炉形成、鏡界回廊一部反転 接界!』

 

 そうして再び、鏡界面へのジャンプを行った。

 浮遊感、魔力の奔流、光が収まった後に来る本来とは微妙に異なった雰囲気の鏡界面に酔うような雰囲気もそこそこに、現在の状況を判断する。

 

 飛び込んできたのは無数の魔法陣。

 中央には翼を広げた女性の姿。

 そこに警戒は無く、狼狽もなく、静かに狙いを定め、悠々と飛ぶ姿のみがある。

 

「――――っ!」

 

 肌が焼けるように暑い。

 あれはやばい、と彼女の経験則、鑑識眼が告げる。即座に対策を練らねば負けるのはこちらだ。

 

「イリヤ、美遊、魔術障壁を展開!」

 

 即座にカレイドの魔法少女たちに指示を飛ばす。恐らくあの魔法陣はひとつひとつが規格外の威力を誇る代物だ。

 

「え?」

「一体どういう―――」

「まさか、美遊、防御を――」

「ちょっと白野?なにを」

 

 呆然とする他の面子たちを無視して白野は「アーチャー!」と告げた。

 魔力を込めるは左腕の三画の令呪。

 現在はケータイを通しているので時間はかかるが、月の新王たる彼女の令呪は再装填が可能なものだ。必要ならばすぐに切ることができる。

 

『令呪を持って命ず。目標を偽・螺旋剣Ⅱで狙撃せよ!』

 

 赤い輝きと共に一つが消え、アーチャーに魔力を供給する。

 令呪、それはサーヴァントに対する絶対命令権。これによって為された命令は、サーヴァントに本来なら不可能なことですら可能にさせる。

 

 励起するアーチャーの魔術回路。彼の投影もまた規格外の魔術。彼がこれまで見てきた名剣、魔剣、あらゆる剣―――たとえ宝具であっても―――を心象世界に貯蔵し、それを現実世界に取り出す魔術。投影ならざる投影こそアーチャーの真骨頂だ。だが、その規格外にも制限がある。投影の制度を高める過程が必要になるのだ。

令呪の命令ははこの準備をすっ飛ばし、初手から強力な投影をすることを可能にする。

 

『我が錬鉄は崩れ歪む』

 

 アーチャーの手に現れたのはドリルのように捻れた剣。

 ケルトの英雄、フェルグス・マックロイの山を穿つ刃。

 それを例のごとく、矢に変えて打ち出す。

 

「爆ぜろ、螺旋剣!」

 

 矢が放たれる。その速度は音にすら達する勢いだ。

 矢としての偽螺旋剣は空間をねじ切るほどの威力を持つ。

 さらに宝具を自壊させて魔力を暴発させる壊れた幻想を用いれば、どのようなサーヴァントとて無事では済まない。

 

 果たして、その一撃は確かに黒化英霊に達した。

 無数の魔力砲、魔術防壁など物の数ではない。

 さらに言えば、偽螺旋剣の一撃は魔術によって作り出されたものだが、魔力そのものではない。黒化英霊が最後の守りとして展開している魔力反射平面も容易に突破できる。

 その一撃は確かに、彼女の身に届いたのだ。

 

「やった、のかな?」

『いいや、まだです!』

 

 だが、それは致命傷とはならなかった。

 

「チッ……霊核を外したか……!」

 

 アーチャーの鷹の瞳が黒化英霊を捉える。

 偽螺旋剣Ⅱが直撃した黒化英霊は半身が吹き飛んでいたが、すぐさま、まるで時間を巻き戻すかのように身体が再生される。

 アーチャーが狙ったのは一撃必殺。サーヴァントの中心、いかなる英霊もそこを砕かれれば消滅を免れない、ウィークポイント。頭部や心臓部にある霊核であった。

 確かにカラドボルグは彼女の半身をねじり切った。しかし、この鏡面界における彼女は地脈から魔力を吸い上げている。

 半身をねじ切られた程度で消滅などしない。その程度のダメージ、即座に治癒魔術で再生させられる。故にこそ神代の魔女、故にこそキャスターのサーヴァント。

 

「魔女め、現象となって却って戦いに容赦がなくなったと見える……!」

 

 魔法陣はまだ健在。本丸を潰そうとしたのが仇となった。

 アーチャーの追撃が無いと見ると、即座に魔法陣から膨大な魔力を放出する。

 

『魔術障壁を最大まで展開します!ザビ子さんも凛さんも離れたら死にますよ!』

「……ダメだ」

 

 イリヤとルビー、美遊とサファイアが最大まで障壁を張る。だがそれもすぐに突破されてしまうにちがいない。事実、イリヤに守れている白野は魔力によって生み出された熱をその身で味わっている。

 

 アーチャーだけは前に出て干将莫邪で魔力砲を何発か叩き落しているが、それも焼け石に水と言った様子で、ほとんどの砲撃は白野たちの守りを貫通してダメージを与えてくる。

 

「熱い!ついでに痛いよ!?」

「なんでランクAの魔術障壁が突破されるのよーーー!」

『あら?おかしいですねー?』

 

 イリヤたちはなすすべもなく、あまり効果の無い守りに徹している。

 次の一手を、と思案する白野の隣を黒化英霊の物とは違った魔力の奔流が通り抜ける。

 

「放射!」

 

 張り巡らされた弾幕、その合間を縫って美遊とサファイアが反撃を試みたのだ。イリヤに比べると攻撃らしい攻撃となっている魔力射出は、まっすぐにキャスターの元へと届き、しかしそれはキャスターの身に届くことなく霧散した。

 呆然とする白野たちをよそにキャスターは高速真言を唱える。現代の魔術体系に残らない、現代からすればほぼ魔法の粋の術式たち。その一端が容赦なく襲い掛かろうとしている。

 黒化英霊は彼女たちの退路を断つように竜巻を起こした。

 鏡面界においてもはや彼女たちに逃げ道は無い。どうすることも出来ない彼女たちに止めを刺すように、これまでの比ではない規模の魔法陣と魔力の動きが黒化英霊の周囲で巻き起こる。

 

「……詰み、だな。撤退をお勧めするぞ」

『全くですね。これはマジヤバですよ』

「悠長に話している場合かっ!」

 

 アーチャーの言葉を受けて、白野は決断する。

 

「みんな、撤退しよう!わたしとイリヤは反射炉形成、美遊は防壁に専念!」

「は、はい!」

「了解!」

 

 三人は即座にステッキを操作し、撤退を行おうとする。そうする間にも、黒化英霊の魔力は時間を追うごとに勢いを増していく。

翼のように開かれたローブから、光が漏れ出た。この場にいる面子全員をゆうに消し飛ばせるだけの規模だ。

 

「はやく、はやく!早くーーーーーー!」

 

 光輝く魔力の渦が彼女たちに届こうとする、その瞬間。

 反射炉の形成が完了し、彼女たちは鏡面界から離脱する。

 彼女たちは撤退することに何とか成功したのだ。

 

 

 ―――敗北である。

 結局のところ、アーチャー以外キャスターになんら有効打を与えることが出来なかった。そのアーチャーが放った偽螺旋剣Ⅱにしても止めを刺すには至らず、黒化英霊は依然健在だ。

 これ以上ないくらいの敗北と言っていい。

 

 六人と二本は青色吐息で撤退すると、ひとまず川沿いの公園のベンチで座りながらの作戦会議である。。

 

「まるで要塞でしたわ……あんなの反則じゃなくて!?

「あの魔法陣、ランクAの魔術障壁すら貫通する威力から察するにキャスタークラスと言ったところか。どう思う、ルビー、サファイア」

『大方そんなところでしょうねー。ま、魔術の域はとっくに超えていそうですが』

『恐らくアーチャー様の言うとおりでしょう。現代の系統のどれにも属さない、魔法にすら近い代物です。神代の魔術を操るキャスタークラスの英霊と考えるべきでしょう』

 

 遥かな神代、まだ世界にエーテルの満ちていたころの大魔術。キャスターが用いていたものはそれであろう、とサファイアは分析する。

 

「威力もそうだけど。あの魔術反射平面も問題だわ。アーチャーはなんとか一撃を加えられていたけど―――」

 

 凛はアーチャーを横目で見る。あの戦いを思い出しても、彼がただの魔術師―――それも年端のいかない―――などとは考えられない。

 百歩譲ってカードの英霊に対して有効打が与えられる、というのはまだいい。魔術戦とは概念のぶつかり合いであり、そこには相性が大きな要素を占めてくる。規格外の存在を倒しうる規格外はそう多いものではないがあり得ないわけでもない。

 だが、接界した直後。白野とアーチャーの間には何らかの、魔力のやり取り―――それも白野が持ちうる魔力以上のもの―――が流れ込んでいたように見える。

 

(ま、何か裏はあるわよね)

 

 とは言え協力姿勢は見せているし、裏はあっても他意は無さそうだ、というのも凛にとって正直なところだった。なのでこの際、それは忘れることにする。いずれ追及することもあるだろうが。今大事なのは目の前の敵をどう攻略するかだ。

 

「美遊が放った一撃がたやすく弾かれてしまった以上、イリヤも私たちにも遠距離からの攻撃が出来るとは思えない」

『観測した限り魔法陣も反射平面も固定式のようですので、魔法陣の上まで飛んでいければ戦えるとは思えますが』

「なんて言ってもねぇ。飛行なんてそう簡単には出来ないわよ。……念のため聞いとくけど、アーチャー、ザビ子、あんたたちは?」

「飛べてたらライダーと戦っている時に颯爽と飛び降りてスーパーヒーロー着地してた」

「そうだな。魔力を用いた跳躍は出来なくもないが、キャスターの上を―――それも弾幕をすり抜けて、などと言うことは不可能だ。叩き落されるのがオチだな」

「あ、そっか。飛んじゃえばいいんだね」

「やっぱりか―――って、え?」

 

 凛たちががどうしたものか、と悩んでいる真後ろ。そこを見ると、何事もないかのようにふわふわと浮かんでいるイリヤの姿。

 

「えっと、どうしたの?魔法少女って飛ぶものでしょ?」

 

 その一言に唖然とする凛とルヴィア。

 彼女たちはカレイドステッキを用いての飛行に丸一日練習してようやくものにした過去がある。

 白野は「まぁそうかも」なんて思っているのであんまり驚いていない。彼女自身は飛べはしないが、周囲には飛べるもなどいくらでもいるのでいまいち難しさが分かっていないのだ。

 アーチャーは「なるほど」と勝手に納得している。

 

「なんて頼もしい思い込み―――」

「ミユ。あなたも負けてはいられませんわ!今すぐ飛んでみなさい」

 

 その言葉に、蒼い魔法少女は、と言えば。

 

「人は―――飛べません」

 

 そんな、当たり前と言えば当たり前なひとことでもって両断した。

結局その後、「明日は特訓だ」などと言ってルヴィアは美遊を引っ張って行ってしまった。

 遠坂陣営にさせられているイリヤがあっさり飛べたのがよほどプライドを刺激したのか、相当気が立っている様子である。

 

「……ま、攻略はまた後日ね。明日は休みだし私は戦略を考えようと思うけど。白野、あんたはどうする?」

「わたしは明日ちょっと用事があるから」

「用事?」

「そう―――学校の、転入試験が……!」

「あ、そう……まぁがんばりなさい」

 

 やたら気合いを入れる白野。そのテンションたるや絶対に負けられない戦いに挑むかのよう。そんなことかよ、という凛の呆れ声もそこそこに四人は解散することとなった。

 

 

 




黒化英霊は大体弱体化してますが黒化キャスターはむしろ強くなってそうな感じがします。
性格が何だかんだいって若奥様+魂食いで律儀にあちこちから少しずつ魔力をもらっているとか、ところどころ人の好さというか甘いところが見えてきちゃう。

それに対して黒化キャスターは霊地から大量の魔力を吸い上げて魔法陣もバカスカ打てるし魔力弾程度は弾けるんでよっぽどですよ。
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