Fate/EXTELLA Liner 無銘と新王と万華鏡の魔法少女 作:ノラネコ軍団
アルテラが失踪して丸1日がたった。
4人の捜索活動にも関わらず、アルテラが見つかる様子は無かった。商店街で目撃情報を集めたところ、商店街を抜けて、現在廃墟になって何もない区画まで遊びに行ったのでは、というところまでは足取りを掴めたのだが、その先が分からない。
「いやぁ、ダメっすわ。俺もあちこち見て回ったが、アルテラの嬢ちゃんの居場所は掴めねぇ。恥を晒すようで不甲斐ないぜ」
聞き込みをしている最中に協力を申し出たロビン・フッドが言う。
彼以外にもサーヴァントやNPCが協力してくれていた。
皆は一度宮殿まで戻って集まった情報を総合しているところである。
「そんなことないよ。ありがとう、アーチャー」
「ちっとばかし気になったんだが……アンタとアルテラの嬢ちゃんはサーヴァントとして契約を結んでるんだよな?俺たちのような仮契約とは違う、きちんとした契約を」
「そうだけど」
「だとしたら令呪を用いて命令してみるってのはどうだい?」
「……何度か試した。でも」
白野は自分の腕をロビンに見せる。そこには三画の令呪すべてが消費された状態になっていた。再装填を何度か繰り返したので、復活には時間がかかる状態だった。
「一画では呼び出せなかった。三画重ねて勅令としても呼び出せない」
「そりゃまた……ムーンセルには存在しないってことじゃないかねぇ?」
「でも契約は続いている。私の体を通して、彼女に魔力が流れるパスは確かに存在しているんだ。なのに―――」
見つからない。どこにもいないのだ。
「余も皇帝特権で気配感知や千里眼の真似事をしてみたが、どうにも見つからぬ。何か尋常ではない理が働いている可能性も考えねばならぬぞ」
「……もしやヴェルバー絡み、という可能性も考えられますが。どう思われますご主人様?」
ヴェルバー絡み、と言う言葉を白野は思案した。可能性としては考えていなかったわけではない。だが彼女とヴェルバーのつながりはアーチャーが断ち切ってくれたはずだ。その様子をレガリアの中から見ていたので良く分かる。あの一撃で、彼女は英霊アルテラとなったはずなのだ。それは無い、と思いたかった。
さてどうするか、と重苦しくなった
「失礼」
玉座の間に無銘が入ってくる。
他の面子に遅れて彼は帰還してきたようだった。
「む、遅いぞアーチャー」
「すまない。が、少し気になったことがあったものでね。商店街の聞き込みを続けていたのだ」
「相変わらず独自行動ばっかとってんな赤マント」
「単独行動はクラススキルなものでね。君も持っているはずだが」
「お前さんよりかは空気を読んでるつもりですけどねぇ!」
無銘のアーチャーと
その在り方や生き様、スタンスには似たものがあるのだが、それだけに皮肉の応酬も激しい。
「んで?遅れてきたからには何か手がかりのひとつでも掴んできたんだろうな」
「ふむ。それなのだが。私が気になったのは、アルテラが失踪する直前に購入していたというステッキについてだ」
「ステッキ?それがどうかしたの?」
「ああ。一口にステッキ、と言ってもただのおもちゃとは限らない。特別な魔術礼装である可能性もある。そこで
実物を見ていたライダーと桜くんにスケッチをお願いした」
それがこれだ、とアーチャーは一つの図案を取り出した。棒に星型に羽がついた先端部が装着されていて、いかにも魔法少女の杖、といった風だ。
「それで、これがどうかしたんですか?」
キャスターは疑問を述べた。
「うむ。私はこれについて……その、ちょっとしたこころ当たりがあってね。デザインを見てほぼ確信したところもあるが、確証を得るためにあちこちで証言を洗いなおしていたんだ。すなわち、『アルテラは誰かと喋っている様子は無いか』とね」
「誰かと喋っている?」
「誘拐犯が他にいたとでもいうのか?しかし我らが聞き込みをしたときにはそんな話は無かったはずだぞ」
「ああ。そんなものがいれば誰もが証言に挙げるだろうさ。だが、私が聞いたのは、彼女がステッキに話しかけている様子は無かったか、ということだ。そしてそれについて尋ねたところ、目撃者は口を揃えて彼女がステッキに向かって独り言を言っていたと返した」
「それで、アーチャー?心あたりっていうのは」
白野の質問にアーチャーは一瞬、むぅ、とうなるとやがて観念したように声を吐き出した。
「私の見立てが間違っていなければ、彼女が骨董屋で購入したのはカレイドステッキと呼ばれる魔術礼装だ。かの第二魔法使い、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが作り出した、誤解を恐れずに言えば魔法の杖だ」
カレイドステッキ。愉快型魔術礼装とカテゴライズされたそれは、あらゆる並行世界から魔力を集め、使用者に無限の魔力を与える。そして契約者の並行世界から、特定の技能や能力をインストールさせることができるのが特徴でもあるのだ。例えば紅茶を入れる技能を持たないものが、技能を持っている世界の自分から能力を引っ張り出してくる、というように。
「うわぁ、トンデモですねぇ、ソレ」
「何せ魔法使いが作った杖だからな。私も能力のすべてを知っているわけではないが……使い方次第では並行世界に影響を及ぼしたり、ドリフトすることも可能かもしれない」
「詳しんだね、アーチャー」
「ああ。この霊器を為すものの中には、生前にそれにかかわったものもいてね。なんというか、手を焼かされた記憶がある。もちろん機能もそうだが、埋め込まれているAIがトンデモない性悪でね。知り合いの使用者は魔法少女のコスプレをさせられた挙句、黒歴史全開な口上を洗脳されて言わされることになった」
「なんて、恐ろしい礼装……!そしてまた明かされる生前の女性エピソード。やっぱりドンファンだ…」
白野は迫真の表情で手をぐっと握りしめる。
ドンファンとはなんだっ!とアーチャーは慌てて言う。
「余は面白そうだと思うぞ!このデザイン、気に入った。愛いらしいのが特にいい!余もこのステッキで変身してみたい!きっとカードを集めたりするのであろう?」
「私は嫌です。トンデモナイことをいつの間にかやらされるとかノーサンキューですねぇ」
「むぅ、確かにキャス狐にはきついか。何せ歳がネックよな。変身しても、魔法“少女”にはなるまい。安心せよ。変身は余が行う故な」
「その“少女”にアクセント置くの止めてくださいません!?大体享年で考えたらあなたも結構厳しいですからね!?」
ネロとタマモは相変わらず楽しくケンカしている。
「あー、あっちの姦しいのはほっとくとして、だ。
アンタ、なんか考えがあるって顔してるが。どうなんだい?」
ロビン・フッドが場を仕切りなおす。
アーチャーは「まぁ確証はないが」と前置きをしてから答えた。
「つまり魔法の領域の話、ということだ。魔法使いの業には魔法使いに相談するのが一番だろう?」
無銘を二次創作で扱う際に必ずと言っていいほど出てくる
『無銘とエミヤはどこまで同じなのか?』問題。
本作においてはEXTRAの描写から、無銘はextra世界の教官やエミヤ、その他色々な要素が集まっているっぽい。なのでSN時空などで起きた出来事や因縁の一部を記憶しているのではないか、という扱いです。
エミヤがカレイドステッキと出会ったことはあったのかって?うん。ロンドン行くまでは遠坂と一緒だったみたいだし、遠坂邸の魔法使いの箱を開けてトンチキ騒ぎを起こしていてもおかしくは無いと思うな。