皆さん、こんにちはッス。忍上ッス。自分は今、公園でヴィラン『ロウきゅーぶ』の『居所』を突き止めたとこッスよ。
「やっと見つけたッスよ……」
「そうね、もうやりたくないわ……」
自分の横では『CoC』が椅子に座り込んでいた。ヴィランの『居所』を突き止める時は『CoC』が足を使って出現頻度の高い場所の当たりを付け、自分が本人と接触し、『内偵』で抜き取るという必勝コンボがある。
まぁ、このやり方は『CoC』にとてつもない負荷がかかるッスから、あまり使いたくはないんスよねぇ……。
「……またあんた達か。何の用だ?」
六度目になるからか、『ロウきゅーぶ』もウンザリとした雰囲気を醸し出しながらそう問いかけてきた。
「変わらないッスよ。ヴィランに個性を利用されないよう保護を受けて欲しいだけッス」
「ヴィランである俺に言うことじゃあないな、その言葉」
「そんだけ国はアンタの個性『
自分の言葉に『CoC』が続いた。
『ロウきゅーぶ』のもつ個性は軽視されがちだが実際はとてつもない力を持っている。
過去に、彼が1人の少年へ算数を教えたことがあった。その少年は現在、中学生でありながら数学に関しては学者顔負けの頭脳をもつ天才児となっていた。
圧倒的な速さで知識を与えていく『ロウきゅーぶ』の個性は知的障害者などのディスアドバンテージを抱えている人間や動物に対しても効果を持つ。
知的障害者に対して個性を使い様々なことを教えればその人間は一般人よりもほんの少し頭の良い人間へとなり知的障害というディスアドバンテージを消すことが出来る。
また、動物にこの個性を使えば雄英高校の根津校長とまでは行かないものの、一般的な人間を超える頭脳を手にすることが出来る。
「今となっては嘘から出た実だがな。それに、俺は何処かに縛られる気なんてない」
「ならせめて何処かに定住してくれないッスか?住所不定を探すのが面倒で……」
シノビガミのシステム的に言うならば、彼の『秘密』によって『居所』が1回限りの限定情報となっている様なものだろうか。1度誰かが彼に戦闘を仕掛ければ、彼とまた戦闘を起こすためにはまた『居所』を調べなければならない。
「やりたいように生きる。そんなことをする気もない」
「ならウチの事務所に手紙を出してくれるだけでいいわよ。今あなたがどこにいるのかさえ分かれば、ヒーロー側も縛る気ないわ」
最終手段として事務所で話し合った内容が『CoC』から伝えられた。
ヒーローとしても彼の個性が悪用されるのを防ぎたいだけで、彼を捕まえる気はない。
そもそも彼がヴィランとして数えられているのは一般人がその個性を求めて近づかないようにするための緊急措置だ。これに関しては本人からの許可もある。
「……つまり、活動拠点を移動する度に現住所を連絡すればいいということか?」
「そういうことッスね。居場所さえ分かればたとえ攫われたりしても簡単に見つけ出すことが出来るッスから」
「なるほど。こうやって何度も追われるよりは一報を入れるだけの方がマシか。……メールでもいいのか?」
「全然いいわよ」
「じゃあ交換するか。赤外線でいいよな」
「悪いけど、私のスマホ赤外線無いのよね」
「めんどくさいな……。ほら、これが俺の連絡先だ」
目の前で行われている連絡先の交換を見て、『ロウきゅーぶ』を説得する一連の仕事が終わるのだと思うと自然と息が漏れた。
「ほら、お前も携帯をかせ。連絡先の登録するから」
「あ、どうぞッス」
ロックを解除し、『ロウきゅーぶ』へ携帯を渡すと彼は不慣れな様子で携帯を操作し始めた。
「……同じ事務所なのに連絡先の量がここまで違うのか。それに、ガラケーとはな」
「よけーなお世話ッス。自分は情報屋。連絡先が少ないのも、ガラケーを使ってるのも情報を漏らさないための対策みたいなもんスから」
「いや、だからと言って……いや、何も言うまい」
言いよどみながら返された自身の連絡先には五人目の人物おして『
「それじゃあ、お疲れッス。自分たちは事務所に帰るので」
「あぁ、もう会うことは無いかもな」
五回も追っていた相手だからか、会わないとなると少しだけ寂しい気持ちがした。だが毎月の仕事が一つ減ることを考えるとそんな気持ちも吹き飛んだ。
「もう女子小学生にバスケ教えるなんてことしちゃダメよ?」
「……あれはそっちがヴィラン認定を出すために仕方なくやった事だが?」
「その割にはノリノリだったスけど」
「幼女に少女、童女は女神だぞ。女神たちが頑張ってるのならば手助けをするのは当たり前だろう!私が仕方なくやったのは不法侵入だ!」
本日一番の大声である。
「……もう通報した方がいいんじゃないかしら?」
警察組織は無能。悪いことだけは早いから個人として協力してくれる人以外は信用出来ないと結構前にボヤいていた『CoC』がここまで言うとなると相当なのだろう。
「あのねぇ、確かにちっちゃい子は可愛いわよ。でも女神って無いでしょ。アンタもしかしてロリコン?」
「ロリコン?ありがとう、最高の褒め言葉だ」
「もうダメねコレ」
「精神分析は効かないッスか?」
「無理よ。コレがコイツにとっての普通なんだもの」
「どうやらお前らは女神の素晴らしさ全然分かってないみたいだな。教えてやる!こっちに来い!!」
『ロウきゅーぶ』は自分と『CoC』の腕を思いっきり掴んだ。
「ちょっと、離しなさい!!」
「女神の素晴らしさを理解するまで帰さん!安心しろ。今回は五時間で済ませてやる」
五時間というワードに自分たちは絶望し、死んだ目をしながら彼に無言でついて行った。
ちなみにこの後『CoC』が
「……頭痛が、痛いッス」
〇●〇●
「『シノビガミ』に『CoC』、よくやった」
『CoC』のせいで五時間を超えた布教から解放された自分たちは事の顛末をリーダーへ報告をしていた。
「『ロウきゅーぶ』の住所を特定するだけでなく、彼の連絡先を手に入れたことは予想外だがな。……でだ、アレを止めてくれないか?」
「良いぞ。凄くいいぞ龍本ちゃん!」
リーダーの指差す先には一眼レフを構えた『ロウきゅーぶ』の姿があった。カメラからカシャカシャと音がするが気にしてはいけない。
「リ、リーダー。事務所で彼を保護できれば楽じゃない?」
「そ、そうッスよ」
「……ふむ」
リーダーはそうやって手をあごに当てる。
「幻之、閾下侵入」
頭痛がしたかと思うと、自分と『CoC』の腕に幻之くんが指を当てていた。
あー、閾下侵入はまずいッス。こりゃ『CoC』死んだッスね。
「……なるほど。九頭龍は夕食抜きだ」
幻之くんから耳打ちされた内容を聞き、リーダーは『CoC』へ罰を下した。
「それと、忍上」
「はいッス」
「次の「そのキリッとした表情イイネェ!」仕事を頼みたい。詳細はこち「でも写真の可愛い笑顔も見たいかなーなんて」らの……」
リーダーの言葉を遮る『ロウきゅーぶ』。テンションが爆上がりしているせいなのか、その事実に気付いていない。リーダーは静かにだが頭に青筋を立てていた。
椅子から立ち上がり、『ディメンジョンゲート』で『ロウきゅーぶ』の後ろにワープして彼を蹴り倒した。
「ゲファ!?」
一回転、二回転、三回転、ダメ押しの半回転。そのまま壁に背中を叩きつけられた彼は吐き出しては行けないようなモノをはきだしながら床に落ちた。
「少し黙るように、教育してやろうか?」
倒れる『ロウきゅーぶ』の腹に足を勢いよく下ろし、リーダーは抑えていた『ダブルクロス』としてのカリスマを少しだけ解放した。
「…………」
「どうした?先程のように口が回っていないが。アレはただの演技という訳か?」
「…………ろか」
「ん、なんだ?」
「…………白か」
発言者である『ロウきゅーぶ』以外のここいにる全員が、彼が何を言っているのか理解出来なかった。
「しかもカボチャ。分かってるじゃないか」
その一言で、全員が言わんとすることを理解した。
リーダーは『ロウきゅーぶ』の視線を追い、顔を真っ赤に染めた。
自分はこれから起こるであろう惨状を思い、幻之を連れて部屋から脱出した。
『CoC』も自分と同じように脱出し、タオルを取りに風呂場へと向かった。
「このヘンタイ!!ロリコン!!死んじゃえ!!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
扉の向こう側から聞きたくない声が聞こえる。
「あんなのが、今まで自分たちを翻弄してきたヴィランッスか……」
今まであんな奴に振り回されていた自分が恥ずかしいッス。
「リーダー様は長い間生きてきたのに、なんであんな反応してるのですか?」
「ん?あぁ、幻之くんは初めて見るッスか?」
「はい」
「リーダーはあんな見た目ッスから、彼氏がいた事なんてないんス。しかも人間からしてみたら姿の変わらないリーダーは神みたいなものとして扱われたッス。んで、神にされていたとき目の前でR-18指定なことをされたらしいッス」
「R-18指定って言いますと……」
「ぶっちゃけるとS〇Xッスね。性的に恥ずかしいことをされると当時のことが思い起こされて生娘になるッス。こっちに来る前が中学生だったらしく、まだ性教育してなかったらしいッスからねぇ……。どうにか『CoC』と自分で教育したんスよ」
あの時は酷かった。
どうにか自分へ向かないものは平気レベルまで持っていくのに1年かかるとは思わないッスよ……。
「……お疲れ様でした忍上さん」
「ありがてぇッス……」
〇●〇●
「さて、仕事の話をしよう」
部屋の中から声が聞こえなくなると自分はリーダーに呼び戻され、仕事の話をはじめた。
「リ、リーダー。あの端っこにあるモザイク必須な塊は……」
「気にするな」
「アッハイ」
なんかビクンビクン動いてるッスが、突っ込むのはやめた方がいいッスね……。『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ』っていう『CoC』がいつも言ってるやつッス。
「今度の仕事は二つ頼みたい」
「二つッスか」
「一つは『ガンタガン』の調査だ。出来上がった資料はそのまま警察へ持って行ってくれ」
「了解ッス。……いい加減、ラノベタイトルとか曲名とか二次キャラの名前をあだ名にするの止めるッスよ」
「分かりやすいから、仕方ないだろう。それにこれは元々こう名付けられている」
確かに。リーダーの個性翻訳オタクVer.は前世がオタクだった『TRPG』のメンバーにとってはとてもわかりやすい。
例えば、自分が初めて活躍した時のヴィランをリーダーは『先代巫女』と名付けた。彼女は自身の肉体を強化する個性を持っており、『東方Project』を知っていたメンバーは彼女の個性を一瞬で理解することが出来た。
「名前から察するに、『血を弾丸にして射出する』個性ッスか?」
「その通りだ」
「調査だけで、いいんスね?」
「あぁ、彼は個性の都合上、個性を使うことが出来なかった。親が個性を使うことに反対してね。今は押さえ込んできた個性が暴走をしているだけなんだ」
「……暴走ッスか?」
「血液が流れると弾丸を発射するのさ。本人の意思に関係無くな。本人も拘置所にいるが、君ならば話を聞く必要も無いか」
「了解ッス。それで、二つ目は?」
「あぁ、二つ目は簡単だ」
そう言ってリーダーは一冊のクリアファイルを渡してきた。
「裏の君に仕事さ」
クリアファイルの中には政治家、警官、教師といったヴィランでは無い一般人が数十人綴じられていた。
「表沙汰には出来ない悪行を行った者達だ。いつもの様に頼むよ」
「……了解、リーダー」
「先ず、『ガンタガン』の方を片付けてくれ。ずっと拘置所に居るのは可哀想だ。……すまないな、忍上」
リーダーの言葉を耳に入れながら窓を開ける。窓から飛び出し、夜の街へと繰り出す。
まず集めるは『ガンタガン』の情報。暴走、という事は彼にとって望んでいないもの。それならば、早く助けてあげなくてはいけない。誰かが手を伸ばすならば、何がなんでもその手を取り引き上げる。それが
「……個性の暴走が起こったのはつい数日前。高校で指を切った時か。威力はほとんど無く、水鉄砲程度。暴走前に何度も流血を伴う怪我をしているというのに、なぜこの時だけ……。しかも、拘置所にいる間も何度か怪我をしているのに暴走は起こっていない?」
『ガンタガン』の資料を読み、思考を廻す。
「原因は学校?それとも、私生活か?……情報が少なすぎる。とりあえず彼の学校は……あそこッスか」
意識を切り替え、口調を直しながら彼の通っていた学校へと飛び降りる。
夜のためほとんど人はおらず、数人の存在を感じるのみだった。
「これなら、やりやすいッスかね……」
『調査術』による『情報判定』。忍法『内偵』により『ガンタガン』に関する情報が手に入る。
「なるほど、いじめッスか。……教師は何をしてた?」
職員室へ向かい、もう一度『情報判定』を行う。
「……そういうことか。リーダーめ、だからもう一つの仕事を頼んだわけか」
『ガンタガン』の調査を切り上げ、もう一つの仕事へ向かう。
「まずは、コイツだな……」
ファイルを開き、ある人物の資料を読む。その者が行った悪行を知るために。その者によって亡くなった者たちの為に。
〇●〇●
「ま、待て!一体どこから入った!?」
一人の男が腰を抜かしながら侵入者へそう言った。
彼は
そんな彼の前に、ビジネススーツを着、ピエロの仮面を付けた何者かが立っていた。
「も、目的はなんだ!金か!?」
「……金デハなイ」
目の前のピエロ仮面が口を開いた。ボイスチェンジャーを使っているのか、声で個人を特定するのは難しいだろう。
「ならばなんだ!自分で言うのもあれだがウチは金以外に何も無いぞ!!」
「『ガンタガン』を、知ッテいるナ」
「え、あ、あぁ。うちの生徒の一人だ。個性の暴走で拘置所にいるのを思うと心が痛いよ」
ピエロ仮面に、恐怖を押しやりながら笑顔を作りそう答えた。
彼のクラスには親に捨てられ、名前すら存在しない子供もいた。だから、彼は子供一人一人に名前を与えた。コードネームのような、このクラスでのみ通じる名前だった。『ガンタガン』も、彼がクラスの生徒へ与えた名前だった。
「どの口ガ言ウカ。暴走さセタのはオ前だロウ」
ピエロ仮面の言葉に、尾詩は先程まで浮かべていた笑顔を消した。
「……どうしてそれを」
「お前ニは理解し得ヌ方法だ」
「へぇ。まぁいい。それで、その事を分かっているキミは何をしに来たのかな?」
「……一つ、問ウことガアル」
「何かな。突き止めた褒美として、私に答えられることならなんでも答えよう」
立ち上がり、ニヤニヤと笑いながら自信満々に尾詩はそう言った。
ピエロ仮面は一度呼吸をしてから仮面を外し、一つの疑問を投げかけた。
「なぜ、暴走させた」
聞こえたその声はボイスチェンジャーの付いた仮面を外した事により、尾詩への怒りがひしひしと伝わるものになっていた。
「何故?それは……彼のためさ!」
両手を広げ、高らかに笑いながら尾詩は答える。
「彼は家の都合で個性を使えなかったらしいからね!私が彼の個性を目覚めさせたのさ!あんな強個性、使わない方が損という奴だよ!!」
「そのためなら、クラスメイトには犠牲になっても良いと?」
「当たり前だろう?一人の英雄を作るには数多の犠牲が付き物さ。それは、神話において証言されている。かの騎士王アーサーはおのが国を守るために侵略者を殺し続けた。現代においても彼は英雄として語り継がれている!!あぁそうさ。私が英雄を作るんだ!私が、現代の『英雄教室』を作るのだ!」
『英雄教室』。それは、個性法が存在しなかった個性第一世代に起きた事件。日々増えていくヴィランへ対抗するため、己の出世のため、穢れた大人が行った、個性を持った子供たちによる『人間蠱毒』だ。
「『英雄教室』……だと?」
「『ガンタガン』は記念すべき十人目だ。だがまだ個性が上手く扱えていないみたいで、威力が水鉄砲程度しかなかったのには驚いたよ。先生としてしっかり導いてやらないと行けないよなぁ」
壊れたように、尾詩は笑う。
「……そうか。それならば、遠慮する必要も無い。せめて一撃で葬ってやる」
「私を殺すのかぁ?やってみるといい。だが、私の個性に勝てるかなぁ??ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
ピエロ仮面は腰につけていた刀を抜き、構える。
尾詩も個性を発動するため、自身の瞳にピエロ仮面を納める。
「個性発動!暴走して自爆しなぁ!!」
尾詩の右目が薄く輝く。
「っ!?な、なんで個性が発動しない……!?」
「奥義『背教者の一刀』」
凶刃が、尾詩を襲う。たった一刀で尾詩 翼という人間の生命を奪ったその一撃は、普通の人間には勿論のこと、強化個性を持ったヒーローにすら放てない物であった。
「生憎と、自分たちの能力は個性じゃないんスよ。……ま、もう聞こえてないッスか」
刀の血を振り取り、鞘に収めたピエロ仮面は何事も無かったかのようにその場から立ち去った。
〇●〇●
「はいどうもー。捜査が難航している警察の皆さんに情報屋の忍上さんッスよー」
太陽がちょうど天高く登った頃、3階の窓を開けながら忍上が会議室へと入ってきた。
「これ、『ガンタガン』の個性を暴走させた犯人の資料ッス。犯人の名前は尾詩 翼。個性は『暴走』。瞳に収めた者の個性を強制的に発動させる個性ッスね。右目の輝きによって暴走度が変わるんで、確保する時は個性を持たない無個性の警官を使うといいッスよ。じゃあ、自分には次の仕事があるんで失礼するッス」
「……嵐、だったね」
まくし立てるような忍上の言葉に、終始ポカーンとしていた警官たちの心を、一人の警官が代表して呟いた。
忍上 調、比良坂機関下位流派応安隠密局上忍。
TRPGプレイヤーは殺し屋になりて。