強殖装甲シンフォギア――不適合者と規格外品   作:群雲

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第26話 繰り返す少年

 

 

 

 彼等は、この基地から姿を消した。

 雪音クリスはどこぞかの廃墟で目撃情報があり、翼は自宅療養。 深町晶に至ってはおそらくガイバーの力で地中か海中にでも潜伏したのだろう、2課の情報網から完全に隠れてしまった。

 あまりにも最悪な事態に弦十郎は司令室で一人、ため息を垂れ流す。

 

「あらあら、世界一ため息が似合わないヒトが珍しい」

「こんな事になってしまえば誰だって一つくらいはな」

「……そうね、みんな激務で疲れてるものね」

 

 彼等が消えてから2週間が経つ。 その間に大きな事件はないものの、やはりノイズ発生の報は止まらず、現状響一人に頼らざるを得ない状況が続く。 彼女の負担は増えるばかりで、いつもの笑顔は目に見えて陰りつつある。

 

 天羽奏の消失以来となる混沌とした空気にスタッフの誰もが目に見えて疲れていた。

 

「でもあの子達にも困ったモノよねぇ、もう少し仲良くやっても良いのに」

「……あぁ、そうだな」

「いくら生まれも育ちも違うとは言え、あそこまでいがみ合うモノかしら? 晶くんと翼ちゃんなんて初めて会ったとき寄りも険悪だったじゃない」

「…………向こうでなにかあったのか、それとも……」

「なに?」

 

 了子の問いにしかし弦十郎が答えることは無かった。 彼女のいぶかしげな視線もすり抜けるかのように意味を成さず、そのまま沈黙が広がっていくだけだ。 彼等に、事態を解決する術は無い。

 それでも……

 

「そんじゃま捜索のほうを続けるわよ?」

「あぁ、頼む」

「あの手のかかる赤い子は大体把握出来たから、残るは晶君ね。 あのガイバーをどうやって見つけるか、かぁ……なにか案無いかしらん?」

「ソレを探すのが研究者、櫻井了子の仕事だろう。 是非とも頑張ってもらいたいところだ」

「重責ねぇ、頑張るかー!」

「頼んだ」

 

 大人達は誰一人後ろを向いていなかった。

 誰もが前を向き、歩き続けるしか出来ないのだから。

 

 ソレが大きな波に攫われる小枝のような不安定なモノだとしても…………

 

 

 

 

 数日後の昼下がり。 日本近海のとある孤島に彼は居た。

 強殖装甲を身に纏い、ただ、静かにそのときを待ち続けていた。

 

「…………」

 

 ガイバーとは瞬間改造システムだ。 ソレを呼び、纏う事により身体はもうニンゲンのソレとは違うモノへと書き換わる。 普通の栄養摂取から解放され、限定的に加齢が無くなったのだ。 つまり、擬似的な不死身である。 ソレがガイバー、ソレが強殖装甲システム。 いま、呪われた力をフル活用しながら彼は一人、孤島でうずくまっていた。

 

 しかしそれは決して先の喧噪の後悔では無い。

 

「…………もうそろそろ見つけても良いはずだ、俺はここに居るぞ」

 

 ひたすらに待つのは誰のことか。 彼はその手を握りしめながら、そのときを待って居た。

 周囲は暗くなり、日の光は既に沈んだ闇の中、それでもガイバーのセンサーで視界を確保できる深町には関係のない事であり、なんら不自由なく周囲を見渡してみせる。

 

「……っ」

 

 頭部のセンサーがうごめく。

 それは彼自身が察知できない何かを拾ったという事だ。 センサーからの情報に神経を集中すると、数百メートル先に何らかの反応を感じ取る……何かが、近付いている。 小動物にしては大きすぎるエネルギー量と、ノイズにしては複雑過ぎる構成。 怪物でも雑音でもないソレの正体……それは。

 

「――!?」

 

 耳を、いやその装甲を振るわせるほどの衝撃音。 大地を抉り、空を焼かんばかりの轟音がガイバーを襲う。 すかさず身を翻し、爆心地へとセンサーを合わせると、彼の背に悪寒が走る。

 

 

「お、おまえは……」

「…………」

 

 “ソレ”が深町に返すことはなかった。

 ただひたすらに沈黙を貫き、深町に相対するのは白き装甲――

 

「が、ガイバー!?」

「…………」

 

爆発音と共に姿を現したのは、自身と同じ姿の存在であった。

 ガイバーⅠと同じく全身を装甲で覆い、頭部には一本角と多目的センサーが配置されている。 しかもいつぞやの模倣品とは違い、コレの頭部には風穴など存在しない。

 

「頭部にコントロール・メタルまで!? おまえ、いったい何者だ!」

「…………ショウ・フカマチ」

「くぐもった声、バイブレーション・グロウヴをいじっているのか」

「オマエハ、存在シテハナラナイ」

「――ッ!?」

 

 不意の攻撃だ、深町はとっさに腕を前に差し出しガードの体勢に入る。

 攻撃が当たったのは右腕。 二の腕付近に衝撃が走り、その威力を深町の意識に強く刻み込んだ。 ノイズとは違う、久方ぶりの重い攻撃に彼は一瞬だけ意識を手放しかける。

 

「……くっ! こいつ!」

「アマイ、ナ」

 

 反撃にバックステップからのヘッド・ビーム。 しかしその攻撃は白い強殖装甲に当たることはなかった。

 よけられた……そう思った瞬間に深町は腕の突起を伸長させる。

 

「はぁぁああ!!」

「コウシュウハソード、ダガ、コチラモ、オナジ武装ガアル」

「こ、この!!」

 

 高周波同士がぶつかり合い、喚くような金切り音があたりに轟く。

 押し合うような刃の競り合いが続く最中で、深町はヤツに言葉を投げつける。

 

「お前の目的はなんだ! なぜ、ガイバーのコピー品を作った!」

「コノヨウナ都合ノヨイ武装ヲ放ッテ置ク者ナド居ナイ」

「な、に!?」

「キサマノ事ハズット見テイタ……戦イ、負傷シ、キズヲイヤシ、死ニ近イダメージヲ受ケ……ソレデモ立チアガッタ。 ソレハ貴様ガモツ装甲ノチカラダロウ?」

「ち、ちがう! 俺が立ち上がり、運命に立ち向かうことが出来たのはみんなが居たからだ!!」

「ダガ、今ハ居ナイ」

「――ッ!!!」

 

 どっちの仲間ことを言っているのか。 ずっと背中を支えてくれた幼なじみ達のことか、それとも…………

 表情の無い装甲を強ばらせると、深町の眼前に光が走る。

 

「ぐ!?」

「牽制ノビーム、デモ、コノ威力。 サスガダナ」

「こいつ、俺を実験台代わりにでもしているのか!?」

 

 さっきから感じる攻撃の違和感に気がついた。 だが、ソレが現状を突破するヒントになることはなく、未だ防戦一方の深町はジリジリと後退を余儀なくされる。 相手がもし同じ装甲、同じコントロール・メタル……だとしたら、最後に殖装者の優劣を決めるのは――

 

「貴様ハ弱イ! 心モ、躯モ!!」

「グァァアアア!! う、腕が……」

 

 高周波の刃が深町の左腕を捕らえた。

 すんでの所で身を躱したはずなのに、走る激痛に目を見やれば深刻な裂傷が腕部に刻まれていた。 血が噴き出し、激痛と言う名の危険信号をコントロール・メタルが脳に発信する。

 彼の動きは一気に悪いモノへと変わる。

 

「ココデ、消滅シロ!!」

「ぐ、ぐぅぅっ!?」

 

 完全なるヤツの間合い。 反撃すら出来ず、ただ激痛に叫び声を上げるガイバーⅠに対して白いガイバーはまだダメージの一つも無い。 ヤツはゆっくりと近づき、その腕を振り上げた。

 高周波の刃が深町の頭部に押し迫る――――

 

 

 

 

 

 また、死ぬ。

 

 深町晶というニンゲンはコレでいったい何度目の死を迎えるのだろう。 いくつもの激闘の末の死だ、そのどれもを鮮明に覚えている。

 

 巻島顎の養父と戦い溶かされる。

 深町史雄に脳を頭蓋ごと切り裂かれ脳死状態に。

 そして、そして…………あの、最悪の“敵”に遭遇して――

 

 そこまでだ、深町晶が思い出せるのは。

 彼の思考はそこで止まってしまう。

 もう、それ以上思い返せる過去が彼にはないからだ。

 

 いいや……ちがう。

 

 これ以上思い出せないのだ。

 

 彼の脳のその奥に在るはずの記憶が、想いが、ごっそり抜け落ち消されてしまっていることに、彼自身が気づけていない。

 在るはずだ、自身の命よりも大事なモノが。

 思い出せ、思い出せ。 ソレは草花のように儚いけれど、昇る日の光のようにまぶしいモノのはずだ。 何よりも大切で、何人にも犯されてはならないそれは――――

 

 ――――そこまでたどり着き、少年の思考は今度こそ停止“させられる”

 

 

 

 

「シネ、ショウ・フカマチ!!」

「――――!」

 

 時間が元に戻る感触。 不意に景色が揺れ動けば彼の眼前に高周波の刃が迫っていた。

 もう、どうにもならないタイミング。 ヘッドビームでは打ち落とせないし、メガスマッシャーなんて論外だ。 この窮地を脱出する術を少年は知らない。

 

 そう、知らなかったのだ。

 

「ナ、ニ?」

「はぁ、はぁ…………」

 

高周波の刃を、ガイバーⅠの右掌が受け止める方法だなんて。

 

 極限のその向こう、ニンゲンの持ちうる思考速度をフル加速。

 深町晶の脳に被さったコントロール・メタルが危機脱出の為、最大演算を完了したとき“この殖装体が出来ること”を現出させて見せた。

 

 一瞬の事だ、理解が及ばないのはお互い様だ。 いままでガイバーが見せたことのない動きに、深町はおろか、敵でさえ驚きを隠せずうろたえている。 だがそれもほんのわずかな出来事だ、すぐさま後退し白いガイバーは体勢を整え、観る。

 

「プレッシャー・カノン、トハ、違ウ……ソウカ、極小ノワームホールを利用シタノダナ」

「こんなところで死んで堪るか! うおぉぉおおお!!」

「ナニ!?」

 

 勢い付いた深町はヤツに突撃――ではなく、ソニックバスターを展開、あたりに響かせる。 チューニングの間に合ってない不快音波はセンサーの感度を上げているガイバーにとっても有効打たり得る。

 敵の身が一瞬だけ強ばる。 そして、ソレを見落とす彼じゃない。 一気に肉薄し、相手の脚の間に自身のつま先を着地させる。 限界まで捻った体を戻す勢いで相手に渾身の右アッパーを炸裂させる。

 

「おりゃあ!!」

「グゥ!?」

 

 顎に痛打を受けた白い装甲。 思わずうめき声を漏らし地面に背中を合わせる。 ソレを見下ろす形となる深町はすかさずマウントを取り、口部金属球を揺らす。

 

「殖装を解け! 正体を見せろ!!」

「……」

「もう勝負は付いたはずだぞ!」

「…………フフ」

「なにがおかしい!!?」

「あははははは!!」

 

 独特のくぐもった声が徐々に落ち着いていく。 聞こえてくる本当の声は、妙に深町の耳に残る物であって。

 

「まさかこの期に及んで命乞いをさせるとは」

「こ、の声……」

「甘い、本当にお前はあまい」

「そ、そんな、ばかな……」

 

 白い装甲の向こう側、身に纏う人物を知れば深町の動きが止まる。 まさかと戸惑う姿は恰好の標的、白いガイバーは強烈なケリを放つ。

 

「なぜだ、どうして貴方がこんなことを!?」

「あら、薄々感づいていたと思っていたけど……?」

「でも、だからってこんな!」

 

 なんとか防御に成功するも、そこから来る言葉に動揺が隠せない。

 いままで、なんとなく“あの場所”に感じていた裏切りの感覚。 弦十郎が戸惑い、翼が睨みを聞かせていた頃、ただヒトリだけ笑っていた人物が居た。 だがそれはあの少女ではない、あの子はまだ、あの施設には居なかったのだから。

 

 では、誰なのか。

 いや、もう答えはわかっているんだ。

 

「一番最初に、俺の身体を観たのは“貴方”だった」

「えぇ、あのときはなにも出なかったけどね」

「もう一度と俺に声をかけたのも“貴方”だった……」

「自己再生、いえ、復元すら可能とするシステムには興味を抱いたけれど、まさかこれほどとはね。 感謝するわ」

「完全聖遺物輸送のときに、本部から離れていたのも……貴方だった――櫻井さんッ!!」

「……ふふ」

 

 装甲の下で、ソレは確かに笑って見せた。

 あの笑みだ、あの、時折見せた研究者の顔だと深町は直感した。 決して表には出さず、いつも調子の良い非戦闘員を装っていたあの、鋭くも優しい笑みに深町は睨み付ける。

 

「俺たちを……弦十郎さん達を騙したのか!!」

「彼等が勝手にやったこと。 私はただ、自分のやりたいことをやっていただけ」

「それがあの結果か!? 2年前、コンサート会場に起ったアレがあなたのやりたいことだったのかよ!!」

「えぇ、おかげでネフシュタンは手に入り、邪魔な装者を一人削ることも出来た」

「あ……ぐっ……!」

 

 爆発しそうになる衝動をぐっと堪え、その掌を握りしめる。 会って数ヶ月の自分はまだいい、堪えることも出来るだろう。 だが――

 

「風鳴さん、雪音さん、立花さん……そして、天羽奏さん。 いったいどれほどの犠牲者を出したと思っている!?」

「さぁ、数えたこともないわ、それに今の貴方にはなんの関係もないのでは? もう、仲間でもなにもないのでしょう?」

「……………………」

 

 そうとも知らず、櫻井を慕っていたモノ達、仲間だと背中を預けていたモノを思えば、自然、深町はそっと両の手を彼女に向けていた。

 

「殖装を、解いてください」

「断る」

「……………………ッ!!」

 

 彼女の言葉はあまりにも冷徹で…………切れ味の鋭いモノだった。

 

 一気に武装を解放していく両者。

 両手が届かない中距離での攻撃は自ずと限られていく。 掌に収束した重力波を打ち出しつつ、深町はセンサーをフル稼働。 ヤツの動きを観察していく。

 

「ガイバーは基本的に同じ性能だ、違いは殖装者のポテンシャルのみ。 だがあれが櫻井さんの作り上げたオリジナルだとすれば何かしらの仕掛けがあるかもしれない」

「考え事は終わり? それとも、まだ説得をしたいのかしら?」

「ふざけるな! もう口でどうにかなる次元じゃないのはわかりきっている、このままあなたを、倒す!」

「……出来るかしら」

「やってやる……!」

 

 使われている装甲は自身と同じ、どう見たって強殖装甲だ、そこは変わらない。 高周波ソード、腹部の重力制御球に、おそらく胸元にはメガスマッシャーが収まっているのだろう、そのどれもがオリジナルと遜色ない装備ならばやっかいでしかない。

 

「ソニック……」

「バスター!!」

 

 超音波が周囲を微塵に還して行く。 お互いがお互いを消し去る攻撃の嵐に、今度は肘からソードを展開、各々装甲を削り、その身を切り裂いていく。

 いくら強い装備を身に纏おうとも、つい最近まで科学者だった女と、修羅場をくぐり抜けてきた少年とは実戦経験そのものが違いすぎる。 勝負はすぐに明暗を分けた。

 

「ぐ!?」

「……あらあら、もう終わり?」

 

 ――はずだった。

 だが結果は正反対。 深町は膝をつき、切り裂かれた装甲を手でなぞる。 まだ、内部まで通ってはないものの、確かなダメージは残っている。 肩で息を整えながら、そっとヤツを観る。

 まだ、余裕があるように見える。

 

「どういうことだ、なぜ今までただの研究者だった櫻井さんがこんな戦闘技術を……」

「このままトドメというのも良いけれど、ここで一つ実験と行きましょうか」

「な、に……?」

 

 白いガイバーの頭部金属球が虹色に輝く。 その光はガイバーにはない神々しさを見せつけながら、センサーでは捕らえきれない威圧感を与える。

 その正体は普通ならわからない。 ガイバーⅠのコントロール・メタルですら解析不能だ。 だが人間、深町晶にならわかる物がある。

 

「か、完全聖遺物のときと同じプレッシャー」

「あまたの次元の壁をすり抜け、現れなさい……ヒトを殺すケダモノたち」

 

 白いガイバーの周りが“ズレる”

 世界ごと、どこか異質な空気に切り替わると同時、そこには不定形の物質が現れ出でる。

 

「ノイズ!」

「成功ね、ガイバーと完全聖遺物との調和は見事に果たされた」

「……まずいぞ、こんなことになるなんて」

「いまここにシンフォギアはない。 つまり貴方はノイズに対抗する術がないと言うこと!」

「やられた、――っ!」

 

 一気に距離を取り、胸部装甲に手をやる。 ノイズの召還にはそれほど時間はかからない、ソレが深町から正常な判断を奪い去る。 ここで、そんな大技を披露するのはあまりにも自殺行為すぎた。

 

「原子の塵に――」

「遅い!」

「ぐぁあああああッ!!」

 

 肉薄されてのエルボー、胸部装甲ごと高周波ソードで刺し貫かれる。 口部排気口から吐血、ガイバーの身体が引きつけを起こすように跳ねた。

 

 だが――

 

「迂闊よ、そんな大技を使わせるわけないじゃない」

「つか、まえた……」

「な、に?」

 

 いくら天才科学者といえど、数値に書き起こすことが出来ないモノを計算に入れることは出来やしない。

 

「まさか!」

「俺と同じだというなら、この距離で躱すことは出来ないはずだ!」

「お前もただじゃ済まないぞ! 動けなくなればノイズの餌食に……」

「ここで貴方を取り逃がすより良い! 2課の人たちはまだ知らない……貴方が裏切り者で、こんな危険な存在だって事を……だから!」

 

 だから貴方は、いまここで倒す。

 

 ガイバーの左胸が光り輝き、際限ない熱量を生み出す。

 ゆっくりと、目の前の邪悪を焼き払わんとその砲門を開こうとする。

 

「げ、原子の――」

「ふ、ふふ――」

 

 深町の攻撃は人間に対して向いている。 そう、あの深町晶が櫻井了子(ニンゲン)に対していま、ガイバーのすべてを解き放とうとしている。

 

「臆病モノのお前にソレが撃てるモノか!!」

「…………」

 

 否。 そう言ってのける精神的強さを深町は持っていない。

 

「立花響の暴走も、雪音クリスのときも貴様は結局手を下せなかった!」

「…………」

 

 否。 最後の最後に止めてくれた仲間が、カレには居たのだ。

 

「いくら強い身体に作り替えられても、心まではそうはいくまい! なら、貴様にソレは撃てない!!」

「………………」

 

 

 それは、正しい。

 研究者、櫻井了子の言い分はその通りだ。 この少年は未だ弱く、仲間が居なければ立ち上がる理由すら見つけ出せない脆弱なニンゲンだ。 そう、仲間が居なければ何も出来ないのだ。

 

 あぁ、そうとも。

 

 “仲間が居れば、なんだってするのだ”この男は。

 

 天羽奏が

 翼が

 響が

 クリスが

 二課にいるすべての人間が――

 

 過去現在、彼を支えてくれているニンゲンすべてに仇をなした人物が居たとして、ソレを笑顔で許してやるほど彼はお人好しではないし、ソレがまだ人類に仇成す怪物になろうというのならもう、なんら遠慮はいらないはずだ。

 

 ……それほどに彼は猛り、激しく燃えている。

 

「出来るわけが――」

「ガイバーなら、これくらい耐えられる」

「…………ッ!?」

 

 砲門の熱量は臨界を超え、強固な装甲越しに閃光を溢れさせる。

 

「喰らえ! メガスマッシャー!!」

「ば、馬鹿なッ?!」

 

 装甲を開くと同時に莫大なエネルギーを解放する。 至近距離の砲撃はさしもの強殖装甲もただでは済まない。 その再生能力を持ってしても修復困難なダメージに貫かれ、装甲を身体ごとも持って行かれる。

 

 無論ソレは、放った本人も例外ではない。

 

「…………ぐふっ!」

「が、はぁッ!!」

 

 相手を捕らえていた腕ごと光のなかに消し飛んだガイバーⅠは地面に膝を付き、対して白いガイバーは左半身を失っていた。

 あの攻撃のなか、全身を光のなかに呑み込まれる前になんとか深町の拘束を振り払い、窮地を脱していたのだ……

 

 いいや、それは違う。

 

「結局……自分から手を離したわね」

「はぁ、はぁ」

「あのままやっていればメタルごと私を葬り去る事も出来ただろうに、だからお前は甘い」

「く、クソ……ノイズがこっちに……」

「このままその身を炭化され消し去るがいい!! あははははッ!!」

 

 最後の気力を振り絞り、腹部の制御球を光らせると浮遊するガイバーⅠ。 力なき航行は、それだけで彼の状態を示すのに十分で、弱々しい。 腕もなく、粒子砲は使い果たし残りの武装はレーザーのみ、深町のガイバーに反撃の手立てはない。

 ただ、無様に逃げるしか出来ない。

 

「ぐぅぅ……!」

 

 攻撃を回避し、追撃を振り払う事は困難を極める。 こと単独でのノイズ戦闘は圧倒的に不利な強殖装甲に勝ち目は微塵もない。 しかもその身は既に半死人も同然、回復には相応の時間を要する。

 とにかく今は防御に、いや、回避に徹するほかない。

 

「ソニック・バスター!!」

「粉塵を舞い上がらせたところで無駄だ! ノイズは視覚だけで攻撃しているわけではない!!」

「……そんなの百も承知だ」

 

 以前、この世界に来たばかりの深町は既にその相手と対峙している。 だから、コレは本当にその場しのぎ。 小さな動きでノイズの攻撃を躱しながら、残されたビームと音波でノイズの攻撃を阻害していく。

 小さな反撃、でも、ソレは生存に繋がる奇蹟を辿る。

 そう、彼は時間を稼いでいるのだ。

 

「ヤツは半身を失っているのに対してこちらは両腕だけ、回復速度はこちらに分がある」

【ポ……!】

【――!!】

 

 槍のように飛んでくるノイズを伏せて回避、すぐさま飛んでくる槌のような攻撃は横に飛び、砲弾のような体当たりはほかのノイズの影に隠れて相打ちにする。 考えられる限りの手を尽くしながらノイズの攻撃をいなし、回避していく。

 

「……あのボウヤ、あんな死に体でよくあそこまで」

「もう、すぐだ」

「ノイズ! ヤツを包囲しろ! 回避の隙間を残さずつぶせ!!」

「――くそ!」

 

 だが、ソレも悪あがきに過ぎず、即座に櫻井の指示に従うノイズにすべてを埋め尽くされてしまう。 無くなる逃げ場に焦りを隠せない深町を、無情にも雑音が押しつぶす。

 刹那、赤い弾丸が彼等の横をかすめた。

 

「い、今のは……!」

「参った参った、アドリブとはいえここまでしなくても良いんだぜ?」

「はぁ……はぁ、間に合ったのか……」

 

 ノイズの存在が調律されこの世界へと固定された。 同時、色が明確になり、ガイバーの超感覚でも性格に捕らえられるようになる。 ……ヤツラはいま、ガイバーの敵でなくなった。

 いや、そんなことはどうでも良い。

 いま一番気にかけなければならないのはたった一発の弾丸でコノ戦線を一気に塗り替えた人物だ……彼女は、しかしそんなわけがないと櫻井は内心否定し、声を荒げる。

 

「なぜお前がここに居る、“クリス”!!」

「あん? どこかで会ったことあったっけか? ガイバーの知り合いなんてそこの保護者様以外にいないはずなんだがなぁ」

「仲違いをして、解散になったはずだ!!」

「んなモン演技に決まってんだろうが! このヘタレが仲間内に毒づくなんて天地がひっくり返っても無理な相談なんだよ! コイツがあんな態度を取ること自体がブラフじゃねえか。 なぁ?」

「ゆ、雪音さん……」

 

 その声に、しかし事態が事態だ、すぐに深町の近くに飛び込むと、彼に肩を貸しつつ周囲を見渡す。 有象無象の蔓延る空間は厄介極まりない、しかし……

 

 彼女にとって、乱戦こそ本領発揮の瞬間だ。

 

「しっかり捕まってろ」

「あぁ!」

【――!!】

「ジャマだ、どきやがれ!!」

 

 片手に持ったアームドギア、ソレをマシンガンに再構成すると即座に火を噴かせる。 爆炎と粉塵を巻き上がらせながらノイズを一掃する姿は航空爆撃機の迫力を与える。 さらに腰の装甲を展開、ミサイルを射出すると残るノイズを即座に消滅させてしまう。

 

「へ、おととい来やがれってんだ」

 

 決め台詞もそこそこ、今度こそ事件の真犯人へと振り返る。 そこには、弱りつつも反撃の機会をうかがっていた白い装甲がうずくまっていた。

 

「く、クリス……まさかお前が来るとは」

「その声、まさかフィーネ……なのか?」

「フィーネ?」

 

 クリスの表情が固まる。 だが深町には理解できなかった、あの目の前に居る白いガイバーは間違いなく櫻井了子だ、でも、声と口調を聞いたクリスは即座に別人の名前をつぶやく。 

 そのことに、状況の変化に一瞬だけ気を取られたときである。 白いガイバーは口部金属球を不気味に揺らす。

 

「隙だらけだぞ深町晶!!」

「くっ!」

「フィーネ!! おまえ!!」

 

 不快音波から徐々に周囲を砕く固有振動に調整していくと、そのまま残った半身を動かしていく。 その姿は、いつか見たガイバーⅠの姿と見事に被さった。

 

「塵芥に消えていけッ!!」

「ま、まずい! 雪音さん!!」

「ちょ、おま――」

 

 放つときの予備動作だけでもう、この先がわかってしまう。 “アレ”をよけるのは不可能に近いと。

 

 よけられない、けれど庇えない状況ではない。 なら――

 

「メガスマッシャー!!」

「ッ!!」

「お、おいオマエ!!?」

 

 クリスだけでもなんとか生きながらえさせようと、深町が取ったのは自己犠牲だった。

 いつかのとき、とある少女が取った手段と同じで、命の炎を燃やし尽くすその行動はあまりにも……あまりにも……“彼女”には我慢ならないものだ。

 

「深町! 伏せろ!!」

「!?」

「この声!!」

 

 天より斬撃が、否……剣そのものが落ちてきた。 その衝撃たるや大地を揺らし、空を振るわすほどに強烈。 あまりにも強く、巨大、さらに堅牢な剣などこの世界でただ一振りしかないだろう。

 そう、その剣とは――

 

「風鳴さん!!」

「……遅くなったな、深町」

 

 人類守護の為、己が存在を研鑽し続けてきた存在……防人。 ソレが仲間の危機に駆けつけないわけがなかったのだ。 風鳴翼は、確かにそこに居た。

 

「く、いくら天羽々斬のアームドギアといえども!!」

「こっちだ深町、雪音」

 

 メガスマッシャーの照射時間は限られている、しかしその短時間でさえ保たせることは出来ないだろう。 時間にして一瞬、ほんの少し進行を遅らせる程度の防御に、彼女達が取ったのはまず逃げることだ。

 

「一端体勢を立て直すぞ、どうやら裏で私達を操る黒幕も正体を見せたようだしな」

「逃がすと思っているのか!? 来い、ノイズ達!!」

「――有象無象がッ……なに!?」

 

 自身に襲いかかると思い、刀を振り上げようとした翼は硬直する。

 白いガイバーのスマッシャーが止まる、それはいい。 だが同時にコントロール・メタルを輝かせると、ヤツの半身にノイズが集まり出したのだ。 その姿は女王蜂を守る兵隊のようで堅牢。 あのノイズがまさか何かを守るために動かされるとはなんの冗談だろうか。

 本当に、なんの冗談だろうか……

 

「お、おい……あれ!」

「どういうことだ……!」

「あ、あのガイバー……ノイズを取り込んでいるのか!?」

「あはははははあッ!!」

 

 消失したはずの半身を、なんとノイズ数体で補填していく白いガイバー。 あり得ない、いくら強殖装甲システムだからって、異物をああも自身の体に変換することなど不可能だ、一定の時間をおかなければ出来ないはずだ。

 疑問の山のなか、しかしコレに似た現象を深町とクリスは思い出す。

 

「ネフシュタン……」

「あぁ、あの海でのときと一緒だ」

「まさか!? アレは完全聖異物を取り込んでいるのかッ!!」

 

 次々と、傷口から捕食されていくノイズ達。 その光景は醜悪以外に形容できず、翼にクリスは思わず背筋を凍らせる。 いや、違う。 本当に体に悪寒が走ったのだ。

 

「深町! 逃げ……」

 

 一瞬速く反応できたのは翼、しかし……そのときには既に、一体のノイズが深町の体を貫いていた。

 

「がッ!?」

 

 背後から、何ら予備動作もなく行われた不意打ちにガイバーは膝を付く。 クリスは驚愕に表情を凍らせ、しかし手に持ったガトリングで攻撃してきたノイズを打ち落としていく。

 

「いったいどうなってんだよ! なんで保護者のやつは気がつかなかったんだ!?」

「深町、おい、深町しっかりしろ!!」

「ぐ、うぅぅなんだ、この感じ……ノイズにやられたにしてはダメージが……」

 

 貫かれたのは腹部。

 こぶし大の穴が空いているモノの、幸いと重力制御球だけは無事だ、まだ戦える。 なんとか立ち上がろうとチカラを込め、拳を握るモノの…………出来ない。

 

「ち、ちからが……なんだ?」

「ふふ、はははは! そろそろ稼働限界かしらねぇ」

「なにを言っている……ガイバーにそんなモノは」

「気がついてない、のか?」

「なに……を!」

「おい、深町!?」

「お前こんなときにまたダウンかよ、しっかりしろよ保護者!!」

「…………ま、た……?」

 

 クリスの何気ない一言であったが、深町には十分な材料であった。

 いままで、そう、このシンフォギアが守護している世界にたどり着いてからいままで、確かに不調続きだった……

 

――――自身が。

 

「俺の体に、なにをしたんだ……!」

「いいえ、なにもしていないわ。 むしろ、貴方が勝手に壊れていっているのよ」

「な……え?」

 

 嗤うように声を出す姿は愉快そのもの。 いままで本当に気がつかなかった愚か者に、ようやく正しき答えを開示できると、まるで舞うように両手を広げた彼女は、深町晶に、ガイバーⅠに真実を伝える。

 

「壊れているのさ、貴様の脳に組み付いたそのコントロール・メタルがッ!!」

「!!?」

「ど、どういうことだよ……おい、お前!」

「…………俺の、ガイバーの……コントロール・メタルが……?」

 

 ウソだ……奴は自身を欺こうとしている。

 

「ガイバーⅠ! なぜ殖装を解いたあと頭が痛むのか!」

「あ、あぁ……」

 

 隙をうかがっているのだ、耳を貸してはならない。

 

「なぜ過去の出来事を思い出せなくなっていくのか!」

「ちが、俺は……」

 

 その先を聞いてはいけない。

 

「なぜ、数時間以上記憶が飛んでしまう感覚に襲われているのか!!」

「そ、そんなこと……ぐッ!?」

 

 思い当たる節を探していく内に、ガイバーのコントロール・メタルから膨大な情報が送られてくる。

 

「が、がぁあああああああ!!?」

「深町!?」

「お、おい! ……おまえ! コイツになにを!!」

 

 白いガイバーの額を見ると、金属球が光り輝いている。 そしてソレは深町も同様だ、ただし、その輝きは不規則で、相手よりも弱々しい。 敵からの干渉を受けているのは明らかであった。 クリスは一気に駆け出す。

 

「やめやがれ!!」

「彼の迷いと病を治してあげているのだから、ジャマしないでもらおうか?」

「嘘つけコノヤロウ!!」

 

 至近距離からの銃撃を、しかしガイバーの持つ飛行能力で難なくよけられてしまう。 あの機動性は厄介だ、どうにか打ち落とさないと……彼が。

 

「ガイバーⅠ深町晶! 貴様はこの世界に来るときに無理をしすぎた! コントロール・メタルは異次元を渡るという機能を発揮したことで許容限界を迎えたのだ!」

「黙れ! くそ、当たらねえッ!!」

「壊れた機械はその後少しずつだが不具合を起こしていった! 殖装を繰り返すたび、お前はその体の再構成に若干のズレを起こし、深町晶という人間から遠のいているのだ!!」

「深町! 奴の言葉など聞くな! 意識を集中しろ、ガイバーは意志力で能力を発揮するのなら、お前の心次第ではないのか!」

「うぅぅ……あたまが……グァアアアア!!!!!」

「深町! 深町!!」

 

 ……声が、遠ざかる。

 翼がなにを言っているのか、クリスがどうして銃を撃ち続けているのかがわからない。 なぜ自分はこんなところにいるのだろうか。

 あぁ、そうだ、遺跡基地に潜入して……それで、それで?

 こんな孤島になぜ居るのか。 早く戻らないといけない。

 

 

 

 

 

 そうだ、こんなところでゆっくりとしている暇はないはずだ。

 

 仲間が、自分を待っているのだ。

 

 ナカマが、待って居る……

 

 行かなくては…………

 

 どうやって? どうすれば……ナカマのところに帰れる? なにをすれば良い、どうすれば良い?

 

――――――タオサナケレバナラナイアイテガイルハズ。

 

 そうだ、倒さないといけない存在がいる。 強い、とても強い存在で……

 

――――――“ケン”ヲフルウモノガイル。

 

 あぁ、そいつを倒せば良いのか。

 

――――――“ジュウ”ヲムケルモノガイル。

 

そうだ、こちらに銃を向けるのならば立ち向かい、倒さなければ。 みんなに流れ弾を当てさせるわけにはいかない。 倒さなければ。

 

 倒すんだ。

 

 倒すんだ。倒すんだ。

 

 倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す―――――――――――タオセッ!!!!

 

 

 

…………

………………

…………………………

 

 

 

「おい深町! おい!!」

「………………」

「深町……? 大丈夫か?」

 

 不意に立ち上がるガイバーⅠ。 ソレは自身に未だ気遣う風鳴翼を見ると、ゆっくり手を向けた

 

「――な!?」

「…………」

 

 差し向けた矢先爆発する地面。 反射的に回避できたのは奇蹟に近い、まさかこの状況で、しかも味方から強襲されるとは思いもしなかった翼は、見る。

 

「おい、深町……!」

 

 ガイバーの目に、既に人間性がないことを。

 装甲は目まで覆っているはずだ、だから瞳をうかがい知ることは出来ない。 だが、それでも剣士である翼にはわかってしまう。 いまここに、人間深町晶はどこにも居ないのだと。 あれは、ガイバーは……

 

「おい保護者! やれるならさっさと手伝えよ! 空と陸からの挟み撃ちだ――」

「よせ雪音!! 今の深町はッ!!」

「あ?」

「…………ッ!」

「――――ぎっ!?」

 

 見えない衝撃がクリスを吹き飛ばす。 その正体は掌を彼女に向けているガイバーⅠに他ならない。 ソレは視線を交わすことなく話しかけてきたクリスに、無情にも横からプレッシャー・カノンを見舞ったのだ。

 不意打ちで、しかもガイバーの武装でも上位に位置する攻撃を食らったのだ、シンフォギアを纏う彼女でもひとたまりも無かった。 息を殺しながらただ、激痛に耐えている。

 

「深町!! おまえは!!」

「無駄よ、今のその子は操り人形」

「なにッ!? 人形だと!」

「そう、脳に組み込まれたコントロール・メタル、そこから発せられる信号に唯々従うだけの殺戮兵器、ソレが今のガイバーⅠ」

「コントロール・メタルが?! さっきの光のせいか!」

「……ご明察」

 

 ただ冷酷に、熱を感じさせないガイバーⅠは本当に機械のようで。

 その温度を実感した翼は剣を振り上げた。

 

「蒼ノ一閃!!」

「…………!」

 

 切りつけたつもりだが、ガイバーⅠは難なく回避行動を取り、素早くこちらに掌を向けてきた。 不可視の速射砲が飛びだし、翼はとっさにクリスの方へと飛び込んだ。

 

「ダメだ、このままでは深町が……どうすればいい」

「一端……引くしかないだろう、こんなの……ぐぅぅ」

「そう、だな。 だが……!」

「それでも今は引くしかない! あんな状態のアイツ相手に全力なんか出せねえだろう! それに、ありゃ馬鹿野郎のときよりも数段手強い」

「……普段深町は装者相手の戦闘では無意識に武装を制限し、戦い方に工夫を凝らしている。 だが、今のアレは機械で制御された殺戮兵器。 闘うのではなく、どう効率よく目の前の敵を排除できるかを模索し、実行するだけ」

 

 情け容赦の無い真のガイバーを見せつけられ、もはや打つ手などない。 出来ることは時間稼ぎと、彼に呼びかけることぐらいだ。 だが、現状ソレも困難を極める。

 急ぎコレを本部に持ち帰り、対策を立てないと……だが、目の前の“機械”にはそんな事情など知ったことではない、無情にも胸部装甲に手を置く。

 

「あ、アイツ!?」

「不味い、もう回復したというのか!」

「あはははは!! 原子の塵に還るといい、仲間の手によってなッ!!」

「………………ッ!!!」

 

 開かれる装甲、輝く太陽。

 その光が生み出す破壊の波は誰も止めることなど叶わず、無情にも二つのシンフォギアを呑み込んでいく。

 

 深町晶と言うニンゲンはまた奪われる。

 己が躯を支配する、強殖装甲という名の悪魔に。 その無慈悲な力に、この世界で出来たかけがえのないもの達を…………

 

「邪魔者は居なくなった……あはは…………ふはははははははははッ!!!」

「………………――――」

 

 

――――――彼は、またも奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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