Fate/Apocrypha Lost   作:紫 カナメ
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一章最終回です。
真名が少しずつですが明らかとなって来ましたね。
現在の脱落者は鉄のバーサーカー一騎だけ、これから
どうなるかぜひ、お楽しみください。


第十一節 ふたつの疑問

ルーラーと監督官殺害は失敗_鉄の陣営はバーサーカー、『ランスロット』を失い、更にはそのマスターであるロディニオ神父が魔術協会に連行された。監督官を殺害しに行った鉄のアーチャー、アシュヴァッターマンのマスター、ユミリアは重傷を負い、左腕を失った。そして、足止めをしていた鉄のランサー、ブリュンヒルデが全身に火傷を負い、気を失った状態で鉄の陣営の城に運ばれた。

 

ランスロットは銅のセイバーによって瞬殺され、ユミリアは監督官との戦闘で重傷を負い、ブリュンヒルデは金のセイバーによって重度の火傷を負った。

 

「…少し奴らを甘く見ていたようだな」

 

鉄のキャスターは現在の状況をモニターの様に映し、見ていた。

 

「それにしても、ロディニオという男…まったく役に立たなかったな。サーヴァントを雑に扱ったのが仇となったな」

 

キャスターは、はぁ…と溜め息を吐いてモニターを消した。

 

「…アーチャー、お前のマスターの容態は?」

 

と、キャスターは後で壁に凭れかかっている鉄のアーチャー、アシュヴァッターマンに声をかけた。

 

「手当てが早かったおかげで、なんとか一命はとりとめましたよ。遅かったら出血死していたかもしれません」

 

「そうか…なら良い。アシュヴァッターマン、バーサーカーを失った分、お前にはしばらく扱き使わせてもらうからな」

 

「承知しました。なら早速、バーサーカーのマスターであるあの役立たずを口封じに始末しましょうか?」

 

「それはアサシンに任せる。今からアヴェンジャー達に引き上げる様に伝令を出す。お前はブリュンヒルデの様子を見てこい。神霊だからと言っても、不死身ではないならな」

 

「はい、私とて不死身ではありませんし、貴女もそうでしょう?ケルト神話の影の国の女王_『スカサハ・スカディ』殿」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

ラーヴォルバ城塞__

 

 

「邪神…アヴェンジャー?」

 

銀のセイバー、沖田総司はアヴェンジャーの名を聞いて少し動揺した。

黒化の影響で生前の記憶を半分も失い、自身の真名を失った。確かに、アヴェンジャーの外見に掃除屋である魔術師を皆殺しにし、黒いムカデの様な奇怪な使い魔を操る能力は_邪神、災いを与える邪悪そのものである。

 

沖田はアヴェンジャーは、自分と同じ日ノ本の英霊と言っていたことを思い出し、彼は神霊じゃないかと考えた。

スサノオかヤマトタケルなど、日本には多くの神がいる…もし、彼が神霊だとすれば、辻褄(つじつま)が合う。

 

「…その小僧はキサマらの仲間か?マスターには見えんが…」

 

「月夜殿は関係ない、彼はこの大戦とは無関係だ!」

 

「…なら、先程の仮想宝具とは一体なんだ?サーヴァントでもマスターでもないなら…何故あの様な大量の魔力を出すことが出来る?」

 

「え…?」

 

「………」

 

「…まぁ良い。部外者だろうとも、俺に刀を振るったんだ。その小僧は俺の敵、敵は速やかに始末せねばならない」

 

「っ…」

 

アヴェンジャーが大太刀を構え、危険を感じ取ったセイバーも刀を構えた。

月夜はガーディナの背中の傷を自分の上着を使って止血し、傷を覆う様にかけて結んだ。

 

「…ごめんなさい…おれのせいで、こんな……」

 

「はは…大丈夫だ。これくらいの傷でくたばったら魔術師失格だ」

 

と、その時_____

 

ドオオオオオオオオオオオンッ!!

 

「「!!??」」

 

先程の爆発よりも大きな音が森中に響いた。すると森の奥から銀のアーチャーとアニムフィスが走ってきた。

 

「おーい!旦那ぁ!セイバー!!」

 

「…あれ?月夜くん!?」

 

「アニムフィス…いまのばくはつは…?」

 

「説明は後回しだ。早く逃げんぞ!」

 

「え、逃げるって…何があったんですか?」

 

「…誰かさんが森中に爆弾を仕掛けてそれが爆発して山火事状態になってる!」

 

 

 

ラーヴォルバ城塞から結構離れた城塞跡地の展望台で双眼鏡を使い様子を見ているふたつの影があった。

 

「これで奴らは袋の鼠…大きく燃え広がった火を消すのにも時間がかかるだろう。」

 

「作戦成功ですね。マスター」

 

展望台に居たのは金の陣営のマスター、衛宮竜胆と金のアーチャー、アーチャーインフェルノだった。

 

「しかし、鉄と銀の陣営はともかく、同盟を結んだ銅の陣営まで巻き込んでしまう可能性が高い作戦ですが…大丈夫なのでしょうか?」

 

「そう簡単にくたばるような奴らだったらな。所詮子供の寄せ集め、大戦で最後まで生き残る確率はとても低いだろう」

 

「そうですか…」

 

ピロピロピロリッ ピロピロピロリッ ピッ

 

「あぁ、オレだ。……そうか、わかった。今からそっちに向かう」

 

ピッ

 

「和泉神父は無事だ。あと、鉄のアーチャーと鉄のランサーの真名がわかった。ブリジェントに向かうぞ、インフェルノ」

 

「承知、」

 

竜胆とインフェルノは展望台から飛び降りて着地し、車に乗ってブリジェントに向かって走らせた。

 

 

一方_ラーヴォルバ城塞から離れた森の出口付近では、アヴェンジャーと交戦していたセイバーと月夜を庇って重傷を負ったガーディナのもとに駆け付けて来たアニムフィスとアーチャーと合流し、一刻も早く脱出しようとしていた。

 

『アヴェンジャー』

 

と、アヴェンジャーの頭の中にキャスターの声が響いた。

 

『バーサーカーが殺られ、ランサーと小娘(ユミリア)が重傷を負った。作戦は失敗だ、すぐにライダーとアサシンと合流して撤退しろ。これは命令だ』

 

『……あぁ、』

 

アヴェンジャーはキャスターの命令に従い、アサシンとライダーを探しに地面を蹴って大きく飛び跳ねた。近くにあった木の枝の上に着地し、チラッと月夜達の方を見て、そのまま森の奥へ入っていった。

 

倒れているアサシンを見つけて抱き抱えてライダーのもとへ急いだ。その時、月夜達がいる方へ向かって走っている一人の少女の姿が目に入った。

 

「…あれは、ルーラーか?」

 

バチバチッ!

 

「!?」

 

少女…ルーラーの姿を見た途端、アヴェンジャーの頭の中で電撃を浴びた様な痛みが走った。

 

「っ…なんだ、これは…?」

 

ズキズキと頭が痛い…アヴェンジャーは離れた場所の地面に着地し、手で頭を押さえた。

 

「俺は…あの小娘を知っている…のか…?」

 

黒化された時、生前の記憶を半分失った。覚えているのは自分の大切なものが目の前で傷つけられ、殺されていく光景のみ…復讐、憎しみ、邪悪…俺は一体、誰なんだ?

 

 

 

 

 

 

月夜達は炎上する森から脱け出し、すぐにガーディナの手当てを始めた。

 

「酷い傷…少しでも位置がずれていたら致命傷よ」

 

アニムフィスは回復の魔術を使い、止血し、傷口を塞いだ。

 

「すごい…まじゅつってひとをたすけることにもつかえるんだね…」

 

「えぇ、…ですがこのままにしておくわけにはいきまはせん。城塞に戻って本格治療を…」

 

「戻るって…城塞の方の森は大きく燃え広がっています!どうやって戻れば…」

 

と、その時_ラーヴォルバ城塞の方から巨大な風が吹き、燃え広がっていた炎が次々と消えていった。実に有り得ない光景だった。

 

「アーチャー…あれは」

 

「あぁ、間違いない。キャスターの宝具だ」

 

風が消えると、森の奥から十人の人影が現れた。

 

銀のランサーとディニクス・ファルフィフ・ラーヴォルバ。

銀のライダーとオニビティス・ノーラム・ラーヴォルバ。

銀のバーサーカーとヴィルクス・ニキグル・ラーヴォルバ。

銀のアサシンとギベオン・ドゥリス・ラーヴォルバ。

銀のキャスターとトゥニティス・エルクトゥ・ラーヴォルバ。

 

銀の陣営のサーヴァントとそのマスターが全員揃って月夜達の前に現れた。

 

「…アニムフィス。これは一体どういうことだ?」

 

「ディニクス卿…」

 

「…何故ガーディナ卿が負傷している?それにその少年は_」

 

と、ディニクスが月夜の方に目を向けた瞬間、アニムフィスと銀のセイバーが月夜の前に立った。

 

「彼はこの大戦には無関係です。だから_」

 

「…何があったのか隠さず全て話せ」

 

「…………実は__」

 

アニムフィスは月夜のこと、アヴェンジャーのことを全て話した。ただ、月夜が結界を破って入ってきたことだけは言わなかった。

 

「邪神アヴェンジャー…か、厄介な敵が現れたな。アニムフィス、その少年をこちらに寄越せ」

 

「お断りします」

 

「…その少年はアヴェンジャーと戦っていたのだろう?ならば相当の実力を持っているはずだ。彼を我が戦力に加えたい」

 

「それでもお断りします。彼はまだ子供で、とても臆病なんです。それに彼は大戦に巻き込まれただけの一般人です」

 

「だが、その少年の所為でガーディナ卿は負傷した。この責任はとってもらわなければならない」

 

「っ…」

 

「そこまでだ」

 

と、次に現れたのは、鈴が付いた大きな帽子を被った白い着物姿の長い白髪の少女_ルーラーだった。

 

「話は聞かせてもらった。その者はこの大戦には無関係な人間だ、それを無理矢理戦力に加えるのは非道すぎる。」

 

「…調停者、ルーラーか。だがこの少年の所為でセイバーのマスターが負傷した。この責任は彼自身にとってもらわなければならない」

 

「その必要は無い。ガーディナ・オルグド・ラーヴォルバは、その少年を守るために負傷した。奴は無事でいてほしいと思ってその少年を庇った。違うか?銀のセイバー」

 

「え?あ、はい!マスターは月夜殿を早く安全な場所に送るためにいろいろと準備をしていました。月夜殿がアヴェンジャーに襲われそうになった時、誰よりも速く駆け付けたのはマスターでしたから…」

 

「ガーディナ伯父様…」

 

「…ごめんなさい…おれのせいで……」

 

「銀のアーチャーもセイバーもそのマスター達も其奴を守るために必死に守った。そんな彼らの思いを踏み躙るなど妾は許さん」

 

ルーラーはアニムフィス達の前に立ち、強く言った。

 

「もし、この者達に危害を加えようとするのなら…妾が相手になってやろう。…貴様らを妾の毒で侵し殺してやろう」

 

「……極東の姫君か」

 

と、ランサーは口を開いた。

 

「私も同意見だ」

 

オニビティスは手を上げ、アニムフィス達の方へ歩き始めた。

 

「ガーディナは善意で彼を庇って傷を負った。だから月夜くんもガーディナもセイバーもアニムフィスも何も悪くない。人を助けるのも魔術師の役目だからな」

 

「……そうか、ならばその少年は大戦が終わるまでラーヴォルバ城塞で保護しよう。だが、ひとつだけ条件がある」

 

「条件…?」

 

「月夜…セイバーと契約し、銀のマスターとなれ」

 

「「!!??」」

 

ディニクスの言葉を聞いて、その場に居た者達は驚愕した。マスターになる_それは、月夜が聖杯大戦に無関係な人間ではなくなるという意味だ

 

「待ってください!それでは彼が戦力に加わるという意味じゃないですか!?」

 

「城塞の中から指示を出せば良いだろう。厳重に結界をはり、護衛をつける。彼が安全で何もしなければ良いのだろう?」

 

「でも…!」

 

「だいじょうぶだよ。アニムフィス」

 

「え?」

 

「おれのせいでガーディナさんがけがをしたんだ。それに、みんなにはせわになったしいろいろおしえてくれた…だから、おれはみんなにおんがえしをしたい」

 

「月夜くん…」

 

「たしかにたたかうのはこわかった…だけど、もうだれかがきずつくのはみたくないんだ。」

 

「……良いのか?」

 

「うん、ありがとうルーラー。それに…アヴェンジャーにききたいことがやまほどあるんだ」

 

「…交渉成立だな。では城塞へ戻るぞ」

 

ディニクス達は城塞に向かって歩き出し、月夜も続いて歩き出そうと立ち上がった瞬間、アニムフィスが月夜を抱き締めた。

 

「ごめんなさい…あなたを巻き込んでしまって…もっと早く、脱け出せていれば…」

 

「…ありがとう、アニムフィス。でもきめたんだ。こんどはおれがまもるって」

 

「……待て、月夜」

 

「!」

 

「お主…本当に良いのか?大戦に関わるということは死にに行くのと同じだぞ。それでもお主は行くのか?」

 

「…それでも、おれはいくよ。アヴェンジャーとたたかいに」

 

「…そうか。なら、必ず生き残れ」

 

「うん、ありがとう」

 

月夜はアニムフィス達と共にラーヴォルバ城塞へ向かっていった。残されたルーラーは夜空に浮かぶ満月をみつめた。

 

「…月夜とアヴェンジャー。何故月夜は、アヴェンジャーに会いたがっているんだ?それにあの大量の魔力…奴は本当に人間なのか(・・・・・)?」

 

ふたつの疑問を残して、三つの争いは幕を閉じ、また新たな争いへと向かっていった。

 

 




一章完結です。ネタがうまく浮かびません…(´・ω・`)
次は次回予告(擬き)です。







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