HEART PIECE   作:DOFO

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第二話「世間」

 血の流れは生命の流れ。魂は身体を探し、身体は魂を取り込む。臓器は身体を維持させ、血を流す。目は世界を見据え、耳は世界を聞く。鼻は世界を嗅ぎ、口は世界に語る。手は世界を触れ、足は世界を歩む。心は愛を求め、生き物は世界を彷徨う。心に愛を注ぎ続けなければ器の底から垂れ流れる。愛が無くなると器は壊れ、治さなくてはならない。重すぎる愛も器が支えきれず砕ける。壊れた器は生き物の思考を削ぎ落とし、平常心を失わせる。そうして狂った生き物は絶望に蝕まれるか狂気に満ちる。愛は必要な物であり、扱いにくい物である。

 

 

 

 昼下がり、朝の労働を終え、空腹を満たすために人々が町を横行する。あるものは食材を求め、あるものは料理をし、あるものは食事をする。そんな午餐頃、ネモの店『フリドールショップ』でネモはフリドを作っていた。小さな手のひらサイズの人形に、そっと丁寧で慎重にハートを埋め込んだ。しばらくすると人形がピクリッと動き、立ち歩いた。フリドの完成だ。

 

「うわー!凄いです!動きました!」

 

 フリドの完成を興味津々な様子で待っていたアニェラは満面の笑みで喜びに浸っている。アニェラがフリドールショップに来てから1週間がたっていた。その1週間、毎日フリドールショップに顔を出していた。

 

「そういえばお家の方は大丈夫なのかな?色々と整理とか必要じゃないの?」

 

「…私が居ても何も出来ませんから出来るだけ邪魔にならないように家にいないようにしているんです。デイビットさんにも許可を頂いていますから」

 

 少し俯き、寂しそうな顔をしていた。

 

「デイビットさんって秘書の人だっけ?」

 

「はい。私が生まれる前から遣えている人で昔からよくお世話になっています。だけど最近は両親のこともあり、あまりかまってもらえなくて…」

 

「…そっか。…そうだ、もうお昼だしお昼ご飯でも食べに行こうか」

 

 暗い雰囲気を変えようと話題を逸らし、昼食をとることにした。丁度お店にハートショップの店長が昼食のお誘いに来てた。ネモは食事を取ることが出来る極めて珍しい人形である。何処で食べるか話しをするとアニェラの提案でレストランで食事をすることになった。お昼時であって、レストランはお客で賑わってた。

 

「私、こういう所へ来るのは初めてで!」

 

 キラキラした目で周りを見渡す。アニェラにとってはとても新鮮な雰囲気であった。メニューも見たことないものばかりである。ネモは評判の高いハヤシライス、店長は特大ステーキ、アニェラは目玉焼きが乗り、チーズの入ったハンバーグ、チーズ in めだバーグを頼んだ。しばらく談笑していると料理が運び出された。

 

「わぁ!!美味しそう!!」

 

 アニェラはとても美味しそうに頬張って食べた。

 

「……!?チーズが蕩けて美味しいです〜!」

 

「だーっはっはっは!そんなに美味いか!」

 

 アニェラは初めて食べる料理の美味しさのあまり、顔が緩んでいた。

 

「そういやネモ、お前は『エンジ』の手掛かりは見つかったか?」

 

「いえ、まだ重要な手掛かりは見つかっていません」

 

「そうか、こっちも探しているんだがなんとも言えねぇな」

 

「そうですか」

 

 二人がなにやら話しているのが気になってしまった。

 

「あの、なんのお話をしているんですか?」

 

「ん?ああ、こいつの店の店主が失踪したってやつだ。その日にこいつが店にいたもんだからな。俺がその日エンジに用があって、エンジってのは店主のことだ。エンジかと思って話しかけたらよ、誰だって返してきたんだ。最初は冗談かと思って話してたんだがそいつの腕を見ると繋ぎ目があって人目で人形だってわかったんだ。あっ、人形だってこと話しちまってまずかったか?」

 

「あっ、ネモが人形って話しは聞きました」

 

「そうか。まあ、その人形がとてもエンジに似ていてな、人形だってことでそりゃ驚いたさ。覚えているのは名前と店の中身とかエンジについてのことがなんもわからないってことだったんだ」

 

「そんなことがあったんですか」

 

「まぁ、人生何があるかわからねぇ。あいつもひょろっと帰ってくると思うだろうし、アニェラも頑張るんだぞ」

 

「はい!私もいつまでも挫けずにいきたいと思います!」

 

 アニェラは強い意志を持った頑張りポーズをとった。しばらく食事をしていると店長が「ちょっと企業秘密の話しをするから耳栓をするぞ」と言ってポケットから耳栓を取り出してアニェラの耳に付けた。初めての耳栓に少し驚きながらも面白さを感じていた。

 

「店長、それで話しってのは…」

 

「聴こえてるだろ、周りの声が」

 

 三人が座る席の周りからはひそひそとした声が聞こえる。レストランという場に合わない声が。「あの子ってこの前死んだ人の子供?」、「こんな所で何してるんだ」、「かわいそうに」など、アニェラに対して向けられた声が聞こえてきた。それを見兼ねて店長がアニェラに耳栓をしたのだ。アニェラに聞こえないように。食事が終わると会計を済ませた。アニェラは自分の食事代を払おうとしたが店長の奢りとなった。

 

「人の噂も七十五日、噂話が治まるまではアニェラには出来るだけ聞かれないようにしないとな、うちのほうにも出来るだけ話しをさせないようにする」

 

「ええ、私の方も出来るだけ話しが流れないようにします」

 

 噂話が消えるまでは時間がかかる。出来るだけアニェラが傷つかないようにとの思っての判断だった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 店に戻るとアニェラは耳栓を外していいかと聞いてきたので外してあげた。

 

「二人はなんの話しをしていたんですか?私だけ聞かせてくれないなんてずるいです!」

 

「おいおい、企業秘密が外部に漏れちまったら俺達の店は簡単に潰れちまうだろ」

 

「そんなことしませんよ!」

 

 店長は店まで二人を送ったあと、自分の店へと帰って行った。しばらくネモはアニェラにフリドを作っている様子を見せていた。日はすぐに沈んできた。

 

「では、私もそろそろ帰ります」

 

「ああ、また今度ね」

 

 アニェラを見送ったネモ。アニェラの心が世間の声に負けないよう、どうするか悩むネモであった。




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