初めは人を模して創られた。何の為に創られたのだろう。思い出だろうか、信仰だろうか、はたまた暇を持て余してか。今となっては関係はない。その時にそう創られたのであって、今は違う。時代が経つにつれ変わっていく。人も物も、使われ方は変わっていく。
今日もネモは人形を作る。フリドとなる人形を。それを買いに人が来る。値段は様々、大きさや品質によって端からピンまで。ネモが売り物として作るほとんどはオーダーメイド、展示品は暇つぶしに作る。毎日毎日、人が来る。朝に店を開け、夕暮れには店を閉め、フリドを作り、一日が終わる。
そんな繰り返しの毎日が少し変わった。アニェラという少女がやって来た。アニェラは最初は借りてきた猫の様に大人しい少女出会った。次第に心を打ち明けて、本来の子供の様に無邪気な姿を出した。
「ねぇ、ネモさん。ネモさんはなんでフリドを作っているんですか?」
子供が持つ無邪気な心の質問。
「…そうですね、主人が帰って来ないので、帰って来るまでは私がこの店の番をしなければなりません」
「だけどこの店の主人が帰って来るまでは店を閉めてても良かったんじゃないですか?」
フリドは人間と違い食事を取らなくても生きていける。ただ椅子に座って主人を待っていても良いのではという意味である。
「確かに、ずっと何もせずに待ってても良いのですが突然主人が消えて今まで頼まれていた仕事はどうなりますか?」
ネモが言った言葉をよーく考えるアニェラ。
「あっ!お客さんが困っちゃいます!」
「そう。待っているお客様がいるのでフリドを作らなければなりません。お店の評判を下げてしまっては主人に頭が上がりませんよ。それに…」
ネモは店の奥からお茶菓子を持ってきてアニェラに振舞った。そして笑顔で
「こんな小さなお客様を困らせては薄情者になってしまいます。これをどうぞ」
「わぁー!今日も美味しそうなお菓子です!」
「今日は変わったお菓子を作ってみました。そのお菓子は…」
「おうネモ!ちょっと仕事を頼みに…って美味そうなお菓子じゃねーか!」
「て、店長さん!これは私のお菓子です!」
「なんだよアニェラちゃん、ちょっとぐらい分けて貰ってもいいだろー」
そんな日常にある客が来た。ドアベルの音が鳴り、一人の客がやって来たのだ。
「いらっしゃいませ」
女性であった。白いワンピースを着ていて、靴はストライプの入ったヒール、頭には大きくて白いピクチャーハットをしていた。その女性はネモを見つめていた。五秒程の時間であったがまるで一分ほど見つめ合っていたかの長さであった。
「トゥール…、トゥール!」
ネモを見るやいなやネモに抱き着いた。ぎゅっと力強く。その姿にアニェラは顔を赤らめ手をほっぺたに付けた。店長はとても驚いた様子であった。
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