ショックで投稿が大幅に遅れてしまいました
ようやく真名を解放できました
ランサーは戸惑っていた
別に敵のマスターとの戦闘を想定していなかった訳ではない
敵のサーヴァントを倒せば、残ったマスターは逃走か戦闘のどちらかを選ぶのは想定の範囲内だ
今回の場合、後者が近い形となったのだが…
「“物質変換”《トランス》!」
敵のマスターがそう叫ぶと
サーベル状の呪いを具現化した
と同時に
突進
だが大した速度では無い
槍を構え、虫を払うかの様に横に弾く
サーベル状の呪いは砂の様に崩れ消えた
長時間呪いを具現化は出来ないのか
それとも人、物に触れると呪いが成就するのかは分からないが
当たらなければ問題は無い
なんて思ったが、
(馬鹿か、それじゃあコッチも同じじゃねえか)
そう、ランサーも同じく攻撃が当たらない
それは攻撃を防がれるのでも弾かれる訳でも無く
当たらないのだ
回避に次ぐ回避の連続
試しに本気で突いてみるか?
しかし無駄だった
敵は右斜めに体を逸らし回避
そして同時に詠唱
“物質化”《マティアリアリゼイション》!
叫ぶと同時に今度は手に呪いを集中し
触れようとしてくる
コッチも距離を取り回避
そして突進
今度は薙ぎ払う
…が、今度は壁を蹴って上に回避
また詠唱
コッチもまた回避
この流れの繰り返しである
突き
薙ぎ払い
蹴り
突きと見せかけ素手で殴る
などの攻撃を繰り返しても
回避、反撃
回避、反撃
もう一度
今度はちょっと本気で殺ろう
刺す
突き刺す
薙ぎ払い
突き
刺し
薙ぎ払い
ブラフを混ぜ
蹴り
殴り
突き飛ばし
しかし
どう攻撃しても
回避、反撃、回避、反撃、反撃、反撃
組み手を取られた上に投げ飛ばされ
懐に潜り込まれ、刺されそうになり
後ろを取られた上に足払い
ランサーの苛立ちが徐々に現れ始める
(…キメに行くか)
生身相手に本気でやる必要も無かったが
徐々に怒りが闘争心を引き立てた
距離を取り
槍を構え
そして…
霊体化と共に瞬時に移動
敵の後ろへ
トドメと言わんばかりに
槍で突こうとした
その瞬間
華麗なダンスの様にヒラリとステップを踏み
同時に勢いをつけた腕を鞭の様にしならせ
裏拳をお見舞いされた
…アレ?
俺のスピードってそんな遅かったか?
そんな筈は無い
達観していたルーラーでさえ見えなかった
恐ろしいほど早い不意打ち
しかし、星 陸斗は武術「騭」による敵の思考の予測と彼自身の勘により不意打ちさえも回避する事を可能にしていた
顎をモロに殴られよろめくランサー
距離を取り体勢を整える 主人公《陸斗》
ホウホウっと感心するルーラー
やや混沌とした状況が続く
だがランサーもただ無闇に突っ込んで入り訳では無い
いくら回避され反撃を受けようとも
決定打となる攻撃が無ければ勝機はコチラにある
やられっぱなしではあるが、疲労するのは生身の相手だけ
つまり、追い込まれているのは相手だけだ
そろそろ距離を取った攻撃を仕掛けてくる筈
そう睨んでいた
そして…その時はすぐに来た
「“物質変換”《トランス》!」
敵がそう叫ぶと何かを投げつけた
速度にして球速140くらいの速さ
ランサーはその目で確認した
(ダガーナイフ!)
チャンスだ
ランサーに飛び道具はあまり意味がない
矢避けの加護を持つ彼は余程の長距離からの狙撃でなければ当たる事は無い
突進
一気に距離を詰める
ダガーナイフはランサーを包む風によって見事に弾き返されてしまった
「クソッ!」
敵の悔しがる声が聞こえる
さらに距離を詰めるランサー
このスピードなら殺れる
そう確信していた
だが、敵もまだ諦めて無かった
唐突にズボンに手を入れ何かを取り出すと
それをぶち撒けた
それは無数に拡散し宙に煌めき舞い落ちる
(コイン…!)
世界中の貨幣が無数に弾け飛ぶ
セント、ユーロ 、元
よく見ると100円や1円なども混じっている
一瞬、立ち止まろうとしたが
相手の顔を確認
相手は目を瞑りただ突っ立っている
(なんだ…こけ脅しかよ…)
怖じけず突き進む
もう相手に打つ手は無い
このまま一気にゲームセット
予想外の展開だったが問題は無い
「くたばりな…小僧…」
敗者へと送る言葉をポツリと告げ
コインの雨を抜けようとした
その時だった
激しい閃光
(これは…!)
コインの雨が一気に輝き
眩い閃光となった
視界が一気に奪われる
サーヴァントとは言え不意に急激な光を見てしまうと視界が奪われ硬直してしまう
ランサーは後悔した
“何故立ち止まろうとしなかった”
ルーンの魔術でさえ鉱石に魔力を込める事だってあるだろうに
ましてや貨幣の素材は金銀銅の鉱石だ
宝石よりは魔力を通しずらいとしても
魔力を込める込められない訳じゃ無い
どうしてそんな事に気付かないのか
答えは簡単
焦っていたからだ
いち早くコイツを殺す
そうじゃないと…
(って考えてる場合か!)
だが、もう遅かった
“物質化”《マティアリアリゼイション》
叫ぶと同時に敵が一気に詰め寄って来た
いや、詰め寄って来たのはコッチの方だ
わざわざ隙を作ったのは自分自身
もう遅かった
手にはソフトボール程の大きさの呪いが顕れていた
そして…
着弾
胸元に当たった呪いは弾け
空気砲の様に身体を吹き飛ばす
直撃を受けた胸元は波を打つ様に凹み
心臓にまで響く程の衝撃を与えた
宙を回転する身体は
電柱にぶつかり、民宿の壁にめり込んだ
アニメや漫画でチンピラがメチャメチャ強い奴に殴り飛ばされる様な光景だ
そう星 陸斗(主人公)はランサーを吹き飛ばし
敵に一発ぶち込んだのだ
ハアハアと息を荒げ、顔を引攣らせながら
筋肉が限界を迎えた
だが、彼は一瞬だけ勝ったのだ
これほどのリスクを覚悟の上で
本気で殺しに掛かったランサーに決めたのだ
彼は現在進行形の絶望的な計画を見事に遂行しているのだ
そして何故か分からないが
ルーラーはニヤニヤと何故か嬉しそうだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
衝突により発生した砂埃が辺り一面を漂う
まるでレフェリーの様に両者を制止させ
会場の雰囲気を盛り上げる様だ
だが砂埃は一気に吹き飛ぶ
「やってくれるじゃねえか…小僧…」
ランサーの声はさっきとは比べ物にならない程に殺気をで満ちていた
やっぱりな…
分かってはいた
今の自分の攻撃力では
歯が立たない事ぐらい
そんな事は分かっていた
一応身構えるが、瞬時に悟る
ランサーの槍が夥しい程の魔力を纏っていた
ダメだ…
血流の様に 真っ赤なその槍から
逃れられない事は子供でも理解出来る
本能がそう直感した
ランサーが立ち上がり
自分を見つめる
その目は殺気に満ちていた
だが…
「小僧…一つだけ無礼を詫させてくれや」
…?
「さっきの武術、そして魔術 …」
「見事だった」
敬意
あれ程の武術を修めていた敵への賞賛
手を抜いた事への謝罪
それは強者に対する礼儀
思いは数あれど
根本にあるものは殺意とはまるで違う
人間らしい感情だった
「礼と言っちゃなんだ
お前は俺の全力で殺してやるよ」
槍に込められた魔力が一気に増大
来る!
英雄の証明、そして奇跡の体現
武具あるいは逸話…
英雄たる所以の再現
宝具《ノウブル・ファンタズム》
つまりサーヴァントの切り札である
「その心臓貰い受ける!」
構え
辺り一帯にバチバチっとエネルギーが弾け飛ぶ
狙い
地面がその衝撃にひび割れる
刺し穿つ死棘の槍!!
《ゲイボルク》
一閃
まるで龍の様に稲妻の様な紅の一撃が繰り出される
回避不可
一撃必中
当たったという結果だけを作る
因果逆転の呪いを持った一撃
避けられない
武術を持ってしても
魔術を持ったとしても
避ける事は出来ない
もう自分に出来る事は何もない
これが星 陸斗の限界だった
全てを理解した彼は目を瞑り
たった一言を告げた
「ルーラーよ…
我が名の元にその真名を…」
「解放せよ」
それは依頼主の最初の命令
令呪を持ってではなく
一人の指揮者としての合図
切り札発動のサインだった
「待っていたぞ、プリンシバル!」
そう叫ぶと同時に
彼もその真名を解放する
そして唯一つの単語を告げた
最善の導=神の腕
《インビジブル・ハンド》
一瞬だけ辺り一帯がに光に包まれる
そして…
ランサーの一撃は空振りに終わった
心臓に当たる事もなく
近くの塀を粉々に破壊しただけだった
ランサーが睨みつける
「学者風情が…我が一掃を阻むか!」
犯人は分かりきっていると言った表情だ
「たまたまさ…アイルランドの光の御子…」
あくまで偶然を語る経済学者
よく知らない方も多いので
ここに注釈しておく
彼は人と人との営みにおいて発生する
ある存在に気付いた者…
魔術師としてではなく
ただ一人の学者として、思想家として
その存在を…
“見えざる手”を証明し
それによって新たな市場メカニズムを唱えた
イギリスの学者
政府による経済の管理を否定した
市場の解放者
近代経済の基盤を作り上げた
経済学の父、アダムスミスである
という事でルーラーの真名はアダムスミスでした
真名はもうちょっと長引かせようと思ったのですが
超メジャーな経済学者なんて彼しか居ないので
さっさと真名を解放させました
キャスターじゃないの?って思った方も居るかもしれませんが
彼は間違いなくルーラー適正を持っていると思います
詳しくはアダムスミス著 道徳感情論 で調べてみると分かるかと思います
そして、経済学の父と言われるアダムスミスですが
彼は本当に凄い人なんです
彼の思想は社会の基盤を作り、今尚その土台の上で生活していると言っても過言では無いと思います
彼の偉業は何と言っても価値観の提唱です
当時、金銀こそが富であり、金銀を発行する国家こそが経済の源泉だから経済は国家に任せるべきでと主張する重商主義と
農業など生み出す側こそが富であり、それら生み出す側の好きにさせる自由な経済活動(自由放任)を主張する重農主義が対立する中で
アダムスミスはその両方の主義を否定し新たな価値観「労働価値説」を提唱しました
労働(生産)こそが経済の源泉であり、労働価値を高める事が富を生み増やす事に繋がると明言したのです
こちらもWikipediaなどをご参照するのがよろしいかと思います
この物語でのアダムスミスはそうした経済観を武器に市場原理を固有結界として展開し“神の見えざる手”で戦います