新「艦娘」グラフティ3(第14部)   作:しろっこ

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美保鎮守府に所属する電は今日、哨戒部隊の旗艦を務めていた。
何事もなく終われば幸せだったのだが……そうは問屋が卸さなかった。


第1話<美保湾雷撃戦>

 

「旗艦って、やっぱり慣れないのです」

 

--みほちん------------

新「艦娘」グラフティ3

第1話<美保湾雷撃戦>

---------(第14部)---

 

じりじりと照りつける太陽の光。 キラキラと反射する波。

「蒼い海……」

 

そして今、季節は夏。

 

「今日の海は静かで綺麗なのです」

遠くに見える大山(だいせん)を見ながら想わずつぶやきました。

無線機を通して他の艦娘たちからも『そうだね』という返事が来ます。

 

『もぉ、暑いかも』

秋津洲ちゃんからの通信も入りました。

 

『そちらはどう? 良好ですか』

私の隣を並走している潮ちゃんが通信します。

 

少し間をおいて返信が入ります。

『風は微風、視界良好。気温は35度……今のところ索敵圏内に侵入者無し』

 

空を見上げると青空と白い雲を背景に秋津洲ちゃんの操る二式大艇が飛んでいるのが見えました。

『秋津洲もさぁ、陸(おか)から指示すれば良いのに』

 

秋雲さんの呟(つぶや)きに雑音の向こうから秋津洲ちゃんが応えました。

『だって、一緒に出た方が状況が分かりやすいかも』

 

「前線主義……」

思わず反応した私の言葉に部隊のみんなも納得しました。

 

『司令も秘書艦も、よくそう仰いますね』

潮ちゃんの声です。

 

艤装を付けた私たちは5人。哨戒任務のため、お互いの距離を、いつもより大きく取って美保湾を航行しています。

 

今日は私(電)が旗艦を務め、対空警戒防衛担当に潮ちゃん。上空からの海面索敵担当が秋津洲ちゃん。主力防衛攻撃担当に秋雲さん。そして珍しいのですが寛淑ちゃんが水中探査および戦闘通信担当に就いています。

 

『今日って最強チームだね』

秋雲さんが言います。

 

『……』

私や潮ちゃんは控えめな性格なので二人とも苦笑したまま無言でした。

 

『そうかも』

……やや遅れて秋津洲ちゃんが反応しました。私は潮ちゃんと顔を見合わせました。ちょっと恥ずかしいのです。

 

私たちの最後尾で少し離れて航行しているのが一番無口な寛淑ちゃんでした。索敵能力、範囲共に鎮守府随一で司令に最も近い艦娘(司令の懐刀)と言われている彼女が同行すると私たちには、とても安心感があるのです。

 

『いつも、こんな感じなら良いのにね』

ふと見ると秋雲さんはスケッチブックを片手に航行していました。

 

確かに今日は気温は高いのですが湿度は低く天候は快晴。大山もよく見えます。距離を取れるので秋雲さんのように片手間でも、のんびりと航行できます。

 

今はリンクシステムという、お互いに情報を共有しながら哨戒が出来るようになりました。だから、もし今日が悪い天気だったとしても、そんなに密集しなくても大丈夫なのです。

 

<速度……距離……>

私の視界にも時々、他の艦娘が持っている情報が重畳(ちょうじょう)して入ってきます。ちょっとフワフワしたような不思議な感覚です。

 

「旗艦って、やっぱり慣れないのです」

つい独り言が出ます。

 

その時でした。

 

<警告!>

赤い文字の画面表示と同時に私たちの部隊に一斉に警告信号が流れました。

 

『感あり!』

雑音に混じって無線の声が全体に伝わります。

 

<回避せよ!>

直ぐに各艦娘には敵による魚雷攻撃の情報が点滅して共有されます。

 

「各自、回避!」

私が指示するまでもなく各自が画面に表示された方向へ向かって一斉に回避行動を取ります。と同時に敵の魚雷の軌跡が見えた瞬間に大きな水柱が立ちました。辺り一面に水飛沫(しぶき)が舞い、ヒンヤリとした感覚に包まれます。

 

『うひぃい、やべぇ』

これは秋雲さん。

 

「被害は?」  

私は直ぐ確認しました。

 

「ありません!」

並走していた潮ちゃんが叫びます。どうやら近くに敵が居るようです。

 

<被害なし>

<索敵中>

私たちの目の前に景色に被(かぶ)さって艦隊情報と敵の想定される情報が矢継ぎ早に共有されます。

 

<必要兵装>

<残弾状況>

今、反撃するために必要な兵装の一覧と、それを保有している艦娘。そして敵の距離から見た最も最適な陣形と最初に攻撃態勢に入るべき艦娘が次々と一覧で表示されます。

 

(先制攻撃の指示が出たのは秋津洲ちゃんと潮ちゃんです)

そう考えている間に彼女たちの魚雷には自動で諸元情報入力され発射タイミングまで指示されます。

 

<諸元入力完了>

最後に旗艦である私に攻撃指示を出すよう確認が求められました。

 

『右舷後方!』

潮ちゃんが叫びます。私は迷わず『攻撃許可』の指示を出すのです。

 

『了解!』

画面の指示に従い二人は半身を翻(ひるがえ)して魚雷を発射しました。

 

<計算中……諸元入力完了>

やや距離を置いて前方を航行していた私にも諸元入力完了通知。それと併せて自動的に魚雷発射体制になりシステムからは発射指示が出されます。

 

『魚雷、発射します』

私は指示に従って間隔を置いて2発を発射しました。同時に寛淑ちゃんが水中へ向けて探信音を打ちます。

 

<索敵中……>

その反応は自動的に各自のセンサーで感知されて司令本部に電送。一分と経たないうちにサーバで分析した結果が私たちに返信され共有されます。

 

<到達予測時間>

私の放った魚雷が敵に到達します。

 

『当たれぇ!』

『これは当たるかも!』

秋雲さんと秋津洲ちゃんの通信が入ります。直ぐに水面下から響くような振動を感じました。

 

私たちのセンサーが衝撃波を検知して分析結果を表示。

<命中確率80%、敵大破または轟沈の可能性あり>

 

私は少しホッとしました。実は私たちの戦闘情報も逐次、司令部に送信されています。それは常に分析処理されて過去の戦闘記録と照合しながら的確に指示を出してくれます。

 

(究極の経験値……)

便利な世の中になったものです。

 

「やはり潜水艦がいるようですね」

潮ちゃんが言いました。

 

<警告>

直ぐに警告音が響いて敵の反撃情報が赤文字で表示されました。

 

<回避せよ>

私たちは画面に指示された安全海域へ向けて回避行動を続けます。

寛淑ちゃんが再び探信音を放ちます。

 

十数秒後に幾筋かの雷撃の航跡が私たちをかすめました。

 

『当たるかぁ!』

秋雲さんが叫びます。直ぐに私たちの周りには、いくつもの水柱が立ちました。

 

『目視!』

私たちはいっせいに状況を確認します。その水柱の情報が私たちの目視と秋津洲ちゃんの二式大艇による上空からの観測情報により再び司令部のサーバーで分析されて敵の部隊規模が再計算されます。

 

そのときでした。

 

『あちぃ!』

少し離れて航行していた秋雲さんが叫びました。

 

『あっ』

潮ちゃんが叫びます。秋雲さんが十分に避けきれずに被弾し小破したようです。その間にも私の画面には逐一状況が表示されます。

 

「秋雲さん!」

私は呼び掛けました。

 

 

以下魔除け

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PS:「みほちん」とは
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