幕末の義賊 作:アルマジロ
幕末の義賊:プロローグ
今日は満月のはずであったが、どす黒い雲に覆われて、地上は濃い闇に支配されていた。そして、それは俺――桜泥棒にとって好都合であった。
桜泥棒。
いつからか、俺はそう呼ばれるようになっていた。悪人の屋敷から金をとり、それを市井の人にばら撒く典型的な義賊。ひょんなことから義賊をしている俺は、『仕事』を終えたら屋敷に桜の木を置いて去るようにしていた。
我ながらかっこつけてしまったのだ。桜の木を置いている理由は、『正義は我にあり』と『私はすぐに散るであろう』。つまり、俺のやっていることは正義である、けれど、罪を犯している以上すぐに捕まるであろう。なんて気持ちで置いたのだが。
「桜泥棒って、まるで桜盗んでるみたいじゃないか」
当の本人である俺は、その呼び名はイマイチ気に入っていない。けれどまさか、その名前ちょっと嫌だから他の名前で呼んでよ、なんて言えるはずもなく。
俺は桜泥棒としてその名前が定着してしまった。もうどうしようもない。
「はぁ」
俺はほんの少し前に盗みを働いたばかりの屋敷の門の上で、座って休んでいた。普通なら門番だったり、見張りだったりが飛んでくるのであろうが、彼らは眠っている。当然、俺が強制的に眠らせたのだが。
「さて」
あまり深夜まで起きていると、本業の方に支障が出かねない。さっさと今日手に入れた金を町にばら撒いて眠ることにしよう。
門から飛び降りて、しばらく走る。町の中心に行くために角を曲がり――すぐに後ろにのけぞった。
刹那、先ほどまで俺の首があった位置を白銀の光が走る。
「あっぶな」
流石にヒヤリとした。
「待っていましたよ。あなたは『仕事』を終えるとすぐに金子を町に撒きますから、この道を通ることはお見通しです」
俺が曲がろうとしていた角から、まるで闇からにじみ出るように人影が姿を見せる。変わった色合いの髪と、だんだら模様の浅葱色の羽織。見間違えるはずがない。新選組の沖田総司だ。そして、その沖田は俺にとって『なじみ深い存在』であった。
「やあ、俺が前に仕事した以来だから一週間ぶりかなーーって、俺が仕事してるってわかってたのに、ここで待ってたのか? 止めに来なよ」
「盗人がそれを言います? それに関しては、ここであなたを捕まえれば問題ありません」
沖田は刀を俺に突き付けて勝気な笑みを浮かべた。
「さて、命が惜しくば、盗んだ金を置いておとなしく御用についていただきましょうか」
「命が惜しくば、って、悪人の発言みたいだな。それに、十両盗めば死罪……おとなしく捕まったところで結局俺死ぬと思うんだけど」
「なら、今すぐ死ぬか、しばらく後に死ぬか選んでください!」
殺意に満ちた沖田の突き、俺はそれを籠手でいなす。
沖田は、はじかれた刀をすぐに横なぎに振るって、俺の首をとらんとするが、紙一重でよける。
腰に差した小太刀を抜いて、距離をとると、沖田もまた後ろに下がっていた。
「いやー、天下の新選組が俺なんかにかまけてていいのかい? もっと他にしなきゃいけないこともあるだろう?」
「あなたがおとなしく捕まってくれれば、私も他のことに専念できるんですけどね」
お互いに軽口をたたきあいながらも、俺は逃げる隙を、沖田は俺に仕掛ける隙を探っている。
「それほどの実力があるにもかかわらず、どうして盗人なぞに墜ちたか、不思議でなりません」
「そうかい? まあ、確かに好きでやっているわけでもないが、そうする他にないことだってあるんだよ」
俺の言葉に怪訝そうに顔をしかめる沖田だが、すぐに凛とした表情に戻り、
「どのような大義、正義を持っているかはわかりかねますが、それでも私は仕事をするのみです」
「さて、俺は眠いしそろそろ終わりにしたいかな」
「だったら、降参してもいいんですよ? 今なら特別に牢に布団をつけてあげましょう。ぐっすり眠ってくださいな」
「いやー、さっきも言ったけれど、捕まったら死罪だろうから遠慮しとくよ」
俺はそういって、一息に沖田との距離を詰める。普段、俺は防戦に徹し、隙を見て逃げることが多いので、自ら仕掛けるなどめったにない。沖田もわずかに驚いているようだ。俺は小太刀を持っていない左手で、沖田の肩をめがけて殴るが、当然のように躱される。カウンターとして振るわれた刀を小太刀を振り上げて逸らし、蹴りを繰り出す。
「隙を見せましたね!」
沖田はたった今蹴りを繰り出した俺の足を斬りつける。
万が一足が負傷しようものなら、戦うことも逃げることもできなくなり、俺はあっけなく捕まるだろう。だから、当然仕込んでいる。
沖田の刀が俺の足を斬りつけた瞬間、ガンッ、と金属音が響く。
「な、何か仕込んで――」
先週までは仕込んでいなかった。装備を新しく作り、足の保護をするようにしたのは今日の仕事から。おそらく沖田は先週までの俺が足に何も仕込んでいないのを観察できていた。けれど、今日は月が隠れて、辺りは暗い。俺が足に何かを仕込んでいると気付けなかったのだ。
沖田に隙ができた。
俺は、蹴りを繰り出し、斬りつけられたその足で踏み込み、完全に沖田を小太刀の間合いに入れる。
動転していた沖田も、それで我に返るが遅い。すでに振り上げた小太刀を振り下ろす方が早いに決まっている。
闇夜を銀の一閃が裂き、鋭い一撃が沖田に振り下ろされた――――
☆
「ふうううううううぅぅぅうう」
店先で沖田総司は唸っていた。お気に入りの団子屋の団子を食べて、気を紛らわそうとしたのだが、その程度でどうにかなる程度ではなかった。それほどまでに、昨日のことは、沖田総司にとって屈辱的だったのだから。
「おい、店先で変な声を上げるな。怖い顔をするな。おい、俺を睨むなよ……どうした?」
沖田に男が話しかける。思わず男を睨んだ沖田であったが、ため息をついて、手に持っていた串団子を平らげた。
「
「おー、聞いた聞いた」
神妙な顔で語りだす沖田に対し、男は忌々し気に、照り付ける太陽を睨みながら適当な相槌を打つ。男はいつも一見聞いていないような態度なのだから、沖田は気にせずしゃべり続け――
「そいつは、そいつは……そいつは――うわああああぁぁん!!!」
「お、おいおい。泣き止めって、団子一本おまけするから」
ることはできなかった。口に出そうとすると、悔しくて悔しくて。
昨夜。致命的な隙を桜泥棒に見せてしまった沖田。当然、桜泥棒はその隙をついて、小太刀を振り下ろしたのだが、彼は、明確に狙って鉢金を叩いた。
たとえ刃が通らずとも衝撃は伝わり、沖田はしりもちをつき、逃げ去る桜泥棒を見送るのみ。
そして、丸一日たたずとも額にそこまでの痛みがない辺り、力も加減されていたのだろう。
「うう、お団子ください…………」
悔しさで気がどうにかなりそうだが、沖田はとりあえず、団子を頼むことにした。
☆
俺の名前は林太郎。ひょんなことから義賊をするようになった、巷では桜泥棒と呼ばれる男。
そして、俺――桜泥棒にとって、沖田総司は『馴染み深い存在』である。
沖田さんが一人で行動してるなんておかしい?
攻撃されるより先に刀を抜くなんておかしい、新選組のことを勉強しろ?
創作だからいいのです。菊一文字持たせた方もいらっしゃるし……
リメイクするとして。改善してほしい要素、掘り下げてほしい要素。一番多いのを特に重視して書きます。一
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文章を改善してほしい。
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展開を改善してほしい。
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設定を改善してほしい。
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人間関係をしっかり描いてほしい。
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もっと長くしてほしい。
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もっと短くしてほしい。