幕末の義賊   作:アルマジロ

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夜中に投稿しているので一応書いておきます。
前話『里へ(前)』を見ていなければ、そちらを先にどうぞ。


第二話:里へ(中)

「灯り……ですか」

 

 翌朝、藤丸はマシュに昨夜の出来事を話して、そこを調べに行きたいと言う。マシュは少し考えてから、指示に従うと言った。

 

「いったい何があるのか確かめたいからね。あ、あと、迷い込んだ風に行こうと思うのだけど」

「? どうしてでしょう? いえ、それくらい慎重に行動した方がもちろんいいとは思われますが」

 

 マシュになぜかと問われて、藤丸も首をかしげてしまった。なぜだろう。そちらの方が安全だと思ったのだが、どうしてそちらの方が安全だと思ったのかがわからなかった。

 けれど、マシュの言う通り、そのくらい慎重に行動した方がいいだろう。きっと自分も無意識にそう思ったのだろう。藤丸は自らをそう納得させてから、

 

「うん、何があるかわからないからね」

 

 マシュにそう返した。

 

「……どこかへ行くのか?」

 

 いつの間にか近くにいた村長が、投げやりに言う。だが、その声色に寂しさが込められているように思えて、藤丸は噴き出しそうになった。

 

「うん。ありがとうね。二日間もお世話になってごめんね」

 

 もちろん、何かあったらここに戻ってきてもいいが、進展があれば、もう戻ってこないかもしれない。

 

「そうか。まあよい。お主らには村を守ってもらったからな……また、困ったら来るといい」

 

 そっぽを向きながら、最後は早口で言う村長に、今度こそ藤丸は噴き出してしまった。村長が機嫌を損ねたのは言うまでもない。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ここ何処だろう」

 

 村を出てもう数時間の時が経っただろう。藤丸は村でもらった竹製の水筒を取り出して、浴びるように水を飲んだ。

 かなりの距離を歩いた。それも道が舗装されていない山道をだ。藤丸の疲労は大きく、マシュや沖田も藤丸を気遣いながらだんだんゆっくりと進むようになってきた。

 

「……おそらく、先ほどおっしゃっていた山の中腹にはたどり着いていると思うのですが」

「……何もなかったんかな? もしそうだったらごめんね」

「いえ、ここが特異点である以上、何か普通とは違う現象があったのなら、調べる価値は十分でしょうから」

「マスター」

 

 マシュと話していると、沖田が声をかけてきた。真剣な表情でこちらを見たまま、地面を指さす。

 

「これを」

 

 沖田の指さした地面を見てみると、

 

「足跡?」

 

 地面には足跡が残っていた。誰かがここを歩いていた証拠だ。だが、偶然これが残っていただけらしく、他の足跡は見つからない。もしも残っていればそれをたどってほかの痕跡を見つけられたかもしれないが。

 

「お、沖田さん!?」

 

 慌てたマシュの声に、驚き、沖田を見るとふらっと倒れそうになっていた。

 

「お、沖田! 大丈夫?」

 

 駆け寄った藤丸に沖田が倒れこんでくる。抱き着くように藤丸にしがみついた沖田に大丈夫か尋ねようとして。

 

「マスター、小声で少しお話ししたいので、このままで」

 

 沖田が何か目的があってこうしていることが分かったので、抱き留めていた手で沖田をポン、と叩いて。心配そうにこちらを見るマシュにアイコンタクトで『大丈夫』だと伝える。

 

「マスター。付近に三人ほど人が潜んでいます。多少敵意も見えますが、仕掛けてくる様子はありません。監視といったところでしょうか?」

「……なら、このままで。少し沖田を介抱しているふりをして様子を見ようか」

 

 藤丸は、沖田を近くの木に寄りかかるように座らせて、沖田を介抱するふりをする。駆け寄ってきたマシュに事情を話して、沖田に水を飲ませたり、食べ物をとらせていると。

 

「どうかなさいましたか」

 

 背後から何者かの声がした。ボロボロの着物を着た若い男だ。

 

「いえ、実は彼女が突然体調を崩してしまい。もともと体が強くないため、どうしたものかと」

「それはよくない。よろしければ里で面倒を見ましょう」

「里? この近くに里があるのですか?」

 

 マシュが尋ねると、若い男は小難しい顔をして、

 

「いえ、その里のことは誰にもお話ししないでいただきたいのですが……」

 

 要領を得ない返答に、思わず藤丸とマシュは顔を見合わせる。

 

「えっと、沖田を助けてくれるなら、お願いします」

 

 藤丸が言うと、若い男は薄く笑って頷いた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 それほどいい里とも思えない。ボロボロの家屋、ボロボロの着物を着た人。裕福な生活をできているものなど一人としていないだろうと思えた。

 

「すみません。あまりいいところではなく」

「……この里はいったい?」

「実は、年貢を納められなくなり、生活もままならなくなったものが集まって作った里なのです。もしもこの里の存在が明るみになれば、私たちは命がないでしょう。ですので決して誰にも言わないでいただきたいのです」

「なら、どうして私たちを助けたの?」

 

 藤丸が問うと、心なしか誇らしげな表情をして若い男が答える。

 

「私たちは、確かに年貢を納めることなく逃げた悪でしょう。ですが、決して私たちがただ悪かっただけではないと思っています。庶民のことを考えない、豪商、役人、そして幕府。彼らこそが、悪である。そんなことを考えてしまっています。私たちは決して正義の心を損ねることはなく、困っている人には手を差し伸べるつもりです。

 そしてそれは特別なことではなく当然のことです」

 

「それで、自らの命を縮めることになったとしてもですか?」

 

 藤丸に肩を借りて歩いている沖田が、かすれた声で尋ねる。

 異常に仮病がうまい……まさか、慣れているのか。

 

 なんて自らのサーヴァントのことを少し信じられなくなった藤丸に、誰も気づくことはなく。

 

「ええ、たとえ私たちが全員死ぬことになったとしても。私たちは困っている人を救うつもりです」

 

 立派なことを言う若い男に、藤丸はなぜか危険な何かを感じた。それは、困っている人が助かるなら、なんだってやるといっているようにも思えて。

 いや、それだけでなかった。藤丸には、若い男のその言葉が、若い男の言葉ではないと感じた。

 『理念』『理想』『思想』そういった、自らから生まれた何かを人に話す時には感情、意志が混じるはずだ。

 だが、若い男の口調にそれはなかった。

 『知識』として、それを言っているように思えてならなかった。つまりは誰かに、『人を救うためならなんだってやっていい』と教わったということで。

 

(流石に考えすぎかな……?)

 

 自分たちを助けてくれようとしている人に、そんなことを考えるのは流石に失礼だろうと、藤丸は自らの考えを振り払った。

 

 

 

 

 

 

 若い男に案内された家屋は、その他の家屋よりもいっそう古めかしく思える。冗談抜きに、風が吹けば倒壊しそうなほどであった。

 

「源郎さん。道に迷って困っていた人がいたので助けてきました」

 

 躊躇することなく家に入っていく若い男についていき、藤丸たちも家に足を踏み入れる。

 中には、綿が飛び出てしまっている座布団に座ってお茶をすする一人の老人がいた。

 

「それはそれは。こんな山奥まで大変なことで」

 

 優し気な笑みを浮かべて迎え入れてくれる老人は、急いで布団を敷いて「儂の使っているもので申し訳ないが、彼女を寝せてあげなさい」と言ってくれた。沖田をそこに寝せて、老人の出してくれた座布団に座る。

 

「して、なぜこのような山奥まで? その軽装では、旅とも思えませんが」

「えっと……」

「いえ、長い旅のつもりでしたが、野盗に襲われまして。偶然いたお侍様が追い払ってくださったのですが、生憎と持ち物はすべて奪われてしまいまして」

 

 思わず言葉に詰まるマシュだが、藤丸はつらつらと言い訳を口にした。マシュは素直な性格であるため、とっさの言い訳は出にくいようだが、藤丸は経験から得意であった。そう、夏休みの宿題をしていないときの言い訳とかで。

 

「それは許せません。全く、こうやって慎ましく――なんて言っているとまるで自分を上に見ているようですが、いえ、野盗と比較すれば我々はましな部類だと信じたい」

「そして帰ろうにも、沖田は体が弱く。しばらく休めば回復すると思うのでどうか」

「もちろん。儂らにできることなら何でも言ってほしい。ああ、名乗りが遅れてしまったな。儂は源郎という。その娘が回復するまで、いや、気が済むまでここにいてくれて構わない」

 

 

 

 ☆

 

 

 沖田には体調悪いふりをしてもらわねばならないため、しばらく源郎の部屋で休んでもらうことになった。藤丸は、何もないところだが、里でも見て回ってくれと言われて、適当に歩くことにした。

 

 しかし、源郎の言っていたとおり、本当に何もない。

 

 

「……うーん。子供は多いけどなんか……」

 

 大人たちは好意的なのだが、子供たちはこちらを睨みつけたり、遠目に見ているだけで、近づいてきたりしない。人見知りする子が多いのだろうが。

 しばらく歩いて、里の端まで来ると、切り株に座っているひとりの青年を見かけた。

 

 ほかの里の人間がボロボロの着物を着ているのに対し、彼は真っ黒の新品同然の着物を纏っていた。

 彼が他と違うのはそれだけでなく、腰には小太刀を差して、枯れた桜の木の枝を弄んでいる。

 

「……こ、こんにちは」

 

 藤丸が挨拶をすると、黒い着物の男はにこりと笑った。

 

「やあ、こんにちは。こんな辺鄙な里に来るなんて余程運がないか、よほど変わり者か」

「え、えっと」

「この付近に人は……いないか。それなら普通に忠告をしておこうか」

「忠告?」

「この里には長居しない方がいい。うっかり変な秘密を見てしまうと命はないぞ?」

「ええっと? 秘密って?」

「まあ、いろいろ。俺もいるし、ここはあまりろくなことにならないよ」

「? えっと、別にこの村の人たちも、あなたもそんな悪い人には」

「見えないか? そりゃあそういう風に訓練されてるからな。それと、俺が悪いかどうかよりも。もうすぐここは再会と復讐の舞台になる予定だ。巻き込まれないように逃げるんだな」

 

 黒い着物の青年は、手にした枯れ枝を折る。

 

「まあ、喋ったのも縁だ。何かあれば多少なりとも助けてやるよ。どうせ今は源郎の家で世話になってんだろ? そこまで言って守ってやらんでもない」

「うーん、でもそこまでしてもらうわけには。それにこの里の人も悪い人には思えないし」

「そうか? 正義を遂行するからくり人形がいい人に見えるのか? いや、機械的に正義を遂行するなら当然いい人か。ただ、彼らの言う悪い人に分類されないように気をつけな。何でもして来るぞ」

「え、えっと。ありがとう?」

「ああ、何かあったら大声で助けでも呼ぶんだね。俺は生憎と彼女が来るまで暇だからさ」

「彼女?」

「ああ、約束したから、桜を一緒に見ようと思ってね」

 

 

 黒い着物の青年は、懐からもう一本枯れ枝をとって、藤丸に投げ渡す。

 

 突然のことに慌てるがどうにか受け取って、まじまじとそれを見る。変わったところのない、ただの枯れ枝だ。

 これがどうしたのかと青年の方をもう一度見やる。

「あれ?」

 

 藤丸が視線を向けたとき。切り株の上にいたはずの青年はすでに姿を消していた。




 今更ですが、今主人公たちのいる特異点は、GOのイベントとかでよくある。『これって時間軸いつだ? 平行世界? んー?』みたいになる特異点と思ってください。

 

 

リメイクするとして。改善してほしい要素、掘り下げてほしい要素。一番多いのを特に重視して書きます。一

  • 文章を改善してほしい。
  • 展開を改善してほしい。
  • 設定を改善してほしい。
  • 人間関係をしっかり描いてほしい。
  • もっと長くしてほしい。
  • もっと短くしてほしい。
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