幕末の義賊   作:アルマジロ

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幕末編の最終回を直前に上げてますので見ていなければそちらを先に。


GO編
プロローグ:さくら


「人を殺してはいけない理由なんてね、本当はないの。ただいけないというだけよ」

「意味が分からない。それなら俺が里で習ったことの何がいけなかった?」

「あれは、自由意思を殺す里よ。命を奪う以上のことだわ。人を機械にするなんて」

 

 優し気に微笑む女性は、どことなくカルデアで見覚えがある誰かに似ているように思えた。容姿は全く異なっているのだが、雰囲気が、見覚えのあるものだ。

 

「けれど、殺すことで誰かを守れるならば、それもいいんだと教わった」

「そうね。私もいいと思うわ。ただし、それをやるのは個人じゃないわ。集団よ。人を殺すなんて個人で背負える責任ではないの。だから、あなたは人を殺してはダメ。私が守ってあげるから」

 

 女性は少年の頭をなでる。うっとうしそうにしながらもどこか嬉しそうな少年は――――

 

 

 場面が変わった。

 

 燃える屋敷の中で、一人の女性が胸を小太刀で刺し貫いていた。肺が片方つぶれ、けれど生きようと必死にもがいていた。

 

 そこに駆けつけてきたのは、先ほどの少年だった。成長したようで、もはや青年という年齢になっている。女性は青年を見てうれしそうに笑って、何かを言った。

 青年は目を見開いて、女性の髪をつかみ無理やり立たせ、胸の小太刀を抜いた。

 その小太刀を逆手に持ち替え、いともたやすく女性の首を刎ねる。

 

 

 ☆

 

 

「おかしな夢を見た気がする」

 

 藤丸は慣れない布団から這いずり出て、ぐっと伸びをした。

 特異点反応を見つけ、レイシフトしてから一晩。

 今のところ特に進展はない。今日は調査を頑張らねばならないだろう。

 

「先輩? お目覚めですか? おはようございます」

 

 襖の向こうからひょっこりと顔を見せてきた少女に、藤丸は手を挙げて答える。

 

「うん、今起きたとこ。おはよう」

 

 今いる場所は、小さな村の村長宅。そこそこ広い屋敷で一晩か、二晩くらいならと、泊まらせてくれた。村に来たときは、よそ者なんて、といった様子であったのだが、村を襲った獣を追い払ったのが大きかったのだろう。

 

「沖田さんもすでに起きて、外で剣を振るっています」

「沖田の様子は?」

「……問題ないとのことですが、やっぱりどうにも様子が」

「うーん」

 

 沖田の様子は、幕末の時代に特異点が見つかったという話が出たときからおかしい。妙に落ち着きがないし、この村に来た時も村民に誰かの存在を知っているかを聞いて。その後しばらくの間、何かを決意するかのように力強い表情で、目を瞑っていた。

 

「沖田さんと桜泥棒に因縁があるという話は聞きませんが……」

「桜泥棒?」

「はい、幕末に存在したという『義賊』です。悪人の家からだけお金を奪い、それに一切手を付けることなく庶民に撒いていたらしいんですが。

 最期は、新撰組の副長土方歳三に殺されてしまったと。ですが、彼は幕末の亡霊ともいわれているんです」

「亡霊?」

「彼の死体が出た後に、後の研究で桜泥棒の犯人として有力視されている人物が死んでいること。その後も桜泥棒による事件が発生していることなどから、死後も活動し続ける亡霊と。もちろん、模倣犯や情報の間違い、いろいろな要因があってのことだといわれていますが」

「沖田はその人のことを聞いていたのか」

 

 単純に、気になっただけだろうか。同じ時代にいた人物として、後の時代に同じく名前の残っている存在として。もしくは、盗人として断罪しようとしているとか。

 

 いや、それならあそこまで様子がおかしくはならないだろう。

 それに、どことなく期待や、喜びの様な感情が奥に潜んでいるような気もして。

 

 藤丸はそこまで考えて、頭を振って立ち上がる。考えていても埒が明かないだろう。

 

「ちょっと沖田の様子を見に行ってくる」

「あ、先輩。私も行きます」

 

 外へ出ると、温かな風が吹いていた。遠くの山を見ると、桜色に染まっている。ちょうど春の気候だ。桜は短い間であれど、美しく咲き誇り、やがて散りゆく。はかなさの象徴のような花だ。

 思えば、沖田も桜というような印象だった。そのことを沖田に話したことがある。沖田は、

 

『桜、ですか? 私に桜は合いませんよ。それはもう二度と会えないあの人、私がどうとでも助けられたあの人にこそ合う言葉でしょうから』

 

 などと言っていたが。ひょっとしたらあの人こそが桜泥棒だったりするのだろうか。いや、因縁なんてなかったはずだとマシュは言っていたか。

 

 村長宅の裏で、沖田は刀を振るっていた。沖田の様子は、やはりおかしい。鍛錬を積むというよりかは、まるで誰かと戦っているように舞っていた。

 

 鋭い太刀筋は、離れてみていても恐怖を覚えるほどだが、精錬されたその動きは美しさを秘めている。

 冷たい氷の様な――薄氷の様な鋭さ。触れれば砕けてしまうような、溶けてしまうような、儚い美しさと共に、それはある。

 

 それでいて、素人の自分がわかるはずがないのだが。なんとなく、手を抜いているようにも思えてしまった。

 

 美しさと、儚さと。そしてその手抜きは、優しさにも思えた。

 

 

 体制を低くして、仮想の敵の攻撃をかわしたらしい沖田は、刃を反して振るい、そっと息を吐く。一通り終わったようだ。

 

「あの時、関係が崩れようとも、問いただしていればよかったんでしょうか? でも、私には……」

 

 うつむいて、悲しげな表情をしていた沖田だが、そこでようやく藤丸とマシュの存在に気が付いた。

 一転して笑顔を浮かべて。

 

「どうされました? 私に御用ですか?」

「いや、沖田が大丈夫かと心配で」

「大丈夫ですよ? ほら、この通り元気――こふっ」

「わー! 沖田さん? 沖田さん!?」

 

 血を吐いた沖田にマシュが駆け寄って介抱する。藤丸も沖田のもとに駆け寄ろうとして――一片の桜が風に乗って飛んできた。

 

「……さくら?」

 

 手を伸ばそうとするが、それをしてはいけない気がした。

 藤丸の様子を眺めるように、ひらひらと少しの間ゆっくりと落ちて、また吹いた風に飛ばされてどこかへ行った。

 

 どうにも、見覚えがあるように感じて。

 

 それは、つい先ほど夢で見た、彼に似ていた。

 

「……彼?」

 

 誰の事だろう。

 藤丸は少し考えるも、

 

「わが生涯に、一片の悔いなし……!」

「沖田さん!!? 沖田さん!!!!」

 

 いつも通り(面白コント)の二人のもとに、今は駆けつけることにした。




 前話で書いている通り、次回は遅くなりますが、必ず投稿します、約束。

 これ書き終えたら、いっそのことほかのセイバー顔全員分義賊シリーズ的なものかいたら楽しそう。これ義賊やってんのかやってないのかわからないくらい描写カットしてるし……
『フランスの義賊』『ブリテンの義賊』『ローマの義賊』みたいな感じで。

リメイクするとして。改善してほしい要素、掘り下げてほしい要素。一番多いのを特に重視して書きます。一

  • 文章を改善してほしい。
  • 展開を改善してほしい。
  • 設定を改善してほしい。
  • 人間関係をしっかり描いてほしい。
  • もっと長くしてほしい。
  • もっと短くしてほしい。

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