「頼む。この通り!」
「ええー……」
俺は懇意にしているロリサキュバスに対して、頭を下げまくっていた。
やたらと低姿勢な俺の態度に、ロリサキュバスは困った表情を浮かべる。
この異世界に住むサキュバスは、任意の【夢】を見せるスキルを持っている。
そのスキルは簡単に言えば、男性の脳内イメージを拾い上げることで理想の女性を夢枕に登場させるというものなのだが。
【夢】で自由に設定できるのは、何も相手役の女性に留まらない。
女性を抱くまでの物語を演出するために必要な男性やモンスターだったり、実際のプレイ中に用いるベッドやおもちゃといった無機物、更には舞台となる宿屋、街、城といった人工建築物や、龍が潜む洞窟といった自然構造物など……。そういったものも自由に設定できるのだ。
それは地球で流行っていたVRMMO小説のように、脳内に仮想世界を実現していると言っても過言ではない。
そう、サキュバスの【夢】は、理想の『女性』だけでなく、理想の『世界』を作り出し楽しむことができるのだ。
そして俺は、ロリサキュバスにいつもと違うことを提案していた。
それは――。
「はぁ、ゲームやアニメの世界ですか。カズマさんの脳内に再現して、みんなで遊びたいと」
「そうなんだよ」
俺は、かつて熱中していた『メダロット』が実在する世界で遊ぶことはできないかと、ロリサキュバスに頼み込んでいた。
なぜこんなことを言い出したかと言うと、紅魔の里で発見したゲームガール、その中になんとメダロットのソフトが内蔵されているのを見つけたからだった。
おそらく過去に紅魔族を作り上げたという日本からの転生者が、おぼろげな記憶から頑張って再現しようとしたものなのだろう。細かいステータスやディティール表現など俺の記憶と違うところも多少あったが、それは紛れもなくメダロットのゲームであり、俺に「また遊びたい」と思わせるには十分なものだった。
そしてサキュバスの【夢】ならば、かつて俺が妄想した、メダロットが実在する世界で遊ぶこともできるはず――。そう思ってロリサキュバスに声をかけたのだ。
「そりゃできないわけではないですけど……。女性を抱く【夢】でないと私は精気を得ることができないんですよ? 私にまた飢えろと?」
「埋め合わせはするから! 頼む!」
手を合わせて拝みだした俺に、ロリサキュバスはしょうがないなぁといったカンジで溜息をひとつ漏らし。
「……わかりました。こちとらカズマさんの【夢】の中に再現された地球でエロゲーなど勉強させてもらってる身ですしね。毎回と言われると困りますが、たまにはそういうのもいいでしょう。……それで、今回【夢】に参加されるのは、アクア様を含めたそちらの皆様全員ということでよろしかったでしょうか?」
「はい、そうです」
「その……頼んだ」
「よろしくお願いするわね」
ロリサキュバスの視線の先で、めぐみん、ダクネス、アクアがそれぞれ返事をした。
紅魔の里で見つけたゲームガールはパーティーの共有物として皆好き勝手にプレイしていて、全員がメダロットにハマっていた。そして俺が「サキュバスのスキルを使えばメダロットで実際に遊べるんじゃないか」と呟いたのを聞いて、やれ自分も自分もと乗っかってきたのだ。
「よし、それじゃ確認するぞ。みんな自分のパートナーとなるメダロットを想像しておけ。【夢】の中でもそいつがパートナーになるんだからな」
俺の言葉に、全員が頷いた。
「それでは皆様、いきます。私の魔力を受け入れてくださいね……」
「おいアクア。悪魔の魔力だからって抵抗するんじゃないぞ」
「言われなくてもわかってるわよ。今ならサキュバスが悪意を持てばたちまち死ぬくらいには抵抗を落としてるわ」
……そこまで極端なのもどうかと思うが。
しかし俺の知らないところでアクアと友好の契りを結んでいたと言うロリサキュバスは、女神の無防備宣言にも特に表情を変えることもなく淡々と作業を進め。
「それでは皆様、いい【夢】を――」
俺たちを、【夢】の世界へと誘ったのだった。
■続く■
「俺さ、サキュバスと出会ってから毎日が楽しくて仕方なかった。ダクネスやめぐみんや、全然知らないヤツとも――」