「私が選んだ機体はこいつだ!」
「ヨロシクオ願イシマス」
「ほう、ナイトアーマーか」
「ああ。全身重装甲で、味方に対する攻撃を代わりに受け止める騎士型のメダロット……私にピッタリだろう。そして色も……、色も……うう……」
ダクネスが項垂れる。
ナイトアーマーの全身は紫色。イメージカラーが黄色であるダクネスとは、似ても似つかない。
「無理すんなよ。機体のカラーと自分のイメージカラーを合わせたのは前の二人が勝手にやったことで、元々そんなルールはなかったし」
俺のフォローに、めぐみんが続く。
「そうですよ。……というか、機体カラーが黄色で防御系のメダロットと言ったら他にもいたのではありませんか? バグスティンクとか」
「嫌だ。バグスティンクはビームとか撃つから。私の趣味ではない」
「そ、そうですか」
「まぁ攻撃も防御もできるメダロットより、全身これ防御のナイトアーマーの方が、最強の盾ダクネスのパートナーってカンジよね!」
「……そうだろうか? そう思ってもらえるなら嬉しいんだが」
「そうよ! 不器用で防御しかできないってところも、まさにダクネスってカンジで……って痛い痛い! なんで怒るの? 褒めてあげたのに!」
マスターをバカにされたと思ったのか、ナイトアーマーがその大きな盾の側面でアクアを小突いて、慌ててブレザーメイツが止めに入った。
「いたた……ありがとねブレザーメイツちゃん……。あれ? どうして私の頭にリペアをかけるの? メダロットの回復技は装甲内のナノマシンに信号を送って活性化させるものだから、私にかけても意味はないわよ?」
「ア、アクアさまも、ヒールかけてくれたカラ……」
「ブレザーメイツちゃん……なんていい子なの!」
小芝居を始めたアクア組を無視して。
「しかしダクネス、いいのか? アクアが言う通り、ナイトアーマーは攻撃能力を持たない防御専門のメダロットだろ。ブレザーメイツみたいに一方的に攻撃されるのがオチだぞ」
「構わん。私と一緒で、こいつも我慢強い性格にしてある。遠慮せず攻めてこい!」
「ソウデス。バンバンキナサイ!」
「メダロットにもお前の趣味を押し付けるなよ……まぁいいか」
ダクネスが使おうとしている戦術はある程度予想できる。
攻撃パーツがないメダロットでも、攻撃手段はあるということだ。見た目だけで戦術の8割がわかるのがメダロットだが、逆に言えば残りの2割は見た目だけではわからない。
「それじゃ順番的に私がレフェリーね。 いくわよ? それでは――」
「「ロボトルファイト!」」
――10分後。
「うう、勝てなかった……」
「カテマセンデシタ……」
ダクネスとぼろぼろになったナイトアーマーが、揃って肩を落とす。
「俺の勝ちだな。……まぁ、こちらの攻撃を自前の装甲で耐えつつエネルギーを貯め、メダフォース『体当たり』で逆転を狙うってのは悪くない案だったよ」
そう、ダクネスが選んだ戦術は、メダフォースを使うことだった。
メダフォースはダメージを受けたり行動によって貯まるエネルギーを一気に消費することでメダル固有の必殺技を放つものだが、中でも『体当たり』は全てのメダルが習得していて攻撃パーツを持っていなくても発動できるという特徴がある。ポケモンの『わるあがき』のようのものだが、くさってもメダフォース、その威力は侮りがたい。当たりどころが悪ければ一気に機能停止に追い込まれるくらいの威力はある。
「しかしお前のメダロットはそのメダフォースすらも躱して見せたではないか……いや、さすがに長いロボトルの間に何回か掠めたこともあったようだが、パーツの一つも壊せなかったようだし」
「防御体勢モ、何度モ中断サセラレマシタ」
「防御を中断させる攻撃か。……めぐみんも行動をキャンセルさせられたと言っていたな。未だ姿を確認できていないが、お前のメダロットはいったい――」
「カズマ、こうなったらチーム戦よ!」
ダクネスが問いかけようとしたところで、アクアが声を張り上げた。
「チーム戦だと?」
「ええ。メダロットの戦いは本来3対3が基本……。これまでの戦いは序章よ。ええ、確かに私のメダロットは支援しかできないし、ダクネスのメダロットは防御しかできないわ。でも、チームを組めばお互いがお互いの欠点を補うことができるもの」
「確かにそのとおりだが……。まぁいいだろう、かかってこい!」
「言ったわね? さぁ二人とも、いつまでもメソメソしていないで、カズマを倒すわよ!」
「わ、わかった」
「わかりました。行きますよ、我が使い魔よ!」
「「「それでは」」」
ロボトルファイト――!
――終了!!
「なんでよー!」
「3対1ですよ? これでも勝てないとは……」
「うう、また私のナイトアーマーがボコボコに……」
「当たり前だ。こっちはそちらが使ってくるだろうメダロットを想像して、それにメタ張ったメダロットを組んでるからな。まぁ、そろそろ明らかにしてもいいだろう。俺のメダロットはな――」
「ちょ、ちょっと待って! 当ててみせるから!」
「そうか? じゃ3分間待ってやる」
アクアは俺の言葉に頷くと、ダクネスやめぐみん、メダロット達と輪を作って相談し始めた。
「カズマのメダロット、なんだと思う?」
「とりあえずステルス持ちですよね。姿を隠し、メダフォースのターゲットからも逃れていますから」
「それでいて私達のメダロットの行動に割り込んで中断させるような技を持っている」
「とはいえ毎回都合よくキャンセルできるというわけでもないようです。パーツ使用のために必要な充填と放熱の隙間にどうしてもこちらの行動をキャンセルできないタイミングが生まれるためだと思われますが……しかしその隙に放った私のアークビートルの両腕攻撃も、ダクネスのナイトアーマーの体当たりも、大したダメージはないようでした。装甲も厚いと思われます」
「うーん……こんないろんな能力を持ったメダロットなんていたかしら……。いくつか似たようなのなら思い浮かぶのだけれど」
「私の記憶にもありません。果たしてどんなメダロットなのか……」
アクア達は頭を悩ませていたが、結論は出なかったようで。
「……3分経った。いいぞ、教えてやる」
「うう、なんか向こうから明かされると負けた気分に……」
「俺のメダロットは、こいつだ――!」
■続く■
今回シルエットヒントはないです。
□今回の獲得パーツ:グレートシールド
NIT型メダロット、ナイトアーマーの左腕パーツ。
味方メダロットを対象とした攻撃に割り込み、ダメージを肩代わりする『守る』行動を行うパーツ。だが味方援護の目的でなく自身の装甲値を上げるためのパーツと割り切って組み込むことも可能。
『守る』行動にはいくつかバリエーションがあり、一定量以下のダメージを掻き消したり、特定の行動に反応してダメージを反射するものなど様々なものがあるが、このパーツはそういった特殊効果を持たず、ただただ味方が受けるはずだったダメージを代わりに受けることしかできない。しかし特殊効果を持つ『守る』パーツに比べてパーツ使用のための準備時間が短く、素早く防御体勢を整えることができる特長がある。
【メダロットの小ネタ その3】
古代の地球に降りたまま眠りについたメダロット。
長い年月を経てボディは風化したものの、魂たるメダルは比較的そのまま残った。
古代人類は遺跡から出てきたメダルが知恵の塊だとなぜか理解していたらしく、自分達が神と崇めていたクジラなどにメダルをぶっ刺しまくって、天災とかを間違って起こさないような「かしこい神」にしようとした。
とんでもない話だし、実際ほとんどのクジラは死んでしまったが、しかしそれで本当に知性を持ちメダロットとの交信能力を得たクジラも存在する。