ダンが緊急逮捕された翌日の放課後、メリッサ、ケイトリン、カートの3人はアカデミーの制服のまま、メリッサの研究室に集まっていた。
カートの釈放を祝うためである。
カートに元気を出してほしいとメリッサとケイトリンが企画したのだ。
いつもの色んな工具や機械、設計図などの紙束が無造作に置かれていたメリッサの部屋の中央にある作業台も、今は綺麗に片づけられ、テーブルクロスが引かれており、その上にはジュースやお菓子が沢山並べられている。
3人はそれぞれ、四角い作業台の1辺に椅子を置き、そこに座り、手にはジュースの入った紙コップをもち、会の始まりを待っていた。
「それじゃあ、カートの釈放を祝して、乾杯!!」ケイトリンがそう音頭を取り、カートを元気づける会が始まる。
カートはそれに対して「メリッサ、ケイトリン、ありがとう」と笑顔で感謝を述べるが、どこかその笑顔は陰りがあるように見えた。だがそれも仕方がないだろう、恋人だったブレインの父親が犯人として捕まっているのだから諸手を上げて喜ぶと言う気にはカートもなれないのだろう。
その後は、警察への愚痴やサポート科の学生らしく警察の最新設備の話で盛り上がった。
だがそれも大いにと修飾語がつくほどではない。その原因はカートだけでなく、メリッサにもあった。
昨日からメリッサの頭の中では何かが引っ掛かり、気持ち悪いままだったのだが、その事が顔に出ていたのだ。
ケイトリンはそれを昨日のダンの言っていたことを気にしていると勘違いしメリッサに「昨日ブレインのお父さんが言ってたことは忘れなよ。」と言う。
しかしメリッサが気にしているのは別の事なので曖昧に「うん。」と返事するだけだったがカートがその話に食いつく。
「ダンさんが言ってたことって?」と訊くカートに昨日の事をメリッサとケイトリンは話した。
話を訊き終えるとカートは「ダンさんがそんなことを……」と言い、何かに思いをはせているのか目を閉じる。
それに合わせるかのように、しばし2人も沈黙するが、やがて耐えきれなくなったのかケイトリンが喋りだす。
「そう言えば、私知らなかったわ、ブレインのお家はお母さんも亡くなられていたのね。」
「お母さんが死んでること自体はブレインから聞いたことがあるよ。」とカートは少し懐かしそうにメリッサとケイトリンに語って聴かせた。
「ブレインのお母さんはヒーローだったらしよ。動物に自分の精神を移す、憑依の個性で、主に災害現場なんかで活躍していたって言っていたよ。」
カートのその話にメリッサは、また何か引っかかりを覚えたが、カートの話はまだ続くようで、一旦その事は頭の端に追いやった。
「有名ではなかったけど、周りの人達からとても愛されていて、ブレインにとっても自慢の母親だったみたいで、お母さんの事を語っている時とても嬉しそうだったこと覚えてるよ。 だからそんなお母さん死んだ話、詳しくは……とてもじゃないけど訊けなかったよ。」
話を変えるつもりがさらに空気が重くなった。
まるで本当に重さが増した様な空気を払いのけるため、ケイトリンは立ち上がり、「暗くなるのは、もうおしまい!! もっと盛り上がろ! 何ならこの後、はクラブにでも行ってオールナイトで騒ぎまくる?」と冗談めかして言う。
そんなケイトリンに乗っかって場をいつもの感じに戻そうとメリッサは「もう、バカなこと言わないの、私たちみたいな学生が夜出歩いていたら警備ロボットに補導されちゃうわ」とそこまで言う。
メリッサの頭の中に閃きが生まれて駆け回り、引っ掛かっていた事がすべて解け、今まで靄がかかった様に見えなかった謎の本質が見えた。
そしてその瞬間、事件がまだ終わっていない可能性があることに気づいた。
作業台にバンっと手をつき、勢いよくメリッサは立ち上がる。いきなりのその行動に、ケイトリンもカートも驚き、メリッサを見つめる。
「事件はまだ終わっていないわ、ジョン・パックマンが危ないかもしれない。手分けして探してくれる?」
メリッサだってジョンは嫌いだ、カートならば尚更だろう、だがそれでも、殺されていい事にはならないと、その思いからメリッサは、ケイトリンとカートに手伝ってくれないかと、訊く。
訊かれて二人は逡巡なく「まかせて。」と答えた。それは揺ぎ無いメリッサへの信頼があればこそだ。
「2人とも、ありがとう、ジョンを見つけ次第、警察に保護してもいに行く様に言って。」
メリッサがそう言うと3人は、頷き合い、ジョンを探しに出た。
そのころ警察でも今回の事件について疑問を抱いている者がいた、ナカムラだ。
サイクスが初めて上げてきた犯人だ、彼女の手柄を素直に褒めてやりたい、そう思うナカムラだったが、何か引っかかっている。
オフィスで何か見落としが無いかダンの調査報告書を見ていた時、ナカムラはある事に気づいた。その瞬間、いやな想像が頭の中に浮かんだ、考えれば考えるほど、その想像は消えず、強固になっていく。
ナカムラはそれが正しいかアカデミーにもう一度、行くことを決めた。
「サイクス‼ アカデミーに行くぞ。」
急に声をかけられたサイクスは、何事かと驚く。
「どうしたんですか、急に?」
「とにかく来い、急ぎだ、車の中で説明してやる。」とナカムラは先にオフィスを出る。
上司のナカムラに、そう言われては、サイクスにはついて行くしか選択肢はない。急ぎホルスターと上着を取り、ナカムラの後を追った。
メリッサは今ケイトリンとカートと手分けしてジョンを探している。広い校舎内やみくもに探しても見つからないので、ジョンを見た人がいないか、訊いて回ろうとしたのだが、そもそも、放課後であることやシーリンの事件の所為で、人が少なく、居ても、「ジョン?誰それ。」という感じにジョンの事を知らない人ばかりだったので。ジョン探しは難航した。
それでも根気よく聞き続けると、屋上で見たと言う人がいたのでメリッサは急いで屋上に向かった。
屋上に着き、ジョンを探し、辺りを見回していると、男の悲鳴がメリッサの耳に届いた。
悲鳴のした方向をメリッサが見るとそこにはレッドトルネードと、尻餅をつきながらも、後ずさりし、その場を逃げ出そうとしているジョンがいる。
メリッサはとっさにレッドトルネードとジョンの間に割って入り「止めて!!」と言う。
するとレッドトルネードは、いかにもな、合成音で「ドケ、ドカナケレバ、オマエモ、シヌコトニナルゾ。」と脅しをかける。
だがメリッサは臆さずレッドトルネードに、いやブレインに話しかける。
「ブレイン、もうやめて、こんなことしてもカートやダンさんが悲しむだけよ。」
「驚いたよ、まさか気づかれるとは思っていなかった。」レッドトルネードから出た音声は、合成音ではあるのだろうが、先ほどとは違いブレインの肉声と変わらぬ音だった。
「最初に変だなって思ったのは、私たち学生が夜に外に出てたら警備ロボットに補導されてしまうって思い出した時、当然、ショーンが殺された夜、警備ロボットを見ていたら身構えるか、逃げるかしたはず、なら無防備に殺されるなんて、ありえない。
だったら何がショーンを殺したのか、カートから聞いたあなたのお母さんの話を思い出して、もしかしてって思ったのよ。
個性の受け継がれ方は様々だけど、両親の個性が混ざった個性を持って生まれてくる人もいる。だからあなたもお父さんの機械を操作する個性とお母さんの憑依の個性が混じった個性を持って生まれてきていたんじゃないかってね。
それで、あの日、実験場の近くにあってショーンを殺せそうな機械を考えたらレッドトルネードが思い浮かんだわ。」
「凄いね。流石、シールド博士の愛娘だけの事はある。僕自身は死ぬまで気づかなかったよ。」
「機会を待たずにレッドトルネードから警備ロボットに乗り移ってシーリンを昨日殺したのはカートが警察に捕まってしまったから?」
「そうだよ、さすがにアカデミーで、レッドトルネードは目立つからね。けどその所為で父さんが捕まってしまったのは誤算だったよ。そいつを殺した後はすべて公にして終わらせるよ。」
メリッサが騒ぎを聞きつけて他の人が来るまで時間を稼ごうと話をしている時、ジョンは1人で逃げようとした。だがブレインに気づかれあっという間に前方に回り込まれる。最新の戦闘ロボットだけあり、凄いスピードだ。
ブレインはジョンを攻撃しようとしているのか己の手をジョンに向けかざす。
「ブレイン!!」メリッサは彼を停めようと彼の名を叫ぶ。
「止めないで‼ 僕の意識は、もうほとんど怒りに支配されて消えかかっているんだ、邪魔するなら、ほんとに君でも殺してしまうかもしれないよ。」
言い終えたブレインはジョンに向けていた手を高速回転させ始める。Dr.モローの研究発表会でショーンを吹き飛ばした時の様に、ジョンも吹き飛ばすつもりなのだろう。だがあの時とは違い、今はアカデミーの屋上だ、吹き飛ばされ屋上から転落すれば死は免れない。
ジョンが吹き飛ばされそうになる。
メリッサは己の身も顧みずジョンを助けに向かう。
何とかジョンを突風の影響圏より突き飛ばし、脱出させる。だがジョンより20キロ以上は軽いメリッサ自身は簡単に飛ばされてしまった。
「きゃっ」
メリッサの悲鳴がこだまする。その短い間に彼女の体は屋上の柵を容易く越えた。
一瞬の浮遊感の後、メリッサの体は重力に引かれ地面に向かい加速する。己の身が風を切る音に身をすくませ、目も開けられない。それほどの恐怖がメリッサを包んでいた。
落ちながらメリッサは助けを呼ぶ、ここに居るはずもないヒーローの名を。
「たすけて!! マイ」
そこまで言いかけてメリッサの叫びは止まる。重力に引かれる感じが一気に無くなったのだ、その変わりに、力強い腕に抱きかかえられてる様な、まるでメリッサが幼い頃、抱き上げてくれたオールマイトの腕に抱かれた時の様な安心感があった。
メリッサが恐る恐る目を開けると、そこにはオールマイトではなく、メリッサが作ったコスチュームを纏ったバリーの姿があった。
「えっ、バリー!! どうしてここに?」
メリッサが混乱するのは無理が無い、彼女が助かったのは本当に奇跡の様な偶然である。彼女が落ちている所を、偶然見つけたバリーが、アカデミーの校舎の壁を駆け上がりながらメリッサを抱きとめ一気に屋上まで登ったのだ。
「どうしてって、今、呼んだでしょ、たすけて、マイ ダーリンって。」そう言ってバリーはメリッサを下ろす。
全然違う、メリッサは、本当は、たすけて、マイトおじさま、と叫ぼうとしていたのだ。だがそれを正直に助けてくれたバリーに言うべきかメリッサは悩む。
そんな困った様子のメリッサを見てバリーは、「ウソだよ、ほんとはメリッサがメールの返信をくれないから様子を見に来たんだよ。」とさわやかに笑ってそう言った。
「そうだ、あと、これを君に」とバリーはメリッサの前に片膝をつき、日本から持ってきた桜の枝をメリッサにプレゼントした。
「君の様に可憐で美しい日本の花、桜だよ。」
照れているのか、それとも単に恥ずかしいのかメリッサの顔も少し赤い。
その姿はまるで姫に花を捧げる騎士の様だった。
だがそんな雰囲気も、無粋な悲鳴で台無しになる。
しかしそれでメリッサは、今が逼迫した状況だったことを思い出せた。
ブレインとジョンを見ると、今度は突風で吹き飛ばすのではなく、もっと直接的に命を奪うつもりなのだろう、ジョンの胸倉を掴み、持ち上げ、もう一方の手を振りかぶっている、恐らく力任せにジョンの体を貫こうとしているのだろう。
メリッサは慌ててバリーにブレインを停める様に言う。
「バリー‼ あの赤いロボットを停めて!!」
バリーはさっぱり事情が呑み込めていなかったが、メリッサの言う事なら間違ったことではないだろうと、一瞬でレッドトルネードに近づき、ジョンを奪い取り、屋上の柵を越えないぐらいの力で後方に軽く投げ飛ばし、レッドトルネードに対面する。
「悪いが、動けなくなるぐらいには、壊させてもらうぞ。」と拳を振り上げる。
「邪魔をしないでくれ!! バリー!!」
レッドトルネードに憑依したブレインは叫び、バリーに掴みかかる。
バリーは見覚えのまったくないロボットに自分の名を呼ばれ、一瞬戸惑う。
その一瞬が隙となりバリーは掴まれ、投げ飛ばされた。
かなりの速さで屋上の柵にぶつかり、その柵が大きく歪む。
メリッサが心配し、バリーのもとに駆け寄り、声をかける。
「大丈夫? バリー。」
「全然平気、だけどあれ何?」とジョンを追いかけるレッドトルネードを視界に収めながら、メリッサに問う。
「あれは、ブレインが憑依しているの、彼の個性が機械に憑依する物だったらしくて、それがブレインが死んだとき発動したみたいなの。」
「なるほど、だから俺の事、知ってたのか。」
バリーは眉を顰め立ち上がる。バリーにとっても、ブレインの事は、胸に残る古傷の様なものなのだ
「復讐なんてしても、何の解決にもならない、なんてのは、御為倒しなのかもしれないが、それでも、俺の目の前で人殺しはさせられないな。」
バリーはそう呟き、今まさにジョンを殺そうとしているブレインの前に、瞬く間に移動し、「止めさせてもらうぞ、ブレイン‼」と言って、拳をレッドトルネードの右胸に叩き込んだ。
かつてショーンの雷撃を、ものともしなかったレッドトルネードのボディも、バリーのパワーの前には、一溜まりもなく、文字道理、右半身が砕け、半壊してしまう。
ほとんどの機能を喪失したレッドトルネードは崩れ落ちる様に屋上の床に倒れ込む。
ブレインが倒れたのを見てか、メリッサが駆け寄ってくる。それと同時に騒ぎを聞きつけてきたのか、ケイトリンとカート、そしてナカムラとサイクスまでやって来た。
カートとケイトリンはまずバリーがいる事に驚き、駆け寄ってきて、次いで、レッドトルネードの惨状に驚く。
「これって、一体、どういうことなの?」
カートがそう訊いてくるが、メリッサは、正直に言っては、カートを傷つけるのではないかと言いよどむ。
しかし警察用ロボットを引き連れ、後からやって来た、馬面の老刑事、ナカムラはレッドトルネードがブレインであることを言い当ててしまう。
「レッドトルネードを操っているのはブレイン君だね。」
その言葉を聴いたカートは驚き、レッドトルネードを見て、本当なのか?と問うている様にメリッサの顔を見た。
メリッサは何も言わず、ただ、頷いた。
それと同時に、ブレインもナカムラの質問に答え話し出す。
「そうです。そして僕がショーンとシーリンを殺しました。」
その声は先ほど、メリッサやバリーと相対していた時よりも、随分と穏やかな様子だった。事ここに至ってはカートやダンが疑われぬ様にすべて話すつもりなのだろう。
その通りだったのかブレインは犯行の一切を語った。
おおよそはメリッサの推理道理で、ショーンを殺害に使ったナイフはナカムラの予想通り研究発表会の時、目をつけておいたらしい。
意外なことにレッドトルネードに憑りついたのは偶然との事だが、家のパソコンからネットワークの中に入り込み、一居心地が良かったのがレッドトルネードだったらしい、恐らく人型であったので相性が良かったのだろうと言う事だ。
「だけど、いくら相性が良かったからって、出入りしていたら消耗してしまって、たぶんもう意識が消えてしまうと思う。 また悲しませてしまって、ごめん、カートの事、こんな姿に成っても守っていたかったんだ。」
ブレインは消え入りそうな声でそう言った。
それに一番反応したのは、やはりカートだった。
ブレインの横に膝をつき、残った左手を握る。今のブレインに、レッドトルネードに、その温もりを感じ取る機能が残っているかは、誰にも分からないが、きっとブレインの心にはカートの気持ちは伝わっているだろう。
「姿なんて……どんな姿だって、君ともう一度会えるんだ、それだけで十分だったのに。」
カートの瞳からとめどなく涙があふれる。
「ありがとう。」
そう言ったのを最後に、レッドトルネードは機能を停止する。
そしてブレインもまた、一緒にその命の残り火を消した。
ブレインのしたことは許されないことだろう、しかし今はだけは、皆、彼の冥福を祈っていた、たった一人ジョンを除いて。
ジョンは死の恐怖と言う、大きなストレスから解放された反動か、とても興奮していた。
「驚かせやがって、死人はおとなしく死んでろよな、まあ、何にしてもこれで、事件は終わりだよな。」
そう言ってジョンはレッドトルネードの頭部を爪先で蹴る。
レッドトルネードの中にはもうブレインはいない、それでもそのやりようはブレインの魂への侮辱の様に感じられた。
バリーはそれを見て、ジョンを殴ってやろうかという気持ちになったが、バリーよりも早く行動に移したものがいた、メリッサである。
「まだ、終わってない。 私があなたの罪を暴くわ。」
「はあ、俺の罪、何のことだよ」
「貴方たちがブレインを殺したってことよ。」
「その件は、ブレインの自殺ってことで片が付いてるだろうが、なあ、刑事さん」
ジョンはナカムラたちに同意を求める。
「ええ、そうよ。」とサイクスは答えるが、苦虫を噛み潰した様な表情だ、ジョンに同意するのは嫌なようだ。
だがメリッサはかまわず続ける。
「貴方たち三人はブレインが死んだ頃、揃って首にスカーフを撒いていたそうね。」
「それが如何したんだよ、関係ないだろうそんな事。」
ジョンは明らかに動揺していた。
「そのスカーフは仲間のしるしとか、おしゃれで、とかじゃなくて、首元を隠したくてしてたんじゃないの?」
ジョンはメリッサの質問に答えない。
だがケイトリンは思いついたことをそのまま口にする。
「そっか、首にブレインを殺した時に反撃されて着いた傷があったんだ!!」
「ちがうわ、ケイトリン、いくら何でも、三人とも首に傷を受けるなんて考えにくい。ジョンたちが隠していたのは自分で自分の首を絞めた痕よ。」
図星だったのかジョンは青い顔をしている。
しかしケイトリンはメリッサの言いたいことが分からず「どういうこと?」と訊いた。
「ジョンたちはチョーキングゲームをしていたのよ。私はブレインが死んだのはジョンたちがチョーキングゲームを強要したからだと思っているの。」
「けどそれなら苦しくなったら自分でロープを外すんじゃないの?」とケイトリンは訊く。
「それは……」メリッサはカートを一瞥し、言いにくそうに、「たぶん、ちゃんとやらないと次はカートにやらせるとでも、脅したんだと思う。だからそのままロープを外さずに失神してしまって、それをジョンたちに死んでいると勘違いされて、放置されて死んでしまったんだと思う。」
メリッサの推理を聴いたケイトリン達は納得した様子だった。
そんな雰囲気をまずいと感じたのかジョンは必死に反論する。
「そんなのただの推測で何にも証拠がないだろう!!」
「貴方たちもチョーキングゲームをしていたとするなら、ブレインを吊るしていたロープに貴方たちの内の誰かの皮膚片や指紋が残っているかもしれないわ。そんなに沢山ロープを用意していたとも思えないし。」
「そんなの何時ついたか、解んないだろうが!!」
その反論にメリッサが言葉を詰まらせていると思わぬところから援護が来た。
「分かりますよ。」
それはサイクスだった。
「あのロープはブレイン・ダルトンが死んだ日、本人が買ったものです。なので指紋が付くとすれば当日しかありません。 ダン・ダルトン氏に最初に聴取にいく時に、ブレイン・ダルトンの自殺の捜査資料を読みましたから間違いありません。」
「だ、そうです、きっと他殺の観点から捜査すれば他にも証拠は見つかるはずよ。」
ジョンは足下から崩れ落ちるかのように膝をつき、蹲る。
「なんで、今更、クソッ!! 俺のせいじゃねぇ、ショーンが最初にブレインにもチョーキングゲームやらせようって言いだしたんだ! 脅したのはシーリンだ、俺は悪くねぇ! 悪くねぇんだよぉ。」
遂にジョンは言い訳がましくも、自供した。
その後、ジョンはナカムラたちにブレイン・ダルトン殺害容疑で連行され、レッドトルネードはショーン・ブラント殺害の凶器として回収されていった。
バリー達4人は、明日に事情聴取を受ける事になり、今日はそのまま家に返される。
だがバリーはもうIアイランドに家は無いので、どうしようと言う事になったが、カートには1人で悲しみを整理する時間が必要だろうとで除外することにして、ケイトリンかメリッサの家のどちらかと言う事になった。
当然バリーは、メリッサの家に泊まることにした。
バリーはメリッサの家への道すがら、改めて何があったのかをメリッサから訊いた。
「それは、大変だったね、メール帰ってこなかったのも納得だ。」
「ごめんなさい、それからありがとね。」
「何が?」
「助けてくれたことよ。あの時は、驚きすぎて、お礼言ってなかったでしょう。」
「ああ、あの時は僕も驚いたよ、メリッサが雨の様に上から降ってくるんだから、晴れのちメリッサなんて、ジョークにもならないよ。」
「うん、……それからね、あの時、私……」メリッサは屋上から落ちていたとき、バリーの名ではなく、オールマイトの名前を呼ぼうとしていたことを打ち明けようとした。
「まぁ、またメリッサが空から落っこちてきても、僕が受け止めて見せるよ、何度でも。それこそ呼ばれなくったてね。」
メリッサの言葉を遮ってバリーはそう言う。
メリッサにはバリーの真意が分からない、メリッサが言わんとすることを察して、なお止めたのか、それともただの偶然なのか。ただ、それでもバリーが自分の事を大切に思っている事、好意を抱いている事はメリッサにもわかっていた。
ならば真実を告げるのは、ただバリーを不快にさせ、己のうしろめたさを消すためだけの行為では無いのかと、そう思えた。
故にメリッサは出かかった言葉は呑み込み、「そんなに何回も落ちないわ、たとえバリーが受け止めてくれるとしても、すっごく怖いもの。」と冗談めかして言った。
「それは、そうだね。」とバリーは笑う。
そしてそれに応える様にメリッサも笑顔になる。
そんな2人の距離は、以前より近くなっていた、互いの肩が触れ合うほどに。
読んでいただきありがとうございました。
やっとバリーを登場させられました。
そしてやっとバリーとメリッサが、主人公とヒロインみたいにかけたと思う、というか書けてればいいなと思います。
感想、批評いただけると嬉しいです。