スーパーヒーローのヒーローアカデミア   作:リューイ

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 今回から雄英体育祭編に入ります。

 


雄英体育祭編
10話


 今回の一連の事件が完全に終息するまで、メリッサが事件を解決してから数日の時間を要した

 

 事件は結局、ショーンとシーリンの殺人事件に関してはブレインを犯人と決定し、被疑者死亡として処理されることになり、一方、ブレインを被害者とする事件の方はジョンが完全に自供したが、殺人事件ではなく、過失致死事件として処理されることとなった。

 

 この結論に至るまでメリッサたちはかなりの時間、警察の事情聴取につき合うことになり、バリーなどは、正式に入国審査も受けずにIアイランドに入っていたものだから、かなり面倒なことに成りかけた。

 

 しかしヒーロー活動仮免許を持っていたバリーは、雄英に入ってすぐに、父であるキャプテン・セレブリティ事務所を受け入れ先とした、インターンの申請を出して、通っていたことから、今回の事に関しては人命救助のための超法規的措置としては容認されることとなり、正式な書類上ではバリーは到着した時間まで遡り、入国したことになる。

 

 だがこれには裏事情もあった。バリーに容易く警備システムを破られたことを公表して、でタルタロス並みの警備システムを唄っている、Iアイランドのブランド力を落としたくなかったものたちがいたのだ。

 

 しかし一番割を食ったのはバリー達ではなく、Dr.モローである。

 

 彼は勝手に研究成果のレッドトルネードを殺人の凶器として使われただけではなく、破壊されて、残骸も証拠物件として、警察に保管されることになったので、何も手元に戻ってこなかったのだ。警察にかなり抗議したそうだが全く取り合ってもらえなかったらしい。

 

 そのような感じで数日が過ぎ、バリーが日本に帰る日になった。来たときは自分で飛んできたのだが、帰りは飛行機だ。

 

 以前、バリーが初めて日本にいく時と同じく、バリーとメリッサだけが空港に来ている。

 

 「バリー、今回の事はほんとに、ありがとう。気をつけて帰ってね。」

 

 「僕が操縦するわけじゃないんだ、気をつけようがないけど、もし墜落しそうになったら、僕が飛行機を背負って飛んで帰るよ。その方が早いだろうしさ。」

 

 バリーの冗談か本気なのか、分からないその発言に、メリッサは「確かにその方が早く着きそうね。」と笑う。

 

 「それじゃあ、メリッサ、元気で。」

 

 「バリーもね。」

 

 二人はそう言い、親愛のハグを交わす。

 

 そうしてバリーは搭乗口へメリッサに大きく手を振りながら歩いて行き、メリッサは胸元で小さく手を振り、見送った。

 

 

 

 

 

 バリーが無事に日本に戻ると、雄英でも、色々なことが起こっていた。小さい事で言えば委員長が決まっていたりだとか、それ位の事なのだが、一つ大きな事件も起こっていた。それはヴィランによる雄英襲撃である。

 

 しかもそれにバリーの所属する1-A組が巻き込まれていたのだ。大怪我したのは引率していた担任の相澤、授業を担当していたレスキューヒーローの13号、生徒の緑谷の三人だけで、主犯格は逃がしたものの、事件自体は、オールマイトの活躍で早期に解決できたらしい。

 

 バリーは自分がいたら、ヴィランなんて全員捕まえたのにと大変悔しがる。

 

 だがバリーが久し振りに登校し教室に行くと、当のクラスメイト達はヴィラン襲撃ではなく、雄英体育祭の話で持ち切りだった。

 

 「なあ、ミドリヤ、なんでみんな元気一杯なんだ、ヴィランに襲われたんだよな、ふつうもっと気落ちしてると思ってたんだけど。」

 

 自分の席に行く途中に居た、緑谷に、バリーはこの状態は何事だと訊く。

 

 「みんな、雄英体育祭に向けて気合を入れてるんだよ。 あっ、もしかして雄英体育祭の事、知らなかった?」

 

  緑谷はバリーが外国人なので体育祭の事を知らないのかと訊いたが、バリーだって進学先に主要な行事ぐらいは知っている。

 

 「そうじゃなくて、」とバリーは言いかけて、やめた。何にしろ、元気の方が良いに決まっている、殊更蒸し返すこともないだろう。

 

 「いや、体育祭ぐらい知ってるよ。」

 

 「そっか、けど、これは知らなかったんじゃない。体育祭で好成績を残すと、体育祭の後に在る職場体験の授業で有名事務所からスカウトされるんだ。」

 

 緑谷の説明でバリーは納得した。

 

 「なるほど、だからみんな張り切っているのか。それなら俺も頑張らないとな。」

 

 バリーが緑谷にそう返事をしているとチャイムが鳴り、包帯まみれでミイラ人間みたいになった相澤が教室に入って来た。

 

 それを見たバリーは「じゃな」と短く挨拶して、そそくさと自分の席に向かった。

 

 朝のショートホームルームは何事もなく終わるが、バリーは昼に職員室に来るように、と相澤に呼び出された。

 

 

 

 

 昼、バリーは職員室に行く。

 

 「失礼します。」

 

 職員室に入ると、相澤を探す。

 

 「こっちだ、スカイライン。」

 

 呼ばれた方を向き、バリーは相澤を見つける。そのままバリーが相澤のもとまで行くと、早速、話が始まる。合理性を重んじる相澤らしい行動だ。

 

 「スカイライン、体育祭の事は知っているな。」

 

 「もちろん、知ってますよ。」

 

 「そうか、その体育祭なんだが、お前は不参加と言う事になった。」

 

 「なんでです?」

 

 バリーは怒ってと言うよりは、心底、何故そうなったのか分からないと言う風に訊いた。

 

 「なんで、だって? 決まっているだろう。無断欠席して、海外に渡航していた罰に決まっている。」

 

 「ですけど、重すぎませんか? 体育祭は、職場体験授業のスカウトの場も兼ねているんですよね。 それじゃあ、職場体験の授業も受けられなくなるんじゃないですか?」

 

 バリーは、それだけにしては、罰が重すぎじゃないかと思い、抗議した。

 

 しかし相澤は呆れたように、「お前はすでに、キャプテン・セレブリティ事務所でインターンをしているんだ、スカウトされる必要ないだろう。」といった。

 

 そう言われるとバリーは納得せざる負えない。それに、生徒の如何は教師の自由、と言い切る、相澤にしては寛大な処置だろう。

 

 「それじゃあ、当日は、僕は休みってことになるんですか?」

 

 「ちがう、お前はすでに仮免を持っているから、当日は、俺の監督のもと、警備の仕事についてもらう。 だが当日、俺は、解説役として会場に詰めていないといけないから、警備担当のヒーローと行動を共にしてもらう。」

 

 「わかりました。 それじゃあ失礼します。」とバリーが戻ろうとすると、「まて、放課後も直ぐに職員室にこい、警備についての会議がある。」と相澤が言うのでバリーはもう一度、「分かりました」と返事をして職員室を出た。

 

 

 

 

 バリーは職員室を出てから、少し回り道をしていた。昼休みはまだ残っていたので校舎の周りをまわってみようと思ったのだ。

 

 木の影を踏みながら春の風を感じ、時折、枝間から指す日の光を浴びる、そんな春昼の散歩はバリーをしばし楽しませた。

 

 しかし、そんな穏やかな時間は、唐突に終わる。

 

 校舎から爆発音がしたのだ、バリーがそちらを向くと、人が2階の窓から投げ出されていた。

 

 2階とはいえ、雄英高校はバリアフリーを推進しており、かなり天井が高めに作られている、なので普通の建物の3階から4階ぐらいの高さがある。そんな高さから落ちれば大怪我、もしくは命を失いかねない。

 

 バリーはその人物を助けるため、動き出す。常人ならば間に合わない距離だ、だがバリーならは、一度教室に戻って、ヒーローコスチュームに着替えてきたって間に合ってしまう。

 

 だからと言って手は抜かない、しっかりと、安全を確保し、バリーはその人物を横抱きに受け止める。

 

 バリーは最初、短髪につなぎに赤いメカニカルな籠手、と言う格好から、男かと思っていたが受け止めてみると、鍛えているのか筋肉質だったが、臀部や胸部にあまり大きくはないが女性らしい膨らみがあったので女の子だと分かった。

 

 バリーが彼女を抱いていると、機械油と火災の焦げ臭い匂いの隙間から、女の子らしいいい匂いがした。

 

 すると父親譲りのバリーの悪癖がムクムクと顔を出した、バリーはまるでミツバチが花に吸い寄せられるように彼女の顔を覗き込む。

 

 爆発の所為か煤けた顔も、きちんと見れば、何処かの少女歌劇の男役の様に美しかった。

 

 「大丈夫か?」バリーが透視したところ、骨折や臓器に出血などが無かったので、重症ではないと判断し、その場で声をかけた。

 

 少女は直ぐに目を開け自分の状況を確認する。

 

 「君が助けてくれたのか?」

 

 「そうだよ、僕はバリー、君は?」

 

 「私はサポート科一年の富井星琥だ。」

 

 バリーが名乗ったので星琥も名乗る。

 

 「セイコか、可愛い名前だね。」

 

 「私には似合わないがね。」

 

 バリーは褒めるが、星琥は、お世辞と受け取ったのか、少し皮肉気に返す。

 

 「そんなことないと思うけどね。 まあ、それよりも見たところ大きな怪我は無いようだけど何があったんだ。」

 

 バリーがそう訊くと、星琥は、「下ろしてくれないか。」といってバリーに地面に下ろしてもらってから、自分のはめていた赤い機械の籠手を見せて、「これの調整をしていてね、想定以上の威力が出て、暴発したんだ。」と爆発の原因を語る。

 

 そんな事を話していると爆発した部屋から、「富井、大丈夫か。」と声がした。

 

 声の主はショベルカーのアームの被り物をした、雄英の教師、パワーローダーである。

 

 それを聴いた星琥は部屋の方を見上げ、「パワーローダー先生、こちらは大丈夫です。今からそちらに戻ります。」と大声で返事をした。

 

 「やれやれ、またパワーローダー先生には迷惑をかけてしまったな。」星琥は申し訳なさそうに、そう呟いたあと、バリーの方に向き直り、「君には本当に助けられた、君がいなければ私は死んでいたかもしれない、感謝している。何かお礼がしたいのだが私にできる事は何かあるだろうか。」

 

 バリーはそれならと「じゃあデートなんてどうかな、今日は……予定があるから、また誘いに行くよ。」と提案する。

 

 「私なんかとデートしても楽しくないだろうに」と星琥は苦笑するがバリーは心底楽しそうに「そんなことないさ、きっと楽しいよ。」と言う。

 

 「そうか、なら待っているよ。」そう言って星琥は校舎に戻っていった。

 

 星琥の姿が見えなくなるまで見送ったバリーは「やった!」と小さくガッツポーズ、これからいい事がありそうだとワクワクしている。

 

 しかしこういう時、バリーに良い事が起こったためしは、滅多に無い。

 

 

 

 

 

 バリーが教室に戻ると、クラスメイトがなぜ呼び出されたのか、今までなんで休んでいたのか、興味津々な様子で聞いてきたがIアイランドの事を全部正直に言いたくなかったので、休んでいたのはIアイランドに旅行に行っていたと言い、呼び出されたのは、その所為で体育祭に出場禁止になったことを言い渡されたと言っておいた。

 

 三奈などは「ええ!! それって罰、きつすぎない。」と言ってバリーを慰めようとしてくれたが、もう体育祭では警備に着くことを納得していたバリーは「ありがと、けど大丈夫だよ。」と言い。

 

 「当日は警備につくから、皆とは違う参加の形になるけど、それでも会場にはいるから、三奈たちの雄姿が見られるのを楽しみにしてるよ。」と声援を送っておいた。

 

 ほどなく午後の授業が始まり、委員長となった飯田が「皆、午後の授業が始まる! 速やかに席に戻り給え。」と皆に号令をかける。

 

 その号令で騒いでいた生徒たちはいそいそと席に戻っていき、皆が席に着いた頃、担当の教師が来た。

 

 体育祭が近いとはいえ、授業はいたって平常通りに進み、何事もなく放課後となった。

 

 

 

 

 放課後、相澤に呼び出されていたバリーは、クラスメイト達からの自主練や遊びの誘いを断り、職員室に向かっている。

 

 職員室に入り、相澤のデスクへ行くと、すでに準備ができているのか相澤はバリーが来るのを待っていた。

 

 「来たか、スカイライン。」

 

 「そりゃあ、呼ばれましたからね。 僕は呼ばれれば何処にでも駆けつけますよ、なんたって最速の男ですからね。」と軽口を叩く、好きな女の子の所には呼ばれなくても行っちゃうバリーだ。

 

 しかし相澤は、バリーの言動など無視し、「では、行くぞ、警備のミーティングは会議室でやる。」と自身の机の上に置いてあったノートパソコンを持って職員室を出る。

 

 バリーも相澤の後に続き、職員室を出て、会議室に行く。

 

 バリーと相澤が会議室につき扉を開けると、まだ誰も着ていないのか会議室は静まり返っていた。

 

 会議室は普通の教室とは違いコの字型に机が並べられており、机が無い辺の壁に大きなスクリーンが埋め込まれていて、その右わきには演台がある。

 

 机には一席ごとに小冊子がきちんと置かれていて、相澤が自分で準備したのかは兎も角、合理性を重んじる相澤らしい如才なさだとバリーは感じた。

 

 「スカイライン、手伝え。」相澤にそう言われバリーが相澤を手伝って、ノートパソコンと演台にある、スクリーンとつながっているケーブルを繋ぎ終わり、スクリーンにノートパソコンの画面が映し出された時、見計らった様に警備を担当するのであろうヒーローたちが到着し始める。

 

 ヒーローたちは皆、会議だからか、コスチュームではなく、もしくは下に来ているのかもしれないが、普通のスーツ姿だった。

 

 全ての席が埋まると相澤が会議を開始する。

 

 最初は恙なく進んでいた会議だが終盤、それぞれの担当場所と、チームを組むメンバーが発表されると、少し会議がざわついた。

 

 当然、バリーの事が原因だ。万全を期すために警備を強化しようと言う話だったのに、学生を入れれば、万全どころか、不安要素にしかならない、全く逆の事をしているのではないかと、プロヒーローたちは感じていた。

 

 「ちょっと、待ってくださいよ、確かに、俺たちゃ、雄英さんに雇われている身だけどよぉ、何でもはいはいってな風に従うって訳にはいかねぇよ。そもそも俺たちは万全の警備って奴の為に呼ばれたんじゃねぇのか?それとも子守の為に呼ばれたのか?」

 

 バリーとチームを組むことに成ったプロヒーロー、デステゴロ、Mt.レディ、シンリンカムイ、3人の内の一人、その中で一番年上のデステゴロが相澤に凄みを効かせ、そう訊く。

 

 「もちろん、万全の警備を敷くためにあなた方を雇いました。」

 

 相澤がそう返すとデステゴロは納得いかなかったのか、「だったら、生徒を警備に入れるってのは、違うんじゃないのか? それに生徒なら体育祭に参加するんだろ。警備している暇なんてないだろう。」と詰め寄る。

 

「スカイラインは、諸事情があり、今回の体育祭には参加しません。それに実力の方も、すでに仮免も取得済みであり、十分参加させられる水準ですので問題はありません。」とバリーが参加しても問題ないと相澤が保証するがデステゴロたちはいまいち信用しきれていない様な態度だ。

 

 「だったら、試させてもらうぜ。」

 

 「なら、許可は取ってあるのでこの後、グラウンドβを使ってくれ。」

 

 相澤はこうなることが分かっていたのか、すでに場所は確保していたようである。

 

 「分かった。」

 

 その後は、バリーと直接組むデステゴロがバリーを試すと言う事で納得したからか、あるいは折角デステゴロたちが厄介ごとを引き受けているのに、自分から地雷を踏みに行くことはないと思っているのか、会議は大した問題なく進み、十数分もしないうちに終わった。

 

 

 

 

 

 会議が終わった後、デステゴロたち3人とバリーと相澤は、グラウンドβに来ていた。もちろんバリーを試すためだ。

 

 ヒーローたちは来る途中で着替えてきたようでコスチューム姿に変わっていた。

 

 「おい、バリーだったか?」

 

 デステゴロがバリーに声をかけてきた。

 

 「バーソロミュー・クラーク・スカイライン。バリーでもクラークでもスカイラインでも好きに呼んで。」

 

 「じゃあよぉ、バリー、その格好はどういうことだ。」

 

 「どうって?普通じゃない?」

 

 デステゴロが少し怒っているのはバリーが普通に雄英の制服のままだったからだ。

 

 「制服のまま、闘うつもりなのか?」

 

 「そうだよ。」

 

 バリーは絶えず自分にフォースフィールドを纏っているので、どんなに早く動いても、服が燃えたり、破れたりする心配がないので、軽く、返事をする。

 

 だがバリーが制服姿のままだったのには、他にも理由が一応あった。

 

 「もちろん、ヒーローコスチュームを着て警備をするっていうのは、犯罪者に自分たちの姿を誇示して、犯罪を抑止する意味合いがあるのも知っているけど、警備するのは当然ながら此処、ヴィランに襲撃されたばかりの雄英高校だ、なら一人ぐらい、犯罪が起きる事、前提で制服か体操服みたいな、周囲に紛れながら、なおかつ犯人が警戒しない装いで警備できる人員も居た方が良いんじゃないかとおもってね。」

 

 「そこまで、考えてるんじゃ、俺はもう何にも言わねぇ、始めるぞ。」デステゴロは半ば諦めた様にそういう。

 

 「では我から行かせてもらう。」

 

 そう言って樹木の様な肌のシンリンカムイが名乗りを上げた。

 

 「知っているだろうが名乗らせてもらう。我はシンリンカムイ」

 

 「いえ、全然知りませんけど。」

 

 バリーのその明け透けで身も蓋もない発言を「何だと!」と気分を害した様で怒っていたが、すぐに、それは挑発だったと、取ったのかシンリンカムイは「フッ、プロはそんな安い挑発に乗って精神を乱したりしない。」と取り繕っていた。

 

 「我が試練は脱出試験だ、ヴィランに捕まったとき、最低限自分で脱出できなくては足手まといだからな!! 我に捕まった状態から始め、我が君を見失えば合格だ。」

 

 そう言うとシンリンカムイは木の根の様な手を縦横無尽に伸ばしバリーを拘束する。彼の必殺技ウルシ鎖牢だ。

 

 それを見て、相澤は準備が整ったと判断したのか、開始の合図をだす。

 

 「それでは、はじめ‼」

 

 合図がかかっても動こうとしないバリーに、シンリンカムイは「このウルシ鎖牢、簡単には抜けられないだろう。」と得意げに言う。

 

 だがバリーは手も足も出なくて、動かないわけではない。むしろバリーが本気を出せば、容易に引きちぎってしまうから、悩んでいる。

 

 シンリンカムイの様な個性の人間は、のびた部分が切断されても容易に再生する者が多いが、だからと言って、むやみやたらに傷つけて良いわけではないし、何よりシンリンカムイが簡単に再生するタイプとは限らないのだ。

 

 そこでバリーはシンリンカムイを傷つけず勝つ方法を考えた。

 

 「そうだ。」バリーは何か考え付いたのか、不敵に笑う。

 

 「行きますよ。」

 

 バリーは体を空気と同じ周波数で振動させ、全身の細胞をトランス状態にして、シンリンカムイの腕を透過し、拘束から逃れた。

 

 「なんだと!!」シンリンカムイは驚きのあまり、大声をあげる。

 

 拘束を抜けたなら、もうバリーの独壇場だ、シンリンカムイが認識で着ないほどのスピードで後ろに回り込む。

 

 「こっちだよ。」

 

 バリーの呼びかけに、シンリンカムイは血相を変えて振り向く。

 

 バリーはそこを見計らい額にデコピンする。

 

 デコピン、普通の人がすれば少し痛いだけで済む、しかしバリーの超パワーですればどうなるか?

 

 もちろん、超いたい、だけでなく思い切り後方に吹き飛ばされる。

 

 その間にバリーはシンリンカムイの目を逃れ、悠々と隠れた。

 

 だがシンリンカムイは探しに来ない。

 

 だってすでに彼は気絶していたのだから。

 

 

 

 

 

 しばらくして、シンリンカムイが気絶したことに気がついた、相澤が彼を回収し、バリーに戻ってくるように声をあげた。

 

 バリーが相澤たちの所に戻ると、丁度シンリンカムイも目を覚ましたところだった。

 

 「酷い目にあった、危うく首がもげる所だったぞ。」

 

 「すいませんね。手加減はしたつもりだったんですけどね。」

 

 バリーの少し傲慢な物言いにシンリンカムイは少し気分を害した様だった。

 

 「先輩の首って、取れても接ぎ木しとけば元に戻るんじゃないですか。」

 

 「そんなわけないだろ!」

 

 しかしMt.レディのシンリンカムイを茶化すような発言のおかげか、空気が悪くならずに済んだ。

 

 「あはははっ、まぁ、そうですよねぇ。じゃあ、バリー君に一つ罰ゲームってのは、どうですか?」

 

 「罰ゲームですか、なんだか怖いな、どんなのです?」

 

 バリーがそう訊くと「次の試験で私に負けたら、バリー君は、職場体験とインターン、うちの事務所でするってのはどう?」とMt.レディは答えた。

 

 「なんだその罰ゲームは、バリー、別に受けなくてもいいぞ。」デステゴロは呆れてそう言った。

 

 だがバリーは負けるつもりは無いからか「それぐらいなら、別にいいですよ。」と軽く了承する。

 

 そうバリーが言うとMt.レディは「よっし、イケメンサイドキック、ゲット」と気合が入った様だ。

 

 「別に、インターンに入っても、サイドキックになるとは限らんだろう。」とデステゴロがそう言うとMt.レディは品を作ってみせ「そんなの、あたしの魅力でイチコロですよ。」と言いきる。

 

 紫と白色からなる体のラインがクッキリ出るボディースーツタイプのコスチュームを着こなしているMt.レディの体は、確かに本人が言うだけあって、均整がとれつつも、女性らしいふくらみにも富んでいて、とても魅力的でだ。

 

 だがそれでも話を訊いていたシンリンカムイはMt.レディに「プライド無いのかよ。」といツッコミを入れる。

 

 「そんなこと言っても先輩、優秀なサイドキックは何処もほしがるから、争奪戦でしょう、しかも、しかもですよ、そのうえ、金髪碧眼のイケメンなんて、今のうちに唾つけとかないと。」

 

 Mt.レディは口元をすぼめて可愛らしく文句をいった。

 

 「そのうえイケメンって、重要なの、そこかよ。」とシンリンカムイは呆れかえる。

 

 「うちは物損が多くて経営が大変なんです、人気出そうな子ゲットして黒字化を目指すんですよ。」

 

 Mt.レディたちの会派を見ながらバリーは我関せずを貫いている相澤に声をかける。

 

 「なんか世知辛い話になってきましたね。」

 

 「まぁ、ヒーローあるあると言うほどでもないが、事務所を構えたヒーローが金に困るってことはたまにあることだ。 事務所の家賃に光熱費、自分や雇用者の給料などの人件費、コスチュームや装備などを含めた諸経費、自分たちの怪我や活動中の物損や怪我人を出してしまった時の賠償金をまかなうための各種保険の保険料、などなど、金はいくらあっても足らんからな。特にMt.レディの様な物を壊すことが多いヒーローは入れる保険も限られてくるし、保険料も高くなるだろうから大変だろう。それだけが理由と言うわけではないが、だからヒーローも副業が認められているんだ。」

 

 「なるほど。」とバリーが一人しきりに頷いていると、無駄な時間が過ぎている事に焦れたのか相澤がMt.レディたちに声をかける。

 

 「そろそろ、次を始めてくれ。」

 

 それを聞いたMt.レディは「はーい」と返事をし、バリーのもとにやってくる。

 

 「私の試験は戦闘力を試させてもらうわよ。」

 

 「望むところですよ。」

 

 バリーが返事をするとMt.レディは巨大化していった。

 

 バリーはそれを、Mt.レディのコスチュームのボディースーツが巨大化に合わせて大きくなるのはそう言う伸縮性に富んだ素材を使っているのだろうが、目元を隠すマスクについた角の様な物まで一緒に巨大化するのは何故なんだろう、などとどうでもいいことを考えて棒立ちのままでいた。

 

 20mほどに巨大化し終えると「いくわよ!」とMt.レディは、バリーを思い切り踏みつける。

 

 その威力たるや、巨大化でました、質量と力が相俟って一踏みで地面を陥没させるほどだ。

 

 そんな一撃を受け、さしものバリーも潰されたか、というと、もちろん潰されていない。

 

 軽々と片手で受け止めて見せていた。

 

 「ファンからすれば私に踏まれるのはご褒美なのよ、おとなしく踏み潰されてなさい。」とMt.レディはそのまま、バリーを押しつぶそうと力を入れるがその瞬間、「ギャー」と女性にあるまじき叫びをあげながら飛び退き、あたりを転げまわる。

 

 これにはバリーもそうだがデステゴロやシンリンカムイも何が起こったのか分からず困惑する。

 

 そんな中、相澤だけが冷静に現状を分析し、答えを導き出す。

 

 「あれは、足つぼマッサージだ。」

 

 Mt.レディを除いた皆、何言ってんだ、此奴と言う顔で相澤を見る。

 

 だが相澤は何事もないかのように説明を始めた。

 

 「誰でも、一、二度は経験しているだろう、消しゴムやビー玉みたいな、小物を踏みつけた時の激痛を。あれと同じだ。 あの位置なら腎臓だろう、恐らく事務所の経営のストレスから深酒して痛めてしまったんだろう。」

 

 その説明を聞き。デステゴロとシンリンカムイは何だかMt.レディが可哀想になり、少し優しく接してやろうと心に誓うのであった。

 

 一方、痛みから回復したMt.レディは「なかなかやるわね。」と言いながら立ち上がり、バリーを睨みつける。

 

 何もしていないのに睨まれてはたまらない。

 

 バリーは先ほどと同じことに成らない様に、今度はMt.レディの胸ほどの高さまでふわっと、飛び上がった。

 

 「あいつ、空まで飛べるのかよ。」とバリーの事を知らなかったデステゴロたちは大いに驚く。

 

 Mt.レディはそんな中、果敢にバリーに対しパンチを放つ。

 

 だがMt.レディのパンチはことごとく空を切る。

 

 バリーは、本当は体育祭の警備など出来ても、出来なくても、どうでもいいので、勝っても負けてもどちらでもよかった。

 

 だが今はMt.レディに負けるのは面倒そうなので、勝つつもりでいるのだが、それでも女性をむやみに殴りつける趣味はないので、なるべく穏便な方法で倒すことにする。

 

 そう決めたバリーはMt.レディの攻撃を避けながら超高速で彼女の周りを飛び始める。

 

 バリーはこの高速移動で発生したエネルギーで稲妻を放つ。

 

 稲妻は一瞬でMt.レディに到達し彼女の体を駆け巡り、その身をしびれさせ、自由を奪う。

 

 「うっ」

 

 小さいうめき声をあげMt.レディが倒れる。

 

 バリーはそんなMt.レディが頭を打たない様に大きいままの彼女をそっと支え、静かに地面に横たえる。

 

 「これで、僕の勝ちだね。 さぁ最後はどんな試験?」

 

 そうデステゴロにさわやかに笑いかける。

 

 「いや、もう試験の必要はない、シンリンカムイとMt.レディの試験で実力派十分見させてもらった。これから体育祭の間までだが、よろしく頼む。」

 

 デステゴロはバリーに右手を差し出す。

 

 「こちらこそ、よろしく。」

 

 バリーはデステゴロの手を握り返した。

 

 バリーは見事試験を通過しデステゴロたち3人と体育祭を警備することに成った。

 




 

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