スーパーヒーローのヒーローアカデミア   作:リューイ

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3話

  個性把握テストの翌日、午前中の通常の授業が終わり、昼休憩を挟んだ午後、1-Aは生徒がヒーロー科特有の授業、ヒーロー基礎学が始まる時を今か今かとソワソワしながら待っていた。

 

 始業の合図のベルと共に屈強な肉体のマントを付けた男が教室に入ってくる。

 

 彼は雄英の教師にしてNo.1ヒーロー、オールマイトだ。

 

 オールマイトは自分の登場に色めき立つ生徒をよそに早速授業の説明を始める。

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目だ!!」

 

「早速だが今日はコレ!!」

 

 オールマイトは手に持つBATTLEと書かれたプレートを生徒に見える様に掲げながら「戦闘訓練!!!」と今日の授業内容を発表した。

 

 「そしてそいつに伴って……こちら!!!」

 

 オールマイトが何かのリモコンのスイッチを押すと壁から棚の様なものがせり出してくる。

 

 オールマイトがその棚の前まで近づき「これが君たちの個性と要望をもとにサポート会社の方々が作ってくれた戦闘服だ!!!」と言い、棚を指さした。

 

 「着替えたら順次グラウンドβに集合だ!!」

 

 オールマイトの言葉に「はーい!」と返事をし、1-Aの生徒たちはコスチュームを棚に取に行く。

 

 それを見届けるとオールマイトは準備があるのか先に教室を出て行った。

 

 

 皆がコスチュームの入った棚に集まる中、緑谷とバリーはその輪に入らず自分の机に残っていた。

 

 「コスチューム取りに行かなくていいのか?」

 

 バリーが着替えに行こうと席を立つとき、コスチュームを取りに行く様子の無い緑谷を見かけ、声をかけた。

 

 「あっ、バリー君、僕はコスチューム、自前の物があるんだ。」

 

 「へぇ、ミドリヤもか、実は僕もなんだ。」そう言いバリーは緑谷に見える様にコスチュームの入ったアタッシュケースを自分の体の前に掲げて見せる。

 

 「ミドリヤはまだ着替えに行かないのか?」

 

 「僕は飯田君たちが戻ってくるのを待って一緒に行くつもりだよ。」

 

 「そうか、なら僕は先に行くよ、また後でな。」

 

 「うん」

 

 バリーはコスチュームの入ったアタッシュケースだけもち更衣室に向かう。

 

 まだ誰も来ていない更衣室に着いたバリーは早速コスチュームに着替え始めた。制服から全身スーツに着替え、ショルダーアーマーを装備し、最後にマントを羽織る。

 

 バリーが着替え終わるとようやく他の生徒たちも更衣室に来たのかたくさんの足音と話し声がバリーの耳に届く。

 

 更衣室の扉が開き男子たちが更衣室に入ってくる、着替え終わったバリーを見て、緑谷が興奮した声をあげる。

 

 「バリー君、もうコスチュームに着替えたんだ!」

 

 バリーが返事をする間もなく緑谷はバリーに近づき前後左右くまなくバリーのコスチュームをまるで観察するように眺める。

 

 緑谷にまさに穴が開くほどみられ、さすがのバリーもたじろぐ。

 

 「どっどうしたミドリヤ?」

 

 「バリー君のコスチュームってヤングエイジのオールマイトのコスチュームがモデルなんだね。」

 

 「ああ、そうだけど。」

 

 「やっぱり‼ 一目見てそうじゃないかと思ったんだ。 もしかしてバリー君もオールマイトのファンなの?」

 

 緑谷はファン仲間ができたと思ったのか目を輝かせテンションが一気に上がっている。

 

 「いや、俺はオールマイトのファンじゃない、このコスチュームのデザインは作ってくれた子の趣味だ。」

 

 目に見えて緑谷のテンションが下がる。

 

 何も悪い事はしてない筈なのにバリーは少し罪悪感を感じた。

 

 「そっか、そうだよね、バリー君はオールマイトと同じ髪と瞳の色なのに、髪型、オールマイトみたいな長めの髪のオールバックじゃなく、短めだもんね。 それにオールマイトは……」

 

 先ほどしょんぼりしていたのにオールマイトの事を話し出すと緑谷はまた気分を高揚させている。

 

 少しうんざりしながらミドリヤの話をしばらく聞いていたバリーだが、ふと回りが静かになっているのに気づいた。

 

 もうすでに男子たちは着替えてグラウンドβに向かった様だ。

 

 「ミドリヤ‼ もうみんな着替えて行ってしまったみたいだぞ。」

 

 緑谷も辺りを見回し「えっ! ほんとだ、早く着替えないと。」と焦っている。

 

 「ごめんバリー君、先に行って。」

 

 「待っててやるから早く着替えろ、ミドリヤ。」

 

 「うん。」

 

 緑谷は黄色いリュックから緑色のジャンプスーツを改造したらしい手作り感満載のコスチュームを着ていく。

 

 「着替え終わったよ。」

 

 緑谷のその言葉を待っていましたとばかりにバリーは着替え終わった緑谷を小脇に抱えグラウンドβに向かって走り出す。

 

 一瞬でグラウンドβについてバリーは緑谷を放り投げる様に下ろすと、緑谷はしりもちをつき目をしばたかせ驚いている。

 

 それもそうだろう、バリーにしてみればいつも通り普通に走っただけだが緑谷にとってはいきなり景色が更衣室の中からビルが乱立するグラウンドβに変わり、そのうえ投げ捨てられたのだから驚くなと言う方が酷だろう。

 

 「え、えっ、ええっ! ここってグラウンドβ!? もしかしてバリー君が僕をここまで運んできたの?」

 

 「何を当たり前のことをこれほど早く動けるのは僕くらいしかいないだろ。」と緑谷に手を伸ばす。

 

 緑谷はため息をつきつつ「ありがとう、でも今度からは事前に行ってからにしてよ、心臓に悪いから。」と言い、バリーも手を取り起き上がる。

 

 

 

 

  グラウンドβに1-A全員が集まるとオールマイトが今日の授業内容の詳しい説明を始めた。

 

 「さぁ始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練の時間だ!!! 初回は屋内での対人戦闘訓練だ!!!」

 

 「二人一組でヴィランチームとヒーローチームを組んで闘ってもらう!!!」

 

 「状況設定はヒーローが核兵器を持つヴィランのアジトに潜入して核兵器もしくはヴィラン全員確保を目指す!!!と言うものだ。」

 

 「ヒーロー組の勝利条件は制限時間内に核兵器に触れるかヴィラン組を確保テープで全員確保する事、それに対しヴィラン組の勝利条件は制限時間内核兵器を守り切るかヒーロー組を確保テープで捕らえる事だ。」

 

 「ちなみに対戦相手とチームはくじで決める方法はくじだ!!」

 

 オールマイトの説明中、「質問がある。」そう言って手をあげたのはバリーだった。

 

 「何かな? スカイライン少年。」

 

 「二人一組なら一人余ると思うんだけど、その一人は、オールマイトとの戦闘訓練ってことになるんですよね。」

 

 当然その一人は自分だよなって意味を込めてバリーはオールマイトに問いかける。

 

 しかしオールマイトは、そんなバリーの敵愾心も受け流し説明を進めていく。

 

 「もちろん、余った一人の事はちゃんと考えてあるから心配いらないよ。けどそれは後で説明するよ。 それから今回私は、戦闘訓練に参加はしないよ、監督する側だからね。」

 

 「ほかに質問が無ければ組決めを始めるよ。」

 

 そう言いオールマイトがくじを引きと、順々にペアが決まっていく。

 

 そんな中、バリーは、オールマイトが狙ってそうしたのか、はたまた運命のいたずらか、余りの一人になった。

 

 「それじゃ、次は最初の対戦の組み合わせだ!!」と言いながらオールマイトは両手をそれぞれヒーローとヴィランくじが入っているの箱に手を入れ、くじを引く。

 

 「こいつらだ!!!  ヒーローチーム!! 緑谷少年と麗日少女!! ヴィランチーム 飯田少年と爆豪少年!!」

 

 対戦相手とチームが決まるとオールマイトは生徒たちを先導し戦闘訓練を行うビルの入り口まで来た。

 

 「ヴィランチームは先に入って核に見立てた張りぼてを好きなところにセッティングするんだ!! ヒーローチームは五分後にスタートだ!! ほかの者は地下のモニタールームで観戦するぞ!」

 

 オールマイトの説明が終わると緑谷達四人以外は地下のモニタールームに移った。

 

 地下のモニタールームに移動後オールマイトがモニターをつけるとすでに飯田と爆轟は核兵器に見立てた張りぼてをセッティングし終わっていた。

 

 モニターに映る爆豪はイラついた様子で核を配置した部屋から飯田を残し一人で出ていく。

 

 「クソナードって、バクゴーは口が悪いな。」

 

 バリーが小さく独り言を口にすると、耳たぶからイヤホンジャックが伸びているパンクファッション風のコスチュームを着た女の子、耳郎 響香がバリーに話しかけてきた。

 

 「バリーもあいつ等の声、聞こえてるの?」

 

 「キョウカか。」

 

 バリーは耳郎の方に目を向ける。

 

 「こう見えて僕は耳も良いんだ。もって事は君も聞こえているの?」

 

 バリーの質問に耳郎は自分のイヤホンジャックを見せつける様にいう。

 

 「当たり前じゃん、あたしの個性は耳がいいのが一番の能力みたいなもんなんだからこれぐらい離れててもはっきり聞こえてるよ。」

 

 バリーと耳郎が話している間に5分経って潜入を開始した緑色の改造ジャンプスーツのコスチュームの緑谷と全身にフィットしたスーツに手足にはふわっとした柔らかそうな装甲を付けた、女の子らしい可愛い感じのコスチュームの麗日からなるヒーローチームがビルの廊下を慎重に忍び足で行動している所を爆豪が奇襲した。

 

 

 

 

 

 ヒーローチームを見つけた爆豪はニヤリと嗤う、今までの鬱憤を晴らそうと言うのか、奇襲するには麗日のほうが都合のいい位置に居たにも拘らず、脇目も振らずに緑谷のもとへかけていく。

 

 爆豪の右腕が緑谷を爆破しようと迫る。

 

 しかしその手は緑谷には届かない。

 

 「危ない! 麗日さん。」

 

 奇襲に気づいた緑谷は麗日を抱え思いっきり横に跳ぶ。

 

 起き上がる緑谷の目に留まったのはカーゴパンツにタンクトップ、腰の手榴弾、腕の手榴弾を模した大きな籠手というコスチュームを纏った爆豪だ。。

 

 「避けてんじゃねぇよクソデクが。」

 

 爆豪は再び緑谷に右手で襲いかかる。

 

 しかし緑谷は逆にその爆豪の右腕を取り一本背負いの要領で爆豪を投げ飛ばす。

 

 だが爆豪投げ飛ばされてもダメージはないのかすぐに起き上がる。

 

 「いつまでも君につけられた〝弱虫で出来損ないのデク〟じゃないぞ。僕は〝頑張れって感じのデク〟だ」

 

 そんな爆豪を見て緑谷は宣言した。昨日麗日に言ってもらった〝デクって頑張れって感じで好きだ〟てことを思い出し自分を鼓舞するために。

 

 しかしそれは爆豪の苛立ちをさらに加速させた。

 

 「ビビりながらよぉ、そんでも向かってくる、そう言う所がよぉ。 ムカツクなあ!!!」

 

 爆豪は緑谷一人しか見えていないように攻撃を緑谷に集中させている。

 

 「麗日さん‼ 先に行って‼」

 

 緑谷もそれに受けて立つつもりなのか麗日と別行動を選択した様だった。

 

 麗日が飯田のもとに向かい、緑谷と爆豪、二人だけになった廊下ではだんだん激しい戦いになってきたが、今の所、二人は互角に戦っていた。

 

 ただし個性が自滅の恐れがあり使えない緑谷と動けば動くほど汗をかき、個性の爆破の威力が増す爆豪とでは時間がたつにつれ明らかに戦力に差が開いてくる。

 

 だが戦局が爆豪へと傾いて行くにつれ爆豪の機嫌が悪くなっていく。

 

 「個性使ってこいやぁ 俺の方が上だってもう一度テメェの体に叩き込んでやるからよぉ!!」

 

 それでも個性を使わない緑谷に爆豪は業を煮やす。

 

 「なんで使わねぇ、なめてんのかデク。 なら使いたくなるようにしてやんよぉ!!!」

 

  爆轟は緑谷にまるで見せつける様に腕の手榴弾を模して造られた籠手からすさまじい爆発を放った。

 

 

 

 

 

 爆豪が緑谷に向けて大爆発を放った時、モニタールームが騒然となった。

 

  これは流石にオールマイトに止められた様だったが、ならばと、爆豪は近接格闘戦に切り替え、自身の爆発の反動を利用したトリッキーな動きで緑谷を翻弄していた。

 

 しかし、もはやそれすら爆豪から緑谷への一方的な暴力に見える。

 

 「なんで個性つかわねぇ!? そうやってずっとガキの頃から俺を舐めてたんかてめぇは!!!」

 

 「ちがう、君が凄い人だからっ!! だから!!勝って超えたいって思うんじゃないか バカヤロー!!!」

 

 爆豪と緑谷、二人の叫びがバリーの耳に届く。

 

 「かみ合ってないな、あの二人。」

 

 「どういう事?」

 

 耳郎がバリーの呟きの意味を問う。

 

 「見てれば分かるよ。」

 

 そう言われ耳郎はバリーの視線の先、モニターの中の二人を見る。

 

 モニターでは爆豪と緑谷が決着を着けるつもりなのか互いに相手へと向かって行った。

 

 丁度部屋の真ん中あたりで二人は互いに手の届く間合いに入いる、その瞬間、爆豪は緑谷に向かい攻撃を仕掛けた。

 

 緑谷はその攻撃を何とか左手でガードした、しかし反撃するのではなく、何もない天井に向かい思い切り拳を振りぬいた。

 

 空振りのように見えたその拳から放たれた衝撃波はビルの天井を一番上まで打ちぬく。

 

 その無駄に思えた攻撃は上にいた麗日への援護だった。

 

 核のある部屋で飯田と闘っていた麗日はなすすべがなく手をこまねいていたが緑谷が衝撃波で作った瓦礫を自らの個性を使い浮かせた柱を使い打ち出して飯田への攻撃と目くらましに使い、飯田がひるんだすきに麗日は核兵器を確保した。

 

 モニターを見ていた生徒たちがあっけにとられていた中オールマイトの「ヒーローチーム Win!!!」との声が響く

 

 

 

 オールマイトが緑谷を保健室に送り、爆豪たち3人をモニタールームに連れてきた。

 

 その後の講評はポニーテールの美少女、一年に4人しかいない推薦入学者の八百万 百の独壇場だった。緑谷達の反省点をすらすらとあげていくその姿はまさに優等生と言う感じである。

 

 1戦目の講評が終わると2戦目がすぐさま行われた。

 

 2戦目はヒーローチームが炎と氷を自在に扱う、半冷半燃と言う個性の轟 焦凍と触手の先端に自身の目や耳などの複製を作れる複製腕の個性の障子目蔵、ヴィランチームが透明の個性の葉隠 透と尻尾の個性の尾白が生えているだけの個性の尾白 猿夫の対戦だったがこれは1戦目と異なりすぐに決着がついた。

 

 轟がヴィランチームごと演習場となったビルを凍らせて核を確保したからだ。

 

 その後の3,4,5戦目も滞りなく進みいよいよ最後の一人、バリーの順番になった。

 

 「それでオールマイト最後の一人になった僕は如何すればいいんだ。」

 

 「最終戦は敗者復活戦だ、スカイライン君がヴィラン側とし、ヴィランチームとして負けた飯田、爆豪組と葉隠、尾白組がヒーロー側として1対4で対戦する。」

 

 普通1対4では明らかに1人側が不利だが何も異論が出ないのは昨日の個性テストでのバリーの圧倒的能力を見た後だからだろう。

 

 「それじゃ、5人とも用意して」

 

 オールマイトの号令でそれぞれ用意にかかる。

 

 

 

 演習用のビルに着くとバリーは核の張りぼてを設置してオールマイトの開始の合図を待つ。

 

 「屋内対人戦闘 開始」

 

 オールマイトから開始の合図がかかる。

 

 「さて、このまま待っているのも性に合ってないし、ささっと捕まえにいくかな。」

 

 バリーは早速、爆豪たちを捕まえに走り出す。

 

 

 

 

 一方開始の合図がかかった時のヒーローチームは、少しもめていた。

 

 「爆豪君、何処に行くつもりだ! また単独行動をするつもりか!」

 

 飯田がまた一人で行こうとしている爆豪を停める。

 

 「うるせぇ」

 

 しかしやはり爆豪は勝手に一人で先に行ってしまった。

 

 「すまなかった。爆豪君を停められなかった。  尾白君と、葉隠君?はいるんだよな。」

 

 飯田は爆豪を止められなかったことを尾白と葉隠に詫びるが飯田には葉隠がどこにいるのか、もっと言ってしまえば一緒にいるのかすら、分からなかった。

 

 「ちゃんとここにいるよ! 飯田君。」

 

 「そうか!! ならば3人でも作戦を立てよう、正面からぶつかればバリー君を止めるのは、中々大変そうだ。」

 

 飯田がそう言うと尾白や葉隠も考え出す。

 

 「爆豪がいないことを利用するのは如何かな?」

 

 尾白が何か考え付いたのか、おもむろに語りだす。

 

 「どういうこと?」

 

 葉隠の疑問に尾白は作戦の詳細を話していく。

 

 「つまりバリー君には2人づつ2組で行動しているように見せて、核の部屋に着いたら俺と飯田でバリーに陽動をかけてその間に葉隠さんに核の確保に向かってもらうっていうのが一番いい気がする。」

 

 「確かにそれが今のところベストな判断かもしれない。葉隠君はこの作戦で大丈夫だろうか?」

 

 「大丈夫!! 任せて、がんばるよ。」

 

 作戦が決まった3人はビルの中に入り核の部屋を探し歩く。

 

 しかし3人が核を見つける前にバリーが3人を見つけた。

 

 「見つけた!!」

 

 バリーに見つかった飯田は作戦道理にここに葉隠がいないものとして話だす。

 

 「見つかってしまったか!! 尾白君、核は爆豪君たちに任せて此処は二人でバリー君の足止めをし……」

 

 しかしバリーは飯田が言葉を発し終わるのを待たずに高速で飯田と尾白に迫り、一撃のもとに2人を昏倒させ、確保テープで縛る。

 

 それを、間近で見た葉隠は、今にも叫び出しそうになる自分の口を両手で必死に抑えた。

 

 飯田と尾白の犠牲を無にしない為、葉隠は物音を立てない様に息も止めてゆっくりバリーから遠ざかろうとゆっくり後づさろうとする。

 

 だが一歩下がった所で葉隠は何かにぶつかった。

 

 後ろには何もなかったはずなのにと葉隠が後ろを振り向くとそこにはバリーが雄然と立っている。

 

 「葉隠さん、僕は目も良くてね、可視光線だけじゃなく紫外線や赤外線その他諸々見えててね、だから君の姿もちゃんと見えてるよ。」

 

 バリーのその言葉に今度は葉隠も自分の叫びを押さえなかった。

 

「バリー君のエッチ!!」

 

 余りにも葉隠が堂々としているので彼女の裸を見ているという意識が今までバリーにはなかったのだが葉隠のその叫びで何だかバリーも恥ずかしくなったようで視線はそらさないが顔は反らせた。

 

 「ごめん。」バリーは葉隠に謝罪しつつ、自分のマントを取り外し、葉隠れが逃げる間もない速さで彼女をマントでくるみ、さらにその上から確保テープで拘束する。

 

 「ごめんね、トオル、窮屈だろうけど爆豪が捕まるまで大人しく待っててくれよ。 すぐにほどきに戻ってくるから。」

 

 そう言うや否やバリーは爆豪を探しに行く。

 

 

 バリーは爆豪を見つけると爆豪も気づかぬ速さで後ろに回り込み、爆豪に声をかける。

 

 「また単独行動か? バッドボーイ。」

 

 爆豪が振り返る。その顔は最初から怒りに激しくゆがんでいた。

 

 「後ろ取っておきながらのんきに声かけてくるとか、舐めてんのか、テメェ!!」

 

 爆豪が右手を大きく振りかぶり攻撃してくるがバリーは高速で爆豪の後方にまた移動し、挑発する。

 

 「本気を出さなきゃいけないようには感じなくてね。」

 

 爆豪はますます怒り狂う。

 

 「とっとと本気出しやがれぇ!!! そうじゃねぇと、テメェを倒して俺が一番だって証明できねぇじゃねぇだろうがよぉ!!!」

 

 「フッ、もしかしてジョックのつもりだったのかワナビー。」

 

 自分を馬鹿にするバリーに爆豪はありったけの怒りをこめて右手を振りかぶり突進していく。

 

 「死ねぇぇぇぇ!!」

 

 突進の勢いのまま爆豪は振りかぶった右手でバリーを爆破しようと振り下ろす。

 

 しかし爆豪の渾身の一撃もバリーに簡単に片手で受け止められる。

 

 爆豪の右手を掴んだバリーはそのまま片手で爆豪を振り回し、壁に叩きつける様に投げ飛ばした。

 

 衝撃に耐えられなかった壁は崩れ、爆豪は壁を突き破りビル中央の部屋に転がっていく。

 

 痛む体を無理やり起こした爆豪はゆっくりと歩いて部屋に入って来たバリーに爆発を放つ。

 

 バリーはそれを容易く躱し、それだけではなく一瞬のうちに爆豪に何度も殺さない様に手加減して攻撃をくらわせる。

 

 爆豪が爆破を繰り出し、バリーがよけながら攻撃をする、そんな繰り返しが数度続き再び爆豪が倒れた時、オールマイトから通信が来た。

 

 「スカイライン少年! やりすぎだ……」

 

 バリーはオールマイトの言葉を途中で遮る。

 

 「ここで終わりなんて言わないで下さいよ。 オールマイト。 爆豪が緑谷をボコボコにしてた時は止めなかったんですから、それに爆豪はまだやる気ですし、僕にも考えがあります、おとなしく観ていてください。」

 

 そうバリーが言い切るとオールマイトは「あまり過剰に攻撃はしない様に」といって通信を終えた。

 

 倒れた爆豪を見下すようにバリーは語り始める。

 

 「オールマイトから通信だったよ、弱い者いじめは止めろってさ。まぁ、そう見えるのも無理ないよね、バクゴーじゃぁ、僕には一生頑張っても勝てないもんね。チャンスがあるとしたらもっと強い個性を持って生まれてこれるかもしれない来世ぐらいかな。」

 

 爆豪は倒れ伏したままバリーの話を聞きガチリと音がするほど歯を食いしばった。

 

 爆豪はかつて緑谷に似たようなことを言ったことがある。

 

 (あいつは、デクはそれでも折れなかった、夢に向かって走り続けて、ついに俺をッ……俺をッ、負かした!!)

 

 「クソックソックソッ。」

 

 爆豪は何度も床をたたく。

 

 (あいつにできて、俺にできねぇなんてことはありえねぇ、そんな事認めるもんかよッ。)

 

 爆豪は歯を食いしばり堪えようとも堪えきれない涙を瞳に浮かべ、己を鼓舞するために思いの丈をすべて口にする。

 

 「今日、俺はデクに負けた!!! 半分野郎を見てかなわないんじゃって思っちまった!!! ポニーテールの奴の言う事に納得しちまった!! そんで今もテメェにやられっぱなしだ!!! でもなぁ、負けは認めても、折れたりしねぇ!!!! こっからだ!! 俺が!!! 俺は!!! 一番になってやる!!!!」

 

 そんな爆豪をバリーは無視するのでもなく、嘲るのでもなく、真剣にまっすぐ爆豪を見つめていた

 

 爆豪は起き上がりバリーの顔をまっすぐ見返し、右手を天井にかかげ、籠手にたまった汗で大爆発を起こそうとする。

 

 バリーはその瞬間とっさに頭の中でシミュレーションするが、導き出された答えは大変なものだった。

 

 爆豪の爆発で崩れるであろう3階分の天井が落ちてきた場合、連鎖的にビルが崩れる。

 

 そうなれば爆豪も下の階にいる飯田たちも全員がれきの下敷きになって大怪我か最悪の場合、死亡の危険もある

 

 まずい!!

 

 そう考えた瞬間バリーの体はすでに動いていた。

 

 

 

 

 あたりにまるで雷の様な凄まじい爆音が響き、爆豪の爆発が放たれる。

 

 その爆発は空へと、むなしく何も破壊せず消えていく。

 

 バリーが爆豪を屋上に移動させたのだ。

 

 ひとまず安心し、バリーが一息ついた所で、爆豪はバリーの胸倉を左手で掴む。

 

 「分かってたぜ、テメェが俺を移動させることはよぉ、だってヒーローだもんなぁ!!」

 

 爆豪はこの時を狙っていた。

 

 爆豪はバリーが必ず自分を外に連れ出すと確信していたのだ。それはもはやバリーへの信頼とも言えるのかもしれない。

 

 そして、そこに隙が生まれることに賭けたのだ。

 

 賭けは爆豪の勝ち。

 

 「死ねやぁ! バリー!!!!!!」

 

 爆豪はバリーに左手の籠手にたまっていた汗の大爆発をゼロ距離で浴びせた。 

 

 大爆音と閃光の跡に爆煙が立ち込める。

 

 だんだんと風が散らしていく煙の中から現れたのは……己の爆発の衝撃をゼロ距離で受け、気絶した爆豪を抱える無傷のバリーだった。

 

 「まったくいい根性しているよ、気絶しても離さないんだら。」

 

 バリーが爆豪を抱えていたのはいまだに彼がバリーの胸倉を掴んだままだったからだ。

 

 そんな爆豪に感心するやら呆れるやらバリーは苦笑し、取り出した確保テープを爆豪に緩く巻く。

 

 「ヴィランチームWIN!!」とオールマイトの終了の合図が聞こえる。

 

 それと同時に、よほど心配していたのであろう、オールマイト本人も、マントをたなびかせビルの屋上までジャンプし現れた。

 

 「スカイライン少年、やはりやりすぎだ!! 一歩間違えば、大事故になりかねなかった。」

 

 オールマイトはバリーに対し不快感をあらわにし、叱責する。それも当然だろう、ビルを爆破しようとしたのは爆豪だが、そこまで追い込んだのは間違いなくバリーなのだ。

 

 「バクゴーがあんな手に出るとは想定していなかったよ。それは認める。けど結果的にはこれでよかったと思っている。」

 

 いぜんと難しい顔をしているオールマイトにバリーは爆豪の手を外しながら、何故あんなバリーには不釣り合いな悪役を演じたのか、理由を語った。

 

 「最初は少し懲らしめてやろう位に思ってただけだったけど、バクゴーと闘っていて、此奴には正面から戦って、敗北を認めさせてやる奴が必要なんじゃないかと思ってね。」

 

 全てバリーの勝手な想像だが、だからこそ思ったことをすべて語る。

 

 「バクゴーとミドリヤが闘っていた時から、ミドリヤとバクゴーはかみ合ってない様に感じていた。 バクゴーがミドリヤ個人に対して思いをぶつけているのに対して、ミドリヤはあくまでバクゴーとの私闘ではなく訓練として戦っていた。どちらが正しいという話なら間違いなくミドリヤが正しい。しかしそれではバクゴーの鬱屈した思いは解放されないじゃないかと思っていた。」

 

 「だからか……。 私も爆豪少年の肥大化しすぎた自尊心については何とかしようと思っていた。 だが授業中にスカイライン少年が何とかしようと動く必要はなかったんだ。」

 

 オールマイトは苦虫を噛み潰すような顔でそう言った。

 

 「そうかもしれない。ほんとは全然関係ないのかもしれないし、バクゴー自身で解決できたのかもしれない。けどやっぱり、余計なお世話かもしれないけど苦しんでるやつがいたら何とかしてやりたいって思っちゃたんですよ。」

 

 バリーは救護用のロボットに爆豪を任せ、もう一度オールマイトに向き合う。

 

 「ほら、余計なお世話ってヒーローの本能みたいなものでしょう。」

 

 「…………………」

 

 オールマイトは言葉が出ない。バリーの言葉に納得したわけではないし、言いくるめられたわけでもない。 ただ彼の実質2日ほどの教師歴ではどうすればいいか分からなかったのだ。

 

 その後、バリーとオールマイトは飯田たち3人を回収しモニタールームに戻った。

 

 そして滞りなく講評が行われ、解散となった。

 

 

 

 

 

 緑谷は瞼の奥からかすかな光を感じ目覚める。

 

 消毒液のようなにおいがうっすらと鼻に感じ、自分のいる場所が保健室であると気づく。

 

 疲れているからか中々開いてくれない重い瞼を少しずつ開くと蛍光灯が見えた。

 

 (僕はどうなったんだっけ。)

 

 あやふやな記憶をたどりどうして保健室にいるのか考え、対人訓練をして爆豪、飯田ペアに勝利したことを思い出す。

 

 「おい。」

 

 緑谷が声のした方に視線をやるとそこには

 

 「かっちゃん!!」

 

 爆豪がベッドに寝ていた。緑谷も相当痛々しいが、爆豪も緑谷に負けず劣らずだ。

 

 オールマイトの力、ワンフォーオールを使って得た勝利に緑谷は爆豪に申し訳なさが募る。

 

 「僕の個性は人からもらった物なんだ。……誰からかは言えない。 そのうえ全然制御も効かなくて……」

 

 「うるせぇ、黙れ、テメェの話はどうでもいいだよ。」

 

 爆豪は緑谷の話を遮り語りだすが緑谷の方は見ていない。

 

 「今日、俺はテメェに負けて、クソヤンキーにも負けてこのざまだ。もう今の自分が弱ぇ事は認めた、だけど俺が憧れて目指したのは最後には必ず勝つ一番すげぇヒーローだ。」

 

 緑谷は何時もの激しさが鳴りを潜めた爆豪に唖然としつつ、何か今までと違う凄みを感じる。

 

 「だけど、このまま弱ぇままじゃいねぇ、一番に手が届かねぇなんて思わねぇ、俺は絶対にここで一番になってやる。」

 

 それだけ言うと爆豪は緑谷に背を向けてしまう。

 

 「僕も負けない、君の背を追いかけて、何時か追い越すから。」

 

 緑谷もそれだけ言うと体力を回復するためにもう一度目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 授業がすべて終わったバリーは何処にも寄り道せずに家に帰る。

 

 家に着き玄関を開けると珍しくバリーの父クリストファーが帰っていた。

 

 何時ものノーネクタイで着こなしている高級ブランドのスーツではなく、もっとカジュアルなシャツとジーンズ姿だった。

 

 「おかえり、バリー。」

 

 「ただいま、如何したのそんな格好して。」

 

 「今日は、事務所の慰労会をかねて花見をしながらナイトバーベキューをするって、朝言っといただろう。」

 

 「そう言えばそうだったね。」

 

 「分かったら準備しろ、もうすぐ行くぞ。」

 

 急かすクリストファーをよそにバリーはマイペースに「大事な用があるから先に行って。」と自分の部屋に行く。

 

 「分かった、それじゃ私は先に行っているから、なるべく早く来なさい。」と言いクリストファーが出かける。

 

 バリーは部屋に入ると早速、用事を済ませるためにパソコンを起動した。

 

 パソコンが起動するとバリーはメーラーを立ち上げメリッサにメールを書いた。

 

 

 Dear マイ ハニー

 

 そっちは元気でやってるかな、僕は元気が有り余り過ぎて毎日、走り回っているよ。

 君の作ってくれたコスチュームはすごく良いよ、着心地も最高だし役立っているよ。

 ちなみにショルダーアーマーの名前はキャプテンシールドにしました。かっこいい名前だろ。

 

 雄英に入学して楽しみにしていた入学式がなくて少しがっかりだったよ。

 個性把握テストってテストがあったんだけど、それで1番を取りました。

 それから対人訓練もあったよ。もちろん僕は二つも年下のヒヨッコに負ける事なんてないんだけど、逆に手加減が難しくてね。大分力を抜いたんだけどそれでも簡単に相手を倒しちゃったよ。

 僕の近況はこれぐらいです。君からの返事を待ってるよ。

 バリーより

 

 P.S.  ダッドの言ってたように日本にも可愛い娘はたくさんいたけど、メリッサほど可愛い娘はいなかったから安心していいよ。僕の心はいつも君の物だ。

 

 

 

 






 読んでいただきありがとうございました。

 感想&批評などいただけると幸いです。

 次回はいよいよメリッサを登場させていきたいなと思います。


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