今回、Iアイランドが舞台でメリッサがメインで出てきます。
アニメでもサスペンス風な話やってたのでサスペンス風の話にしました。
なので少し残酷描写があります。
4話
アカデミー、そこはIアイランドの特に優秀な学生が集まるハイスクールだ。
雄英高校などと同じくヒーロー科、サポート科、普通科など様々な学科があるが、やはりIアイランドの学校らしく、個性研究やサポートアイテム開発を学べるサポート科が一番人気で一番人数も多い。
しかしアカデミー自体は大学の様な単位制なので専修以外の授業は、学科、学年関係なしに好きにカリキュラムを組んでいるので学科ごとの対立や疎外などとは無縁な感じである。
そんなアカデミーの校舎は人工島と言うIアイランドの特性故かスペースを最大限利用するために平面的な大きさよりも立体的な大きさを重視していて、Iアイランドの200階もあるセントラルタワーほどではないにしても結構な高層建築として建てられていた。
そして校舎の屋上は実験スペースを除いて、休憩所として利用できるように生徒に解放されている。
今はアカデミーが始まったばかりで、授業がすべて終わっても皆それぞれの用事が忙しく休憩所を利用する人はまばらだが、それでも少しはいた。その内の一人、眼鏡に金糸の様に美しい長髪の少女は、休憩所にいくつもあるパラソルの刺さった丸いテーブルの一つのパラソルの影になっている席で紙コップのコーヒーを手にタブレット端末を見ながらくつろいでいた。
彼女はメリッサ・シールド、天才科学者デヴィット・シールドの娘でアカデミーの生徒、そして何よりバリーの片思いの相手だ。
メリッサがタブレット端末でバリーのメールを相変わらずねと、苦笑しながら読んでいると、一組の男女が近づき、声をかけてきた。
「メリッサ、なんだか楽しそうね?」
「面白いことでもあった?」
この二人はメリッサやバリーの友人で白に近い金髪で病的に肌の白い女の方がケイトリン・フロスト、一瞬で人間を骨まで凍らせる凍結と言う強い個性を持つも、サポート科の生徒として個性研究などをしている生物学者の卵。男の方、カート・トラップもサポート科に在籍し、個性は触れた電子機器を操ると言う個性を持っている。男子にしては低めの身長に華奢な体つき、肌はまるで陶器の様に白い、まるでフンメル人形の様な少年だ。
2人に声をかけられたメリッサは一旦、メールを読むのを止め、タブレットを2人に見せて、問いに答える。
「大した事じゃないの、バリーからメールが来てたから、それを読んでたのよ。」
「バリーから? 彼の事だから、どこで行っても元気にしてるんでしょうね。」
ケイトリンがそう言うとカートがすかさず「むしろバリーが元気じゃないとこなんて想像できないけどね、いつもそこら中走り回ってるイメージしかわかないよ。」と言う。
メリッサは彼女たちの発言に思わず笑ってしまう。
「みんな、バリーのことお見通しなのね、確かにメールでも元気に走り回ってるって書いてあったわ。」
ひとしきり笑ったメリッサは、二人に席を勧める。
「二人とも座って、それでどうしたの、二人も休憩?」
席に着いて二人は屋上に来た目的を話す。
「メリッサに用事があって来たのよ、カートと話していたんだけど、これから出かけない?」
「レッド・トルネードっていう人型ロボットの発表会なんだけど、噂だとかなり凄いらしいんだ。」
メリッサは余り乗り気ではないようだ。
「う~ん、如何しようかしら。」
そう言うと少し二人の顔が曇る。
そんな2人の顔をみて申し訳なくなり、メリッサは時間があるか少し考え、結局、一緒に行くことにした。
「面白そうね、行きましょう。」
「やった!」
「そうこなくっちゃ! そうと決まれば、早く行こう!」
二人は喜び早速立ち上がりメリッサに早速行こうと促す。
「もう、二人ともバリーの事言えないわね。」
メリッサはタブレットを鞄にしまい、あと少しになっていた飲みかけのコーヒーを一気に飲んでしまい、カップをごみ箱に捨て、二人の後に続く。
3人は仲良くアカデミーを出て、ロボットの発表会場に向かった。
メリッサとケイトリン達、3人は会場に向かうためにIアイランド外縁部に来ている。
「ねぇ、カート、会場ってホントにこっちなの?」
メリッサが二人に本当にこの方向であっているのか聞く。
「大丈夫、こっちであってるよ。」
メリッサが疑問に思うのも無理がない、今三人が向かっているのはIアイランドの外縁部でも実験場として使われている何もない大きな広場があるだけの場所なのだ。
3人がそのまま進んでいくと会場が見えてきた。
「わぁ、凄い!」
メリッサが感嘆の声をあげる。
会場はメリッサが想像していた屋内展示場みたいなものではなく、野外のだだっ広い広場に仮設の会場を設置した野外ステージになっていた。
「行きましょう。」
ケイトリンにいざなわれ全員で会場に入る列に並ぶ。
入場の順番が来たときケイトリンが「私たち3人は学生です。」と言って学生証を見せると3人はパンフレットを渡され、タダで入場できた。
「無料のイベントなの?」とメリッサが聞くとカートが「そうらしいよ。」とパンフレットを開いてメリッサに見せた。
そこにはこのイベントの主催者にしてレッド・トルネードの開発者のDr.モローの談話が掲載されていた。
それによるとこれからの未来を担う若者が柔軟な発想、思考を持つことができるように様々な物に触れる機会を積極的に用意していきたいと言う事だった。
メリッサは得心がいった。
「なるほど、だから開始時間がこんな時間になってるのね。」
「メリッサの考えてる通りだと思うよ、きっと学校が終わる時間に合わせたんだよ。」
メリッサとカートの2人がそんな話をしているとケイトリンが2人を呼んだ。
「メリッサ! カート! そろそろ始まるみたいよ。」
三人が席に着くとステージを見ると司会進行役だろうか二十歳ぐらいのスーツ姿の女性が出てきた。
「皆さま、お忙しい中お集まりくださいまして、ありがとうございます。只今からDr.モローの研究発表会を始めさせていただきます。」
司会の女性が無難に挨拶を終えていく。
「早速ですが天才科学者モローとそのDr.モローの最高傑作、レッド・トルネードをご紹介します。」
もうもうとスモークがたかれ、トラップルームからDr.モローとレッド・トルネードが入っているのであろう長方形のボックスがエレベーターステージで上がってきて、司会者の女性がバックステージへと帰っていく。
メリッサはそれをとても派手だと思ったが、個人で研究の発表会をするような人物ならさもあらんと、納得もした。
スモークが完全にはれるとDr.モローの姿がはっきり見える。40歳手前位の、よく言えば自信に溢れた、悪く言えばプライドが高く傲慢そうな、そんな感じを受ける人物だ。
「やあ、はじめまして、Dr.モローだ、よろしく、今世紀最高にラッキーな皆さん。」
どこかにマイクを付けているのかDr.モローの声が会場中に響く。
「何がラッキーなのか、皆には分からないだろうから、説明しよう。今日、君たちは歴史が変わる瞬間を目撃するんだ! かつて中国で光る赤子が生まれたように、今日、私のレッド・トルネードが生まれ、世界が変わり始めるだろう!!」
そう言うとDr.モローはボックスについているスイッチを押す。するとボックスが中央から開いていきレッド・トルネードの姿があらわになる。
レッド・トルネードは製作者の嗜好を反映しているのか、その名の通り真赤な人型ロボットだ。
メリッサとケイトリンは派手だなぁ、位しか感想はなかったが、カートは大げさに驚き、はしゃいでいる。
皆の注目に気を良くしたのかDr.モローはさらに上機嫌で語りだす。
「レッド・トルネードの素晴らしい点は一晩では語りつくせないほどあるが、今回、一番の注目してほしいのは基本性能だ。」
Dr.モローの演説は過熱していく。
「昨今の平和がヒーローたちにより維持されている事には敬意を払おう。しかしヒーローの力、個性は個々人の資質によるところが大きく、統一性に欠く戦力だ、そのうえヒーローはその功名心ゆえに犯罪の発生件数が多い都市部に集中する傾向があり、それにより地域格差が生まれている。このことは大きな問題だ。しかしこれらの問題は人間であるならば仕方がないことでもあると私は考える。 だがもし私のレッド・トルネードの様に量産のできる画一的な戦力があるとすればどうだろう、それらの問題は一気に解決する。しかもレッド・トルネードはヒーローを凌駕する戦闘力を持っており、災害救助などの現場においてもその高い性能で大いに成果を上げてくれるだろう。 そうなればもうヒーローなんて言う物は無用の長物、これからは私のレッド・トルネードの時代だ。」
現代の社会を真向から否定する過激な発言だ、しかもDr.モローは自分の発言に酔っている様だ。この様子では彼の〝若者に柔軟な発想、思考を持つことができるように様々な物に触れる機会を積極的に用意していきたい〟と言うのもそのままの意味でなく、若者に自分の意見を刷り込みたいという意図が透けて見える。
このヒーローへの強烈なヘイトスピーチの様なものに黙っていられないものがいた、ヒーローやヒーローに憧れヒーローになろうとする者達だ。
大人ならば場を考慮し、一旦怒りを腹に収めることもできるかもしれない。しかし子供はどうだろう。
会場の中央付近の席で背が高くが体格の良い男が立ち上がる。
メリッサたちが後ろからその姿を見ていると、その男が嫌味ったらしくゆっくり拍手した。
男は慇懃無礼にDr.モローを挑発し始める。
「素晴らしい、本当に素晴らしいよ、今の言葉がすべてあんたの妄想じゃなければね。」
Dr.モローは自信満々に余裕の表情を崩さず、男に「どういうことかな?」と問う。
すると男は「少なくとも俺なら、そんなガラクタは一撃で破壊できる。」と宣言した
「なるほど、君の言いたいことは分かった、なら、試してみようじゃないか?」
Dr.モローは男をステージに招き上げた。
その男を見て今まではしゃいでいたカートは急に静かになり、その男が誰だかわかったのか口の中で隣のメリッサたちには聞こえないぐらい小さく「アイツ」と呟く。
次いでケイトリンも心当たりが出てきたのかメリッサの肩を揺すり、「ねぇ、あいつってヒーロー科のやつじゃない?」と確認する。
メリッサも気が付いたのかケイトリンに同意する。
「ええ、彼、ショーン・ブラントだわ。」
ショーン・ブラント、彼はアカデミーのヒーロー科に属する、雷撃を自由に放てる個性を持った優秀な学生だ。しかしその反面、彼はヒーロー科でも乱暴者で有名でカートも暴力を振るわれたことがある。バリーがヒーロー科に在籍していたころは彼がカートや他の生徒に一方的に暴力を振るおうとしていたときは必ずバリーが止めていたのでそこまで問題になっていなかったが、今は増長し色々な問題を起こしている。
「それではまず、君はどなたなのかな?」
Dr.モローがそう問おうとショーンは得意満面に自己紹介する。
「俺はショーン、アカデミーのヒーロー科の優秀な学生さ。」
「それではショーン、君は私のレッド・トルネードに勝てると言うのか?」
「勿論だ! 俺の雷撃ならそんな機械人形一撃だ。」
ショーンは自分の力を誇示するかのように空に向かい雷撃を放つ。中々威力がありそうだ。
「では試してみないかね? レッド・トルネード起動だ。」
Dr.モローはレッド・トルネードに命令をするためのインカムを耳につけ、レッド・トルネードを起動し、ステージ中央に移動させショーンに対面させた。そして自分は少し離れた位置に移動した。
「ほんとにいいのか? 壊れちまうぞ。」
ショーンは腰を落とし、まるでエネルギーでも溜めているかの様に左前の半身になり右手を腰のあたりで握り込んでいる。
「あぁ、かまわないよ。」
「それじゃ、ぶっ壊れな!!」
ショーンは右手をレッド・トルネードに向かい突き出し雷撃を放った。
凄まじい閃光が走り、次いで爆音が会場中に響く。
誰もが閃光から目を守るために顔をそむける。
皆、レッド・トルネードは破壊された、そう思った。しかし皆がステージに視線を戻すとそこにはショーンの最大威力の攻撃にも無傷のレッド・トルネードと、その事に驚き、放心しているショーンだった。
「では、次は此方かな、やれ、レッド・トルネード、殺さないようにな。」
Dr.モローがそう言うとレッド・トルネードはショーンにまっすぐ腕を向け、掌を高速で回転させ小さな竜巻の様な突風を生み出す。
放心状態のショーンは、たちまち風に巻き上げられ後方に吹き飛ばされる。
しこたま風にシェイクされたのかショーンは気絶していた。
「おやおや、彼はもうおねむの時間の様だ、ベッドにでも運んであげなさい。」
Dr.モローはそう言うとショーンを病院に運ばせる。
その後もDr.モローは何もなかったようにレッド・トルネードのエアショーさながらの曲芸飛行をさせたりと、発表会を続けた。
Dr.モローの発表会が終わると三人は家に帰ることにした、だけどカートだけ家が近所ではなかったので途中で別れることになる。
「それじゃあ、バイバイ、メリッサ、ケイトリン、また明日、アカデミーでね。」
カートはそう言って元気に帰っていった。
だがメリッサとケイトリンにはそれが空元気に見えてしまう。
それは彼女たちがカートと仲の良い友人であるからと以前カートの身に起きた悲しい出来事を知るゆえだろう。
「カート、無理して元気にしてるみたいだった。」
2人だけになったケイトリンは悲しそうにそう言う。
「ケイトリン……仕方がないわ、あんなことがあってまだ半年ぐらいなんだから、でも空元気でも続けていれば、いつかは本物になるわ。けど私たちまで悲しんで沈んでいたらカートが空元気を出す場所すらなくなってしまう。」
メリッサは気分が沈みかけているケイトリン優しく励まし、そして自分たちのすべきことを説く。
「私たちは十分カートと一緒に泣いたわ、今度はカートが元気を出せる様にそばで笑っていましょう。それがきっと、今、カートにしてあげられる唯一の事だと思うわ。」
「ええ、そうね。」
頷くケイトリンの肩を抱きメリッサは一緒に家に帰った。
発表会のあった日の夜、22時15分、病院で目覚めたショーンは野外ステージがあった実験場に来ている。
その理由は発表会の時までは持っていたはずのナイフがなくなっていたからだ。
ショーンは普段からナイフを持ち歩いていた、ただ誰かを切りつけようと言うのではない、何となく持っているとかっこよく見られそうという思いからだ。
ただ普通ならこんな夜中に探す必要はない、しかし持っているナイフのたちが悪かった。今日持っていたのはアーミーナイフ、いわゆる十特ナイフのようなものではなく、刃渡り10㎝以上あるファイティングナイフだったのだ。
流石にそんなものが実験場で見つかりショーンの物だと判明すれば刑事罰には問われなくともアカデミーでは確実に停学はくらうだろう。
だからショーンはスマートフォンの頼りないライトを光源としてナイフを探し回っていた。
暗い中、地面を照らしていると、足が見えた。
ショーンが近づいて行く。
「なんでここに。」
ショーンがそう言った瞬間、彼の胸にナイフが刺さる。
「な、なんで。」
傷からはじわじわと血が流れだしショーンの服を瞬く間に赤黒く染めていく、だんだん彼の意識がなくなって来たのか、よろけ、ふらつき、そのまま後ろに倒れ込む。
ショーンの命は絶たれた。
そのことをメリッサたちが知ることになるのは翌日のアカデミーでだった。
読んでいただきありがとうございました。
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