スーパーヒーローのヒーローアカデミア   作:リューイ

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今回もIアイランド編です。
もはやIアイランド編の方が長くなり、自分でも主人公のバリーの事忘れそうになっていますが、漸くIアイランド編も折り返せたかなと思っています。

後、今回出てくる、所謂法医学知識はかなりいい加減に書いているので変な所があるかもしれませんがご容赦ください。

これからも頑張って書くので読んでいただけると嬉しいです。


7話

 突然だがメリッサの朝は父と二人で朝食を食べる事から始まる。 それと言うのも忙しい父、デイヴィスが、時間の許す限り、朝食を家で食べる様にしているからだ。だから朝食は、夜遅くまで研究室に籠り切りになることも多いデイヴィスとメリッサの平日の唯一の親子の時間といっていい。

 

 なのでメリッサはその時間をいつも大切にしている。だが今日は珍しく寝坊して朝食はホットミルクだけで済ませて、家を出た。ホットミルクを作って飲む時間があったなのだから、朝食を少しつまむ時間ぐらいあったのでは?と思うだろうが、そこはメリッサも女の子、朝は何かと時間がかかるのである。

 

 寝坊の原因はやはり昨日の事だろう。刑事と会い、友人が目の前で疑われることなどメリッサにとっても初めての出来事であったのだから衝撃を受けても仕方ない。

 

 彼女がそれを翌日にも、まだ引きずっていることは服装でも分かった。

 

 今日は何時もの6分丈位の薄いベージュのクロップドパンツに白のシャツ、ピンクっぽいベスト、襟もとには大きなチェック柄のリボンといったメリッサの溌剌とした魅力をうまく引き出してくれている活動的なアカデミーの制服ではなく、ウエストリボンのついたスカートの様なシルエットの藍色のガウチョパンツに襟元などにレースをあしらった上品な白いブラウスをタックインして、地味な柄の長めのストールを羽織り、低いヒールの靴を履く、という装いだ。

 

 どちらかというとおとなしめな印象で、ガーデンテラスで紅茶を飲みながらゆったりと読書でもしていそうな雰囲気がある。だがだからと言ってメリッサの魅力が損なわれているわけではない、ただ何時もより少し落ち着いた大人っぽい魅力が現れたと言うだけだ。

 

 この服装の変化はメリッサの今日は落ち着いて過ごしたいと言うメリッサの心境の表れだろう。だがその願いはかなう事はなかった。

 

 アカデミーでメリッサを待っていたのは、昨日に引き続きの流言飛語が飛び交う喧騒だった。昨日と違うのはただ一つ、噂話がショーンの死亡を伝えるもから、カートが警察に捕まったという話に変わっていた事だ。

 

 

 

 

 アカデミーに着いたメリッサは、カートが警察に捕まったとの噂を聞き、その真偽を確かめたい衝動に駆られたが、寝坊をしたせいでもう授業が始まる時間で、確かめる事が出来なかった。それだけではなく間の悪い事に、今日はケイトリンとは違う授業を取っていて昼休みまで会う時間が取れないのでメリッサは昼まで不安のままに過ごした。

 

 メリッサは午前の授業が終わるとすぐにケイトリンと連絡を取り、二人は休憩所の丸テーブルに集まって話し合っていた。

 

 ケイトリンはメリッサと違い怒っていた、フェミニンな装いとは裏腹にその怒りは怒髪天を衝くと言う様に燃え上がっている。だがそれも不安な気持ちの裏返しなのかもしれない。

 

 だがそれでは話が進まないのでメリッサはケイトリンをなだめてから話を続ける

 

 「ケイトリン落ち着いて、カートはほんとに逮捕されたと思う?」

 

 「聞いた話じゃあ、逮捕されたわけじゃないみたいよ、単なる事情聴取みたい。だけどこのままじゃきっとカートが犯人にされちゃうわ。」

 

 「そんな。」

 

 メリッサは顔を青くする。

 

 「警察なんて当てにならないわ、こうなったら、私たちで犯人を捕まえましょう。」

 

 ケイトリンが突拍子もないことを言う。

 

 だがメリッサにはそんなこと、到底できるとは思えなかった。

 

 「ちょっと待って、ケイトリン、そんなの無理だわ、私たちは警察でも探偵でもないのよ。それに何の情報もないし、捜査の仕方もしらないし。」

 

 「大丈夫、情報なら監察医事務所の先生から仕入れてきたし、犯人の目星も付けてきたわ。」

 

 ケイトリンは尻込みするメリッサをよそに、半ば強引に話を進めていく。

 

 「先生の話じゃショーンは一昨日の10時から11時の間にナイフで胸を刺されて死んだそうよ。しかも正確に心臓を貫いて、肋骨も切断されてたって、これだけでもヒョロヒョロのカートじゃ無理なのに警察は何考えてるんだか。」

 

 「じゃあ、何でカートは警察に連れていかれたの?」

 

 メリッサは思いついた疑問をケイトリンに訊く。

 

 「それは、動機があって、アリバイがなかったからみたいよ。」

 

 メリッサはケイトリンにカートが連れていかれた理由を聞き、それなら仕方ないのかもと思いかけるが友人を疑うなんて!と思い直し、その考えを振り払うかのように頭を振る。

 

 そんなメリッサの様子に気づいていないのか、ケイトリンは自分の思い付きを語り始めた。

 

 「それで私、考えたの、他にも動機がある人がいるんじゃないかって。」

 

 メリッサはケイトリンの話を訊いて真っ先に頭に浮かんだ人を口に出す。

 

 「それって、ブレイン君のお父さん?」

 

 だがメリッサの予想は外れていたようでケイトリンは「ちがうわ。」と頭を横に振る

 

 「ジョンとシーリンよ。」

 

 「ジョンとシーリンってショーンの友達の?」

 

 「そうよ。」

 

 「動機があるようには思えないけど。」

 

 「もし、ブレイン君の自殺が本当は他殺で、その犯人がショーン達で、その罪に耐えかねてショーンが自首しようとして口封じにとか、逆に自首しようとしていたジョンかシーリンをショーンが口封じしようとして返り討ちにあったとか、って言うのは如何?」

 

 メリッサはケイトリンのあまりに飛躍した論理に驚くが、ケイトリン自身は大まじめなようなものだから、次第にあり得るかも、と考える様になっていた。

 

 「確かにあり得るかもしれないけど、その動機を証明するには、まずブレイン君の自殺が他殺だってしょうめいしないといけないわ。とっくに警察が自殺って結論を出してるのに、今からそれを覆す証拠が出せるの?」

 

 メリッサがそう訊くとケイトリンは鞄からパソコンを取り出し、「それを二人で考えようと思ってブレイン君の死体検案書とそれを書くのに使ったデータ、先生から借りてきたわ。」

 と言い、ブレインの死について説明し始める。

 

 それによるとブレイン君は、自宅で自分の部屋のクローゼットの扉の、持ち手にロープをかけ、首をつった姿で発見された。首に残っていた索条痕から首を吊ったものと思われ、臓器のうっ血から見ても窒息死で間違いなく。顔面のうっ血、溢血点、および死斑が前腕部、尻、あとは腿裏、脹脛にと出ていることから死亡時、足を前に投げ出した状態で座っていたと思われ、それは死体発見時の態勢とも一致する。などケイトリンはメリッサに説明していった。

 

 普段、死に触れる事のないメリッサにとって、それはひどく生々しく大事な友人の恋人の最後だと言うのに気持ち悪く感じている。そして同時に、そういう風に感じる自分をひどく恥じる事で自分の精神が正常であることも確認している様であった。

 

 そんなメリッサの気持ちを置いてきぼりにケイトリンは話し続ける。だがそれもまたケイトリンなりの正気の保ち方なのかもしれない。

 

 「私思ったんだけど、ショーンはブレインの首にロープをかけて背負う様にして絞め殺したんじゃないかしら、そうすれば首を吊ったときと同じ索条痕ができるって聞いたことがあるわ。」

 

 ケイトリンの案にメリッサはしばらく考え、否と答えを出す。

 

 「確かに同じようなロープの後はつくかもしれないけど、それならロープを外そうと首元をひっかいて傷ができるんじゃないかしら、けどブレインの遺体の首には索条痕しかなかったんでしょう。」

 

 ケイトリンはメリッサの答えに納得し、次の案を出す。

 

 「じゃあ、こういうのは如何? ロープを首に掛けて座っていたブレインの肩をショーンが押して、首が閉まるようにして窒息させた。」

 

 「それでもさっきと一緒よ、ブレイン君の両手が空いてるからロープを外そうとするか肩に置かれた手を払いのけようとするはずだわ。」

 

 「それは私も考えたわ、ショーン達は3人いたんだから、他の2人が手を押さえていたのよ。」

 

 「それでも無理よ、窒息するまでそんなに強く抑えてたら跡が残ると思うわ。」

 

 「圧迫痕ね。」

 

 メリッサの言を受けケイトリンはパソコンのモニターに映る資料を確認した。

 

 「……確かにそんな痕はないわね。」

 

 「もう、さっきから否定ばっかり、メリッサも何か考えてよ。」とケイトリンはメリッサを責める。

 

 しかしメリッサはケイトリンほど死体に接しても居なければ、ミステリーを読んだり、刑事ドラマなどを見る事もないので「うん、分かっているわ、考えてみる。」とあいまいに答えるしかできなかった。

 

 しかしその後も、ケイトリンが幾つか可能性を提示し、メリッサがそれをつぶしていくと言う繰り返しが続いた。

 

 そんなことが続くとケイトリンもメリッサに対して怒っているのではないにしてもイライラが表に現れてくる。

 

 「これよ、これならいけるはず、ショーンは頸動脈洞反射、たぶんスリーパーホールドなんかでブレイン君を失神させたのよ、そうすれば抵抗なく首をつられるし、頸動脈洞反射を利用して失神させるならそれほど強く抑えなくても大丈夫だから痕が残りにくいはずだわ。」

 

 メリッサはそれでも首を絞めるのだから何かしら痕跡は残りそうで上手くいかない様な気がするが自分も専門家ではないので実際はどうなるか分からないので少し考えていると、ケイトリンはそれを自分の意見を肯定しているものとして受け取った。

 

 「これで決まりね! じゃあ、行きましょう。」

 

 そう言って、ケイトリンはラップトップパソコンをかばんにしまい立ち上がる。

 

 「えっ、行くってどこに!?」

 

 思案にふけっていたメリッサはケイトリンの突然の行動に驚くが、ケイトリンの頭の中では決定事項だったのか何を言っているのかしらこの子は、って顔で「ジョンとシーリンを問い詰めに行くに決まっているじゃない。」と校舎に向かって歩いて行く。

 

 「待って、ケイトリン。 いきなり行っても無理よ。まだ三人が仲違いしてたのかも確認が取れてないのよ。」

 

 「じゃあまず、聞き込みからね。」とケイトリンは歩みを止めずに行った。

 

 ケイトリンを一人で行かせるわけにもいかずメリッサは「もう、待って、私もいっしょに行くわ。」とケイトリンを速足で追う。

 

 

 

 

 メリッサとケイトリンはまずショーン達、3人と一緒に遊んだことがあると言う普通科の女子たちに話を訊いた。男子より同じ女子の方が話を訊きやすいと思ったからだ。

 

 「今少しいい?」メリッサが女の子に声をかける。

 

 「なんですか?」女の子の一人が代表して答えた。

 

 「ショーンとジョン、シーリンについて教えてほしい事があるの」

 

 「かまいませんよ。」と緊張した様子で妙に丁寧に答える。

 

 メリッサとケイトリンがアカデミーの制服ではなく、少し大人な感じの服を着ていたので学外の大人と間違えたようだ。普段ならそのようなことは起こらないだろうが、今はショーンの事件があった関係で警察始め少なくない数の普段訪れない大人が出入りしているからこそ起こった珍事である。

 

 だがこれはメリッサたちには有利に働いているのは間違いない。自分と同じ生徒に訊かれていると思うより大人に質問されていると思った方が真面目に答えようと言う気になるだろうから。

 

 メリッサもそれを分かっているのか、あえて誤解は解かずに質問をする。

 

 「ありがとう、私たちが訊きたい事は、最近のショーンたち三人の様子よ。仲違いしていなかった? ケンカをしたり、疎遠になったりしていなかったかしら?」

 

 「あたしたちも詳しいわけじゃないけど」と前置きし女の子たちは答えていく。

 

 「仲違いしている様子はなかったと思う。」

 

 「あの3人、なんか結束は強っぽい感じだったし、確かおそろいのスカーフとか首に巻いてたりとかしたし。」

 

 「ああ、確かに半年ぐらい前にしてたよね、ダサイやつ。」

 

 「あれ、けど最近は巻いてるとこ観たことない気がする。」

 

 「うん、してなかった。」

 

 そこまで女の子たちの話を訊いたケイトリンは「ありがとう、よくわかったわ。」と女の子たちの話を遮る。

 

 メリッサは話を訊き始めたばかりなのにと思い、ケイトリンに「まだ、話を訊き始めたばかりじゃない、ほんとにもういいの?」と確認した。

 

 するとケイトリンは自信満々に「ええ、もう十分よ。」と言い、女の子たちから離れていく。

 

 なのでメリッサも、女の子たちに「ほんとに、ありがとう、助かったわ。」とお礼を言ってからケイトリンに続いた。

 

 ケイトリンに追いつきメリッサは、「何処に向かっているの?」と尋ねる。

 

 ジョンもシーリンもサポート科なので研究室を持っているがケイトリンは近い方のジョンの部屋に行くことを決めたのか「まずは此処から近い方のジョン・パックマンの研究室よ。」と言った。

 

 「もう少し調べた方がいいんじゃない。」

 

 メリッサは先に情報を集めてから行くって決めたと思っていたので驚いた。

 

 「情報は集まったわ。半年前にはおそろいでしていたスカーフを、今してないって事は仲違いしているってことでしょう。それで十分よ。」

 

 メリッサは自信満々なケイトリンに不安を覚える。彼女にはケイトリンが得た情報を自分の考えたストーリーに合う様に解釈している様に思えるのだ。そしてそう言う時は失敗しやすいことをメリッサは知っている。研究にしろ、機械の開発にしろ、得られたデータを恣意的に解釈して成功したためしがないのだ。

 

 そんなことを考えている内にメリッサたちはジョンの研究室の前についていた。

 

 ドア脇についているドアホンの呼び出しボタンを押し、ジョンがドアホンに出たことがわかるとケイトリンはテレビドラマの女刑事さながらの勢いでジョンを呼ぶ。

 

 「ジョン、ジョン・パックマン、いるんでしょ、でてきなさい。」

 

 すると扉があき中から不機嫌そうな男が出てくる。ジョン・パックマンだ。

 

 出てきたジョンはレザーパンツにシャツ、鋲のついたレザージャケットだったが靴だけは自作のサポートアイテムなのか異様にメカメカしかった。

 

 着ている物だけ見ればパンクファッションと言えるのだろうがジョンの立ち居振る舞いと合わさると、途端に不良っぽく、と言うか、チンピラっぽく見える。

 

 なのでメリッサは萎縮してしまいそうになる。だがケイトリンに半ば引きずられるような形ではあるが、ここまで来たら、何か事件について知らないか訊くべきだ、と思い、萎縮しそうになる心を奮い立たせ声を発しようとしたが、その直前ケイトリンが爆弾発言を落っことしてしまい、メリッサが勇気を出して、奮い立たせた心は、使いどころを失ってしまった。

 

 

 「犯人は貴方ね!!」とケイトリンがジョンを指さして宣言するとジョンは眉間にしわを寄せますます機嫌が悪くなった。

 

 そして「何、訳分かんねぇこと言ってんだよ、 ア゛ァ゛」と凄んでくる。

 

 だがケイトリンは怯まず畳みかける。

 

 「貴方がショーンを殺したことは分かっているのよ」

 

 「はぁ、なんで俺がショーンを殺すんだよ。」

 

 「貴方たちが仲違いしていたことは、揃いのスカーフをしなくなったことからも明らかよ。」

 

 話がスカーフの事に及んだ時、ジョンはつき合っていられないと「こっちはダチを殺されてんだ。下んねぇ言いがかりつけんじゃねぇよ。」と捨て台詞を残し部屋に戻る。

 

 メリッサたちもジョンを追いかけ、彼の研究室に入ろうとするが、寸前の所でドアが閉められた。メリッサは直前で何とか止まれたが、ケイトリンは勢い余ってドアに頭をぶつけてしまい、鼻の頭が赤くなっていた。

 

 「大丈夫? ケイトリン。」

 

 メリッサが怪我してないか訊くとケイトリンは少し涙目になりながらも「大丈夫」と言った。

 

 「よかった。 けどどうする?これじゃあもう出てこないと思うけど。」

 

 「こんなことで、へこたれていられないわ。ジョンがダメなら、シーリンよ。」

 

 2人はジョンの研究室の前を離れ、シーリンの研究室に向かう。

 

 シーリンの研究室はジョンの研究室とは別の階にありエレベーターホールから見て右側、非常階段とは逆の方向に位置していた。

 

 メリッサとケイトリンはシーリンの部屋の前に着いく。ケイトリンは今度こそは、と意気込んでいるがメリッサは何だか嫌な予感がしていた。

 

 ケイトリンがドアホンを鳴らす。返事がなく、もう一度鳴らす。それでも返事がなくドアホンのジィーと言う機械音が響くだけだ。ケイトリンが焦れてもう一度ドアホンを鳴らそうとするとメリッサが研究室は完全防音なのにドアホンの呼び出し音が部屋の外にいる自分たちに聞こえる、おかしな状況に気づき、止める。

 

 「待って、ケイトリン、さっきからドアホンの呼出音が聞こえているわ。」

 

 メリッサに言われ、ケイトリも異変に気付く。

 

 「そう言えばそうね。ドアが開いているのかしら。」

 

 二人がドアに注目するとドアが少し空いていた。どうやら工具がドアに挟まっていた様だ。

 

 ドアの隙間から二人重なるように中をのぞき込むと、床に横たわる足が見える。誰かが倒れているそう思った瞬間2人は無理やりドアを開けた。

 

 二人が予想した通り、人が仰向け床に倒れている。倒れていた人物は部屋の主、シーリン・フィッシャーズだった。

 

 二人は急病で倒れたのかもと思い、助けようと部屋に入り、倒れているシーリンに近づく、近くで見たシーリンは死んでいるように思えた。

 

 その瞬間、メリッサはそれ以上、近寄ることができなかった。しかしそれに対しケイトリンはお構いなしに近づいて行き、呼吸と脈を確認する。

 

 「だめね、死んでるわ。」

 

 「そんな……」

 

 シーリンが死んでいると訊き、メリッサは思わず目を瞑り、手を組み、冥福を祈った。

 

 その間もケイトリンは物言わぬ死体となったシーリンの遺体を探っていく。

 

 祈りを終えたメリッサが目を開けるとケイトリンが遺体を触っていることに気づき慌てる。

 

 「ちょっと、ケイトリン!何してるの! 触っちゃ駄目よ。」

 

 メリッサがそう咎めると「大丈夫、手袋してるから」とメリッサに背を向けたまま、乳白色のラテックス手袋をつけた手をメリッサに見える様に上げる。

 

 「なんでそんな物、持ってるのよ。」

 

 「乙女のたしなみよ。」ケイトリンはメリッサの疑問に冗談めかして答える。

 

 「えっそうなの?」と少し納得しかけるが、そんなわけはない、メリッサも大分混乱している様子だ。

 

 「ってそうじゃないわ。手袋があっても触っちゃ駄目よ。 今、警察に連絡するから待ってて。」

 

 メリッサがそう言って、スマホで電話をかけている間も、ケイトリンはシーリンの死体を観察していた。

 

 「警察、すぐ来るから、これ以上、遺体に触らない様にだって。」

 

 「大丈夫、もうだいたい調べたわよ。」ケイトリンはそう言い、分かったことを話し始める。

 

 「顔面はうっ血して腫れてるし眼瞼などに溢血点、索条痕も首に対して水平にはっきり残ってるから窒息死。首にロープを外そうとひっかいたような傷があるし、指には傷から出た血液とかもついてるから絞殺されたとみて間違いないと思う。」

 

 「そうね、見たところ、凶器になりそうなものもないし、犯人が持って行ったのかもしれないわね」とメリッサも死体を見ない様に部屋を見回し、ケイトリンの他殺説に同意する。

 

 「凶器……ね、索条痕は首周りを一周して、首の後ろで交差しているから、ひも状のものだとは思うけど幅が1.5㎝位あるから結構太いわね。」そうケイトリンが言うとメリッサも半ばやけくそ気味なのか自分も考え始める。

 

 「ケイトリン、死亡推定時刻ってわかるの?」

 

 「顎が硬直していたし死斑も出ているから死後2.3時間は経過しているはずだけど……あっ、そうだ監察医の先生が死後4,5時間以内だったら死斑が移動するって言ってた気がするから死体を、……今仰向けだから、うつ伏せに移動させてみましょう。」そう言ってケイトリンは死体を動かそうと手をかけた。

 

 メリッサは自分の発言からケイトリンがこのような暴挙に出るとは露程も思っておらず、慌てて制止しようとする。

 

 しかしその前にメリッサとケイトリンを制止する、若々しい張りのある女性の声が研究室内にこだました。

 

 「貴方たち何をやっているんですか!! すぐに遺体から離れなさい!!」

 

 メリッサとケイトリンが揃って振り向くと研究室の入口に黒いスーツ姿の女性と古ぼけた茶色のスーツを着た馬面の老人がいた。

 






 読んでいただきありがとうございました。

 今回二人目の犠牲者が出て、漸く次回から解決に向っていけると思います。 

 感想、批評いただけると嬉しいです。
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