今回はメリッサが活躍しているはずです。
書いてて思いましたがサスペンスものでは、探偵役はまさしく俺Tueeeとか俺SUGeeeの塊だなって思いました。
ナカムラとサイクスが警察に呼んだカートの尋問をひと段落させた昼頃、Iアイランド警察に死体を発見したとの通報が舞い込む。
死んだのが昨日のショーン・ブラントに続きアカデミーの学生であったこと発見場所がアカデミー校舎内であったことからナカムラたちにも連絡が来た。オフィスに重大犯罪課のメンバーが集まり詳しい情報を訊くと死んだのがショーンの友人のシーリン・フィッシャーズであることが分かり、連続殺人の可能性がある為、この件もナカムラとサイクスが担当することとなった。
ナカムラとサイクスは警察用ロボットを引き連れ、猛スピードで車を走らせアカデミーに行く。前回訪れた時はきっちり許可を取ってから校舎に入ったが、今回は、現場を好奇心旺盛な学生にあらされぬ様にスピード重視で警察バッジを掲げ強引に押し通った。
現場に到着すると案の定二人が心配した通り、二人の少女が遺体の前にいて、一人は事もあろうに遺体に触れようとしていた。
サイクスはそれを見て少女たちを怒鳴るように制止する。
一方、ナカムラには彼女たちに見覚えがあり、すぐにカートの友人のメリッサとケイトリンだと分かった。おおかた、カートが警察に事情聴取に連れていかれたことが不満で事件を自分たちで調べようとして巻き込まれたのであろうことは、直ぐに思いついた。
サイクスに怒鳴られ怯える様に自分たちの方じっと見るメリッサたちを見て、ナカムラは深いため息をつき、とりあえず、メリッサたちをサイクスに任せ、現場を調査し始める。
警察が来てからというものメリッサは、まるで針の筵に座らされているかの如き、居心地の悪さを感じていた。それと言うのもナカムラからメリッサたちを任されたサイクスは押っ取り刀で駆け付けた校長にナカムラが事情説明をしている間も、警察用のロボットが鑑識作業している間も、声を荒げるわけではないが、懇々とメリッサたちを叱り続けたからだ。
流石のケイトリンも、少し冷静になると、勝手に遺体に触ったこと自体は、悪かったと思ったのか静かにサイクスの説教を聞いていた。
だが雲行きが怪しくなってきたのは鑑識作業でシーリンの研究室に入った人間の痕跡が当の部屋の主のシーリンとメリッサ、ケイトリンの3人分しかないと分かってからだ。サイクスは捜査の常套として第一発見者のメリッサとケイトリンを「貴方たちが来たとき、すでにシーリン・フィッシャーズは死んでいたの? 本当は友人のカート・トラップの為に貴方たちがシーリンを殺したんじゃないの?」と疑い始めた。
メリッサも「本当に私たちが来た時にはすでに死んでいました。」と必死に弁解したが、ケイトリンの方がもっとすごかった。
「そんな的外れの事を言ってるから、私たちが事件の事調べてたんでしょ!! シーリンは私たちが訪ねる2.3時間以上前から死んでたのは間違いないわ!!」と警察批判と自分が死体から読み取った死亡推定時間を交えながら自分の潔白を主張していた。
だがサイクスもナカムラも何の証拠もなしにメリッサとケイトリンの話を信じるほどおめでたくはない。何よりも遺体に触れると言う証拠隠滅とも取れる行為をしているのだ、疑うなと言う方が無理である。
だが死亡推定時刻がケイトリンの言う通りなら彼女たちは潔白だ、だからこそ早めにきちんとした死亡推定時刻を知りたかったのかナカムラは現場をサイクスに任せシーリンの遺体を早めに監察医事務所に運んだ。
ナカムラが監察医事務所に行ってからしばらくしてサイクスに死亡推定時刻が判明したと連絡が来た。その時刻はケイトリンが言った時刻とそう変わらなかった。
「死亡推定時刻が判明しました。9時から11時の間です。その間二人は何処にいたの?」
「その時間なら授業を受けていたと思います。」とメリッサが答え、それに続きケイトリンが「だから私たちじゃないって言ったでしょう、私もその時間は授業を受けてたわ。」と答えた。
「だからと言って遺体に触ったことは良い事ではありません。今後このようなことはない様に。」と得意げなケイトリンが図に乗らない様にサイクスは釘を刺しておく。
ケイトリンは少しふてくされているがメリッサは不謹慎と知りつつも少し喜んでいた。
「あの、これでカートの容疑は晴れましたよね。シーリンが死んだときカートは警察にいたんですから。」
メリッサはサイクスにそう訊くが色よい返事は得られなかった。
「それは難しいわ。」
「なんでよ!!」ケイトリンがサイクスの返事に納得がいかないのか声を荒げる。
「彼には強い動機があるし、現場に犯人の痕跡がない謎もあるから、まだ遠隔で殺した可能性もある、容易に容疑者から外すことはできないわ。」
「ならその謎を私たちが解くわ。」ケイトリンがそう言うがサイクスは「警察もまだ解けていないのに無理よ。」と取り合わない。
また険悪な雰囲気になりかけていたのでメリッサは、今できる事を考え、提案した。
「ねぇ、今はその謎は一旦おいておいて、エレベーターホールにある監視カメラを見た方が良いんじゃないかしら、直接部屋の出入りは映っていなくても、シーリンの研究室があるエレベーターホールの右側のフロアは、行き止まりだから、少なくとも誰が犯行時刻に右側のフロアにいたか分かると思うの。」
だがサイクスは「情報ありがとうございます。それは警察の方で調べておきますので、今日の所は二人とも帰って頂いて結構ですよ。」と言ってメリッサたちを捜査から遠ざけようとする。
警察からしたら当然の事なのだが警察に対して不信感を持ったケイトリンにとっては、とても了承出来る事ではなく、捜査にかかわろうとする。しかしケイトリンも今までのサイクスとのやり取りから強引にいってもダメなことは分かっていたので、今度は自分たちの事を、特にメリッサを彼女の父の事を引き合いに出し、売り込み始めた。
「私たちもご一緒しますよ、刑事さん。学校の事でしたら、刑事さんより私たちの方が詳しいですし、それに痕跡が残っていないという謎が個性に由来した物なら個性の研究者を目指している私も力になれると思います。その上、メリッサはあのノーベル個性賞を受賞したシールド博士の娘なのよ。」
「シールド博士! あのオールマイトを始め、多くのヒーローのコスチュームやサポートアイテムを手掛けた?」
メリッサは父親を尊敬しているが普段あまり父親の事を大っぴらにはしない。それは父を尊敬するが故、父の威光で自分の評価に下駄をはかせない為なのだが、今回だけは友人の為と不快感は呑み込み、笑顔で「ええ、そうです。」と返事をする。
するとサイクスの表情は一変する。何かメリッサの要請には答えておいた方が良いのではという表情だ。
ノーベル個性賞を受賞したとは言え、一研究者でしかないデヴィット博士は個性研究の権威ではあるが権力などありはしない、だが此処科学者が集う人工島Iアイランドでは個性研究のトップランナーと言う世間的認識と知名度はバカにできず、今回のサイクスの様にメリッサの行動が勝手に博士の意向と忖度されることがある。
「仕方ないですね、では一緒に行きましょう。」
サイクスのその言葉に2人は「やった。」と喜び、ケイトリンが早速「それじゃあ、早く行きましょう、監視カメラの映像は守衛室で見られると思うわ」とメリッサとサイクスを促す。
メリッサはそのまま、サイクスは警察用ロボット2体に現場保存を命じてから、それぞれケイトリンの後を追った。
守衛室にやって来たメリッサ、ケイトリン、サイクスの3人は守衛に頼み、シーリンの研究室のある階のエレベーターホールの監視カメラ映像を見せてもらった。
シーリンの死亡推定時刻の映像には誰も映っていなかった。午前は皆、通常授業があるので、普通なのだが、警備ロボだけが廊下を通る映像は少し寂しさを感じさせる。
だが犯人が映っていないことにはどうしようもないので、3人はさらに時間をさかのぼって映像を確認した。それでも映っていたのは登校し研究室に向かうシーリンと警備ロボットだけであった。映像に移るシーリンは何処か所在なげに歩いている。恐らく第一の被害者のショーンが率先して他の2人を、遊びの内容の善し悪しはともかくとして、連れ出していたのだろう。
結局監視カメラには前日の夜、守衛が見回りをしている姿が映るまで誰も映らなかった。
「結局、手がかりはなし。」
「何も映ってなかったわね。」
サイクスとケイトリンは残念そうに嘆く。
だがメリッサだけは何か気づいたのか「ほんとにそうだったのかしら。」と自らに問いかける様に呟いた。
その呟きを聞きケイトリンは嬉しそうに「何か気づいたの?」と訊いてくるし、サイクスも「引っ掛かることがあるのなら仰ってください。」とメリッサに言ってくる。
メリッサは「そんなに期待されても困るんだけど」と前置きし、自分の考えを語った。
「心理的な盲点があったんじゃないかな、私は痕跡っていうのは、そこに本来、無いはずの物が在ったり、在るはずの物が無かったり、そもそも何の形跡もなかったりする事が、痕跡だと思っていたんだけど、在るはずのものが在ったとしても、証拠には成らなくても痕跡ではあるんじゃないかな。」
「どういうことです?」サイクスは訳が分からずどういうことか訊く。
「今回のシーリンの事件、監視カメラに本当に何も映っていなかった?手がかりはなかった?……そんな事はなかった、ちゃんと警備ロボットが映っていたわ。」
サイクスもケイトリンもメリッサの大胆な推測に驚く。
「警備ロボットが犯人だっていうの?」とケイトリンが言うとメリッサは訂正を入れる。
「この場合は凶器っていうべきじゃないかな、シーリンの首の索条痕の幅と警備ロボットのワイヤーの直径は丁度同じぐらいだったし、シーリンの爪に彼自身の皮膚と血しか残ってなかったのも、ヴィランだって捕獲する警備ロボットのワイヤーが強靭だったって考えれば、十中八九警備ロボットが凶器に間違いないと思う。」
「確かに、そう言われれば、私もそんな気がしてきた。」とケイトリンは言う。
だが、サイクスはまだ納得していない様子で「それでは、現場の部屋に痕跡がない説明にはなっていないのでは?」と疑問を投げかけてくるがメリッサはその答えも用意していた。
「その答えも一種の盲点よ。サイクスさん、警備ロボットと警察用ロボットって凄く似てない?」
サイクスはメリッサの質問の意図が分からず、「はぁ、まあ似てますね。」と一応答えるが、その表情は、それが如何した、という感じだ。
「私も似てるなって思って、昔パパに訊いたの、『警備ロボットと警察ロボットって似てない?』って、そしたらパパは『それはそうだ。あの2機種はかなりのパーツを共有しているからね。特に外装なんかは殆ど同じパーツでてきているんだよ。』と言ってたわ。 だからそんな2機種の痕跡は、ほぼ区別不能なんじゃないかな、警備ロボットの痕跡があっても警察用ロボットは自分の痕跡と誤認して、痕跡なしって判断したんじゃないかしら。」
メリッサの推理を聞き終わり、ケイトリンもサイクスもしきりに、凄いとか、確かにその通りだわと、納得し、メリッサを褒めそやす。
サイクスなどは、それに加えて、さすがシールド博士の愛娘と、感心している。
「ありがとうございます。これで事件は解決まで大きく前進します。凶器が警備ロボットとするなら第一の事件でも痕跡がなかった事も納得です、警備ロボットのワイヤーはかなり自由に動くのでナイフを使ってショーンを刺すこともできるでしょうし、ショーン・ブラントに防御創なかった事も説明できます。警備ロボット相手なら誰も警戒しませんからね。」
そう言うサイクスにメリッサは決めつけるのは早すぎるのではないかと何だか不安を覚える。
「まだ1件目も警備ロボットが使われたかどうかは分かりませんよ。」
「いいえ、メリッサさん、連続殺人犯と言うのは1度目の成功体験に固執し同じ凶器を使うと言う事は珍しくはないんです。これで決まりですよ。 それに私にはもう今回の犯人が誰か予想はつきました。」
メリッサが考えている以上に先走っているサイクスを、一旦落ち着かせようとして、「とりあえず、まずは私の推理が正しいか、確かめましょう、推測がたたしければ、シーリンの方に痕跡が残っていなかったとしても、警備ロボットの方にはシーリンの血や皮膚が残っているわ。」とメリッサは言った。
「確かにそうですね。」サイクスはそう言うと、映像を見せてもらった守衛に「監視カメラに映っていた警備ロボットが今どこにいるか分かりますか?」と訊く。
すると守衛は「午前中にいた警備ロボットなら点検が不十分だったとかで、午後には全部入れ替わって、整備場に行ったと思いますよ。」と答えた。
それを聞いた途端、サイクスはいけない、証拠が消されてしまうと、走り出す。
それに面食らったケイトリンは「どこ行くんですか?」とサイクスに訊いた。
それにサイクスはもどかしそうに立ち止まり、ケイトリン達の方を振り返り「整備場よ、証拠が消されてしまうわ。」と早口で言うと、また走りだした。
そんなサイクスに感化されてかケイトリンも「私たちも行きます。」とメリッサの手を引いて走り出す。
ここまで関わったのだから、最後まで見届けるつもりだったのか、メリッサは急に引っ張られ、つんのめりそうになる体を何とか立て直し、サイクスやケイトリンについて行く。
3人で整備場に向かう車の中でサイクスはケイトリンとメリッサに整備場では自分の命令に従う様に言い含める。
「犯人はおそらくダン・ダルトンです。彼は今から私たちが向かっている、警備ロボットの製造、整備などを行う企業に勤めています。そんな彼ならば今回の犯行は容易だったはずです。逮捕することになった場合、暴れる可能性もありますので、私やロボットの前には出ないでください。それから現場では私の指示に従い、決して、勝手な真似はしないでください。分かりましたね。」
サイクスのその言葉に2人は「はい。」と返事をし、互いの手を握り合った、それは急に出てきた逮捕や暴れると言った言葉に不安を覚えたからかもしれない。
そんな中、整備場に着いた3人はサイクスが先頭を行き、警察用ロボットに囲まれたメリッサとケイトリンが後に続く形で移動した。
サイクスが警察バッジを見せ、整備場内に入ると丁度、一人の男が警備ロボットを整備していた。
その手には血がついたワイヤーが握られていた。
それを見た瞬間、サイクスは上着の中のホルスターから拳銃を素早く抜き、男に照準を合わせる。
「ダン・ダルトン!! 今すぐ両手を頭の後ろに上げて床に伏せなさい!!」
男はダン・ダルトンだった。初めて目にするブレインの父は、普通の中年の様にメリッサに見えて、とても連続殺人を犯すようには見えなかった。
「一体何なんだ、俺が何したって言うんだ。」ダンの酒に焼けたかすれた声で叫ぶ。
サイクスはそれに取り合わずもう一度、凄みを利かせ「両手を頭の後ろに上げて床に伏せなさい。」と言う。彼女の指が引き金にかかる。
異様な緊張感が生まれ、こういう場面になれていないメリッサやケイトリンには空気が淀んでいるかの様に感じられ、気分が悪くなってきたほどだ。
ほどなくダンは諦めたのか、それとも反抗するのに疲れたからなのか、両手を頭の上にあげ、うつ伏せに床に寝転ばった。
サイクスはそれでも警戒は緩めず、ダンに銃を向けながら近づいて行く。やがてダンに触れられるぐらい近づくと手錠を取り出し、ダンに掛けた。
「ダン・ダルトン、貴方をショーン・ブランド並びにシーリン・フィッシャーズ殺害の件について罪証隠滅の可能性があると判断し、緊急逮捕します。」
サイクスが逮捕事由を宣言する。
「なんだって?」サイクスの話を訊いてダンはもがき、拘束から逃れようとした。
だがメリッサにはダンは全く分かっていないのかったのか戸惑っている様にすら見える。
「言い逃れは出来ませんよ。血のついていた警備ロボットのワイヤーを処分しようとしていたのが何よりの証拠です。 ですが本当に貴方が犯人だったことは残念でなりません。」そう言ってサイクスはダンを立たせた。
「クソっ! 何だっていうんだ、息子を死に追いやった奴らは捕まえないで、なんで俺を捕まえるんだ!! どれだけ俺から奪えば気が済む! ヴィランが妻を奪い‼ 不良が息子を奪い‼ 今度は警察が俺の人生を奪うのか!」
そう叫ぶダンの言葉はまるで世界そのものを呪ってやるとも言わんばかりの物だった。
サイクスがダンを連行する様だ。
メリッサとケイトリンの前を、ダンを連れたサイクスが通る。すれ違いざまにサイクスは「ごめんなさい、私は彼を連行しないといけないから、貴方たちは自分たちで帰ってもらえる。 あとカート君は今夜にも釈放されると思うわ。」と言って歩いて行く。
その言葉を聞きケイトリンは喜んだ。
メリッサも、もちろんカートの釈放には喜んだ、だがまだ彼女の不安な気持ちは収まらない。
ブレインの父親が犯人だったと言う余嬉しくはない結末だったが事件は解決した……そのはずなのにメリッサの中には言葉にできない靄に包まれた疑問が残っている様だった。
読んでいただきありがとうございました。
今回から解決に向かい、話が動き出しました。
今回は書いてるとき浅見光彦シリーズを呼んでいたのでそれを参考にしたような展開(犯人だと疑われる→身内ばれ、か~ら~の~掌返し→捜査協力)になりました。
分かった人もいるかもですね。
というかそろそろIアイランド編の犯人も、誰だか予想がついてしまった人もいるかもしれないですね。
自分としては特定するにはピースがあと一つ足りてないつもりで書いてるのですが、どうですかね。
ちなみに次回から久しぶりにバリー君が登場します。ここまで長かったわー
感想、批評いただけると嬉しいです。