ヘラクレスが現代日本倫理をインストールしたようです   作:飴玉鉛

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大河を巻き込まないために言葉でやった時、「暗示使え、それが最適解だ」と思われた人もいるかもしれない。しかしそれは最悪手。アルケイデスの人生的にどう考えても最悪の中の最悪だ。暗示使った方がいいと思う方はアルケイデスの生前思い出してね!

今日はこれだけ……次の更新までちょっと間が空くかも。
やっとこさsn編の前置きが終わったんで、今回は予告編にしてみた。

本編じゃなく、予告編だよ!(ここ重要







幕間 抑止の環より来たりしモノ

 

 

 

 

『世界の行く末を懸けた戦い……これを決戦という』 『次の策だ。油断はせんぞ?』 『手は休めぬッ!』 『そこか――斬り落とすッ!』 『隙を見せたな? 抉り落とすわッ!』

 

『貴様には“地の理”では生温い……滅びの刻だ、足掻くがよい。“天の理”を魅せてやる。さあ――この一撃を以て決別の儀としよう』

 

『原初を語る。天地は別れ、無は開闢を言祝ぐ。世界を裂くは我が乖離剣―――星々を廻す渦、天上の地獄とは創世前夜の終着よ。

 死を以て刻むが良い――“ 天地乖離す開闢の星 (エヌマ・エリシュ)”をッ!!』

 

 

『英雄王、貴様には黄昏がお似合いだ』 『我が闘争に策など無用。頂きの高さを知るがいい』 『止まるか? ならば死ね』 『温いな』 『では我慢比べだ。我が腕をやろう、代わりに首を寄越せッ!』

 

『天と地の理――そんなもの、とうの昔に乗り越えている。試練を寄越せ、極上の地獄をその身に刻もう』

 

『――覇者の王冠は(これ)に。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を私は認めず是正しよう。神の傲慢、人の依存、告別を齎す刻が来た。我が栄光は勝利の上に。戒めの聖戦、その角笛を吹き鳴らそう!

 人よ我が後に続け。“我が前には道はない、我が後に道がある(ノン・プルス・ヒュペル)”――我が強靭の五体、今再び現世に蘇らん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 斯くして舞台は整った。

 

 “全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)”――英雄王ギルガメッシュの精神性が宝具に昇華した瞳。星々の燦きの如く、地上の隅々へと行き渡り、万象悉くを見透す千里眼。その()を持つ英雄王は対峙した英霊の真名や宝具はおろか、幾重にも秘匿された真実を一瞥のみで看破する。

 意図して権能に近しいその力を制限していたのが、慢心に塗れていた原初の王をして脅威と断ぜられる者を知覚した瞬間――気が緩み、ほんの一瞬だけ、その封が解れてしまった。

 そうして“視て”しまった英雄王ギルガメッシュによる第五次聖杯戦争の裁定は、その星の下に決定されたのだ。結末は変わらない。如何なる道筋を辿ろうとも世界に破滅的な傷跡を刻むだろう。

 肉体と技量に於いて最強を誇る英霊アルケイデス、財力と卓越した知能に於いて最強を誇る英霊ギルガメッシュ。二つの“星”の頂上決戦は、例え被害を最小に留めようと、冬木の地に住む全ての者を死滅させる事態へ発展する事がこの瞬間に確定された。

 

 ――追い詰められたギルガメッシュが、抑止力による現界抹消に晒されながらも乖離剣による真名解放“天の理”を断行し。それに対したアルケイデスは、霊基崩壊も厭わず秘めたる最強宝具の開帳を成し。顕現した聖杯と死闘の余波にて世界に全なる悪の呪いが撒かれ、実にその八割が壊滅……()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 例え被害を最小限に留めようにも、何があろうと日の本は海の底。神秘衰退の西暦の時代でありながら、聖杯と英霊による一国の破滅は人理の崩壊と特異点化の結末を齎すに相違ない。

 

 故に、アラヤの抑止力は大聖杯の要請を受けて介入を決定した。

 

 冬木の大聖杯には、秘められた機能が存在する。それは――七騎のサーヴァントが、一つの勢力に統一されてしまった場合を想定し、七騎のサーヴァントに対抗するために追加で七騎のサーヴァントを召喚する予備システムである。

 だがこのシステムはあくまで緊急の措置であり、冬木で発動した場合は霊脈そのものが枯渇する可能性もある故に、如何なるサーヴァント・マスターにも機能が露見しないよう、大聖杯にて厳重にこの情報は秘匿されていた。

 

 ――そう、故に(これ)は“祭り”なのだ。英雄王はそのイレギュラーを是認する。

 

 千里を見透す星の担い手である英雄王には、その秘匿は意義を成さず。“視て”しまった結末は()()()()故に、“視て”いなかった道を希求した。

 大聖杯の予備システムを、そのためにギルガメッシュは利用したのだ。

 直接大聖杯に繋がれた黒の聖杯を拐かし、白の聖杯との敵対を煽り。そして聖杯戦争が正常に行われぬよう、意図して膠着状態を作り出した。槍兵はマスターの命により待機させられ。魔術師の英霊は暗殺者を喚び出し、静観の構えを崩さない。弓兵は狂戦士に与えられた傷を癒やすために動けず、狂戦士と剣士は結託した。騎兵は落ち――ここに聖杯戦争は停滞したのだ。

 そしてギルガメッシュの企図する人類の間引き――その破滅的な目的を持つ自らが、この世全ての悪などと銘打たれた呪詛を孕む聖杯の近くに陣取っていれば。必然抑止力が動き、大聖杯は()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

 果たして聖杯自身に召喚され、聖杯戦争という概念そのものを守るために動く、絶対的な管理者となるべきサーヴァントが現界する。

 

 携えたクラスは裁定者(ルーラー)

 

 開催されている聖杯戦争が非常に特殊な形式であり、結果が未知数なものとなる為、人の手の及ぼぬ裁定者が聖杯に必要とされた場合。そして聖杯戦争によって、世界に歪みが出る場合にのみ、ルーラーのサーヴァントは現界する。

 ルーラーは聖杯戦争の勝者が我欲によって願いを叶えようとも干渉はしない。だが、世界の崩壊を招く破滅的な願望は許容せず、聖杯戦争が原因で世界の崩壊が理論的に成立すると見做された時点でルーラーは召喚されるのだ。

 

 ルーラーのサーヴァントは、部外者を巻き込むなど規約に反する者に注意を促し、場合によってはペナルティを与え、聖杯戦争そのものが成立しなくなる事態を防ぐためのサーヴァントである。そのため現界するのにマスターを必要とせず、完全に中立の審判として基本的にどの陣営にも組する事はない。

 全サーヴァントに有効となる令呪を持つという、絶大な権限を持つルーラーのクラスの選定条件は多数存在し、現世に何の望みもない事、特定の勢力に加担しない事などが挙げられる。この条件故に、ルーラーのクラスで召喚されるのは聖人認定された英雄に限られるのだ。

 

 だが――冬木の大聖杯は、『この世全ての悪』に汚染されている。

 

 聖杯の機能として予備システムが起動しようとも、自身の生誕の妨げとなる事態を看過する事など『この世全ての悪』には有り得ない。

 故にそれは()()だった。起動した大聖杯の予備システムは、大聖杯その物を汚染する呪詛によって歪を齎す。追加召喚された新たな七騎の内三騎は()()()()()()()()()()()()()()()()()に現界させられ、戦いを待たずしてライダー・バーサーカー・キャスターの三騎が脱落。その三騎ともが、黒聖杯に焚べられたのだ。

 

 そして。

 

 四人の新たなマスターに、令呪が宿る。

 

 

 

「ク――クカカッ! そうか……そうか! 聖杯は儂を選んだかッ! 桜めが機能しおったのは誤算じゃったが……あるいは今回こそが儂の動く時なのかもしれんな。ならばよかろう……()()()()よ、儂も動くぞ」

「御意。魔術師殿……ヒトデナシになったモノ同士、共に永遠を目指すとしよう」

 

 不老不死を欲する、朽ち果てたマキリの残骸。そして、山の翁襲名の折に、個人としての全てを抹消された暗殺者。

 

 

 

「――え? なんで……私に、令呪が……? ……違う。これは……そう、ギルガメッシュさんに頼ってばかりじゃ駄目……私は、ギルガメッシュさんと対等になるっ。利用されるだけで終わったりなんかしない!」

「サーヴァント、ランサー。真名は()()()。よろしく頼む」

 

 黒き聖杯に堕ちた少女に、再び令呪が与えられる。喚び出されたのは、ヘラクレスとギルガメッシュへの抑止となる事を期された、太陽神スーリヤの子。

 

 

 

「ひっ、ひひひ! そ、そうだ、そうだよ! 僕は選ばれた存在なんだっ! 衛宮でも桜でもない、この僕こそが――誰よりも特別なんだッ! だって見ろよ……僕のサーヴァントは、他の連中のもんなんかより遥かに()()()じゃないかっ!」

「――死ね」

 

 落伍者は、猛る()()として現界したアマゾネスの逆鱗を踏み締め、死んだ。

 

 

 

「………」

「セイバーのサーヴァント、召喚に応じ――って、なんだこりゃ……オレを喚び出したマスター、いきなり死んで……いや、生きてはいやがるのか? それに……()()()()モンに憑かれてやがる。それでほとんど死んでいながらしぶとく生きてやがんだな……チッ、メンドクセェ事になりそうだ」

 

 騙し討たれた魔術協会の封印指定執行者に、“黒のランサー”と同じく抑止の存在として召喚された“黒のセイバー”、叛逆の騎士は幸先の悪さに嘆息する。

 

 

 

 ――そう、舞台は整った。整ってしまった。

 

 冬木を舞台に――()()()()()()()()()、最後の聖杯戦争が始まるのだ。

 

 

 

 

 

 




ペンテシレイアはアーチャー適性があるらしい

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