ヘラクレスが現代日本倫理をインストールしたようです   作:飴玉鉛

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はたけやまさんから3.1のお話の挿絵をいただきました。
そちらのお話でも挿絵として挿入しましたので、是非そちらで拝見してくださると幸いです。が、わざわざ戻って読み返しながら見るのが大儀という方もいらっしゃるかもしれませんので、こちらにも載せておきます。
【挿絵表示】

はい、大迫力。当時のエウリュステウスの膀胱を打撃する仕様ですね。耐えきった彼の膀胱は一つの偉業を成し遂げたと言えましょう。はたけやまさん、ありがとうございました。

そして今回のお話に、匿名希望のお方から、またぞろ素晴らしいイラストをいただきまして。今回のお話は、それを見てどうしても書かねばならないと燃えた……コルキスでのアルケイデスVSマルスの戦いとなります。
挿絵として載せますので、そのクオリティに負けないよう、せめて釣り合えるようにと努力しました。もはや賛美のボキャブラリーが枯渇しております。言葉少なですが、とにかく絵を見たら分かる(確信) 作者はきっとイラストに全部持ってかれるだろうなと悟りを開いてますが、どうぞ!


Ⅰ(未来)
Ⅱ(コルキス時)
Ⅲ(未来)
Ⅳ(コルキス時バトル)



幕間の物語【されど英雄は神と踊る】

 

 

   Ⅰ

 

 

 

 

『よぉ、アルケイデス』

 

 穏やかさとは程遠い、神代の御世すらも軋む戦気を迸らせながら、戦神は親しい友にするように気安く呼び掛けた。

 玲瓏な声音は粗野なもの。歌うようでありながら怒鳴るようでもあり、快活な青年を彷彿とさせる仕草で自身の白髪を撫でつける。

 嵐の前の静けさだろうか。世界全体に張り巡らされた糸が、ピン、と張り詰めているような気がする。神殿の外、人と神の時代が大きなうねりを伴い動き出そうとしているのが分かるのだ。戦士王などと号され、数多の畏敬を束ねる王は微笑む。

 彼の王の玉座は戦神の神殿に在る。王の座する玉座の許へ、神殿最奥に飾られた軍章旗に降臨した戦神がゆったりと歩み寄ってくる。

 

 王は笑った。仕える神に対し不敬であるが、友のように思っているのは彼も同じだった。戦神の気安さが嬉しくて堪らない。

 ……何十年ぶりだろう。こうして彼の戦神と会うことになるのは。

 これで己の生涯の総決算を目前にしていなければ、王は若かりし頃のように剣を執って歓迎していただろう。

 

『……フン』

 

 戦神はつまらなげに鼻を鳴らす。戦意を放っていたのは、彼なりの遊戯への誘いだったのだが、それに乗ってこなかった王に対して残念さを覚えていた。

 失望したのではない。誘いに乗れるだけの余力がない、王の体を偲んだのだ。

 

『老いたな、戦士王……』

 

 そう、王は老いていた。半神である故に、その寿命もまた並外れて長いものである。だが彼は己の中に流れる神の血を疎んでいた。その力を利用することはあれど、己は神ではないと否定し、あくまで物質としての人であるまま生き、死ぬことを望んでいる。

 故に彼は老いたのだ。平凡な人と同じように時を歩み、齢を重ね、そして無双であった肉体を衰えさせた。

 御年五十五歳。人としても長く生きすぎていると言える。だが無駄に歳を重ねたわけではない。その智慧と武技は加齢と共に狡猾さを加え、磨き抜かれた技量は神域のそれの断崖に至っている。この時の技巧を備えたまま若い肉体を取り戻せば、九つの高速斬撃である剣の奥義が、完全に同時に放たれる魔法の域に達していたかもしれない。

 

『……貴様にとっての最後の戦だ。勝利せねば、貴様がこれまで積み上げてきた総ては灰燼に帰そう。エジプトの諸神と交わした条約も、折衝のために注ぎ込んだ労も無為に堕す。いつか俺に言ったな? 俺に人を導く神になれと……愚か者め。俺だけでは務まらぬわ。何処まで行っても俺は戦の神に過ぎんのだからな』

 

 玉座に腰掛けたままの王の許に寄ると、戦神は穏やかな貌でその肩へ手を置いた。

 労っているのだ。よくぞここまで、と。既にこの時代、この世界の人間の寿命を迎えていながら、魔術神ヘカテーが手に入れたという()()()()の力と、己の強靭に過ぎる精神力でのみ生きている英雄を。

 戦士王は既に崩御している。肉体的には死んでいる。だがその魂は最後の使命を果たすべく、己の骸にしがみつき、死を拒むという彼の王にとっての大罪を犯していた。

 

『後は俺に任せろ―――そう言えたらまだ格好はついたか? ハッ。だが生憎と此度の戦、貴様の力も必要だ。ハデスには貴様の死を待つように言ってある。後は貴様次第だ。俺の臣なら今少し持ち堪えろよ? 総てをご破算にしたくなければな』

 

 全力を出せば重ね掛けされたテクスチャをも打ち抜き、七次元の壁をも貫く、地球という惑星で最強に位置する戦神は――しかしその力を感じさせないままに男らしい太い笑みを浮かべた。

 玉座の肘置きに戦神は腰掛ける。膝を立て、そこに肘を乗せた戦神は玉座に凭れる王を見下ろした。

 ――過去、数度に亘り矛を交え、互いに愉しんだ闘争を思い返す。そして万感の思いを込めて溢すのだ。

 

『嗚呼……愉しかったなぁ』

 

 王は忍び笑う。確かになと、掠れた声で相槌を打った。

 

『だが、最も愉しかったのは……あの時だな。初見での喧嘩だ。嗚呼、俺もあれは忘れられん。……此度は楽しむ余裕はねえ。貴様もたまには過去を懐かしめ。どうせこの戦の後に、貴様の生き残る目は皆無なんだからな』

 

 そうだな。その通りだ――王は言われるがままに、過去を振り返る。

 ……輝かしい日々だった。宝石箱に仕舞われている、大小様々な思い出の欠片たち。良い事ばかりではなかったし、大変で不快で辛い時間の方が多かった。

 だが……そう。十二の試練などと言われる功業を成していたあの時こそ、まさに黄金の時代だったのだ。

 王は目を細める。彼の意識は、次第に過ぎ去った思い出へと馳せていった。

 

 

 

 

   Ⅱ

 

 

 

 

 ――不意に、並外れ、卓越し、理屈や技術を超越した“心”の“眼”が見開かれる。

 先天的に保持していた己の危機に対する超直感。そして半人半馬の師ケイローンの下で開眼し、これまでの冒険と戦によって積み上げた無窮の武練が覚醒させた武人の勘。二種の心眼が己の危機を察知し、そして瞬時に最善の迎撃を繰り出させていた。

 

「――ッ!」

 

 虚空に手を翳し、脊髄反射で白剣を召喚する。鎧の背部にある留め具に固定していたのを、抜き放つ動作を省略して手の中に出現させたのだ。

 アルケイデスはエロースを繋ぐ鎖から手を離して白剣を振るった。満身の脱力からの剛力を発揮し両手で柄を握り、重心を落とし、腰から肩までの捻転の力まで加え、渾身の力で振るったのである。唐突な其れは、紛うことなき全力の迎撃だった。

 

 誰にも反応できなかった。あ、と思う間もなかった。彼方より次元を貫き飛来する神の剣。三原色の燦めきは衛星軌道上に顕現した光の巨剣。【戦闘】の概念の化身たる、真なる軍神の剣で広範囲を殲滅する衛星兵器。

 知られざるその真名は、『紅き星、軍神の剣(マーズ・ウォー・フォトン・レイ)』である。

 個人戦闘能力に於いては全盛期に到達している、神話最強の英雄が担う剣は白き極光を纏い、振るわれたるは誓約されし栄光の剣(マルミアドワーズ・ネメアー)。激突し、鍔迫り合う光の巨剣と白き中道の剣。桁外れの魔力と質量の激突は周囲の者の意識を空白にした。アルケイデスの顔に苦悶と汗が浮き上がる。巨剣を受け止めた白剣より伝わる威力に手が痺れ、踏み締めている大地を削りながら徐々に後退させられていく。

 

「ォッ、」

 

 兜の下で、黒髪がうねる。噛み締めた奥歯が鳴る。力を溜め、口腔を開き、金獅子と一体となって咆哮した。

 

「雄ォオオッ!!」

 

 光の巨剣の芯を逸らし、神業めいた剣捌きで光の巨剣を遥か後方の中天へ受け流す。地平線の彼方まで飛翔して、光の剣は誰の視界からも消え失せた。

 その余波で地面が大幅に抉れ、掠めた山脈に大きな穴が生まれた。現象が思い出したかのように動き出し爆風が起こる。その破壊力は克明に死を彷彿とさせられるもの。呆然とするアルゴノーツの頭上に、快活な笑声が轟いた。

 

『ハッ。ヘラクレス……八割の力とはいえ、俺の剣を受け切りやがったか』

 

 傲然と言い放たれた圧は、全員の肩に絶望的な重さとなって圧し掛かる。

 ぺたん、とその場にメディアが腰砕けになって座り込んだ。気絶すら出来ずに、茫洋とした目で姿を現した奇襲の主、最高位の神格を見上げるしかない。

 そしてそれはメディアだけではなかった。アルゴノーツも、ヒッポリュテら英雄旅団やエロースも例外ではなく。自我を保っているのはアルケイデスだけであった。

 

 手の痺れを握り潰す。アルケイデスは如何なる感情も窺い知れぬ瞳でその神を見上げた。

 

 全てが様変わりしている。狼の毛並みの如き灰白の髪を野放図に伸ばし、青銅の鎧兜は捨てたのか真紅のマントを簡易な黒鎧に備えているのみ。精悍な面構えには英邁な知性と勇気が宿り、紅い双眸はあらゆる戦の闇と父性の光を灯していた。

 白い髪、白い肌、人間を超越した美貌と人界より隔絶した武威。己の中の狂気を完全に制御している軍神――否、真なる戦神の姿が其処にある。

 

 アルケイデスが問い掛けた。それはまだ立ったまま、目を開けたまま、自失しているアルゴノーツの総意とも言える疑問だった。

 

「……軍神よ。なんの真似だ? 私でなければ死んでいたぞ。如何なるつもりで仕掛けてきたかお聞かせ願いたい」

『うるせえ。相変わらず、意味分かんねえぐらい信仰しやがって……』

 

 無表情、平坦な声音。しかし自身に向けられる深く濃い信仰に、戦神はうんざりしたようにぼやいた。

 

『お蔭でご覧の有様だ。力の抑えが利かねえ。どんだけ俺のことが好きなんだ貴様? 本当はかるーく(こいつ)を投げつけてやるぐらいのつもりだったのが、八割もチカラ出しちまったじゃねえか』

 

 両手を広げ、大仰に嘆く戦神だが。どこか愉快げである。

 アルケイデスは眉を顰めた。てっきり自らの子であるエロースへの仕打ちに怒り狂っているのかと思えばそうでもないらしい。そうであるなら全力で謝り倒すつもりだったのだが……。

 ともあれヒッポリュテに視線を向け、アルケイデスは感謝の意を目に込める。ヒッポリュテの呼び掛けがなければ反応が遅れていたかもしれない。無視できない傷を負っていた可能性がある。とうのヒッポリュテにその気はなかったが、アルケイデスはそれには気づいていない。

 

 戦神は嘆息した。

 

『なんの用か、だったか』

「………」

『知れたことよ。貴様らを誅殺しに来たんだ。……可哀想だが俺の娘もな』

「ッ!?」

 

 アルケイデスだけではなかった。戦神の殺気がアルゴノーツらを舐め回す。英雄達は全身から大量の汗を流しながら武器を構えた。

 勝ち目は視えない。殺される。その確信が全員の胸に宿った。しかしただで殺されてやる気はない。抵抗する気で、青白い顔で戦闘態勢を取った。

 それに待ったをかけたのは、ただ一人。アルケイデスである。父に殺すと言われ絶望に染まったヒッポリュテを横目に、彼は重ねて問う。

 

「何故だ。エロースに対する仕打ちへの代償か?」

『いいや? んなこたぁどうでもいい。確かにソイツは俺のガキだ。情もある。だが死んだわけじゃあるまい。それに悪戯遊びを幾つになっても卒業しねえガキの仕置きを俺に代わってやるってんなら是非どうぞと投げてやるよ。だがどうでもいいって言ってんのは――俺がヘラと絶縁したからだ』

「――――絶縁?」

 

 それは、アルケイデスにとって福音だった。

 信仰する神の親を憎んで良いのか、という悩みはあった。悩みがあるまま突き進むつもりだったのが、それが取り払われたのである。

 嬉色が滲むのを、こんな時なのに抑えられなかった。

 

『応ともよ。思い出したくもねえから詳しくは言わん。が、そのヘラの企てに加担したあの馬鹿女と馬鹿息子は、この俺に対し絶縁を申し伝えたに等しい。潜在的には俺の敵だって見方も出来るんだぜ。なんなら……俺が殺ったっていいんだ。それを仕置きで済ませるってんなら、むしろ俺は貴様に感謝してやる。甘い裁定で済ましてくれてどーもありがとうございました、ってな。俺は手前のガキはなるべく殺したくはねえ』

「………」

『ってなワケだ。その馬鹿息子は関係ない。じゃあなんで俺が貴様らを殺すのか? これも簡単だわな。考えてもみろ、此処は……何処だ?』

 

 問いに、智慧の巡る者はハッとした。

 此処は【アレスの野】である。

 

『此処で貴様らは何をしようとしている?』

 

 軍神の持ち物の雄牛に引き具をつけ、【アレスの野】を耕そうとしている。

 

『其処に何を蒔こうとしている?』

 

 竜の歯……アレスが対立している戦女神に、アイエテスが与えられた物。

 

『つまりだ。貴様らは俺の土地で、俺の所有物を勝手に使い、男日照りのアテナの奴を介したモンをばら撒こうってワケだ。……ちょっとばかし気が立ってたところでよ。少しばかり発散しねえと、今の俺だと何を仕出かすか分かったもんじゃねえ。ヘカテーのヤツはなんのつもりかは知らねえが……それもどうでもいい。こんだけ腕利きの英雄が雁首揃えてんだ、抵抗してくれたら少しは梃子摺れる。ストレス発散の運動にはなんだろう? ついでにこの苛つきも収まるってんなら……やらねえって理由はねえよな? なあ……俺の庭に来たんだ。少し遊んでいけ。安心しろ、退屈はさせねえから』

「………」

 

 やるしかないのか。悲愴な覚悟を固めつつあるアルゴノーツに、しかしアレスは悪戯っぽく笑う。

 

『おいおい辛気臭えぞ。ったく、仕方のねぇ奴らだ。気が乗らねえってんならルールを設けてやる』

「ルール?」

『応よ。俺が貴様らを皆殺しにするまでに、アイエテスの小僧が課した試練ってのを果たしてみろ。そうしたら、生き残ってる奴らを殺しはしねえ。……どうだ? 生き残る芽は見えたか? んなら上等ってなもんだが』

 

 その通告に、アルケイデスは頷く。

 光明は見えた。アレスは本当は、殺す気はないのだろう。しかし漲り、溢れる力をどうしてか抑えられなくなっている。それを抑制するために戦闘を求め、数多の英雄が集うアルゴノーツに目をつけたわけだ。

 遣り様はある。アルケイデスはそう確信する。

 凶暴で悪辣な戦の負の神としての顔、それに反する慈父の神の顔。そのバランスを整えてやれば……あるいは片方に傾けてやれば、アレスは勝手に満足する。そう判断していいはずだった。

 

「軍神アレスよ」

『あ? ああ……ヘラクレス。その名で俺を呼ぶな』

「……?」

『ソイツは縁を切ったヘラが付けた名だ。最近面白い竜と会ってな、名乗って死合ってみたら、末期に俺を【マルス】と呼びやがったのよ。呂律が回ってなかったのか、生まれ故郷の言葉で喋ったら訛ったのか……なんでもいいが、その響きを気に入った。俺のことは以後マルスと呼べ。敬意を込めて、な』

「……承知した。では軍神マルス、私もヘラクレスとは呼ばないでもらいたい」

『……ほぉ? ならなんと呼べばいい、不本意ながら我が第一の信徒よ』

「アルケイデスだ」

 

 言いつつ、白剣を構える。

 そしてイアソンらアルゴノーツに背を向けたまま大喝した。

 

「此処は私に任せ、先にいけッ!」

「ヘラクレス……!?」

「私がマルス様をお止めする。その間に、皆で力を合わせ試練を越えよ。私の命をお前たちに託す、故にお前たちの命を私に寄越せ。総て背負い、見事成し遂げよう」

 

 アルゴノーツは一斉にイアソンを見た。英雄旅団はアルケイデスの判断に従った。

 共に戦うと言っても足手まといになる。なら早急にイアソンの試練を片付けたほうがいい。

 イオラオスがイアソンを小突いた。号令しろ、皆が待ってる! あんたの命令を! 伯父上の意志を無駄にする気か!?

 その怒号にイアソンは正念場に立たされた。アルケイデスが死ねば次は自分達――その差し迫った危機に顔色を変え、英雄としての威風を初めて発しながら彼は命じる。

 

「……ッ! アルゴノーツ! オレの親愛なる同胞達! ヘラクレスに此処を任せる、オレ達はすぐに試練を片付けるぞ! ちんたらするな、往くぞぉ――!」

 

 イアソンは素手のまま駆け出した。武器も何もない。必要なのは意志を示すこと、動き出すことだと彼は悟っていた。そのイアソンの行動に、引っ張られてアルゴノーツも死にものぐるいに駆け出している。なるほど、英雄だとマルスは笑った。

 後ろを向いてイアソンがアルケイデスに叫ぶ。

 

「――おい! なんとか早くしてやるから、足止めちゃんとやれよ! オマエが殺られちまったら次はオレ達なんだからな!? 簡単に殺されるのだけは勘弁しろよ!?」

 

 アルケイデスは笑った。マルスに釣られて。そしてイアソンの必死さが嬉しくて。

 彼は今、自分もだろうが、その次ぐらいにアルケイデスを死なせないために叫んだのだ。これが嬉しい。堪らず、強がりを口にする。

 

「ああ。足止めをするのはいい。だが――別に。倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 その放言に、マルスは噴き出し。声が聞こえていたアルゴノーツは唖然とし、イアソンは盛大に笑った。

 確かな信頼を感じさせる。ぶっ倒せ、ヘラクレス! 大英雄は不敵に口端を歪め、片腕を掲げて勝利を宣言する。

 

 ぶはっ、とマルスは再び噴き出した。

 

『貴様――は、ははは! 貴様まさか、この俺に勝つ気でいるのか?』

「生憎だ。私はこれまで、武器を取って負ける気で振るったことは一度もない」

『そう言うなよ。わざと敗ける戦も割と面白いもんだ――ぜッ!』

 

 堪らぬ狩りの獲物を目にしたように。その気なら他の面子を狙えるだろうに、アルケイデスにのみ狙いを定めたマルスが、いつの間にやら召喚していた光の剣を握り襲い掛かってくる。

 三原色の神剣は真紅に染まっている。戦神たるマルスの真の権能、三機能権(イデオロギー)――の一つ。『主権』『戦闘』『生産』の二番目、『戦闘』形態の神剣だ。

 やるからには本気で遊んでやるよ――猛りの捌け口を欲する戦神が馳せ、敬意を胸に懐く英雄が迎え撃つ。

 

 

 

 

   Ⅲ

 

 

 

 

『……なあ。おい。一つ聞かせろ』

 

 如何様にも問うと良い。嘘偽り無く答えよう。

 王が鷹揚に応じると、戦神は鼻を鳴らした。バツが悪いらしく、貌を背けている。

 

『アルケイデス。貴様が人としての死を迎えた後の事だ。……神に成る気はねえか?』

 

 即答で無いと断じるも、戦神にとって意外でもなかったようだ。深く長い溜め息を吐き、いつか聞いた台詞を諳んじるように唱えた。

 

『人を神格化するものではない。人は神になるべきではない。また神は人の如くに振る舞うものではない。……だったか。難儀だな。貴様の信仰の在り様は、真実神を無用のものとしながらも尊んでいる。在るがままを受け入れ、柔軟に考え、好きに神に縋り、神を捨てる。そんなクソ無礼な奴が俺の第一の信徒だってんだから笑えるぜ』

 

 神は唯一であってはならない。神を理由に争ってはならない。人は自らの行いに関して責任を負うべきで、責任を問われるべきは神ではなく人である――私はそのようにも語った覚えがある。

 王が嘯くと、露骨な舌打ちが鳴った。んな細けぇことまで一々覚えてられっか、と。

 信仰の自由を認めていながら、その実、神からの自立を促し、自立できない者のために救いの手を差し伸べる異端の信仰。長い時を経て結実した精神性が、まさに聖者のそれを超えたものであると、この総ての偉大な戦士たちの王は自覚していないだろう。

 信仰を基にした高潔さ、精神力。そこから生まれる聖人、聖女。それらとは一線を画する聖者こそがこの王である。異形の精神だなと戦神をして舌を巻いた。

 教えを護り、教えを説き、教えを広めるのではない。信仰の道筋を作り、支え、自身の意志で進む力を育む。人類がまだ赤子と言える幼稚さから脱せないでいるのを、我儘で自己主張の激しい少年期への進歩を促し、やがては青年へ、そして大人へと成長する道への標となる。

 

 聖人など話にもならない。聖者など、とんだ笑い話だ。戦神は己の考えを嗤った。この男はそんな有り難いものなどではなく、ごく普通の人間なのだ。

 単に、その力が強すぎて。単に誰よりも父性が強かった。それだけの人間なのであると、一つの未練を断ち切るために納得した。

 

『……貴様の中の不滅の神を、人としての貴様が死んだ後に召し上げてやる。そう思ってたんだがな』

 

 やめだ、と戦神は晴れ晴れと吐き捨てた。忌々しいようで、誇らしげでもある。

 

『死ねよ、アルケイデス。後腐れなくあの世に逝っちまえ。貴様の志はヒュロスやアレクサンドラ、アイアスに継がれてるさ。だが……まあ、今の人間どもじゃあ、いずれどこかで途切れるだろうがな』

 

 何せ異端なのだ。少数派(マイノリティー)なのである。どうしたって時流には押し負けてしまうものなのだ。

 玉座の肘置きから飛び降りて、戦神は王から離れていく。

 背を向けて去っていく戦神は、ふと立ち止まると振り返らないまま静かに告げた。

 

戦場(いくさば)で待つ。気持ちよく死なせてやっから、精々手強い連中を一人でも多く道連れにしてくれ。その後は……まあ、貴様の血筋、曾孫の代までなら護ってやるよ』

 

 最高の報酬だ。そんな王の嬉しげな声を背中に受けて、戦神は神殿を出る。そして空を見上げた。

 そうだ。コルキスで戦士王と剣を交えたあの時も、こんな雲模様の斑な空だった。すっかり雲一つなくなるまで、盛大に興じたもので。戦神は懐古した。

 

『やっぱ……愉しかったんだよなぁ。あと一回ぐらい、やり合いたかった』

 

 未練だなと、断ち切れない想いを噛み締めて。

 戦神は天に還らず地に佇んだ。

 

 

 

 

   Ⅳ

 

 

 

 

 ――紅が稲妻の如くに奔る。およそ剣とは云えぬ杭のような形状でありながら、鞭の如く撓り、刃の如く触れるもの総てを斬り裂く。

 蹴り抜いた地面が爆ぜ、瞬きの間もなく敵手との間合いを潰した戦神は、右の手に握る神剣を容赦なく袈裟に振り下ろす。初動から最速、荒々しい言動からは想像もつかぬ精緻な太刀筋は、なぞった空間を両断せしめる破界の力を宿していた。

 迎撃するは無繆なる宙を見渡し尚も無双、竜象豪力なる磨穿鉄硯の士。山脈と比してすら遥かに重い、宇宙最大と喩えられる膂力が振るいたる白剣が、紅の焔が形となった神の剣と衝突する。(ソラ)の一角が軋むほどの質量の激突に、起点となった白剣と紅剣の接触面がひずみ虚数の空間が現出する。

 

「ヅッ――」

『ハッハァッ!』

「――ォォッ!」

 

 岩盤より削り出したかのような白き中庸の剣、その柄を両手で握り締める輝く黄色(オウショク)の戦士は苦悶を漏らす。二メートルを超える偉丈夫の戦士、アルケイデスよりも頭二つ分身の丈に優れる戦神が哄笑を発するのに、負けじと雄叫びを上げた。

 両の足が地面に埋まり、蜘蛛の巣が張られたように陥没した地面に亀裂が刻まれる。筋繊維を支える骨格が撓み、躍動する全身の膂力を以て白剣を()る。断じる、鍔競り合うは愚士の所業。白と赤の剣の拮抗は刹那。中庸の剣は、担い手が手首を返しながら手元に引き込むことで、焔のように揺らめく紅の刀身を脇に逸らす。手首の返しから流れるように逆手に持ち替えられた白剣が閃いた。残像をも置き去りに虚空を奔る白き刃は、戦神の脇腹に吸い込まれるように奔る。

 

『おおッ、とぉ!』

「ぬ――ガッ、」

 

 振るわれた刃が魔速であるなら、その超絶の反射速度こそ神速。マルスは左膝と左肘を断頭の鋏の如く閉ざし、白刃を挟み込んで止めたのだ。予想だにしなかった挙動と防御に刹那、アルケイデスは驚嘆する。それは隙とも云えぬ僅かな硬直、されど対するマルスには絶好の好機。右足のみで立っていたマルスは身体を捻転させつつ地面を蹴りアルケイデスの側頭部に蹴撃を見舞う。

 したたかに側頭部を蹴りつけられた戦士はたたらを踏んだ。獅子神王の兜に亀裂が奔るほどの衝撃。人理を弾くだけでなく、ただの打撃にも強靭な耐性を有し、戦士の損傷を阻む鎧兜であっても戦神からの打撃ともなれば痛打となる。兜の下で口の中を切ったアルケイデスは咄嗟に追撃を警戒した。

 

『これで死んでくれるなよ? 雑魚(ほか)とは違うってとこを魅せてみろッ!』

 

 紅蓮が奔る。神気が爆発的に高まり、紅剣の切っ先より螺旋の焔が放たれる。

 神造の城壁を紙のように貫通する破壊の光。それを纏った杭状の剣は槍の如くに伸び鞭のように撓っていた。白い極光が戦士の剣より放たれ様、横薙に薙ぎ払った白剣が紅い破滅の光を掻き消してみせる。白光に打ち消された紅光の残滓が粒子を散らし、その欠片は礫の如くアルケイデスの周囲に着弾して激甚な爆発を起こす。

 その爆風を背に獅子の外套を翻した戦士が馳せた。未だ嘗てない高揚に、戦士は満面に獰猛な笑みを浮かべている。少年のような悦びに震えながら吼えた。

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

 渾身の力で唐竹割りに断ち落とす斬撃が、不定形の紅い神気が受け止める。紅蓮の剣は戦神の分身、力の具現。途方もない力の塊にどうしようもなく笑えてくる。

 アルケイデスの膂力の乗った斬撃は桁外れの威力を持つ。戦神ですら正面から競えば力負けするだろう。故に戦闘の概念、その化身たる神は力では競り合わない。自分がされたように白剣を受け流し、着地したアルケイデスの二の太刀を捌く。足を止めての熾烈な剣撃が応酬された。逆巻く風は嵐の如く、飛び交う衝撃波が辺り一面を斬り裂き、怒涛の剣撃は火花と共に大地を砕いた。

 

「邪――!」

『羅ァッ!』

 

 さながら剣の結界。技の限りを尽くすアルケイデスとマルスは、抑えきれぬ獣の笑みを浮かべ凌ぎ合う。鬩ぎ合う。剣と剣がぶつかり合う度に両の手、両の腕に伝わる力の重さが嬉しくて堪らない。虚と実を交えた技量が愛しくて堪らない。秒にして百、分にして千、世界そのものを裂くまで終わらぬと思えた剣撃の宴は唐突に終わりを見た。

 マルスの剣を弾き後方に飛び退いたアルケイデスが、自らの白剣をマルスの顔面目掛けて擲ったのだ。音速を遥かに超える剣弾をマルスは小賢しいとばかりに叩き落とす。しかし次の瞬間に襲い来た光景に歓喜した。剣を擲つと同時に跳躍した戦士が、体を回転させて戦神の側頭部を蹴り抜かんとしていたのだ。

 やられたことをやり返す。その負けん気の強さ、見事にやってのける力量に嘉し、神をも足蹴にする不敬を豪放磊落な戦神は許容する。今度はこちらがたたらを踏みながらも腕を伸ばし、着地する前のアルケイデスの脚を掴み地面に叩きつける。

 戦士を振り回し幾度も地面を砕き、最悪の鈍器として大陸をも破壊せんと振り上げたマルスの顔面に、予想外な白刃が迫った。振り回されながらも白剣を自身の許に召喚したアルケイデスが、地面に叩きつけられながらもマルスを斬らんと刃を振るったのだ。マルスでなければ死んでいる――咄嗟に戦士の脚を離して神剣を盾にするも、白剣の斬撃による衝撃がマルスの貌を襲った。

 

 更に頭を護ったマルスの隙を突き、その胸を破城鎚のような足刀で穿つ。吹き飛んだマルスの正面に、黄金の鎧を土煙に塗れさせた戦士が降り立った。

 アルケイデスが兜のバイザーを上げた。血が垂れて片目を潰している。それを乱暴に拭って、犬歯を剥き出しにし笑う。マルスもまた折れた鼻を摘まんで元に戻し、鼻孔を押さえて息を吐き出し鼻血を残らず排出。血の混じった唾を吐き捨てた。

 

 にたりと暴虐の笑みを浮かべ、マルスは言う。

 

『嬉しいか? アルケイデス。嬉しいよなぁっ! 強すぎて、周りが雑魚ばかりでッ! 一度も本気で戦えたことがないんだよな? ネメアの獅子にすら枷を嵌めて殴り合った馬鹿野郎が! 俺を相手に()()()なんざ舐めた真似してんじゃねえぞォッ! 来いッ! この俺だけは、決して貴様を退屈させんッ!』

 

 両手を広げ、アルケイデスの全力を受け止めてやると告げるマルスに、戦士はわなわなと総身を震えさせる。抑えきれない悦びが胸の内にのたうっているのだ。

 その気持ちは戦神にも痛いほどよく分かる。己もまた強すぎる。こと白兵戦に限ればゼウスをも上回るのだ。主神と総合戦力で互角となるということは、その近接戦闘能力に於いては明確に上回っている証明となるのだ。

 それはつまりアルケイデスと正面から戦い、降し得る最強の神格であるということ。その生涯でただの一度も格上と対峙したことのない戦士は、武人として狂喜してしまいたくなる。

 

 だが、それを鋼すら粘土細工となるほどの精神力で律し、アルケイデスは微笑んだ。訝しむマルスに対し、バイザーを下ろした戦士は厳かに告げる。

 

「戦神マルス。御身の()()()、不敬だがお相手致す。まず手始めに、私から御身へ敗北を贈らせていただこう」

『は……? せ、()()()……だと……?』

 

 ――それは、どこまでも負けず嫌いな、戦士の挑戦状である。

 確かに此の儀は、マルスが御し切れない自身の力を、完璧に御するための試運転のためのもの。

 ゴルゴンの怪物すら鼻歌交じりに屠殺する、最強無比の戦神の神威に手綱をつけるためのもの。それによりさらなる昇華を果たすのだ。

 戦士アルケイデスはそれを揶揄したのである。己の力すら御し切れないなど戦士として二流。なればこそ戦神の調整相手を務め、本当の一流に押し上げてやると……()()()()()()()と宣ったのだ。

 それは、心躍る挑発だった。血湧き肉踊る憤怒であった。マルスはその見え透いた挑発に、敢えて乗ってやる。どこまでも負けず嫌いで、自分が挑むのではなくそちらが挑むのだと嘯く傲慢さを慈しんだ。可愛らしい意地の張り様であると。

 

『……ハ、ハッハハ! コイツはいい……俺に、貴様が……道化のアレスじゃねえこの俺に! テメェが敗北を刻むだと!? いいねぇ……いいぞ。ハハ、面白いジョークだ。……やれるモンなら――やってぇ、みィィイやがれぇッ!!』

 

 額に手を当てて身を反らし、呵々と笑いを爆発させる。憤怒と歓喜を交えた咆哮が、戦神の口腔より迸り、物理的な衝撃波となって辺りの塵を弾き飛ばす。 

 切れた唇を舐め、得物を両手で握り直したアルケイデスの剣に異変が起こった。獅子の唸り声が幻聴のように耳朶を打つ。アルケイデスは笑った。ああ、起きたのか、と。退屈な敵とばかり戦う故に、眠っていた栄光の剣(ネメアー)が目を覚ました。

 

 岩石よりくり抜いたが如き刃から、ボロボロと刃片が毀れ落ちる。

 

 現れたのは、まさに王の偉容を誇る王者の剣。磨き抜いた鏡よりもなお(しろ)く、太陽の燦めきよりもなお(しろ)い、純白にして不浄を祓いたる中庸の刃光。無垢なまでに神々(しろ)い其れは、まさに獅子神王の誇り高き魂の具現。

 赫怒に燃えているようでありながら、体の芯を貫く武者震いに狂喜して戦神が跳ぶ。鞭のようなしなやかさを孕んでいた刃が固まり、一筋の火星の燐光を象る。そして、アルケイデスが中腰に構えた白剣がその真の姿を現した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ネメアー……」

 

 言祝ぐように尊名を唱える。担うは無窮の武を誇る人中に於ける極点の一、驍勇極致なる怪力乱神。意味を成さぬ雄叫びと共に疾駆する戦神を真正面から迎え撃つ。

 先刻の鬩ぎ合いが児戯であったとでも云うような、熾烈にして苛烈、広大無辺なる刃の競演が幕開く。

 卓越した武人をして賛美するに、その技を神域の其れと喩えるに能う。アルケイデスはその神域を踏破せし武人である。白打、剣、弓、槍、斧、鎚、あらゆる武具を使い熟す一個の神話――太古の時に在りて最強を冠する神武の士だ。

 だが、戦神マルスこそは戦闘の化身。達人の中の達人の武を題して神域の武と呼び習わすのなら、マルスこそは其の『()()()()()()である。後の時代、世の中心となる大国に篤き信仰を受けし戦神は、既にして其の時に匹敵する神威を手にしている。

 

 この男、アルケイデスこそが第一の信徒であればこそ。マルスはその潜在能力の総てを解放できるのだ。

 

『喰らえ、突き立て――刺し穿ち、突き穿つ――ッ! 温情だ、命は壊さねえでやる。但しその戦意を粉砕して(ツラぶん殴って)やらァアッ! 軍神の剣(フォトンッ・レェエイ)ッ!』

 

 右の豪腕に担う三機能権(イデオロギー)の三形態が一つ『戦闘』の型。真紅の神剣が紅い螺旋の渦を吐き出し、この一撃で雌雄を決するまではいかずとも天秤を傾けるべく疾走する。

 万物を粉微塵に削岩する大陸貫通の一閃。立ち塞がるは純白を担う金色の戦士。この戦争(ケンカ)の趨勢を手繰り寄せんと期しているのは彼も同じだ。地平の彼方まで獅子吼轟きし無白を輝かせ、この一刀に乾坤一擲、渾身一打の斬撃を解き放つ。

 

「朋よ。強がってはみたが流石の私も一人では抗し得ん。手を貸してくれ。なに……戦神は戦バカだ。こちらが()()()()()だとは露ほども思い至らんさ。……私とお前が共に立つ。ならば我らこそ最強也。()くぞ――誓約されし栄光の剣(マルミアドワーズ・ネメアー)……ッ!」

 

 中腰に構えられた純白の中庸剣が、裂帛の気合と共に逆袈裟に振り上げられる。

 

 ――赤と白の激突の瞬間、世界から光が消え、音が死に、虚無に帰す。光と音が戻った刹那、無色の()としか形容できぬ、莫大な衝撃で万象は震撼し、瀑布の如き透明な波動が全世界全神話に波及する。

 

 アジアの弓兵の代名詞がギリシアの方を振り向き戦慄に武者震いし。

 エジプトの未来のファラオと聖者が、先の出会いを予感する。

 

 戦神とその第一の信徒、数少ない私闘とも云える彼らの決闘は――死者ゼロ名、その結末のみが決着を物語った。

 短期間では決着つかず。されど戦神は溌溂として。またいつか、鬱憤が溜まったら相手しろよと、立場の垣根を超えた友情を示すように拳を出し、アルケイデスはそれに己の拳を合わせたのだった。

 

「再戦の時を、またいつか」

『ああ。いつか、な』

 

 満身創痍の戦士と、余力の残る神は笑いあった。

 

 

 

 

 

 




マルス、出力八割。権能封印。但し本気。
アルケイデス、出力十割。但し奥義封印。剣縛り。

お前ら人間じゃねえ!(直喩)

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