ヘラクレスが現代日本倫理をインストールしたようです   作:飴玉鉛

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一幕 王たらんとする者、玉座へ

 

 

 

 

 

 ダ、ダ、と。意味を持たぬ単音を発する小さな命が、女の頭部を覆い尽くす仮面に小さな手で触れていた。

 赤子を腕に抱く事に慣れていないのだろう。経験すらなかったのかもしれない。無邪気に綻んだ蕾の様な笑顔に、どこか優美な印象の白仮面を着装している女は、得体の知れない風体に似合わずオロオロと視線を彷徨わせている。

 その所作が可笑しくて、ヒッポリュテはつい噴き出してしまっていた。救いを求めるように自身を見詰める様が、その素顔を知る戦御子にさらなる笑いを誘う。

 

「……奥方、その……私はどうすれば……」

「好きにさせてやってほしい。アレクサンドラがこうも懐いているんだ。分かっているのだろう……自らに害を為さぬ心根穏やかな者なのだと」

「そんな……」

 

 子供はもう一人、一歳のヒュロスがいる。ヒュロスは淡いブロンドの女に抱かれ、あやされていた。

 引き締まった四肢と柱のような体幹、ピンと伸びた背筋。一廉の武人としても通じるその女は名をイピクレスという。アルケイデスの双子の妹にして異父兄妹である、最近までミュケナイに属していた女英雄だ。

 

 小さな子が二人もいては自分だけで世話をするのは大変なものである。しかしヒッポリュテは乳母や侍女を雇い入れ、息子と娘を任せる気はない。自分が認めた人間以外に可愛い子供達を預ける気など毛筋の先ほどもなかった。

 女衆の中で認められるとしたら、アタランテやメディア、アルケイデスの妹であるイピクレス。そしてつい先日引き合わされたばかりのスーダグ・マタルヒス――メドゥーサだけである。

 

 ――イピクレスはヒッポリュテの義理の妹に当たり、複数人の子供を出産、育てた経験がある。あのイオラオスの母なのだ。養育を任せるのに不安はない。そしてマタルヒスは育児の経験など無いが、アルケイデスが善良だと太鼓判を押し、これから死ぬまで仕えてもらうと決定した故に、互いを知り合うため娘を任せるべきだと判断したのだ。

 相も変わらず夫の人物鑑定眼は傑出している。洞察力も並外れているが、付き合いの浅い者が相手でもその心根の善悪を見抜くのだ。マタルヒスの素性を知らされたヒッポリュテは呆れ返りつつも、夫の鑑定の正しさを改めて認識する。

 

 赤子は無垢だ。そして無力である。だからこそなのか、自身に害を為すか、庇護してくれるかの判断に関しては大人が思うよりも正確だ。生誕間もないとはいえヒッポリュテとアルケイデスの子が、その判断を誤るとも思えない。

 過信が過ぎるだろうか? 自問するも間違いはないと信じたい。アレクサンドラが懐いている事から、マタルヒスは少なくとも邪悪な者ではないと、風評に惑わされず信頼するように意識していた。

 

「然し驚いた」

「何に、でしょうか……?」

 

 ふと漏れた呟きに、たおやかな所作で仮面の女が首を傾げる。のっぺりとして機能性しかない仮面を付けているにも関わらず、滑稽さを感じさせない女の仕草にヒッポリュテは微笑んだ。

 

「アルケイデスがお前ほどの美女を……容貌に於いて私を凌駕する女を連れて来た事に驚いてしまった。アレクサンドラがもう間もなく産まれるという時だ。まさか浮気かと一瞬でも疑ってしまった自分が恥ずかしい」

「ご安心を。それは有り得ませんので」

「ふふ……アルケイデスはお前の趣味ではないからか?」

「はい。あの方は私に希望を与えてくれ……そしてそれを掴み取る機会をくださった、とても返し切れない大恩ある主です。然し……殿方として見るにはちょっと大柄過ぎると言いますか……筋肉質過ぎると言いますか。人としては誰よりも信頼に値するとは思います。決して裏切りはしませんし、命を懸けてお仕えする覚悟ではあります……然し命令でもない限り、抱かれようとは思えませんね」

「ははは。命令されれば抱かれるのも良しか? 安心すると良い、アルケイデスはそんな下衆な命令はしない。断言しても良い。それに何より驚いたのは、マタルヒス……お前の真名だ」

「……やはり、怪物(ゴルゴン)である私は信頼に値しませんか?」

 

 仮面がある故に表情は読み取れない。然し声が若干固くなっているのを聞き間違えはしなかった。戦御子は凛とした爽やかな表情を湛える。負の感情のない爽快な笑みだ。

 

「バカを言うな。一昔前に討たれた怪物であっても、今は人として生き英雄として死ぬと決めているのだろう? それにゴルゴンが如何ほどの怪物であったとしても、ネメアの谷の獅子やヒュドラの神蛇ほどでは無い。――アルケイデスよりも、お前は弱い」

「………」

「恐れる必要が何処にある? 例えお前が再び魔性に堕ちたとしても、その時はアルケイデスが責任を持って討ち果たすだろう。それこそ完膚なきまでにな。だからメドゥーサ、いやマタルヒス。お前が後ろめたく思う必要も、卑下する事もない。そしてアルケイデスの奥であるこの私が――アマゾネスの誇りを待つこの私が、夫の愛を失う事以外を恐れるなど有り得はしない」

「……そう、ですか」

()()()、ではない。()()()、だ。納得しろ。受け入れろ。賽はすでに投げられている。今のお前の本性はどうあれ、エリュシオンを目指す英雄たらんとする者が後ろ向きでどうする」

「……はい。流石はヘラクレスの奥方ですね。貴女は私には少し眩しい……」

 

 マタルヒスは淡く微笑んだようだ。そして腕の中にいるアレクサンドラが、自身の仮面に触れようと手を伸ばしている姿に視線を落とす。

 

 ――マタルヒスは首から上を、白仮面で隙間無く覆い隠している。然しマタルヒスは些かも息苦しさを覚えない。自身の長髪が綺麗に仮面の内に収まっているのに、その質量を感じてもいなかった。

 流石はメディア作の、渾身の魔術礼装である、というべきか。マタルヒスには仮面を付けているという自覚すら薄いのだという。石化の魔眼を封じる出来栄えなのに、自己封印をするまでもなく肉眼で視界に映るものを問題なく視認できているかのようだというのだ。寧ろ髪が傷つく恐れがない故に、かえって動きやすいらしい。

 

 今のマタルヒスは、初対面時に着ていた姉たちとのお揃いだという衣装を身に着けていない。メドゥーサという女怪にひどく同情したメディアは、仮面だけではなく特注の衣装も作製し、万が一にも正体が露見しないようにと細心の注意を払ってくれた。

 全身に貼り付くタイツのようなスーツは黒い。付随する魔術効果は隠蔽。注視すればするほど体の輪郭が朧気になる代物だ。眼力に秀でた者には通じずとも、凡百の輩には姿形を記憶すらできないだろう。

 そしてその上に神鉄を糸状にして編み上げた、薄く、堅い軽鎧を着込んでいる。全身の関節部を除く部位を余さず覆い尽くし、メディアの魔術によって対魔力の向上と、人の意識を吸い寄せる効果が付随されていた。例えマタルヒスの姿形を記憶できず、貌も分からぬままであったとしても、この白銀の軽鎧が他者にマタルヒスだと印象づけるのだ。この軽鎧こそ彼女の英雄としてのシンボルであるとすら言えるかもしれない。

 

 重武装に見える。然し普段着同然の着心地と通気性が成立し、自然浄化による清潔さの保全が為され、動作の阻害もほぼ皆無であるためか、マタルヒスとしてはメディアに頭が上がらなくなっている。

 マタルヒスはアレクサンドラを大事に抱き直した。この愛らしい娘は、自分への信頼の証なのだと理解したのだ。此処にはいないアルケイデスと、此処にいるヒッポリュテが、女怪として討たれた怪物ゴルゴン……メドゥーサを信頼に値すると信じてくれた証であると、マタルヒスは諒解する。

 

 養育を任された訳ではない。然し関われる範囲内で、大事に慈しもうとマタルヒスは決意した。

 

「――話は終わりましたか? まったく母が我が子を前に女怪だのなんだのと。せめて自らの子供の前でぐらい戦士をやめ、母で居続けなさい」

 

 そう言ってきたのは、これまで無言だったイピクレスだった。

 アルケイデスの妹である彼女は、ヒッポリュテにとっては義理の妹に位置する存在である。然し実年齢で一回り上回られ、母親としての経験値の違いからか、どうにも強く出られず、自然と目上の者に対するかのような態度になってしまう。

 うっ、と声を呑んだヒッポリュテは、兄妹揃って父母と同じ黒髪を持つヒュロスを見る。イピクレスに抱かれた男児は、すやすやと安心し切った寝顔で寝息を立てていた。もしかしなくてもヒッポリュテよりイピクレスに懐いている我が子に、ヒッポリュテは情けなく眉を落として項垂れた。

 

 それにマタルヒスは淡く微笑む。女達の賑わいは穏やかで、壊してはならない尊さがあった。それは自身の失われた、遠い昔の記憶を刺激するもので。

 ヒッポリュテは思う。マタルヒスも思う。メディアとも、一緒に語り合いたいと。

 そしてヒッポリュテはもう一人、歳の近しい女狩人を想った。アタランテ、お前にも私の子を抱いて貰いたいものだ、と。

 今何処にいて、何をしているのだろう? 音沙汰がない事には怪訝さも覚えるが、イオラオスがいる。心配はしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヒッポリュテが傍らに立つ。仮面の戦士マタルヒスが脇を固める。王位禅譲の儀は決され、数多の精霊が大空に舞い、神々が祝福と共に謳った。

 

 光の粒がオリンピアの地に降り注ぐ。

 

 都市部の中心に、民草が集結していた。新たな王の登場を眼にしようと。

 ギリシャに知らぬ者のない巍然たる英傑が、老いて隠棲を望む王に代わりこの国を統治するというのだ。吟遊詩人の歌う英雄譚、その実物とは縁遠かった辺鄙な地の民達は純朴に喜んでいる。

 雄偉の王、驍勇の士、無双の名を恣にする至強の雄。その誕生の瞬間に居合わせられる幸運を喜んで――大通りを進む武人を眼にした彼らの熱気は臨界に達していた。

 

 黄金の双角、青銅の蹄、繊細な毛並みを持つ巨躯の牝鹿。鍛え上げられた駿馬を凌駕する神獣に跨り王宮に向かう、金色の鎧と外套を纏う戦士王。兜を外した彼の精悍な素顔と、背にした白亜の中道の剣、発される存在感の巨重さは、他の者など本来なら眼にも映らぬ大きさだ。

 平凡な者でも眼にしただけで確信する至強の雄。その両脇を固めるのは神馬に騎乗し悍ましき魔槍を携えた、颯爽たる威厳溢るる戦御子ヒッポリュテと、噂に伝え聞くディオメデスの人食い馬に騎乗した姿形の識別困難なる仮面の者。名工の鍛え上げた双剣を得物とし、その二つの柄を鎖で繋いだミステリアスな戦士。

 更にその背後には、三つの頭と無数の蛇が象る毛並みと竜の尾を持つ冥府の番犬。小山の様に雄大な体躯を誇るエリュマントスの猪、彼のミノタウロスの父であるクレータの牡牛が従順に王の後に続いていく。すわ怪物を引き連れる魔王の軍勢かと錯誤されかねない陣容であるが、誰もそんな不敬な誤解には至らない。彼ら恐ろしい怪物達が、完全に戦士王の支配下にあるのだと一目で判じられるからだ。

 騒然とするのは、興奮から。民達は口々に新王を讃える。吟遊詩人の歌は真実だったのだと喝采する。だがこれで終わりではない、更に彼らの度肝を抜くものがあった。

 

 王と王妃、その腹心の後を怪物達が行進し、更にその後ろには目を瞠る宝の山が数千台にも及ぶ荷台に載せられ進んできたのだ。

 金銀財宝は言うに及ばず、莫大な石材、木材に始まる多様な物資。各地の名産物、働き手となる千を超える労働者達。彼らは新王即位の慶事として、サラミスをはじめイオルコス、アテナイ、トロイアから贈られた物だった。

 

 精霊達の舞った残滓の光、その粒子が薔薇の花弁の如く閃きながらオリンピアの空に満ちている。神秘的、幻想的、そんな陳腐な感動が人々の心に満ち満ちて。声も枯れよと吠える民の声もあった。

 王が王宮に至る。其処に立っていたのは、満面に笑みを浮かべる枯れ木のような老王だった。よく見れば貌が引き攣り冷や汗を流し、脚が震えている。無理もない、禅譲は彼の意志に拠るもので、脅迫した事実は欠片も存在しないのだが――常人である彼からすると、何より己の背後に佇む神格が恐ろしい。

 

 ――戦神(マルス)戦女神(アテナ)鍛冶神(ヘパイストス)祭祀神(ヘスティア)大女神(デメテル)、冥府神の名代の魔術神(ヘカテー)海神(ポセイドン)月女神(アルテミス)太陽神(アポロン)貞潔神(ヘラ)伝令神(ヘルメス)、そして大神(ゼウス)。オリンポス十二神が揃い踏み、老王の背後から新王誕生の瞬間を見届けようとしているのだ。神々に捧げられる供物も膨大な量となり、老王は心労で倒れそうだ。

 

 そして自身の許に辿り着いた戦士王が聖鹿より降り、上座に立つ老王の傍に寄る。

 老王が彼の頭に月桂冠に代わる新たな王位の証、金で象られ宝石で彩られた華美な王冠を載せた。其れは西暦以降の未来にも遺る戦士王の遺物の一つ。最古の王冠である。

 後の騎士王が受け継いだとされる王冠を戴き、跪いていた戦士王が老王に助け起こされる形で立ち上がる。老王に変わり上座に立つと、万雷の拍手が打ち鳴らされた。光の柱として立つ神々が祝し、神聖にして荘厳、峻厳なる山々が突如屹立したかの如き重量感に満たされる。

 

 王が民衆に振り返る。そして――腕を掲げた。

 

 拍手喝采が鳴り轟く。歴史的瞬間である。此処に人類史に其の名を燦然と輝かせる、神話の巨雄『ヘラクレス』のモデルと目される大英雄、アルケイデスが登場したのだ。

 

 

 

 

 ――アルケイデスが王位に至り、王冠を戴いてより数ヶ月が経った。

 彼はまず、オリンピアの兵を募り、マタルヒスに補佐としてヒッポリュテを付け、練兵を行わせた。マタルヒスに兵を率いる戦いの術を教えるためだ。

 そして自身は精力的に働き出す。文武の官を整理し権限と職掌を定め、その職能を見極めて人事を行い、集まった財宝を惜しみなく解放して産業を整える手配をした。

 次に自らオリンピア周辺を巡視し、匪賊や危険な獣を狩って廻り、最低限の練度を得た兵を創立した警邏隊に配属して国内の治安の安定を図る。信賞必罰を厳として、官の傲慢を赦さず、民の増長を赦さず、されど締め付けすぎず、抜き打ちで家臣らの仕事ぶりを己の目で確かめ不正があれば厳罰を下した。

 

 ある程度の安定を得ると、自身の名声の高さを利用し、番犬ケルベロスなどをオリンピアの城門前に配備し、あるいは見世物として、各地から行商人や旅人の足が向きやすい話題を作る。商売繁盛を推奨して、自身は人足を募って『アルケイデス王』としての生涯の事業に打って出た。

 数多くの神殿、神を象った像の建造である。彼の背後には常に賢知の神プロメテウスが潜み、影に日向にと助言をして彼を助けた。

 

 無論即位間もなくして辣腕を振るい、旧体制を破壊し尽くすが如き施策を不服に思う者は相応数いた。特に官吏にはその割合が高かったと言えよう。

 然し彼らはオリンピアより去る事はなかった。――それは城門前に配備され、国境周辺を彷徨く番犬ケルベロスを恐れての事である。彼らはケルベロスが、来る者は拒まずとも去る者は食い殺すという性質を知っていたのだ。オリンピアを自由に出入りできるのは、公の立場ではない民や旅人、商人ぐらいなもので。彼らに紛れて出国しようにもケルベロスはオリンピアの官吏の臭いを覚えさせられていた。

 隠れても、紛れても、必ず見つかる。そして食われる。アルケイデスは民には非常に寛大で、些細な罪であればささやかな償いで赦しを与えたが、官に属する者には徹底して厳罰主義であった。それは彼の目からすると、官の者は傲慢に過ぎ、また汚職に塗れていたからである。無論の事、厳しさに釣り合う恩恵は与えていた。給金はこれまでの倍となり、老いで官を退いた後は年金と称して一定額の金銭を期間毎に受給させると布告を出したのだ。

 

 だが不満は溜まる。それが爆発しないのは、アルケイデスの恐怖政治ゆえだ。

 

 神々を味方に付けた彼にどうして逆らえるのか。神のことがなくともアルケイデス個人に逆らえる勇気は誰にも持てない。毒物を使おうにも監視者プロメテウスに見抜かれ……暗殺者を使おうにもアルケイデスに気配を悟られぬ者などいなかった。

 不正には厳罰を下す。それ以外は横暴に振る舞いはせず、常に寛大に人々と接するアルケイデスだったが、彼の存在そのものが、後ろ暗い事情を持つ者にとっては恐怖の化身なのだ。官吏に対する恐怖政治とはアルケイデスがトップに立つ事を云うのである。

 そうしてアルケイデスは、政事(まつりごと)に対してすら地上最大と云えるやもしれぬ豪腕を振るった。彼の政治センスは平凡そのものだったが、強すぎる腕力が悪徳や不正への抑止力として機能したのだ。……機能するようにプロメテウスが仕組んだ。

 

 アルケイデスは、只管に働く。

 

 寝る間も惜しんで、馬車馬の如く働いた。時には王妃ヒッポリュテを代理人としてオリンピアを留守にし、エジプトに向かい冥府神との約定を果たし、エジプトとギリシャの死者の領分を取り決め。両神話の神々が引き起こしかねない問題の予防に頭を悩ませ――生じる軋轢、摩擦を最小限に留めるべく西に悪神あればこれを叩き、東に愚神があれば殴り倒し、天に大神があってエジプトの美女美獣美少年に手を出そうとするのを諌めて。アルケイデスは、働いた。

 

 そして人手不足に喘ぐオリンピアは、詩人を使い、遂にギリシャ全土に布告を出す。

 

『アットホームな職場です。給金、勤務時間は応相談。優しい先達が未来ある君たちの参戦を待っている! オリンピアの明日を作るのは君だ!』

 

 ――後の世に曰く、アルケイデス王の治めるオリンピアこそが、人類最古のブラック企業であるという。

 無論風評被害だ。オリンピアより遥かに過酷で苛烈な国は古今東西、どこにでもあるだろう。しかしその印象を決定づけたのが、上記の一文に類する条文が、ギリシャ各地で散見されてしまったからだった。

 

 そして後世の歴史家に曰く。アルケイデス王の死因は過労死ではないか、と囁かれる事となるのだ。

 

 

 

 

 

 


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