ヘラクレスが現代日本倫理をインストールしたようです   作:飴玉鉛

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本日二回目。
若干荒い出来。



二夜 擦れ違う運命

 

 

 

 聖杯戦争。

 万物の願いを叶えるとされる万能の願望器“聖杯”の奪い合い。数十年に一度、冬木市を舞台に行われる。聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を競うのだ。

 他の六組が排除された結果、最後に残った一組にのみ、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。故に聖杯を求める者、汝、己が最強を証明せよ。

 

 ――というのが表向きの謳い文句である。

 

 バーサーカーはその内実をマスターの少女から聞かされては居ない。必要がないと思われている。悪意があって隠したのではないにしろ、それはある意味で信頼を裏切る行為であるのかもしれない。

 だが常識を弁えるマスターであればこそ、とてもではないがサーヴァントに聖杯戦争の真の目的を告げられるはずもない。イリヤスフィールは怖かったのだ。バーサーカーに聖杯戦争の真の目的を知られた結果、自身にどんな目を向けるか判断できなくて。

 感情は、例え総てを知ってもバーサーカーなら味方で居てくれると信じている。然し魔術師の一族としての知性が、無駄なリスクを冒す必要はない、知らないなら知らないままでいてもらった方が良いと冷徹に告げている。その鬩ぎ合いが、結果としてイリヤスフィールの口を閉ざしているのである。

 

 ――冬木の聖杯戦争のシステムを作り上げた御三家本来の目的は、時間軸の外にいる純粋な『魂』であり、この世の道理から外れながら尚、この世に干渉できる外界の力の塊である『英霊』をサーヴァントとして召喚し、英霊の魂が座に戻る際に生じる孔を固定して、そこから世界の外へ出て『根源』へと至る事である。そしてイリヤスフィール――『小聖杯』は溜め込んだ七騎分のエネルギーを以て根源に通じる大穴を空ける為に在るのだ。

 聖杯戦争の過程でどんな願いでも叶えられる魔力が溜まるが、それは二次的なものであり、外来の無知なマスターを呼び寄せる為の宣伝でしかない。マスターはサーヴァントを呼び出す受容体(レセプター)であり、召喚さえしてくれればいつ死んでも構わないのだ。つまり……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本来の目的を隠した上で、外来のマスターを呼び寄せる為に表向きの"戦争"があるのだから。

 

 ――こんな事、言える訳がない。お前は所詮、御三家の魔術師が求めた生贄に過ぎないなどと、言える筈がない。それでもバーサーカーなら……笑って許してくれると信じたがっている。否、既に心は信じている。理性がそれに歯止めを掛けているのだ。

 もどかしい。後ろめたい。家に縛られず、ただ一つの目的を達する為だけの戦争に専念すればいいのだと分かっていても。堪らないほどもどかしい。

 今も……冬木の街を並んで歩くバーサーカーに、イリヤスフィールはぎこちない顔を向けるのだ。

 

「このたい焼きとやらは……随分と甘ったるいな。正直に言って私は好かん」

「そう? わたしは好きだなー。なんていうの? 俗っぽいって言うんだっけ。無駄に多い甘味料とかー、ネチャってしてる皮とか! 家じゃまず食べられない出来(クオリティ)だけど、だからこそ珍しくて美味しく感じちゃう。昔キリツグが言ってたジャンクフードっていうのは、こんな感じなのかな?」

「恐らく違うと思うぞ。喰らった事がない故はっきりと断言は出来んが……」

 

 『ヘラクレス』が理性のない狂戦士のサーヴァントであったなら、魔力消費の加減が利かずにイリヤスフィールをも苦しめただろう。戦士王ほどの霊格の持ち主を、狂化スキルによりさらにステータスを押し上げているためだ。他のサーヴァントなら燃費最悪の狂戦士であっても、破格の魔力タンクとしての能力を持つイリヤスフィールには負荷は掛からないが、戦士王が狂戦士であれば話は別なのである。

 本来の狂戦士ではない、イレギュラーな形の戦士王だからこそ実体化していてもさしたる負担はない。もしそうでなければ狂化を解除し、なおかつ常に霊体化させていたに違いないのだ。

 

 戦士王は狂化を解除されている――されておらずとも理性に曇りはないが――のもあるが、あらゆる武装を消し、あまつさえ自前の魔力を削り節約しながら実体化しているため、イリヤスフィールに殆ど負担を掛けないという離れ業を実現している。自前の魔力の消耗は、イリヤスフィールが気が向いた時に供給するだけで満たされるのだから、実質なんのペナルティもない状態だった。

 

 今のバーサーカーはイリヤスフィールが見立てた現代風の衣装を纏っている。二メートルを超す筋骨逞しき偉丈夫が、黒服のスーツと無骨なサングラスを掛け、オールバックに撫でつけた黒髪に厳つい相貌を晒しているのだ。銀細工のネックレスや腕時計とも相俟って完全にその筋の大物にしか見えない。自然、冬木の人だかりは彼らを避けていた。が、少し目端の利く者は、バーサーカーの佇まいに危険なものは感じず、却って安心感を見いだせる。巨漢と小さな妖精が如き少女という組み合わせもあり物珍しげな視線を浴びせていた。

 

「然し……感慨深いものだ」

 

 はむ、とたい焼きを頬張るイリヤスフィールに柔らかな微笑みを向けながらバーサーカーが述懐する。む? と行儀悪く真意を問うてくるマスターに、軽く拳を落とした。

 

「こら。口に物を入れたまま喋ろうとするものじゃない」

「むぐ……む、む……マスターに手を上げるなんて……お仕置きが必要あいたっ」

 

 抗弁して強気に構えようとする少女の頭に、今度は微かに強く拳骨を落として、バーサーカーは嘆息した。

 

「戯け。主従であろうと、いやだからこそか。従者の諫言にも耳を傾けずになんとするか。非があるのなら素直に認めよ。ないと思うのなら言うがいい」

「むー……分かったわよ。確かに淑女らしくなかったわ。わたしが悪かったですー。これでいい?」

「うむ」

 

 叱られたのに、イリヤスフィールはどこか嬉しそうだった。こんな細やかな遣り取りが楽しくて堪らないのである。だらりと下ろされたバーサーカーの手を掴み、自分の手よりずっと大きなものと繋がっているのに意味もなく笑顔を咲かせる。

 バーサーカーは自身がイリヤスフィールに、最初の妻のメガラとの間に生まれた娘を重ねて見ている部分は確かにある。然しイリヤスフィールとは完全に別人だ。自身の見方が何よりも非礼であると弁え、彼はマスターを尊重するために意識して生前を忘れるようにしていた。英霊として召喚に応えたからには、何よりもイリヤスフィールを優先し、何もかもを捨て置いてでも彼女に尽くす。その覚悟を懐かせるほど、()()()()()()()()に励んでいるつもりの少女は儚かった。

 その超越的な洞察力は、イリヤスフィールがバーサーカーに後ろめたさを覚えているのを見抜いている。だが何も問わない。どんなカラクリがあっても、自分だけはイリヤスフィールの味方なのだから。無条件に彼女だけの守護者として在る事を、この第二の生で決めているのである。

 

「ねえ、さっきのことだけど、何が感慨深いの?」

「ん? ……ああ、そうだな」

 

 手を繋いで歩いていると、傍から見ると父娘のようである。そう見える事にイリヤスフィールだけが気づいておらず、そう在りたいと願っていた。

 それには気づいていないふりをしてやりつつ、バーサーカーはマスターの問いに答えるべく辺りの町並みに視線をやった。

 

「見るがいい。どれも私の生きた時代には有り得なかったものだ。科学文明だったか? 神秘を淘汰し、物理法則で世界を規定し、繁栄と発展を遂げている。私は間違ってなどいなかった――やはり人類に神は不要だった。信仰する先として、偶像としての神が在るだけで人には充分なのだと……この街を見ただけで確信できる。私にはそれが嬉しいのだ。人理構築の一助に成れたと、今になって実感できている故に」

「ふーん……」

 

 重い、途方もなく重い独白だった。

 一つの神話に終止符を打った英雄の、万感の想いが籠もった言葉には、安易な言葉を返せない星の重みが宿っていた。

 イリヤスフィールは混ぜっ返すような事は言わず、素朴な感想を溢す。

 

「バーサーカーって人と神の間を裂くんじゃなくて、人と神の関係を刷新して、信仰の在り方に変革を齎したんだよね」

「そうだな。そうなればいいと願い、ひた走った」

「でもバーサーカーは神様になって事を成したんじゃない。とっくの昔にこうなるって識っていたんじゃないの?」

「それは勘違いだな、マスター」

 

 バーサーカーは苦笑して少女の勘違いを正す。

 確かにバーサーカーは神話に語られるように、死後に武神としての霊格を得た直後、戦神と結託し、戦女神を引き抜き、ギリシャの神々と敵対して大半を討ち滅ぼした。

 後の世の在り方を確かに変えたのだ。だが――

 

「私は英霊だ。神霊ではない」

「……人としてのヘラクレスが貴方で、神霊ヘラクレスとは別人って事? でも、バーサーカーのスキルに『神性』があるじゃない。人としてのバーサーカーと神としてのヘラクレスが混在してるから神性があるんじゃないの?」

「違うな。人としての私には、常に神の血が流れていた。半神である私が人なのだ。故に死後、純粋な神となった私が成した事など、人としての私にはただの記録に過ぎん。今ここにいる私は、志半ばで斃れ、無責任にも神の私に総ての“遣り残し”を託した男に過ぎん。私が神性を持っている事と、神霊ヘラクレスとの間に関わりはないのだ」

「そういうものなのね。でも、変なの。自分が死んだ後にまで自分が残るだなんて、まるで残留思念……あべこべだけどドッペルゲンガーみたい」

「こうも考えられる。人は死しても、後に遺せる意志があると。神の私など知った事ではないが、それでも人として生きた私の人生の蓄積が、神霊ヘラクレスの在り方を決定づけたのだとしたら――ああ。やはり遺せたものはある。私は何も無駄になどしなかった。そう信じられる」

「……未練とか、ないの?」

「あるに決まっているだろう」

 

 恐る恐る、探るような問いを、バーサーカーは豪快に笑い飛ばした。

 何も不安に思うことはないと、冗談めいた本音を溢す。

 

「妻子が死んだのなら新しい妻を迎え、子をもうければよい……そんな戯言を吐いた糞のような大神を、一度だけでもこの手で殴りたかった……未練といえば、それぐらいだな」

「なにそれ」

 

 ぷっ、とイリヤスフィールは噴き出した。だって本気で悔しそうなのだ。可笑しくて笑ってしまう。

 

「じゃあさ、なんでわたしの召喚に応えてくれたの? サーヴァントって未練があって叶えたい願いがあるから現界するんだよね? バーサーカーの願いは何? なんでも言っていいよ。この小聖杯(わたし)が聞いてあげるわ」

「そうか? なら――救われぬ子に救済を……とでも言っておこうか」

「何それ? 変なことばっかり言って煙に巻くんだから……」

 

 訳が分からないと首を捻るイリヤスフィールに、バーサーカーは微笑む。お前のことだ、マスター。そう言ってやるにはまだ早い。最後まで勝ち抜き、サプライズとして願えば、さぞかし驚くことだろうと思うに留める。

 バーサーカーはイリヤスフィールを抱え、肩車した。突然視界が高まり、足が宙に浮いたのに驚いて「きゃっ」と声を漏らしたイリヤスフィールだったが、すぐに感嘆したように顔を輝かせた。

 

「わぁ……」

「どうだ。高さが違うだけで、見え方は違うものだろう」

「うん……ね、バーサーカー。もっと歩いて。もっと色んなところに行って。わたし、もっと色んなものが見たいの」

「任せよ。こう見えて、私は散策の達人だ」

「あはは! なにそれ、そんな達人があるわけないじゃない!」

 

 あるのだ。王を探してエジプトのテクスチャを釣り上げたほどの達人なのである。

 

 きゃっきゃと喜ぶマスターを肩車したまま、バーサーカーは冬木の街を練り歩く。

 たい焼きに始まり、アイスクリーム、さつまいも、揚げ鶏などを買い食いし。何かを見つける度に脚をジタバタさせて「あっち行ってあっちー!」と指差す少女に従う。

 イリヤスフィールの身の丈ほどもあるテディベアのぬいぐるみを意味もなく買って、それをイリヤスフィールに背負わせ。近代機器を金銭に物を言わせて片っ端から買い占め。手に持てる分だけ袋に詰めて両手に持ったり。お揃いのマフラーを買って自身に巻き、バーサーカーの首にも巻いてやって手綱のように振り回したり。好き放題に暴れる少女の為されるまま、バーサーカーは終始笑みを絶やす事はなかった。

 

「むっ。――ぐ、ぐ……ぐふっ――はっ、はぁっはははは!?」

「え!? な、なになに!? どうしたのバーサーカー!?」

「はっ、はは、ハハハハハハ!? な、なんっ、なんだ、それは……!? ハハハハハハハハ!!」

 

 ふと何かを見つけ、口を噛み、然し堪え切れずに突如呵々大笑しはじめたバーサーカーに、イリヤスフィールはギョッとして問い掛けた。

 その場に膝をつき、腹を押さえて蹲るや、必死に笑いを収めようとするバーサーカーの豹変が天変地異の前触れに見えてイリヤスフィールは慌てる。

 然しイリヤスフィールは、バーサーカーが震える手で指さしたものを見て呆れてしまった。

 

 節くれ立ったバーサーカーの指が示したのは、一つのテレビ。それはテレビゲームとやらや、TVアニメなどの予告が流されるもので、グッズなどが店頭に並べられていたりした。

 そう、ゲーム屋さんである。そして丁度、イリヤスフィールの目に映ったのは――

 

 

 

『きゅるるん☆ 魔法少女マジカル☆メディア、ここに参上! 月に代わってぇ〜、みんなブッ血KILL! 明日朝七時から第二期放送開始☆ みんな見てくれないとぉ、あたしの拳が唸って光ってひどいんだからね☆』

 

 

 

「………ナニコレ」

「クッ、クク、クハッ、ハハハ……! いや、なんだ、ああ……その。なんでもない。見なかったことにしよう。それが人の情というものだ。イオラオスめ……やりおる。いや後世の研鑽の結実かこれは。なんでもいいが……うむ、愉快だな」

 

 ふりふりしたドレスを着て。謎のくるくる回転と派手なエフェクトと共にステッキを振り回し、決めポーズを取る幼気な少女キャラクターから目を逸らすバーサーカー。

 メディアというのが、バーサーカーの時代を生きたあのメディアだと理解して、イリヤスフィールの目が点になる。こんなのが俗世では流行りなのかと。

 そそくさと立ち去ろうとするバーサーカーの手綱(マフラー)を握り、急制動を掛けてイリヤスフィールは言った。すこぶる興味を惹かれたのである。

 

「ね、中に入ってみようよ」

「ん? 構わないが……興味があるのか?」

「うん。もしかしたらバーサーカーに関連してるのもあるかもしれないじゃない?」

「私が関われば、さぞかし武骨で雄壮なものとなろう。マスターにはつまらんと思うが……」

 

 そう言ってその店の門を潜って暫く。

 弾けるようなイリヤスフィールの笑い声が響いた。

 

 

 

「あっはははは! な、なにこれぇ! バーサーカーが女の子になってるぅ!」

「――――何が起こったのだ、私の伝承に何が………!?」

「タイムスリップした主人公が、女の子ばっかりのギリシャ神話を駆け抜ける……!? あーるじゅうはちのぎゃるげー……? なにこれなにこれすっごくやりたい! 買って帰ろうよ!」

「だめだ、絶対に駄目だ。断固拒否する。どうしてもと言うなら令呪を使え」

「えー!? そこまで嫌なの!? ――って、こっちのバーサーカー、いろんな女の子に手を出す鬼畜王だって!」

「ほう……どこの会社だ? 物理的に滅ぼしてくれよう」

「面白そうだからいいじゃない。えーと、意外とあるものね。『ブラック企業オリンピアを破壊せよ!』……? ふーん、ゴッド・オブ・ウォーとかあるわね。ヘラクレスを操作して、ギリシャの神々をぶっ飛ばせ! とか」

「買いだ」

「あー! ずるいずるいずるいぃ! わたしもほしいのあるの!」

「魔法少女リリカルな○は×魔法少女マジカル☆メディア、大乱闘編で我慢しろ」

「作為的なものを感じるわ。でもそれで我慢してあげる。今は」

「マスターが出歩く時は常に私がいるぞ」

「ちぇー……」

 

 

 

 その店を出る頃には、イリヤスフィールはすっかり騒ぎ疲れて瞼が重くなってきたらしかった。

 一日の半分を寝て過ごさねばならない身である。随分とはしゃいでいたものだから、自分の限界を見誤って、バーサーカーの肩の上で寝息を立て始めていた。

 

 揺らさないようにそっと歩く。そんなバーサーカーを見て、擦れ違う人々は微笑ましげだ。バーサーカーの強面も、優しい父性に溢れた微笑みに迫力はなくなり。天使の寝顔をみせる小柄な少女を見ては、穏やかに見守れる。

 安心しきって。信頼しきっている。イリヤスフィールは眠りながらもバーサーカーの首に巻かれたマフラーを強く握っていた。

 

 城に帰ろう。バーサーカーは特に気を遣い慎重に歩く。

 

 ――その横を、一人の男が通り過ぎた。

 

「ギリシャ最大の英雄ヘラクレスが子守とはな。随分と余裕そうではないか」

()()()()なのではない。余裕なのだ。名も知らぬ英霊よ」

 

 ライダースーツを纏う金髪赤眼の美男。隔絶した美貌の男の揶揄に、能面のような無表情でバーサーカーは応じた。騒ぎを起こすつもりなら殺すとその瞳が宣告している。

 愉快げに男は大英霊と擦れ違い、戯れに告げる。

 

「はしゃぐのは良いがな。余り無防備が過ぎると要らん虫が騒ごう。いたずらにクラスと、真名を晒すような真似をして、我と相見えるまでに消えてくれるなよ? 久方ぶりに興じられそうだと期待してやっているのだからな」

()()()()()()()()()()()()()()()()が、この私と勝利を競うか? 面白い冗談だ。せめてその余分、削ぎ落として来い。今の貴様は視るに堪えん」

「ほざいたなヘラクレス。だがよい、一度だけその放言、聞き流してやる。感謝しろ、今の我は機嫌が良い――」

 

 そのまま、両雄は離れていく。次に会う時は、戦場であると理解して。

 今のはささやかな挨拶である。宣戦布告である。「貴様はこの我が、手ずから殺してやる」という、血腥い決定なのだ。

 然しアインツベルンの城に帰還しながら、確かに油断が過ぎるかと内省し掛け。そんな事はなかったと否定する。誰がいつ仕掛けてこようと構わない。即座に反応し対応できる自負がある。バーサーカーはマスターの望むまま、どこであろうと出向くだろう。そして敵を殺すのだ。

 

 それだけである。

 

 あの金色の英霊――受肉していると思しきサーヴァントも、同じ。敵として立ちはだかるのなら、粉砕するだけだ。

 

 冬木の夜が、流れていく。

 

 

 

 

 

 

 


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