IS インフィニット・ストラトス ~世界を変える一人の傭兵~ 作:八神刹那
あの事件からしばらく経過し、今日は学年別トーナメント当日。
男子用の控え室でウルフは一夏とシャルルとともに出番を待っていたのだが、数分前に本来なら、1年生のトーナメントを行う予定が政府のつごうにより、2年生の部に出場するウルフの第一試合が行われることになったのだ。
Aピット。
「ウルフ。大丈夫なのか?」
「なにが?」
一夏の問いにウルフは表示されているデータを見ながら答える。
「相手は2年生の代表候補生なんだろ?1人で平気なのか?」
そう、ウルフは事情によりこの学年別トーナメントでは1人で出場することになっているのだ。しかも相手は国家代表候補生が2人。
「他人の心配をするなんてずいぶんと余裕だな。心配しなくても負けるつもりはない」
ウルフはそう言ってアシェルを纏う。モードはバスターオリジン。標準装備だ。
「とりあえず見てろ。いいもん魅してやるから」
ウルフがカタパルトにつく。
「アースさん!頑張ってください」
真耶の言葉にウルフは頷き、
「了解。ウルフ・アース!アシェル!出撃する!」
アリーナに飛び立つアシェル。アリーナにはすでに2機のISが待ちかまえていた。
「アメリカの第三世代か」
データで見たことがある。赤い機体が汎用性を重視しパイロットの長所に合わせて武装を展開するジルニトラ。対して、機動性と攻撃力に重点を置いたトールギス。
「嬉しいな。まさか、初戦の相手が1年なんて」
「勝ってこいって言ってるみたいなもんです」
対戦相手である2年生のエレーナ・エーカーとリーナ・ヴァーミリンオンが余裕の表情を見せる。それに対して、ウルフは何も言わずにアサルトライフルEAGLEの安全装置を解除する。
「まさか、勝てると思ってる?」
「今年の1年生は生意気な者ばかりですね!」
「・・・自信過剰は身を滅ぼす」
『試合開始!』
その合図とともにジルニトラとトールギスが二手に別れた。ジルニトラの手には高威力のビームマグナム。トールギスは実弾とビームライフルを兼ねたドーパーガンを展開している。
「終わりだ!」
「終わりです!」
試合開始直後の奇襲。ウルフ・アースのISのデータが不明な店がある以上、奇襲攻撃で先手を取り、潰すというのが2人の作戦だったのだ。
左右に挟まれ、攻撃を食らうウルフ。爆煙が広がる中、エレーナとリーナは近接戦闘の事態剣を展開する。
「当たったことぐらい確認したらどうだ?」
オープンチャンネルの声にはっとする。2人が回避行動を取ると同時にアサルトライフルEAGLEが火を噴いた。が、相手は2人。ヒットしない。
「あまいよ!」
ジルニトラが近接戦闘用ブレードで切りかかる。ウルフはバスターソードを右肩からマウントしそれをなんなく防ぐ。
「そっちもな」
鍔迫り合いのなか、エレーナの口元が歪んだ。
「ねらいうてますね」
ウルフの背後に回り込んでいたリーナがドーパーガンで狙いを定めている。
「チィ!」
ウルフはすぐさま、後ろ向きで瞬時加速を行い、距離をとる。
「いまだ!」
それを待っていたかのようにエレーナがビームマグナムで狙いを定め、放った。
息をつかせぬ連携。ビームマグナムがアシェルに直撃する。
「やりい!」
「他愛もない」
2人がさらに追撃をしようとした瞬間、煙の中からバスターソードが飛んでくる。
「なあ!?」
2人があわてて距離をとる。煙が晴れ、アシェルが姿を見せる。
「‥‥‥さすがに手を抜きすぎた。残量が429。あれを使うか」
ウルフがそうつぶやくとある換装パッケージをコールする。
「コール。F91」
粒子の光がアシェルをつつむ。基本的な武装は変わらないが腰に高濃度ビームライフルであるヴェスパー。右肩にはビームランチャーが装備されている。
「新しい武装!?」
「その前に潰します!」
2人が武装を展開する中、ウルフは
「アニマの器。同調成功。バイオセンサー、サイコフレーム問題なし。MEPE起動!」
モニターに映る情報を確認する。その瞬間、ビームマグナムとドーパーガンが放たれた。
直撃コース。誰もが直撃だと認識した瞬間、2つの閃光がアシェルをすり抜けた。
「何!?」
「どういうこと!?」
唖然とするエレーナとリーナ。
「こっちだ!」
ハイパーセンサーが警告音を発する。2人が認識したのは赤く輝くアシェルであった。そのアシェルからヴェスパーが発射される。何とか回避使用するが間に合わず、シールドエネルギーが削られる。
「この!」
エレーナがビームマグナムを放つ。確かにそれはアシェル直撃するはずなのに、アシェルをすり抜ける。
「なんで!」
センサーは正常に反応している。にもかかわらず、攻撃が当たらない。
「悪いが終わりにさせてもらう」
その声とともにアシェルに接近される。回避できずにビームサーベルで斬られ、バランスを崩す。アシェルは距離を取り、ジルニトラとトールギスに狙いを定める。
「ゲームオーバーだ!」
二門のヴェスパー。ビームライフル。ビームランチャー。4つの訪問から放たれる砲撃がアシェルの高機動により、至るとこから放たれる。
これこそ、高機動戦における。砲撃なのである。
『ジルニトラ。トールギス。シールドエネルギー0!勝者ウルフ・アース!』
声が響き、アシェルは何も言わずにピットへ帰還した。
Aピット。
すでに二試合目である一夏とシャルルが準備をしていた。
「ウルフ。何なんだよあれ?」
アシェルを待機状態にしているウルフに一夏が問う。
「簡単な言葉でいうなら質量のある残像」
「質量のある残像?」
「ああ。モードF91の場合フル稼働させると期待にかなりの熱がかかる。だから、機体冷却に重点を置いているだが、それでも間に合わかないことがある。その時は限界熱量を超えた走行部分を剥離。それで」
「ハイパーセンサーがその金属片に反応してまう」
シャルルが言うとウルフはうなずき、
「そういうことだ。だから、センサーでは確認することができない。これがF91の最大の特徴というわけだ。さて、オレは勝ったぞ。がんばれよ」
ウルフはそう言って一夏とシャルルの肩をたたき、ピットを後にした。
観客席。
「あれほど機体があるとは」
「篠ノ之博士の新型といううわさが」
「データにあった瞬時換装システム」
「ぜひとも我が国に」
先ほどのウルフの試合を見ていた各国のスカウトやIS関係者はあしぇるとそのパイロットに驚愕していた。
「おーおー。すごいねぇ。リアクターってのは」
そんな中、質の良いスーツ姿の朱い髪の男性は彼女の戦闘に世辞を送っていた。
「テスタメントのデータに合った通りだ。瞬時換装システムを織り交ぜた戦闘技術。おもしれぇ」
男の顔が醜悪にゆがむ。男は立ち上がり、観客席から去ってゆく。
「さぁて、今回神はどちらを選ぶ?まっ、どちらにしても戦争だがな」
男は笑いながら仕事のためにESを起動させる。
男の名はアリー・アル・サーシェス。。自身を「戦争が好きで好きでたまらない、人間のプリミティブな衝動に殉じて生きる、最低最悪の人間」と表現する最凶の男が動き出した。