短い幕間ですが、本編は一時間後に投稿します。
「つまり、彼が初めて弓を引いた日。自分の思いを自覚したわけです」
『やっと!?』
それまで散々紗夜から惚気話を聞かされていた四人は絶叫した。
「嘘でしょう。紗夜、貴女バレンタインでチョコを渡したと言っていたじゃない」
「その時は義理のつもりで渡しました」
平然と答えた紗夜には友希那は呆れる。
他のメンバーも同じような反応で曖昧な空気になった。
気持ちが乗った熱愛話だったため、すでに自覚しているものだと思って聞いていたのである。
「私はクリスマスの頃には自覚していると思っていたよ」
「今井さんの言うとおり、そんな思いはあったのかもしれませんが自覚はありませんでしたね」
「あこは音楽会をやる前には付き合っていると思ってました」
「あこちゃん、それはさすがに早いんじゃないかな?(自覚をするのは遅いと思うけど……)」
「ま、まぁ、ともかく晴れて両想いになって二人は付き合ったわけだね」
リサは戸惑いを残しつつも、話を区切るように紗夜へ確認する。
これで紗夜の惚気話から解放──もとい、ラブソングを演奏するための恋愛体験談が幕を閉じるだろう。そう思い、四人は一安心する。
軽い気持ちで聞いたのが間違いだった。
名目はラブソングを演ずる為と言って、その実、普段自分のことを語らない紗夜の赤裸々な身の上話で花を咲かせようとした結果、予想以上の甘い話に恋愛経験皆無の少女四人はそろそろ限界である。
リサと燐子は何度顔を赤くしたことか。苦いのが苦手な友希那は珍しくブラックでコーヒーを飲んだ。まだ続けばBLACKSHOUTである。最年少のあこが一番平然といられたが、それでも饒舌に語る紗夜に圧倒されていた。
「いえ、まだその頃には付き合っておりません」
お開きかと身構えていた四人に対し、紗夜が爆弾を投下した。
「なんでよ、付き合いなさいよっ! 両想いなんでしょう!?」
叫んだのは友希那だった。
驚く四人に構わず、友希那はバンバンと机を叩く。まさにBLACKSHOUTである。
「さっきから聞いてたらじれったいわよ! 向こうが心変わりしたらどうするのよ! すぐ付き合いなさい!」
「今は付き合っていますよ?」
「私は! 過去の紗夜に言っているのよ!」
「友希那、落ち着いて! 言ってること無茶苦茶だよ。ほら、お店の中だし」
リサに諭されて、ここがファミレスだと思い出した友希那は我に返り静々と深呼吸した。
「ん。ごめんなさい。少し取り乱したわ」
いつもの調子でクールを装うが時既に遅い。他の席から白い眼が集まる。
だが、メンバーたちからは咎める視線はなかった。
出会った頃のRoseliaなら彼女の癇癪に慄いただろうが、付き合いも長くなったので大抵のことなら受け流せるようになっている。
友希那がちょっと荒ぶっても、よしよし、落ち着こうねと宥めるくらいには成長しているのだ。
「確かに、友希那さんの言う通りです。あの頃の私がその言葉を聞いていれば、もう少し早く彼と結ばれていたかもしれません」
そこで紗夜の顔が変わる。恥じらいながら何処か遠くを眺めるような潤んだ瞳。
四人が今日何度も見て解るようになった、雌の顔だ。
普段の四人なら胸がときめいたり、驚いたりするところだが、まだ続くの? とげんなりしている。
「けど、あの頃の私は──」
そうやって紗夜は四人にお構いなく語りだした。
四人は観念する。ここまで来たら最後まで聞いてあげよう。
ファミレスに入ってから二時間が経過した。まだ紗夜のノロケフェイズは終了しそうない。
本編に関係ない後書き。
遅いですがRoselia新メンバー、志崎樺音さん介入おめでとうございます。これからも応援してます。
また、明坂聡美さん。今までありがとうございました。これからも声優活動頑張ってください。