紗夜さんの恋人は総てを愛している。   作:貫咲賢希

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 今回も予約投稿して、その間に誤字脱字チェック。
 いつかゼロにしたい。
 
 あと、ずっと悩んでたバンドリの時系列に関しては、一部サザエさん時空にすることにしました。

 だって、2年の夏でどれだけ海にいったり、プールに行って遊んでんのRoselia。しかも、日菜ちゃんと和解してない梅雨前やし。


KapitelⅢ ー乙女楽団祭ー
Episode ─XⅨ【獣と氷茨の眠り姫】


永遠に時が経たない、そんな物語をご存知だろうか?

 

 いつ、何処かも分からない、光景。

 滲み出た染みのように現れた記憶。

 老若の区別が付かない影法師。

 認識すらできない曖昧な存在。

 ──であるが、その声を聞く者は相手を男だと思った。

 

 こんなことを話す者など、■■かおるまい。

 

 しかし、その反応は表に出すことは叶わなかった。

 それを嘲嗤うように、影は己だけで話を続ける。

 

創作物の類なら特段、珍しくもない。

 作者の都合で螺子曲げられ、幾つもの季節を過ごしながら同じ時を繰り返す

 その物語の住人は、その事実を、気付きはしない

 

 まるで牢獄だな、と聞く者は思った。

 

矛盾していることに、そういった物語は時が進まないものの、歴史は蓄積される。

 例えば、そう。春に知り合った人間同士が次に訪れた同じ春でも知人同士、という具合にね。

 故に。僅かな既知感はあるが、違和感は殆どない

 

 それでも、牢獄には違いあるまい。

 閉ざされた楽土。時が重ねることによって得る未来を得られず、先に進むことがない世界。

 今を永遠に味わたいものなら楽園だろうが、そうでないものなら無間地獄だ。

 

では、貴方がその物語の住人だったとして、事実に気づいた時、どのようにするか?

 

 此方が答えられないことなど承知済みで、影は問いかけの言葉を向ける。

 

あぁ、そんな妄想は考えるだけ無駄だと切り捨てくれるなよ?

 

 ──待て。

 

 激流の雑音が疾走する。

 

この問いは、貴方の運命を左右する、重大なものだ

 

 私は、あの男とこんな会話などしたことはない。

 更なる激流の雑音が疾走する。

 雑音は騒めきを強め、急速に意識が薄れていく。

 

やっぱり、そんな世界は破壊してしまうのかな?

 

 途切れる瞬間に耳にした声は、とても聞き覚えのあるものだった。

 

──楽天劇(キャンディード)は終わり。

 これからは明朗劇(ファルスタッフ)の幕開けだよ

 

 

 地上の光が届かぬ場所。壁は石造りで、何十メートルも上にある人口照明で照らされた広大な地下空間。

 そこに、小笠原純心は玉座のような背もたれが長い椅子に腰を下ろし、頬杖を突いていた。

 その正面には一人でギターを弾く、彼の恋人、氷川紗夜。

 まるで秘密結社の根城が如き場所は、小笠原家の地下に存在した。

 元々は小さな物置程度の場所だったが、純心が紗夜の為に防音設備を備えた空間に改築したのだ。

 瓦屋根が似合う武家屋敷の地下に、まさかこのような場所があるなど誰も想像しないだろう。

 純心の両親も、地下の物置を使いたい、と言った息子の好きにさせた結果、足元にこのような地下空間が出来上がるとは思いもしなかった。

 現在、紗夜は純心の前で新たに覚えた曲を繰り返し弾いていた。

 最初にミスなく弾ければ、そのままもう一度同じ曲を奏でる。

 この重複演奏は紗夜が新曲を覚える度に毎回している練習だった。

 純心は一度楽譜を見ただけで曲を覚えてしまう。耳も長年様々な多色の音楽を聴いてきた故に肥えており、一瞬のミスも聞き逃さない。

 紗夜の正確無比な演奏は、純心とのこの特訓が下地になっているのだ。

 

 楽譜通りの機械的な演奏の最中、純心が指先をパチンと鳴らす。

 

 ギン! ──紗夜が使っているギターの弦が一本切れた!

 

 純心は指を鳴らした衝撃だけで、紗夜の手やギター本体を傷つけず、一本の弦のみを断ち切ったのだ。

 しかし、紗夜は一瞬反応しただけで、すぐに失った弦なしで演奏を続けた。

 演奏途中でギターの弦が切れるトラブルはあり得る。

 ましてや、それがライブ中ならば演奏を中断するわけにいかない。

 それを即時対応できる訓練として、純心は練習している紗夜のギター弦を時折こうやって切っているのだ。

 最初の頃は不意打ちで戸惑うことしかできなかった紗夜だったが、今は対応できるようになっている。

 

「よし、そこまでだ」

 

 曲が終わったところで、純心が声をかけた。

 一切顔色が変わってなかった紗夜は一息吐き、ストラップを肩から外す。

 

「弦の張替えは後程で私がやろう。卿は暫しの間、休むといい」

 

「わかったわ」

 

 紗夜は純心に歩み寄り、彼が腰を下ろしている椅子の脇にギターを立て掛ける。

 

「ん──」

 

 そのまま紗夜は両膝を床につけ、躊躇なく上体を純心へ預けるように抱きついた。

 学校やライブハウスでの仏頂面な彼女を知る者がその様子を見たら、己の目を疑うだろう。

 家や学校でも気を常に張っているためか、近頃の紗夜は自分から純心へ抱きつくことが多い。

 それまでは、純心から抱締めることはあっても、紗夜から抱締めることはなかった。

 だが、純心から婚約の言葉を貰ってからというもの、彼女から彼へ触れる機会が生れた。

 誰に似たのかは分からないが、元来紗夜は触れたがりらしい。

 

「今回は随分と熱心であったな。余程、新しくバンドを組む相手が気に入ってるようだ」

 

 純心は自分に抱きつく恋人を労うようにその髪を撫でる。

 紗夜は音楽活動をしていたが、同じバンドにいる期間はそれ程長くない。

 紗夜の性格と意識の高さ故の摩擦であり、以前組んでいたバンドを辞めたと聞いても、やはりと純心は思った。

 しかし、今回はその後ですぐ紗夜は別の人間から誘われたのである。

 

 湊友希那。

 

 孤高の歌姫と称された歌声に紗夜は惹かれた。自分と同じ高い意識にも共感し、彼女とバンドを組む決意をする。バンドを抜けたばかりの紗夜にとって、湊友希那はまさしく僥倖であった。

 暫くした後で、以前から湊友希那のファンであった中学生の少女、宇田川あこをドラムに加える。

 更にその宇田川あこの実力を確かめるため、偶々居合わせた湊友希那の幼馴染の少女、今井リサもベースに加え、バンドとしての形を成した。

 

「湊さんは兎も角、宇田川さんは意識が。今井さんは実力が足りないわ。もっと練習をしないと」

 

 苦言を零す紗夜に、純心は思わず微笑む。

 言葉とは裏腹に、その声音には侮蔑や苛立ちを感じさせない。以前ならば更に悪態をついて、純心が慰めるところだ。

 もっと練習をしないとという言葉も、純心の耳にはもっと音を合わせたいと聞き取れる。

 宇田川あこは、尊敬する姉を追いかけるためドラムを始めたようだ。

 紗夜からすれば、一番悍ましい(、、、、、、)理由である。宇田川あこの目標が、世界で二番目のドラムと言ったのも、頂点を目指している彼女には気に食わなかった。

 今井リサもベースを楽譜通り弾ける程度。紗夜が求める技術には程遠い。

 しかし、そんな二人と湊友希那で行ったセッションが、非常にかみ合ったのだ。

 

 その刹那、言葉では言い表せない交響を、紗夜はそれまで経験したことがない。

 

 元々、宇田川あこの実力を確かめたのは、友希那に付きまとう彼女を突き放すためだった。

 今井リサも宇田川あこの技術を確かめる場で、ベースを弾けるゆえに演奏したに過ぎない。

 しかし、あこの実力を見るための演奏で、四人は互にこれまで感じたことない調和性を生み出したのだ。

 

 音楽性を嚙合わせるのは、合わせようと思って合わせることができない奇跡の産物。

 ゆえに、紗夜と友希那はあこを認め、その場にいたリサも幼馴染の力になれるならとバンドを組むことになった。

 これまで介入しては辞めてを繰り返してきた紗夜が、漸く納得できたバンドに巡り合えたことに純心も一安心する。

 尤も、そんなことを口にすれば不機嫌になるのは目に見えているので口にはしない。

 代わりに、自分の膝で寛いでいる紗夜を撫でたまま、彼は別の問題を口にした。

 

「足りないというなら卿等の演奏は所謂、ゴシックロック。前奏は紗夜が担当しているが本来はキーボードで音の幅を広げるべきではないのかね?」

 

「純心くんの言う通りよ。でも、今の調和を崩してまで下手に誰かを入れる気はないわ。これはボーカルの湊さんも同じ意見だわ」

 

「成程、卿等の意見は理解した。されど、足りぬものを補うことを忘れてはならぬぞ。

 有象無象を充てがう必要はないが、砂漠で一粒の宝石を見つける行為に等しくとも妥協してしまえば、それまでだ」

 

「……そうね、肝に銘じるわ。──、そろそろ時間だから行くわ」

 

 名残惜しそうに紗夜は起き上がると、離れ際に純心の頬を唇で軽く触れた。

 

「唇ではないのかね?」

 

 柔らかな感触を残す頬に触れながら、純心は悠然に微笑む。

 そんな彼の前で、拗ねるように紗夜は口を尖らせながら、頬を赤くする。

 自分から抱きつく彼女だが、こういった行為を自ら行うのはまだまだ照れがあるようだ。

 

「それじゃあ、離れたくなくなるでしょう? また後でね」

 

 そう言い残し、小さな足音を立てながら紗夜は地下空間から去った。

 今から紗夜は純心の母親と共に夕飯の準備をするのである。

 中学の頃に純心と正式に婚約した紗夜は、最低でも月に一度。多くて週に一度の頻度で小笠原家に訪れては家事と家業の手伝いしていた。泊まりがけですることもあり、今日はその日。

 正真正銘の花嫁修業である。

 将来の夢はお嫁さんどころか、お嫁さんになるのは当然なのだから準備はしないとというのが紗夜の姿勢だ。

 妙々たる熱愛ぶりに「最早夫婦だろ」と言った者たちには一様に「何れは成るがまだ夫婦ではない」と言ってのける恋人たちであった。

 

 

 小笠原家の屋敷は外装通りの和風屋敷だが、地下空間は除いても、一部の内装は洋式である。

 身内が集まる食卓も洋装であり、これは純心の父親である現当主がドイツ人とのハーフである妻のために改築した為だ。

 似てない親子だと言われているが、女のために出し惜しみをしていないのは同類である。

 洋式の長テーブルに並ぶのは、純和食。

 洋食のときもあるが、和食の味は歴代当主の妻たちに代々受け継がれたもの。

 小笠原家の顧客はやんごとなき令嬢たちが多いため、指南はせずとも催しで振る舞う時に馬鹿にされぬよう老舗料亭に匹敵する腕前が求められる。

 大半は業者に頼んでいるが、指揮ものが熟知していなければ示しがつかぬ。その厳格は歴史ある良家らしい。

 広いテーブルの前には四人の人間のみが座り、隣同士で座る紗夜と純心の対面では、夫妻。

 如何にも厳格な夫へ嬉しそうに酌をする金髪の美人妻。

 数年経てば自分もお酒を注いであげるのかと、まったくもって未成年に見えない恋人で婚約者の様子を覗きながら紗夜は思う。

 金髪金眼で如何にも異国風情な男は、正真正銘の日本男子ゆえに綺麗に日本の箸を使って、食事をしていた。

 彼の箸が煮物の一つに伸びた瞬間、ぴくりと紗夜が反応する。

 そんな様子を脇目で確認した純心は、彼女の真意を察すると彼は芋を端で摘んで口に運ぶ。

 

「ふむ。これは紗夜が一人で作ったものだな?」

 

「……そうよ」

 

 純心がそう言うと、見るからに落ち込んだ。

 それを知って気にかけることなく、彼は事実のみ告げる。

 

「一段と腕を上げたな。これからも励むといい」

「えぇ、ありがとう」

 

 上から目線はいつもの事。それを踏まえても褒め言葉に聞こえるが、紗夜の顔色は浮かなかった。

 上達と言えば聞こえはいいが、純心が満足する域には届いていない。

 彼女だけで作った食事で「美味い」という言葉は一度も聞いたことがないのだ。

 最低限、彼の母親の味と遜色のない出来に仕上げたいが、一人で作るとまだまだ及ばない。

 ギターも技術の向上は認めてくれているが、素晴らしいと未だに褒められたことはなかった。

 どれだけ登れば辿り着くか分からない道のり。

 手厳しい彼を満足させるには何もかもが足りない。恋人すら満足させられないようでは頂点も程遠いと、紗夜は食事と共に噛みしめるのであった。

 

「純心、お休み前に悪いですが少しお時間頂けますか?」

 

 食事が済んで夜深くなった頃、純心の母親である小笠原莉奈(りな)は自室に向かう彼を呼び止める。

 年々成長する子供と違って、何年も外見の変化がない金髪の麗人は寝間着姿で息子を見つめていた。

 

「何用ですかな、母上」

 

「分かっているでしょう? 紗夜さんのことです。貴方の性分は理解していますし、紗夜さんがそれを好ましく思っているのも理解していますが、もう少し優しくしてあげたらどうですか?」

 

 莉奈は紗夜を実の娘のように可愛がっている。

 紗夜がいなければ純心の女性関係は悪化していただろうし、真面目な気質も好ましかった。

 将来、名家の小笠原家に嫁ぐと決めておきながら、音楽活動に精を出していることに関して、二人の婚約を知る知人親戚で快く思っていない輩は存在するが、莉奈は応援している。

 此方の家業と家事の仕事を驚くばかりの速さで飲み込む傍ら、学業も良い成績を収めているのだ。やるべきことはやっているので、文句などありはしない。

 だからこそ、何事も熱心に取り組んでいるのに、報われる姿を見られないのは心苦しかった。

 

「貴方の前で、紗夜さんはいつ笑いました?」

 

「10日前、新しい人間とバンドを組むと報告したときですな」

 

「私はここ暫く見ておりません。貴方の前ですらそんなに笑わないのは、辛いですね」

 

 数年前から紗夜は何事も打ち込む度に自分を追い詰め、その分表情を凍り付かせたように固くした。

 学友や尊敬する先輩がいる学校でも殆ど笑わず、家では妹と極力接触をしないため自分の部屋に閉じこもる。音楽活動中は鬼気迫るほど気を張っているため、ファンや元バンドメンバーたちは彼女がちゃんと笑った姿など見たとこはない。

 

「せめて、貴方の前で笑えているなら少しだけ安心しましたが、そんな貴方だからこそ、もっと優しくしてあげてもいいのではないですか?

 今日の料理も上達は認めていましたが、美味しいとは言ってあげていない。

 聴いてあげているギターもそうなのでしょう? 一番の味方である貴方が、一番厳しくしてどうするのですか」

 

 何処までも慈愛と少女の安寧を願った言葉。

 娘のように可愛がっている少女を労り、息子を諭す母親の声。

 それを純心は嘲笑する。我が母親は甘い。それでは駄目なのだ。

 

「私の女はその程度で壊れるほど軟ではないですよ」

 

 炎のような罵声も、呪詛のような執着も、総てを破壊してしまう愛ですら、女は傷つきながらも挫けず、正気を保って上を目指している。そうでなければ、とうの昔に紗夜は気が狂っているところだ。

 それが何よりも恋しく、それでいて滑稽である。

 彼女が傷ついている一番の理由は自分自身だと言うのに。

 

「真に壊れるとしたら、それは自壊(、、)。誰かに破壊されるのではなく、自ら壊れる」

 

 最初から分かっていた女の傷跡。

 傷をつけたのか誰なのか、それを己自身で気づかぬ限り、彼女に先はない。

 

「私はね、それを待っているのですよ。その時こそ、眠り姫が自らの生み出した茨の城から解き放たれる時だ」

 

 もしも、茨に眠ったままでも、目を覚まして二度と立ち上がることができぬとも、やることは変わらない。

 恋した女を今まで通り、愛するまで。

 邪悪に笑う息子が天使か悪魔に見えた莉奈は、深い溜息を吐いた。

 

「やはり、厳し過ぎます。他の子ならとっくに駄目になってるとこですよ」

 

「二言はしない。それに私の女はそこを惚れてくれているようだ」




 明日明後日ライブビューイングに行きます。
 そして、10月に生Roseliaに会える。やった──!





●指パッチン①

 知る者からは頂上の存在として畏怖されている、黄金の獣こと小笠原純心だが、彼でも失態を犯すことはある。

(ギターを弾けるようになったが紗夜のことだ。予期せぬ事態に陥れば混乱するのは明白。予め練習した方がいいだろう。
 差し詰め、演奏中にギターの弦が切れる状況だな。
 問題はどうやって、その状況を作り出すかだが、予め細工するのは不意打ちにならない)

「一層のこと、指でも鳴らして切れると楽ではあるのだがね」

 そう零しながら、遊び半分でパチンと指を鳴らす。

 ズダァァアアン!!

 刹那、自宅の庭に大きな爪痕ような亀裂が生まれ、そのまま塀の一部が嵐でも通り過ぎたかのように切り崩された。

「ふむ。やってみるものだな。幾分、加減の練習は必要であるが」

「まぁ!? 大きな音がしと思えば純心、また物を壊したの? ちゃんと、貴方が稼いだお金で修繕してくださいよ。まったく、大きくなっても、良く物を壊す子ね」

 と、一見大惨事に驚愕しつつも、普通に怒り、普通に呆れる彼の母親。
 純心の破壊行為は日常茶飯事である。

●指パッチン②

 ♪〜

 純心の前でギターの練習をした成果を披露する紗夜。

(さて、あれから練習はしたので問題はなかろう。
 紗夜には前もって何があっても弾き続けるようにと言ってあるが、果たして我が女神は突然の事態に怯まずいれるかな?)

 指パッチンする黄金の獣。
 刹那、紗夜のギターの弦が切れた!
 更に彼女の服が切れて、上半身の下着が露わになった!
 ピタリと、ギターの演奏が止まる。

「…………」

「…………」

 空気が静止した世界で、獣はあれもない恋人の姿を熟視する。
 地味なスポブラを着けてると思ったが、意外にも花柄をあしらったターコイズブルーの色気あるものを身につけていたようだ。

「一応尋ねるけど、貴方の仕業かしら?」

 総てを凍りつかせるような極寒の視線。
 恋人からそんな目で見られたことなかったので、純心は新鮮な気分だった。

「そうだ。今度服を買いに行くか。好きなだけ気に入ったものを買うといい」

「言いたいことはそれだけ?」

「手違いだ。許せ」

「駄目」

 しばらくの間、口を聞いて貰えなかった。
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