紗夜さんの恋人は総てを愛している。   作:貫咲賢希

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Zwischenspiel ─Ⅰ

『小学三年生で告白された(の)んですか!?』

 

 行きつけのファミレスにて、紗夜から恋人の出会いを聞いていた四人が叫んだ。 

 

「宇田川さん、声が大きいわ。お店や周りに迷惑でしょう」

 

「すみません。って、何であこだけ怒られてるんですか!?」

 

「一番声が大きく、机も叩いてたからです」

 

「す、すみません」

 

「それに宇田川さんだけではないです。皆様、驚き過ぎではありませんか?」

 

「いやだって、紗夜の恋人が小学校で告白したってことは、そこらから付き合ってたことでしょう? かなり年季が入ってるやら、かなり進んでるとか、色々驚いちゃうよ。

 あと、彼氏さんが私達と同じ歳だったのも驚き。写真だと年上に見えた」

 

 リサの言葉に残りの三人が同意するように頷く。

 彼女の言葉通り、写真からの姿、リサは実物を目撃したが自分と同じ歳、高校生には見えないほど大人染みていた。若くても大学生までと想像していたのだ。

 動揺しているメンバーとは違い、珍しく自分からプライベートのことを語る紗夜は冷静である。

 

「彼は自分の顔が少し老けてるのを気にしているので、本人に会っても言わないでくださいね」

 

「……気にしてるんだ。話を聞く限り意外ね」

 

「それと告白に関してですが、今時は幼稚園でもしますよ。大体は遊びの範疇ですがね。私も日菜とまったく理解せずに婚姻届を書いたことがあります」

 

「ああ、してそうだね。私も昔、友希那としたことあるよ」

 

「ちょっと、リサ!? なんでそのことを言うの!?」

 

「え? 単なる楽しい思い出話じゃん。なんでそんなに怒るの?」

 

「だ、だって、恥かしいじゃない」 

 

「湊さん、大丈夫です。お二人が結婚の約束をしていても、私たちは自然と受け流せます」

 

「紗夜、それはフォローしているつもりかしら?」

 

「そのつもりですが何か?」

 

 不思議そうに首を傾げる紗夜を見て、何やら面倒になった友希那は毒気を引かせる。

 

「…………、もういいわ。完全に逸れる前に話の続きをして頂戴」

 

「わかりました。では、話の続きですが彼に告白されましたが、其処からお付き合いをした訳じゃないです」

 

「お断りしたんですか?」

 

「…………そういうことになりますかね」

 

 燐子の確認に紗夜は頷いた。

 するとあこが「えー」と声を上げる。先程の注意されたので控えめだったが、視線を向けるには十分である。

 

「だって聞く話、めちゃくちゃカッコいい人じゃないですかその人。顔も良くて、頭も良い。特に喋り方が凄く素敵です! なんだが、ゲームとかのラスボスっぽい感じがイケてます」

 

「確かに、あこちゃんが好きそうな喋り方だね(小学三年生から素でそんな口調と聞くと、色々と考えさせるけど)。告白の言葉も、マイン・ゲッティン。確かドイツ語で私の女神、ですか」

 

「その通りです、白金さん。良くわかりましたね」

 

「ゲームとかでドイツ語を聞く機会ありますし、Roseliaの曲もドイツ語に因んだのもありますから」

 

「なるほど。彼の場合、祖父がドイツ人で。稀にアチラの言葉が自然と出るそうです。尤もそれを知ったのは後からですし、告白されたときも私には理解できませんでしたが」

 

 そう言って紗夜は燐子に向けていた視線をあこに戻す。

 

「それで話をもう一度戻す前に宇田川さんに聞きますが、逆に宇田川さんならそういった相手に、突然告白されてお受けしますか?」

 

「え? あこが紗夜さんの恋人みたいな人にですか?」

 

「そうです。頭脳明晰、容姿端麗。ついでに貴女好みの口調の男性です」

 

 真剣な眼差しを向けられたため、すぐ答えは出さず、あこは自分に置き換えて脳内シミュレーションしてみる。

 顔は紗夜に見せて貰ったものをイメージし、声は知らないので自分が知っているラスボスキャラクターのものにして、紗夜が語った状況を自分に当てはめてみた。

 想像してもロマンチックなものだと思ったが、それで相手の告白を受け入れるかと思うと違和感を抱く。

 

「う、うーん。考えてみると、突然告白されても驚いてOKは出さないですかね」

 

 紗夜の話を聞く限り、一緒に遊んだこともないので友人と呼ぶのも憚れる。

 精々、顔見知りのクラスメイト。つまり、まだ良く知らないのだ。

 それでも選ぶ者はいるだろうが、スペックだけ判断し交際を決めることをあこはしたくない。

 

「それを聞いて安心しました。承諾すると言ったなら巴さんにもお話して宇田川さんの再教育をするところでしたよ」

 

「あこ、結構危ない選択肢を迫られてたんですか!?」

 

「私も告白されたときは驚きが大きく、戸惑うことしかできませんでした。少なくとも、あの頃の自分にとって恋愛など縁遠い、ドラマや小説だけのモノでしたから実感がありませんでしたね」

 

「なるほど、それで断ったわけですね」

 

「……改めて聞かれると、先程白金さんに聞かれて肯定しましたが、事実は少し違いますかね」

 

 おや? と話の流れが変わり、四人は紗夜の言葉に耳を傾ける。

 彼女の恋人との馴れ初めは、まだ始まったばかりだった。

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