東方変違原   作:左三文

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登場人物一覧
博麗霊夢/人間
霧雨魔理沙/人間
ムーンテンプトゥレス/影の妖精


第三話 談笑

 幻想郷規模で発生する怪事件、異変。その異変を解決する人間、博麗の巫女。しかし、異変を解決する博麗の巫女は、現在博麗神社でゆったりとお茶を飲んでいた。

(……平和ね、こんな日はお団子でも食べたくなるわね)

 そんな事を考えながら博麗霊夢は、縁側でゆっくりとつかの間の平穏を味わっていた。

「お~~い! 霊夢ー!」

 つかの間の平穏は終了した。

 霊夢はため息を吐くと、突如現れた少女に向き直る。

 突如現れた少女の名は霧雨魔理沙。博麗の巫女ではないにも関わらず、異変を解決する程の実力を持った魔法使い。そんな彼女が、元気一杯な顔を浮かべながら縁側にいる霊夢に近付く。そんな魔理沙の顔を見て何だか嫌な予感がした霊夢は、もう一度ため息を吐いた。

「どうしたのよ魔理沙、何か用?」

「んー? 用が無きゃ来ちゃいけないのかよ?」

「別にそういう訳では無いけど」

「だったらいいじゃないか」

 そう言うと魔理沙は、霊夢の隣に座り込む。しばらくそのまま二人は沈黙し、ゆったりとした時間が流れる。そんな平穏な時間の中、魔理沙が口を開いた。

「知ってるか、霊夢」

「? 何の事?」

「人里で新しい甘味処が出来たんだってよ」

「ふーん」

「おいおい、興味無さげだな。 そこの団子が旨いって評判なんだぜ」

「それで」

「奢ってくれ」

「嫌よ」

 有無を言わせぬ即答。そんな霊夢の様子を見て魔理沙は苦笑しつつも口を開いた。

「冗談だぜ」

 そう言うと魔理沙は、懐から財布を取り出し、霊夢に見えるようにひらひらと振る。そんな魔理沙の様子に怪訝な表情を浮かべる霊夢。

 魔理沙はにやりと笑うと、こう言った。

「寧ろ私が奢ってやるぜ霊夢?」

「……は? ……えっ? ……何言ってるの魔理沙?」

「ふふん、奢ってやる。 って言ったんだぜ霊夢」

「あんたが? それこそ冗談でしょ?」

「……私が奢るのがそんなにおかしいのかよ?」

「天地がひっくり返るぐらいおかしいわ」

 霊夢はそう言うと、長いため息を吐く。

(嫌な予感の正体はこれかしらね?)

 魔理沙が何かを奢る何て、何か裏があるとしか思えない。そんな事を思う霊夢を見て、魔理沙はむっとした顔になると、少し不機嫌な声でこう言った。

「おいおい、この魔理沙さんが無償で奢るって言ってるんだぜ? 感謝こそして疑うのは失礼じゃないのか霊夢」

「いやいやあんた、今まで自分がしてきた行いを振り返りなさいよ」

 呆れた様に霊夢は言うも、その実、内心喜んでいた。

(無償で奢るって事はあれよね? 無償って事よね?)

 内心涎だらだらである。そんな霊夢の内心には気付かず、魔理沙はやれやれと首を振ると、心当たりが無いぜと言った。

「とはいえ、一体全体どうしたのよ魔理沙。 急にそんな事を言い出す何て」

「いやー実はさー、久方ぶりにお客様が来てさ。 そいつのおかげで懐に余裕が出来たんだぜ」

 魔理沙は嬉しそうに頭を掻くと、上機嫌に笑う。そんな魔理沙を尻目に、霊夢はお客様?と疑問に思った。

 魔理沙の自宅兼店舗である霧雨魔法店は、魔法の森の中にあり、茸の胞子や幻覚作用がある茸等、人間は疎か、妖怪ですら入るのを躊躇う程危険な場所にも関わらず、そんな危険な場所にお客様とはこれいかに。そう霊夢は思うも、魔理沙の次の言葉である程度納得する。

「そいつは妖精でさ、何でも魔法のかかったつるはしが欲しいらしくて、私に依頼しに来てくれたんだぜ」

(成る程妖精か、そういえば光の三妖精とやらが魔法の森にいたわね)

 まあ、お金は持っていなさそうだけど。そう霊夢は思いながらお茶を啜る。どうせ妖精に貰った珍しい物を、香霖堂に無理矢理売り付ける等して金を得たんだろうと、霊夢はそう予想したのだが、どうやらそういう事ではないらしい。魔理沙の話によると、その妖精はきっちりとお金を払っているらしく、その妖精がどうやってお金を得たのか、魔法のかかったつるはしを何に使うのかは魔理沙も把握していないようだ。

「あんたね、その妖精がどこからお金を得たのか聞いときなさいよ」

「いやー、久方ぶりのお客様にそれは失礼だと思ってさー」

「せめてそのつるはしを何に使うかぐらいは聞いときなさいよね」

 そう霊夢はため息を吐くと、最後に魔理沙にこう問いかけた。

「で? そいつは何て言う妖精なの?」

「うん? えーと確か……」

 魔理沙は思い出す様に首を傾げると、少し沈黙してから口を開いた。

「セメンって名前の妖精だったな」

 

少女祈祷中…。

 

 生々しい音、硬い物が柔らかい物を突き刺す音。そんな嫌な音が、裏の森の端、博麗大結界近くで鳴り響いていた。

「がっ……がぁ……」

 その音にのまれる様に、苦しそうな呻き声も聴こえてくる。

(何よこれ……何よこれ!)

 そんな音から隠れる様に、木の裏で声を抑える妖精が一人、彼女の名前はムーン。影の妖精である彼女は、恐怖で体が震えるも、見付からない様に手で口を抑え気配を消していた。

 彼女が見た光景は、凄惨なものだった。

 身体中に大きな釘が刺さり、血を流して白眼を剥いた妖精達が、歪な動きをしながら同じ妖精に釘を打ち込む姿。

 明らかに死んでいるにも関わらず、一回休みにもならず動き続ける妖精達。そんな彼女達が、妖精を襲っていた。

「ぐごっ……やめ……」

 両手足を釘で動けぬ様地面に磔にされた妖精に、釘を刺し、金槌で叩く。

「…………」

 最早動かなくなった妖精にも、釘を刺し、容赦なく金槌で叩く。

「助け……げぅ……」

「誰か……」

「やだやだ止めて! お願い待っ……ごふぅ……!」

「止めてよ……私達友達でしょ? 友だっ……!」

「逃げ……はや……」

 阿鼻叫喚の地獄絵図。しかし更に地獄なのは、釘を刺されて死んだ妖精達が、再び動き出した事だ。

 白眼を剥き、身体中に釘が刺さった妖精達が、いつの間にか釘と金槌を持ち新たな妖精を襲っている。そんな妖精達は段々と数を増やし、気が付くと、ムーン以外の妖精は皆死んでしまった。

(どうしょうどうしょうどうしょう!)

 死んだ妖精達は、どこへともなく歩き出す。奇しくもそれは、丁度ムーンが隠れている方向だった。

 ざっざっざっ、と足音がなる。それも大勢の足音が、ゆっくりとムーンに近付いてくる。

 来ないでとムーンが念じるも、足音は止まる事なく進み続ける。

 ざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっ……。

 足音が止む。

 ムーンは沢山の視線を感じるも、顔を伏せたまま上げる事が出来ない。そのまま辺りは静寂に包まれる。夜の暗闇の中、ムーンは恐怖に苛まれながらも、能力を使い必死に気配を消す。そうして数分経った後、足音はゆっくり進み出した。

 ざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっ……。

 やがて足音が聴こえなくなってから、ムーンはほっと一息を吐いた。

「……助かった」

 そう言い顔を上げると、目の前に髪の長い女が般若のお面越しにムーンを睨んでいた。その女は釘をムーンに突き刺すと、金槌を振り下ろす。

 こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこんこんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん。




博麗霊夢
種族:人間
能力:空を飛ぶ程度の能力
二つ名:楽園の巫女
霧雨魔理沙
種族:人間
能力:魔法を使う程度の能力
二つ名:普通の魔法使い
ムーンテンプトゥレス
種族:妖精
能力:気配を消す程度の能力
二つ名:気付かれぬ影の妖精
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